2010年05月06日

背中のキズ

20代男性の患者さん。かたぎの人の話です。
仕事の疲れを解消するためにやってきている方なのですが、背中にケガをしてしまい、それから腕がいつも以上に重くなってしまったようです。

背中の傷

ビス(ねじ)の頭と接触し皮膚に痕が見えます。
数日前のものなので、生々しさが残っています。

事の順番からして、背中のケガが腕の症状を引き起こしたことが十分に考えられます。以前なら、関係ありそうだな、と何となく処理してしまっていました。

最近では、「動作の連鎖性理論」を用いているので、このケガが具体的にどこに影響を及ぼすのか見えるようになりました。あまりにも典型例だったので、患者さんに撮影の許可をもらいました。

キズの下には肩甲骨がありますが、ここから中心方向(背骨のある方向)に進むと肩甲骨が途切れるところがあります。内側の縁なので、ここを内縁(ないえん)と言います。

この内縁は、連鎖性理論から言うと肘の動きと密接に関わっています。肘の周囲にあるツボと肩甲骨内縁のツボが対応しています。ただ、正経十二経脈上(ツボを結んで12本に分けたもの)のツボだけでは運動構造に対応しきれないので、その他のツボ(名もないツボ)も使っています。

肘のツボ

異常が出ている部位や動作がわかると自動的に、肩甲骨内縁のどの部分に問題があるのかわかります。この患者さんは、「重い」と異常を感じる部位と関係するところにキズがありました。状況から判断すると、2つあるキズのうち、強く影響しているのは下の方です。

下のキズの高さにあるのは魄戸(はくこ)というツボです。この魄戸に鍼をしてみると、その直後には肘が軽くなりました(患者さん談)。

さらに、この魄戸と肘のある部位(写真参照)は、項(うなじ)のコリとも関係していて、天柱というツボの外縁と関係があります。尋ねてみると、「実はここも気になっていた」と話してくれました。

理論と実際がピタリと一致した瞬間です。

天柱の外jpg

魄戸というツボ1つで、肘の重さ、そして項のコリを同時に解決。

気になる肘の部分、気になる項の部分、それぞれに鍼をしてもラクになると思います。ただ、これだと原因を放置してしまう恐れがあるのです。

原因を解消したいので、動作を分析してツボを決めているわけです。
根本にアプローチする一つの方法です。

この方法に2年くらい前から取り組み、最近はアレコレできるようになってきました。ただ、お気づきの方(専門家で)もいらっしゃるはずですが、正経十二経脈とは全く別のシステムです。

私の場合、運動器疾患に対して正経十二経脈をよりどころにすると結果があまりよくありませんでした。「理論通りにならないものだなー」と一人悩む時期がありました。

そんな時、活法に出会い、運動器と正経十二経脈というペアを解消した途端に目の前が明るくなりました。経絡やツボの概念がない中で施術をする、というのは衝撃的でした。何かを知ることで何かが見えなくなるんだなー、とこの時はずいぶんと思いました。

肩甲骨内縁と肘関節の関係

鍼灸師になったばかりの頃は、「鍼灸は肩こりや腰痛ばかりではない。いろいろな症状に対応できる」ことを伝えたくて仕方ありませんでした。

今はちょっと違います。肩こりや腰痛に真剣です。真までスッキリさせることは簡単ではありません。まだまだ腕が及ばないものだってあります。鍼灸師なら対処できて当たり前と言われる肩こりと腰痛。当たり前とされている症状にきめ細かい対応ができる、というのも鍼灸師としてカッコイイ気がしています。

参考図書:『図解 関節・運動器の機能解剖(上肢・脊柱編)』

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yoki at 00:02│Comments(0)TrackBack(0) 鍼灸 | 思い出の患者さん

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