2023年01月22日 鍼灸院経営 

リピート対策は必要ない


最近、こんなツイートをしました。


集客コストの罠


経営関係のセミナーに行けば、必ず話題になるリピート対策。いわゆる「治療家」を対象にしたコンサルタントも、集客と合わせてリピート対策をサービスの柱にしています。考え方としては「コストをかけて集客した患者さんがリピートしてくれないと採算性が低くなるので、しっかりリピート対策もしましょう」というものです。ザル状態を嫌うわけですね。

この考え方には、お金をかけたのだから取り返さなければいけないという魂胆があります。いわゆる治療院というものはビジネスですから、コストをかけたら回収しなれば事業は継続できません。経費ゼロで経営はできませんから、ザル状態にしない工夫は大切です。私も例外ではなく、経営する鍼灸院がザルであれば廃業です。


技術屋思考の安定経営


しかし、うちはリピート対策なるものはゼロです。それにも関わらず、群馬の鍼灸院は20年、東京の鍼灸院は9年、続いています。私の考え方が正しいと言うつもりはありませんが、一つの考え方として参考になると思うので書くことにしました。

私は経営のプロではなく技術のプロです。そんな技術屋思考だからこそ、集客やリピートなどのマーケティング用語を気にすることなく安定的に経営できる考え方にたどり着けたのだと思います。

最初から、今のような考え方にたどり着いたわけではありませ。きっかけは、同時期に鍼灸師になり、同時期に鍼灸院を開業した、福岡の女性鍼灸師との出会いでした。彼女と出会うまでは「集客+リピート」という一般的な考え方でした。というより、そういう考え方を一生懸命学んで経営を安定させようと躍起になっていたのです。当時のことは鮮明に覚えいていますが、あれからだいぶ月日が経っているので昔話になってしまいました。

とはいえ、今でも通じる普遍的な考え方であると思うので、全く色あせていません。むしろ、月日が立てば経つほど、この考え方が自分に合っていると確信が持てるようになっています。


鍼灸院は数ある選択肢の一つ


開業して間もない鍼灸院に来た彼女は「患者さんは健康になるために鍼灸院にこだわる必要はない」といった話をしました。細かな言い回しは忘れましたが、鍼灸院は手段の一つでしかないと俯瞰的に見ていることに衝撃を受けました。

あたりまえの話なのですが、鍼灸院を経営していれば「通うことで健康になる」という定義にはまってしまうのです。知らず知らずのうちに鍼灸師目線、経営者目線になっているのです。患者さんの気持ちがスッキリするなら映画でもかまわないわけですし、旅行に行ったりすることも気分転換になります。温泉につかることで疲れが飛んでしまうかもしれません。

鍼灸なんて無数にある選択の一つで最適解とは限りません。鍼灸師になったばかりで鍼灸院を経営したばかりの彼女が、最初からこの領域にいたことに私は大きな衝撃を受けました。自分目線、自分都合で考えていたことが恥ずかしくなりました。


本当は予約したい


それを機にリピートしてもらおうと考えるのはやめました。最初はうまくいかず患者さんが減りました。しかし、ある患者さんの一言が転機となり患者さんが増えることになったのです。それは「次いつ来ればいいのかわからなかったので予約しづらかったです」というものでした。

「また来たければ予約するでしょう」と初診が終わったら放っていました。やってみてわかったのは、それはただの不親切というもの。どれくらいのペースでどれくらいの期間通院するのがベストなのか、患者さんにしてみたら必要な情報です。それを放棄してしまってはいけないのです。

それに気がついてから「どれくらいのペースでどれくらいの期間」という目安は伝えるようにしました。中には「そんなに通えないので月1回でもいいですか?」という方もいらっしゃいます。そういう方は、きっぱりお断りするようにしました。


できないことはできない


常識的に考えて、怪我や病気や月1回の施術で改善するわけがありません。中には神がかった腕を持つ先生がいるかもしれません。だとしても、そんな腕に短期間でなるのは無理ですし、将来的にも難しいです。今もそんな腕はありません。「どうしても月1回しか…」という方には、そういうことが可能なところを探してもらうようにしています。

どんな要望にも答えようとするのではなく、自分の技量に合わせて正直に提案をすることに徹したのです。その結果、私が達したのは週2回の施術です。改善状況を見て週1回…と間隔を伸ばしていき終えます。

私の腕では週2回がもっとも短期間で回復します。他のスタッフでもそうです。つまり、少ない費用で短期間でよくなるので患者さんの便益が高いのです。私はそう思うので正直にそれを伝えます。


LTVは高いほどよいのは本当か?


一般的に、治療院経営の専門家はLTV(Life Time Value)を上げることを推奨します。日本語では「顧客生涯価値」と言われています。この数字は「単価×通院回数」で決まります。ですから、高単価で通院回数を増やすような経営戦略が有利になります。

私の考えはこれと全く逆です。LTVは低いほどよいのです。福岡の彼女もそうでした。鍼灸院でお金を使い切ったら、趣味や嗜好品にお金をかけられなくなってしまうという考えでした。患者さんの人生にとって、鍼灸院に通い続ける人生がベストであるはずがありません。

「LTVが高い=よい経営」という常識があって鍼灸院にも浸透しています。私は疑うべきだと思います。この考え方は「一人の患者さんからたくさんいただく」という思想であることを忘れてはいけません。「多くの患者さんから少なめにいただく」というやり方だってあるのです。

私の経験から強調したいのは、LTVが下がるほど紹介が増えるという事実です。

「1ヶ月通ったら良くなったよ」という声と「1年くらい通ってるよ」という話があったとしたら、どっちに興味が湧くでしょうか。前者であることは明らかです。支払総額が低い方ほど敷居が低くなります。LTVが下がると紹介が増えるのです。

紹介で来院した方は「短期間に集中して通った」という話を来ているわけですから、ご自身も同じように考えます。週2回と伝えても驚くことはありません。


技量を上げる努力が実を結ぶ


ここまでの考え方をまとめます。

.灰好箸里かる集客がリピート対策を生む
⊆分の技量に合わせて必要なことを伝える
LTVが下がると紹介率が上がる

お気づきになったでしょうか。が実現できると集客コストが下がるので,両況にはならないのです。リピートを仕掛ける必要は発生せず、通うつもりの患者ばかりが集まります。それができない人には、他を探していただくのです。

中には「仕事が忙しくて…」と通院を拒絶する人もいます。それはそれで仕方ありません。本当に鍼灸が必要と思えば、仕事の調整をして時間をつくります。「仕事が忙しくて…」と言われたら、生活スタイルを崩してまで通うところではないと思われているだけなのです。そう思われない技量を目指すだけです。

施術に価値を感じてもらえなければ、ここまでの話は机上の空論になります。だから、技術屋として技量を上げることに力を注ぐしかありません。集客やリポート対策の講習を受けることもよいのですが、技量によって解決してしまう事実があることも知ってほしいと思います。

仮に技量があっても、その技量が患者さんに伝わっていなければないのと同じです。ですから、技量が伝わるように施術の中で工夫することも大切です。

このあたりの話は別のテーマになるので今回は割愛しますが、

.咼侫ーアフターを伝える
即効性を意識する

ことが大切であるように思います。いくら上手くても、患者さんが確認しようのないものは残念ながら評価されません。若手の鍼灸師は優先順序を間違えないようにしてほしいと思います。


患者さんがリピートしない理由


最後に、もう一つ大切な話を書きます。「患者さんはそもそも通うつもり」という前提で経営すると、経営安定に大切なのは「やっぱり通うのをやめよう」と心変わりをさせない努力です。

通うつもりの患者さんが通院をやめるのは、それなりの理由はあるはずです。タオルの柔軟剤の匂いが気になって通うのをやめた方がいらっしゃいます。それ以来、柔軟剤を使用しない洗濯に変えました。鍼灸師の言葉が通わない理由になることもあります。

私は、通わない理由を探して改善することに集中しています。通ってもらうために、色々なことをプラスしていくのではなく、通いたくない理由をマイナスしていくのです。不安なときは足したくなるものですが、引いた方が上手くいくかもしれません。

技術的にも同じことが言えます。経営がうまく行っていないときは、いろいろな技術に目が行きますが、本当に必要なのは今の技術を追求することかもしれません。やりきっていなければ、その技術の長所も短所もわかりません。

「何でもできる」は「何にもできない」と同じです。



yoki at 13:07│Comments(0)

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