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2012年04月

競技としてのWLと、S&C指導者が選手のトレーニングに取り入れた時のWL

先日NHKで三宅選手の特集がありました。
その中で、
重量挙げ(WL)ってのは
「持ち上げて、下に入る競技」
だということをおっしゃられていました。
「簡単に言えばその通りなのだが、それを行うのが難しい。」
そんなことも言っていましたが…

「トリプルエクステンション」
というWLの技術があります。
これは、かつてWLを科学的に分析した人が、レベルの高い選手の試技を見まくって、効率よく重りを上げるためには必要だと気付いた「かかと・膝・臀部」3か所の伸展、つまり「トリプル・エクステンション」ということです。

では、実際に現在のオリンピックなどに出るような一流選手の中で、完全にその3か所を伸ばす試技が見えるのかというと、中国人リフターのスナッチの試技ぐらいにしか見れません。少なからず、私の見解はそうです。
他の選手はというと、かかとと臀部の伸展は見えますが、ひざは伸びきることなく、先にも述べたように、すぐ「下に入る」ための準備をしているのです。
こんな感じで。

ちなみに、彼は僕のブログに何度か出てきている、全米軽量級2位の選手。アジア人なので、我々日本人の体の作りに似ていますが、最後の伸展の時でも、彼の膝は完全には伸びません。なぜなら「下に入る」準備をしなければならないからです。(追記:彼のスナッチにはトリプル・エクステンションは見えます。失礼いたしました。)
まぁ、早い動きなんでなかなか見えづらいですけど、その中でも臀部の伸展はしっかり見えます。
彼なんかは少なからず臀部の伸展を起こすリフターで、だからこそ、あれだけの体であれだけ重いものを動かすことができてるのですが、中には「完全に伸ばしてたら、下に入るための時間のロスになる!」っていうWL指導者もいます。

では、ここからが問題なのですが、S&Cプロフェッショナルは、
「WL指導者がそう言ってるんだから、伸展なんか起こす必要がないのかな…」
なんて思っちゃだめです。

本来ならば、すごく短い時間の中でも、「全て伸ばす」動作は必要なんです。
実際にトップレベルの選手は、少なからずかかとと臀部の「ダブル・エクステンション」は起こしてます。

そして我々S&C指導者は、そこにしっかりもう一つ足して
「トリプル・エクステンション」
にしてあげると、効率よく選手の体を鍛えられます。
つまりこういうこと



なぜなら、ジャンプ時やスプリント時にはその
「トリプル・エクステンション」が必要になるから。
スナッチやクリーンの時に伸びてない人は、スポーツパフォーマンス時も、絶対に、伸びてませんよ。
つまり、効率が悪いんです。
逆に言えば、WLの時に伸びていれば、スポーツパフォーマンス時も伸ばすところ伸ばします。
こんな感じで。




みんな、いちいち伸ばしてるでしょ。
これが効率のよさです。

じゃあ、WLの試技中にそれらが伸びてない選手に
「伸ばせ!」
って言えばいいのかというと、それはまた違います。
文句を言うだけならただの「クレーマー」。

S&Cコーチならば、伸びるための筋力をつけてあげてください。
そのために、基礎的なウェイト・トレーニングと諸々のウェイト・テクニックがあるのです。

爆発力を育てるためのWLならば、効率よくその運動を処方してあげること。

伸びてほしい部分を、当然のように伸ばす体を作ってあげて初めて、
「プロ」
です。

英語

どうしてもS&Cコーチに英語は必要でしょうか?

とうとう聞かれてしまいました…

どうしても
"Strength and Conditioning Coach"
に英語は必要でしょうか?
"Periodization"
"General Adaptation Syndrome (GAS)"
"Adenosine Triphosphate (ATP)"
"Ground Reaction Force (GRF)"
"Squat"
"Clean&Jerk"
”BENCH!!!"

で、質問は?…


日本に入ってくる情報は英語です。
というのも、おおよ全ての専門分野の科学者(名前だけじゃなくね)は英語をしゃべる人だからです。
だから、もしそれらが日本語になっていたとしても、それは英語がわかる人が翻訳してくれた結果ということです。
つまり間接的な情報の提供を受けているだけです。

わからないなら、無理をしてわかるようにしなければなりません。
会話は別にいいとしましょう。
でも、
「動かない英語」の対応
つまり
「読解」
くらいはできるようにならないと。

むしろ、これは労力と時間をかければどうにでもなります。
そして、その「労力」と「時間」に関して妥協しない事こそが、我々コーチがアスリートに要求することでしょ?

過去にも、これを意地でも避けて通ろうとして、僕のアシスタントから外された奴もいます。

Google等の翻訳プログラムは使いモノになりません。
電子辞書なら使えます。

僕の手元で、
「俺は加賀のアシスタントS&Cコーチだ!」
って、死に物狂いでしがみついてきたやつらは、みんなこの電子辞書を駆使して、僕のアシスタントをしてました。

あいつらだってやったんです。
あなたにできないわけがない。

責めるなら、英語圏に生まれなかった自分を責めてください。
時間と労力だけは惜しまないでください。

そして、
今までの自分の怠惰を責めて、今後は無理してください。

p.s.
ただ、英文の情報をすべて鵜呑みにするのはやめてください…

下準備

日本球界を代表する投手が、シーズン開始数週間で登録リストから外れることになったそうです。
腰痛が原因だそうです。

指導者とサポート陣はオフシーズン何やってたの?!

昨シーズンのNFLで、インディアナポリス・コルツのエースQBが、怪我が原因でシーズン当初から出場することができず、結局シーズンを通して万全の状態を作ることができず、シーズンを終えたということがありました。
ストライキでシーズン開始が遅れたということもあり、いつもより準備期間が長い中で、リーグ最高峰のQBが怪我が原因で試合に出れないというニュースが出回ると、コルツのサポート陣はマスコミからずいぶん叩かれました。
ただ、彼は30代後半に入る年齢で、結局シーズンを通しても回復が見込めなかったことを見ると、それだけ深刻な怪我だったと思われます。

でも今回のその投手は、きっと数週間後には復帰してくるレベルの怪我だと思います。
だとすると、なおさら
オフに何やってたの?!
と聞きたくなります。

やはり、そういうレベルの「プロ」が、日本スポーツ文化最高峰選手のケアをしているのでしょうか?
もしそうなら、悲しい事実です。

素人と玄人

この運動ってどこ鍛えてるんですか?
この運動って何を見ているんですか?
この運動って野球選手のためのものなんですか?
この運動って…

この手の質問には「まっすぐに」答えないようにしています。

というのも、
こういう質問は、おおよそが運動指導者から出てきます。
つまり、その答えを聞いて、自分で理解もしていないのに、聞いたそばから自分の運動選手にやらせてしまう恐れがあるのです。
それでは困ります。

だから、いつもこう答えます。
「どう思います?」

ピアニストって、他人のピアノの音色を聴くだけで、その人がどの曲をどんな感じで弾いているかわかると思うんです。だから、それと同じ曲を同じ感じで弾けと言われたらできると思うんです。
でも素人は違います。
音を聞いて、手の動きを見て(なんだったらビデオかなんかを撮って)、完コピをしようとします。
だから、応用はきかないし、別の曲を弾くことも当然できません。

我々運動指導者も同じです。

知ってさえいれば、上記した質問なんか出ないんです。

わかる人の反応はこうです。

あぁ、この人これやってんな…
今、シーズンのこんな時期なのかな…
なるほど、こういう鍛え方いいかも…

だから、質問も
プラットフォームが無いから、プライオで代用ですか?
シーズン近いんですか?
僕いつもこれ両足でしかやらしてなかったんですけど、こういうやり方もあるんですね!でも全員にはやらせてないみたいですね?

だから、こういう質問には丁寧に答えます。
と言っても、こういう人たちにはこれだけで済みますけど。

「そうですね」

みなさんが例えば僕の施設に来て、僕のプログラムを見たときに、どのような反応になるでしょう?
別に、反応は上のほうの反応でもいいんです。
ただ、
その場合はまず自分で考えて、
「僕はこう思うんですけど、実際のところどうなんですか?」
という形で質問してくれると、こちらも答えやすくなります。
というよりもむしろ、
「答えてあげようかな…」
って思うんです。

どんなことでもそうです。
少なからず自分もその分野の人材であるという自負があるならば、まずは自分で全ての答えを出してみてください。
それから、エキスパートの回答を求めるように心がけてください。
それが「プロ」への第一歩になります。

S&Cコーチ

先日のブログでも述べましたが、
今アシスタントがいません。

昨年12月ごろから、知り合いや人伝えで人材探索をしてきました。
ただ、人伝えでは国内の人材の発掘は限度があることを知りました。

公募を開始しようかと思っています、
新学期が始まったこの時期に…

CSCSと志を持っていれば、もうおおよそ適任です。

CSCSも持っていないし、仕事や学校で今仙台大学で働くのは難しいという方、とにかく興味があるという意志だけでもお伝えください。どうにかなるかもしれません。

yu-kaga@sendai-u.ac.jp
まで。


今回はここからもう一点、

日本に
「S&Cプロフェッショナルだ!」
として仕事をしている人材はどれくらいいるのでしょうか?
つまり、S&Cトレーナーとしてだけで飯を食べている人はどれだけいるのでしょう?

今回僕が人材を探すのでお手伝いいただいているのはNSCAジャパンの事務局長です。
その人が、
仙台大学のアシスタント候補は今のところ見当たらない
と言うのだから、日本にはS&Cプロフェッショナルの絶対数が非常に少ないということでしょう。
NSCAジャパンの会員は数万人いるみたいなのですが、その中でCSCSは数千人。その中で、実際にCSCSを仕事にフルに活用している人材が非常に少ないということになります。

それこそCSCSとなれば、教育機関にかける金額を含めれば数百万円かけて資格を取ることになります。
そのかかった金額と労力を取り返す機会がないままになるのはもったいないでしょう。
もしかしたら資格を取ったとしても、実際にS&Cプロフェッショナルとして人の指導に当たったこともない人が多いのではないのでしょうか。
まぁ、資格を持っているから人をトレーニングできるほどの知識を保持しているのかというと、そうでもないのですが…それを言うと論点も変わるから…
とにかく、非常に残念な現状です。

逆に言えば、これだけスポーツ競技人口が多い日本ですから、本来は我々がやるべき、
運動選手をより良い運動選手にする仕事
に就いてしまっている、「部外者」もいるということです。
結局、誰か「専門家」的な人材を雇う余裕のあるチームも、雇うのはATになって、彼らの多くは実はトレーニングという分野では素人なのですが、知っているという社会的な印象がある以上、「できません」とは言えず、その結果、彼らが行う「トレーニング」が、プロの行うトレーニングとして世間でもてはやされ、結果、よくわかんないトレーニング方法が巷を騒がす、という結果につながってしまうのです。
効率的かつ効果的なトレーニング方法が普及していない現状を持っていえば、日本が総スポーツ競技人口の割に、オリンピックで活躍できないのも当然です。

で、実際にS&C業界にいる人材が現状を打開するためには、日々我々が行っているようなトレーニングが、当然のように下部組織から行われるような状況を作ればいいのですが、そのためにはそこまでのレベルまでに行き届くほどの社会の中での「人材の需要」を達成しなければならないわけで、そのためには、そこまでに質の高い人材が行き届くようになるほどに「人材の供給」がなされていなければならないわけです。
実際に、これだけ国内でATの需要が増大した影には、まず最初に、それにあたる人材の数(供給)の増大というのがありました。
NATAから逆輸入された人材と、日本国内資格から生まれた人材が、ATという仕事の必要性を説き始めます。その中で、諸所で彼らの活躍が認められ、彼らのスポーツ現場での存在価値が理解されました。結果、社会からの信頼が、競技レベルの高いリーグ・組織の「ATの雇用」という結果になっているのです。日本国内の現状を見れば、おおよそすべてのアマチュア~プロのレベルに至る競技団体にはATの存在があります。
実際に米国内でも、ATの雇用機会のほうがS&Cの雇用機会よりも格段に大きいです。
NCAAに所属する学校すべてにATCを置くルールがあります。州によっては高校からATの雇用規定まであります。つまり、「保健の先生」的にATCが学内に必ずいる環境です。
しかしながら、S&Cコーチはと言うと、下手したらNCAA1部リーグに所属する大学にすらいないこともあります。2部リーグ以下にはほとんどいないといっていいでしょう。
しょうがないです。S&Cが出す結果はすべて間接的であるうえに、その結果を出すために必要な施設は場所も予算も大きくとりますから。
これがS&C業界の、最大の弱点です。
そして日本国内を考えた場合、この国土の小さな国の中で、S&C施設を全てのスポーツ競技団体に保持させることは難しく、その中で、スポーツに米国ほど予算をかけない文化の中、S&C施設構築にあてる予算の確保や、コーチに定期的に支払う給与の算出というのも、スポーツ団体にとっては困難極まりないことでしょう。

そうなれば、ATだけ雇っている日本スポーツ界の現状にもうなずけます…

S&Cプロフェッショナルとしての打開策がないわけではありません。
とにかく必要なことは、存在価値を上げるために、それだけの人材育成を行うということ。
多くの人材を育て上げ「人材供給」を上げることで、「人材需要枠」を無理やりこじ開け、その中から、価値ある結果を出し、社会的存在価値を上げるということ。
つまり、
これだけ効果があるのだから、雇わなきゃ!
と雇用者に思わせなければならないのです。

ただ、それが難しい。
なぜなら、我々の仕事の結果は「間接的」にしか出ないから。

はぁ…

そんな中で、私のように大学レベルでS&Cコーチとしての仕事ができるというのは、非常にありがたいことです。
そんな仙台大学が私のアシスタントを探しています。
S&Cコーチとしての10年後の自分が明確に見えない方々、ここからは見えますよ。
(結局はここに行き着いた…)

興味があれば、上記したメールアドレスまでどうぞ。
プロフィール

加賀 洋平

カリフォルニア州立大学ロングビーチ校キネシオロジー学科大学院プログラム終了
ロングビーチにおいてストレングス&コンディショニング(S&C)の世界的権威であるDr. John Garhammerを師事し、S&Cコーチとして経験と知識を積む。
日米両国で様々なレベルのアスリート指導経験があり、現在は仙台大学において、日本においては稀有な大学レベルでのS&Cプログラムを主催・運営している。

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