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2014年12月

知識ある方からの贈り物

これを扱いきれる人材が国内に溢れますように

運動選手に教えるウェイトリフティングのキャッチに関して

2014年NSCAジャパンカンファレンスのゲストスピーカーは、米国ウェイトリフティング協会の殿堂入りコーチであるボブ・タカノ氏でした。縁があって前々から彼と仲良くさせていただいていたという経緯もあって、カンファレンスに先立って行われた彼の特別講習会の通訳を僭越ながらも務めさせていただきました。その中で、フルクリーンにしてもフルスナッチにしても、それらのパワーキャッチに比べるとおおよそ20%程度重い重りを扱えるという事を述べていました。
今回のブログはそれに関してです。

ウェイトリフティングのキャッチで、フルのポジションまで行くために必要なのは、臀部とハムストリングの筋力と柔軟性です。それらの部位に必要なだけの筋力と柔軟性が無ければ、ウェイトリフティングのような早い動きの中で、スパッっとバーの下にしゃがみ込んで入ることはできません。また、バーの下に入ってしゃがみこめても、キャッチを成功させるには、バーの重りに負けずに胸を立てた状態を作り出せるだけの腰や肩周りの筋力も必要です。

ただですね、実はそれだけではフルキャッチを作り出すのには足りません。

足が、特に膝から臀部までの部分が、ある一定レベル短くなければ、そのポジションに入ることは難しいのです。

ウェイトリフティングの動きは非常に速いもので、しかも動かすのは相当な重量です。ですから、人間の体はできるだけ安定した体勢で、その重りの重量と自分が作り出した勢いと地球の引力を受け止めようとします。しかもそれらを受け止める体勢を作るために与えられた時間は、ほんの零コンマ何秒かです。ですから、先述した負荷を受け止めるに十分な体勢は、それだけの短い時間で作り出せる最も安定したポジションである必要があります。そうなるとですね、人間の体は、無意識の中で、自分が最も取りやすい最も安定したポジションを取ろうとします。そんな時、もしその人の膝からケツまでの距離が長かったとしたら、それらを折り曲げるためにかかる時間も距離も長めになりますよね。ですからそういう人たちは、わざわざ膝を曲げて自分の体を下に落とすことよりも、足を開くことで下方向にできるだけ体を落としてバーの下に入ろうとするのです。つまり、パワーキャッチになるのです。

そして私も、フルクリーンやフルスナッチは、バーの下に入ろうとして意識的にしゃがんだのではありません。自分の体がいつの間にやら勝手にそう動いた結果が、フルクリーンだったりフルスナッチだったんです。つまり、自分の日常的にまともなウェイトトレーニングを取り入れ始め、着実に腰もケツもハムも強くなって柔軟性がついた結果が、フルクリーンとフルスナッチだったんです。
しかしながら、僕よりも一生懸命ウェイトトレーニングに取り組んでいるのに、どうしてもフルのキャッチポジションに入ることができないで悔しがってまでいる選手たちも見ます。彼らこそが、足が長い選手たちです。

確かに、彼らに徹底したキャッチポジションの指導をすれば、いつの日にかフルのキャッチができるようになるでしょう。しかしながら、大学生である彼らは僕の手元に長くたって3年半しかいないわけですし、彼らの大学生運動選手としての時間の中で、ウェイトトレーニングのためにとれる時間も限られています。であるならば、ボトムでキャッチする練習のために負荷を軽くしてクリーンを行うよりは、パワーポジションで扱えるマックスまたはサブマックスの重りを与えてトレーニングをさせたほうが効率はいいのです。

ですからですね、たとえフルキャッチの方がパワーキャッチよりも20%程度重い重量を扱えるという事実があったとしても、彼らがサブマックスに近い重りを扱う時はどうしてもパワーキャッチになってしまうのであるならば、存分にパワーキャッチをさせてあげればいいのです。そのほうが、彼らが無理やり行うフルキャッチで扱える重りよりも確実に重い重りを扱うことになります。

以上、どんなに偉くて知識のある人が言っていることであろうと、わざわざ全部取り入れる必要はないんだよ・・・という例の一つとして、今回のブログ記事とします。

p.s.
クリーンで扱える重量はスナッチで扱える重量の20%増という事も講義内でボブは言っていました。講義内では触れませんでしたが、これに関しても”もしあなたのスナッチのテクニックがまともであれば”という大前提があります。逆に言えば、もしあなたのスナッチがクリーンの20%に到底及ばないのであるならば、テクニックに問題があり、その結果、または根本的に、上半身も弱い。だからスナッチの重量が伸びない、という事です。

運動の名前

僕の運動にOHNGSQと言うのがあって、それは肩幅で負荷を持ち、肘をピンと伸ばしたまま頭上に挙げた状態で行うスクワットのことを指します。僕が好んで取り入れている運動であって、一般の人はOHNGSQと聞いてもなんだか理解できるわけがありません。

でですね、これに関係することなんですけど、運動の名前なんかどうだっていいんです。
重要なのはそれがどのような代物であるかを指導者が確実に理解しているか否かという事です。

例えばですね、チンアップがチンニングだっていいし、RDLがSLDLだっていいんです。もっと言えば、スクワットの名前がスタンディング・レッグプレスだったとしてもいいし、デッドリフトがピッキングアップだっていいんです。そして、ベンチプレスがマスターベーションであったとしてもいいという事です。
要は、それがどのような動きであって、指導者がその運動を取り入れる確固たる理由とまっとうなテクニック理論があればそれでいいんです。
僕にとっての運動の名前なんて言うのは、僕と選手たち間で使う暗号みたいなもんでしかなく、偶然にもその中に一般的に知られているスクワットやデッドリフトは入っていますが、それらスクワットやデッドリフトが一般的に知られる代物かと言うとそういうわけでもなく、僕独自の理解と指導方法で僕の運動選手に伝えている全くの独自の物であっても、それはそれでいいんです。
だって、それらを理解する必要があるのは僕と僕の運動選手だけなんだから…

再度言います。
名前なんかどうだっていいんです。
重要なのは、指導者が運動選手のウェイトトレーニングのプログラムにそれらの動きを取り入れる理由があって、それらの動きに高い効果があって健康的な指導理論があることです。

以上。
プロフィール

加賀 洋平

カリフォルニア州立大学ロングビーチ校キネシオロジー学科大学院プログラム終了
ロングビーチにおいてストレングス&コンディショニング(S&C)の世界的権威であるDr. John Garhammerを師事し、S&Cコーチとして経験と知識を積む。
日米両国で様々なレベルのアスリート指導経験があり、現在は仙台大学において、日本においては稀有な大学レベルでのS&Cプログラムを主催・運営している。

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