ゴールデン街コーリング

馳星周の「ゴールデン街コーリング」です。初の自叙伝的青春小説との事で楽しみにしてました。馳が横浜の大学に受かり、北海道から上京してきて、内藤陳が経営する新宿歌舞伎町のゴールデン街のBarでバイトしていた頃の話です。ゴールデン街のBarでバイトしていた事とか、内藤陳が酒乱だったとかいう話は何かで話していたので知ってましたが、それ以上踏み込んだ話は聞いた事が無かったので、ファンとしては、かなり収穫がありました。しかし、馳の自叙伝的な青春小説と理解して、ファンの僕が読むから凄く楽しかったのでありまして、ファンで無い方が読んだ場合の主人公の「坂本」は、大した惹きは無いかもです。(特に恋愛の話) 以下は作品紹介です。

「ぼくはゴールデン街が好きで、嫌いだ」

「日本冒険小説協会公認酒場」と銘打ったバー〈マーロウ〉のアルバイト坂本は、本好きが集まるこの店でカウンターに立つ日々を送っていた。北海道の田舎から出てきた坂本にとって、古本屋街を歩き、マーロウで文芸談義できる毎日は充実感をもたらした。一方で、酒に酔った店主・斉藤顕の横暴な言動と酔客の自分勝手な振る舞いには我慢ならない想いも抱えていた。そんなある日、ゴールデン街で放火未遂事件が起こる。親しくしている店の常連「ナベさん」は放火取り締まりのため見回りを始めるが、その矢先、何者かに殺されてしまう。坂本は犯人捜しに立ち上がるが――。若手作家の胎動著しき頃、ゴールデン街がもっともゴールデン街らしかった時代にひりひりする時間を過ごした著者の、最初で最後の自伝的青春小説。

最初にも書きましたが、好きな作家の事は色々知りたくなる訳でして、現在の馳の姿を頭の中に投影して物語を読み進めていきまして、最後まで飽きる事無く楽しめました。ファン目線としては、一連の「犯人捜し」の所は要らなかったですね。多分のこの意見は多いと思うのですが、僕的に一番の収穫は「北野香」ですね。(*´∇`*)

ファンなら必読です。続きで印象に残った場面を( ´∀`)つ


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僕の勝手な解釈なのですが、馳のデビュー作の「不夜城」が出来上がるには、当時のこんな想いも原動力となったんだろうなと思った場面です。

 最近のぼくは、顕さんが絶賛するハードボイルドや冒険小説にいまひとつ入り込めずにいた。
みな喋りすぎる。恰好をつけすぎる。それが鼻につく。
 男はこうでなきゃ――気に入った小説を読み終えた後の顕さんの口癖だ。
 男。誇り。友情。信義。騎士道精神。
 顕さんの好きな言葉だ。顕さんだけじゃない。レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説の愛読者ならみんな好きだろう。
 だが、そんな言葉が重要視されるのはお伽噺の中だけじゃないか――最近の僕はそう思うようになっていた。
 誇り高く、友情や信義を重んじ、中世の騎士よろしくか弱き女性を守って生きていく男。
 そんな男、見たことがない。
 少なくとも、ゴールデン街では絶滅種だ。ぼくの知る酔っ払いは本能やエゴを剥き出しにする。
 実際、顕さんにしてからが、そんな自分の好きな言葉やキャラクターとは正反対の言動をする。
 嘘をつき、友情を踏みにじり、信義には唾を吐きかけ、女性にだって暴言を吐く。プライドは病的に高いが、誇り高さとは別次元の話だ。
 現実に居もしない、居たとしてもごくわずかな存在の人間を主役に据えた物語など、それこそお伽噺にすぎないじゃないか。
 そう思えて仕方がない。
 もっとリアルな物語を、ぼくにとってリアルなものを読みたい。
 そんな気持ちが芽生えていた。
 『刑事ジョン・ブック 目撃者』は、少しロマンチックなきらいはあるけれど、そんなぼくの想いに応えてくれる映画だったのだ。


ここを読んだ時に、この時の想いが「不夜城」へと繋がったんだな。と勝手に思いました。(*´∇`*)


ゴールデン街の住人のオカマの「リリー」と坂本との会話です。悩める【若人】が僕に悩み相談をしてきたら、これを参考に【若人】に語ってやろうと思いました。

「酔っ払いの街なんて、どこも似たようなもんよ」
「かもしれない。けど、おれはゴールデン街で働いてて、ゴールデン街のことしか知らない。おれはきっと、ゴールデン街が大嫌いだ」
「でも、わたしのことは好きでしょう?〈まつだ〉のおっかさんのことも。他にもこの街じゃなきゃ出会えなくて、出会ってよかった人も大勢いるでしょうに」
「そりゃそうだけど・・・・・」
「いいことも悪いこともいっしゅくたなんだよ。いいことばかりの人生なんてつまんないじゃない」
ぼくは唸った。なんと応えるべきか、酔った頭では考えつかなかった。
「毎日うだるように暑いし、腹が立つことが続くし、だから、この街が嫌になる。でも、明日、なにか楽しいことが起こったら、嫌だったことも忘れちゃう。そうやって人生は続いてくんだよ――ほら、、お食べ。空きっ腹で馬鹿みたいに飲むからそんなに酔っ払っちゃうのよ。ちゃんとタンパク質摂らないと」