2019年05月12日

食べ物は「器」に盛られて、初めて「恵みの糧」に

石川県に陶芸家の山本長左先生をお訪ねしました。以前からその繊細な筆のタッチと細部の丁寧な技法に興味があり、無理をお願いして工房に向かいました。

そこには、
自然を調和して作品を統合する、まことに素晴らしい光景がありました。

土と水を調えて、風で乾燥させて、火で焼き上げる、さらには、木綿で圧力をかけて、また竹という一方向に向かう木の繊維の特長を利用、これら自然をたくみにコントロールして創作活動をされていました。

「使う器」という陶芸の真の目的を理念とされ、また、後継者の育成にも独自の視点で推進されていてとても感激しました。

私たちの鍼灸治療は、からだに浸入した風、熱、湿、燥、寒という、自然から過度に受けた外邪をコントロールして病気を治していきます。
また、陰陽五行の木、火、土、金、水もとにして春、夏、長夏、秋、冬の気候の変化に合わせて五臓六腑の調整をします。なぜかというと、
ひとのからだも自然の一部だからです。

今回、自然の中で育まれる山本長佐先生の作品作りを見て共感を得たのは、こんなエコロジカルな点でした。

わたしは、つねづね、自然のめぐみという、食べものをいただく際にいつも感謝の気持ちを持っています。
しかし今回このように、自然の力を駆使して創り出される器がある事を知りました。

食べ物だけはない自然の恵みの器、そこにも敬意をはらい、感謝することを大切な態度として学ぶことが出来たとっても嬉しい1日になりました。

用賀鍼灸治療センター 代表 川幡文彦
(c) 2009 Youga Hariq Treatment Center Inc.
Principal kawahata fumihiko

yogahariq at 21:03|PermalinkComments(0) 東洋医学 

2017年06月02日

先人のこころにまなぶ、健康に生きる知恵 その3

鍼灸医学のお話しをするには、切り離す事が出来ない「気」という存在があります。

鍼灸の効果は世界でも研究分析が行なわれていて、WHO(世界保健機関)やNIH(米国立国立衛生研究所)では、鍼灸治療の効果を認めています。

これらの研究過程で「つぼ」や「気」についても調査がありました。その結果、「つぼ」には確かに効果があるが「気」については、わからなかった。と結論付けています。

確かに、血液などと違い、気というものは、目に見えるものではありません。

しかし、気は、東洋医学の基盤を成している存在です。
目には見えませんが、すべての根源のエネルギーで、血液を推し進めたり、温めたりして、循環する働きに作用し、存在しています。

そういえば
見回せば、元気、病気、気持ち、などあちらこちらに言葉として現れていますね。

辞源辞典によると「气 」は水蒸気がたち上るさまを象形としていて、その、気の動きや状態を表しています。かすみや、もやの空間にあって推動する、目に見えないもので
自然界のちからをあらわしているのが語源から見て取れます。


気という字はもともと、氣と書き、气に米ですが、气には贈るという意味があり、米など食べ物を贈るという解釈のようです。

ひとつ興味深い話しがあります。
上記の贈りものとしての食べ物には まぐさ(馬の餌)が含まれていることです。
平安の律令制度の時代にまぐさ料という税制があったのですが、
なぜ、馬の餌の費用のために税金を出し合うのかが疑問でした。

しかし、それは、化学肥料のない時代、馬の糞は農業にはかかせない肥料のためだった事がわわかりました。

それゆえ、先人は丹精した、作物を税金として差し出したのです。

馬の餌は糞となり、作物の肥料となり、作物になり、食べ物になります。

水蒸気も天に昇り、恵みの雨となりまた地上に戻ります。

気は多方面に贈り、贈られ、あらゆるものを潤し、やがてはまた戻ってくる。

気はあらゆるものに形を変える事が出来る
贈りもの、プレゼントの対象は無限なんだと感じます。


気は、確かに、存在して大切な、さまざまないとなみのために、循環していることを、この気という文字が伝えてくれているのだと思います。

先人の知恵に想いをはせると、生命循環の中で、自分の立ち位置が見えてくる、そんな気がします。


用賀鍼灸治療センター 代表 川幡文彦 (c)2009 Youga Hariq Treatment Center Inc.
Principal kawahata fumihiko


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2017年05月01日

先人のこころにまなぶ、健康に生きる知恵 その2

古代の人たちは、病気と治療の歴史の中で、人間をひとつの国と考えていました。

長い年月をかけて、その臓器の仕事は分析され整理されて、それぞれに役人の名前がつけられています。

心臓は君主の官と呼ばれ
神にも繋がる一番重要な位置にいるとされています。
止まったら国は滅んでしまう、とても大切な臓器なのです。

肺は相傳(そうでん)の官と呼ばれ
君主である心臓のそばにいて国政を補佐しながら、その意思を伝えています。

肝臓は将軍の官と呼ばれ
からだや身の回りにおこるすべての情報を収集して指示を出します。

胆嚢は中正の官と呼ばれ
肝臓で集めた情報を吟味して、決断を下します。裁判官ともいわれる、公正中立な臓器と考えられています。

脾胃は倉廩(そうりん)の官
胃は食べ物を消化します。食べた物は、水や穀物から得られたエッセンスとなり
水穀の精微 と呼ばれます。
脾胃はこの、水穀の精微を後天的な元気の源として、抽出し、倉庫のように貯めておく大蔵大臣の任についているわけです。

小腸は受盛の官と呼ばれ
君主に捧げる食べ物を倉廩の官から受け取りご馳走を盛り付ける、高貴な鼎の器をイメージ出来ます。

腎臓は作強の官と呼ばれ
両親から受け継ぐ、先天的な元気を宿していて、左腎、右腎はそれぞれ、みなぎる生命の根本をつかさどり、蓄える役目を担っています。

膀胱は州都の官と呼ばれ
州とは集まるところ、身体の中の水分が集合する、水を整理する大臣と言われています。

大腸は伝道の官と呼ばれ
食べ物を清濁分けて輸送する運輸大臣になります。

これ以外にもいくつかの任務を遂行する大臣がいますが、これらは相互に協調して連絡しながら、いのちを守っています。

ここで、ひとつ疑問があります。
君主はいちばんの王様ですが、何故、官という役人の名前がついているのでしょうか。

話しは変わりますが、
人間には60兆個の細胞があるといわれていたのですが、最近の信頼出来るデータ分析では人間の細胞はおよそ、37兆個あるそうです。

つまり、私たち一人の人間には37兆もの国民がいてその国民がからだを成り立たせてくれているわけです。

そして毎日、各臓器が連携しながら、国民に栄養を送り届けているのです。

37兆個の中には赤血球も含まれ、このいのちの送りとどけに一役かっています。

臓器もまた、細胞から出来ています。
なので、臓器は国民である赤血球という細胞が運ぶ栄養をもらい活動出来る訳で、みな、それぞれが働きもので、素晴らしく理想的な生命循環といえます。

このように、大切ないのちの営みは、昼夜問はず、毎日続いているのです。

ここで、先ほどの疑問です。
何故君主が大臣なのが、それは、
この君主より上位の存在があるという事です。

この大きなしくみをどの様に活かして健康に繁栄させるか、病気で衰退させるか
権利も義務ももちろん、私たち一国のオーナーに責任があるという事が、おわかりいただけることと思います。

つまり、上位に存在するのは私たち一人一人の人間だということです。
元気に健康に過ごし、一国を安寧におさめるにはどうしたら良いか、
先人たちの問いは、現在は私たちへの問いかけとなり、今も生き続けているのだと思います。

用賀鍼灸治療センター 代表 川幡文彦
(c)2009 Youga Hariq Treatment Center Inc.
Principal kawahata fumihiko



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2017年04月08日

先人のこころにまなぶ、健康に生きる知恵 その1

古代の人々にとって、生きるとは、なんだったのだろうか。病気の治療を考える時、いつもヒントをもらいます。

人間はまず、食べる事から始まります。
私たち日本人の主食は「お米」そして主菜には「野菜」さらに副菜に「果実」と稲作や耕地が作り出すこのたくさんの作物は、日本の肥沃な大地と豊富な水源、そして限りなく降り注ぐ太陽の光や風などの恵まれた自然の風土がもたらしてくれます

日本の事を食国「おすくに」
と古代から受け継がれて、食べる事に絶対不自由しない国と先人は呼んでいました。

古代の人たちは食べる事は生きる事に直結して、それを生み出してくれる自然のしくみがもたらしてくれる素晴らしい環境と、たくさんの収穫に対して、感謝を忘れる事はありませんでした。

私たちの治療技術は、消化機能を改善して、食べものを身体に効率良く吸収出来る環境を作る事ができます。

消化器を調整する事により、吸収力は高まり、食べものを一つも無駄にすることなく、栄養にすることが出来るわけです。
この結果、新鮮な栄養素が、いっぱいの血液がたくさん産まれます。
そうすることで、免疫力も上がり、思考も決断力も向上します。
結果的に、病気も改善されることになります。

本当の意味で食べものに感謝することは、残さず食べるということだけではなく、食べたものをすべて栄養にすること、そんな先人たちからの声が聞こえてくるような気がします。

用賀鍼灸治療センター 代表 川幡文彦
(c) 2009 Youga Hariq Treatment Center Inc.
Principal kawahata fumihiko


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2017年03月12日

女性の身体に優しく治癒力を高める その2

前回、女性特有の症状は消化器と深い関係があるという事を申しあげました。
その様子を舌で探る「舌診」という方法があります。
今回はその、舌に現れる身体の変化の一部をご紹介したいと思います。

消化管は口から肛門まで一本の管になっています。
なので、胃や腸で起きた、変化の様子はのどや舌に現れてくるわけです。
「今年の風邪は胃に来る、腸に来る」と言われる事がありますね。
しかし、これは少し違います。
消化可能な力以上の負担を胃腸にさせると胃腸も荒れてその腫れがのどに上がってくる訳です。
つまり、のどが腫れて痛いのは胃や腸があれているという事なのです。
風邪をひいたら適度にお粥など、栄養、水分をとり、ゆっくり休むことががお約束です。
考えてみれば、風邪ほど心身を休ませるありがたい病気はないかもしれませんね。

さて、本題に戻ります。舌診のお話しです。
例えば、消化器系に負担がかかり、消化機能が本来のしごとが出来なくなり、からだの陰液と呼ばれる血液が減って来ます。結果、微熱が生じその熱で乾燥して「舌にひび割れが」生じます。また、腸をはじめからだの水分が渋滞したり宿便がたまると「舌のこけが厚いこけ」になります。
つまり、舌は体内の変化を写し出して毎日変化しているわけです。
このように消化管の異変は上部に変化を現わすのですが、具体的には舌での判断の以下がほんの一例になります。

裂紋れつもん

舌が微熱で乾燥して、ひび割れた状態なる
この微熱はウイルスや細菌が原因で発生する熱と違い、体内の陰分(血液や細胞液)と陽分(身体を温めるエネルギー)のバランスの乱れのため、陰分が減り陽分が勝るために発生する熱、になります。陰分が虚する事から陰虚の熱と言います。
ストレスのある人、消化吸収力が低下した人方に見られます。
このひび割れの舌の人は、微熱のため口が渇きますから飲み物を欲しがり、体液を薄めていまい、結果、消化器機能に負荷をかけます。
水分を一気に飲まないように味わいながら喉を潤すようにしてください。

歯痕しこん

舌が太って歯の痕跡が残る事で
簡単に言うと舌にしまりがなく緩んでぼてっとしてしまいます脾胃が負担過多で消化吸収の力が思うように発揮出来ない状態です。
舌の中の水分の増加や脾胃の不利ですから、食べると眠くなります。
帯下異常もこの脾胃の低下が影響するので脾胃に負担のかかる甘いものや脂っこいものは少しの間、控えるようにします。

白い薄い苔

元気が出ない、身体がだるいと言った全身にエネルギーと気が回らない、サインですから、身体を温めて休みが必要です。
白い厚い苔
湿気が消化管を支配していますから、宿便がたまり慢性腰痛の方は無理をしない注意が必要です。
特に湿気の時期は要注意です。

黄色い厚い苔

白い厚い苔と同様ですが、熱の存在があるので口臭や便が臭います。
膀胱やにも同じく熱が存在するので排尿痛などがある場合もあり、消化に負担のかかるものを控えてください。

生活、食事を変えても舌の質は急激には変わりませんが、少しずつ体調に変化があらわれて来ます。

舌診は診察の一つの目安です。ご自分の舌を是非一度ご覧になってください。
たくさんの情報を感じ取っていただけると思います。

携帯サイトkikimimi女性外来「カラダにやさしく治癒力を高める」に執筆したコラムに加筆したものです。

用賀鍼灸治療センター 代表 川幡文彦
(c) 2009 Youga Hariq Treatment Center Inc.
Principal kawahata fumihiko





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