2012年10月24日
活法の視点! ムチ打ち症状の治療法
「活法の視点! 歪みと動きの中心」
「活法の視点! 動作における中心の位置と半径」
「活法の視点! 整体で整えるべき中心「正しい姿勢とは?」
「活法の視点! 中心を整える方法=歪みを治す方法」
「活法の視点! 鍼灸で中心を整える方法」
「活法の視点! ムチ打ち後遺症の正体」
と合わせてお読み下さい。

■「ムチ打ち」は「外傷性頚部症候群」のこと
交通事故などによって、頚にダメージを受けるのが「ムチ打ち」と言われています。「ムチウチ」と書いたり、「むち打ち」と書いたり、表記も統一されていません。いずれにしても、頚がムチのようにS字に煽られるから、この呼び名になったのだと思います。
正式には「外傷性頚部症候群」です。「頚椎捻挫」と診断されていることも多いです。「頚椎」は「頚の骨」で、「捻挫」とは、関節や筋肉に強い負荷がかかり炎症や腫脹(ふくらんではれること)がある状態のことです。骨折したり、靱帯が断裂する手前で踏みとどまった状態です。
「外傷性頚部症候群」と言われると原因が特定できているような気持ちになりますが、実際はそうでもありません。治療するには名が指す範囲が広すぎます。「クリ助の鍼灸院はどこですか?」という質問に「群馬県」と答えるようなものです。だいたいのイメージはできるのですが、私に会いたいと思う人からすれば情報が大雑把ですよね(笑)
■本当は複雑なムチ打ち
頚椎捻挫は、足首の捻挫と比較してみると複雑です。同じ捻挫でも、頚椎の捻挫はタチが悪いのです。頭と背中をつなぎ、左右の腕をつなぐポイントですから、わずかな関節の狂いも大きな問題を引き起こします。
問題を引き起こすのは上半身だけではありません。たとえば仙骨(尾てい骨が付いているおしりの骨)が原因になっているケースも目立ちます。
仙骨は、背骨の下末端にあります。背骨の上末端は頭蓋骨、下末端は仙骨という関係です。頭に受けた衝撃は仙骨にも伝わりますし、仙骨に受けた衝撃は頭部まで伝わります。交通事故で仙骨がダメージを受ける場合も多いと思います。
■問診と観察がカギ
ここから、治療のポイントを説明します。
問診がとても大事です。事故の状況を患者さんから聞き出します(思い出したくない時はそれなりに)。その時に負った傷やダメージがヒントになります。たとえば、「肘をぶつけて、しばらく痛かった」と語れば、それをヒントにします。肘が頚の可動域を制限して痛みを招いていることもあるのです。
次に、頚の動きをチェックします。「右に向けるのか?左に向けるのか?上下は?」と。痛みがあるのであれば、可動域に問題があります。動きが制限される時に違和感や痛みがあれば、その位置も重要です。その位置から、どこにダメージを受けたのか推測することができるのです。
たとえば、顎を引いて痛みが出る場合と、顔を天井に向けて痛みが出る場合では、ダメージを受けた場所が違うと考えます。原因が別のところにあります。同じところが痛むとしても、伸ばした時に痛む場合もあれば、縮めた時に痛む場合もあります。これでも、原因が異なります。
■防衛意識をキャンセルする
治りやすいのは、伸ばした時に伸ばしたところが痛む場合です。痛む局所や、同じ筋肉上の硬結を緩めると改善することも多いです。これに対し、治りにくいのは、縮めた場所が痛む場合です。防衛反応としての可動域制限であることがほとんどで、原因点が離れていることばかりです(痛いところに鍼をしても効果が薄い)。
「ムチ打ちの後遺症」として症状が残っている場合のほとんどが後者です。私が経験している範囲では、肩甲間部と言われている背中や肩甲骨の内縁に原因が残っています。脚に衝撃を受けているなら、仙腸関節(骨盤の関節)も疑います。
活法的な言い方をすれば、頚と胸椎(背骨)、頚を肩甲骨、頚と仙骨の連動性が失われている状態です。この連動性を回復させると頚の痛みが取れていきます。
すると脳の防衛意識がキャンセルされます。「動いても大丈夫」という信号が脳に伝わるからです。裏を返せば、ムチ打ち後遺症は「動いたらマズイ」という思い込みが脳に染みついている状態です。
■ムチ打ちの勘違いはツボで解ける
ムチ打ち治療の本質は、筋肉や神経に優しくすることではなく「脳の勘違い」を解くことにあると言えます。活法には、その勘違いを一瞬で解く技もあります。鍼灸では、連動性に注目して「動いても痛くない」と脳に再認識させていきます。
連動パターンに基づいて選びを選びます。従来の経絡経穴理論(ツボ理論)とは全く違います。この方法が、私が提唱している「古武術鍼法」です。
具体的なツボの使い方は専門的で細かい話になりますので、ブログでは断念します。つい先日行われたセミナーの中で古武術鍼法の理論と実践の細かいところまで紹介することができました。その時のテーマは、このブログの内容と“連動”させて「ムチ打ち」。

正直に言うと、私の取り組みが同業の鍼灸師にどう評価されるのか不安でいっぱいでした。酷評される可能性もありますから。結果は大好評でした。なので、今はほっとしています。
「ムチ打ち症状のツボ」を期待してここまで読んで下さった方、申し訳ありません。特効穴(ムチ打ち専用のツボ)があるわけではなく、連動パターンに基づき、その症状に合ったツボを使います。
よく使うツボがたくさんあって、この記事では書ききれないため、「このツボ!」シリーズで少しずつ展開していきます。気長にお付き合いください。
ひとまず、「活法の視点!」シリーズは終わりにします。
(シリーズを最初から読む→「歪みと動きの中心」)
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「活法の視点! 動作における中心の位置と半径」
「活法の視点! 整体で整えるべき中心「正しい姿勢とは?」
「活法の視点! 中心を整える方法=歪みを治す方法」
「活法の視点! 鍼灸で中心を整える方法」
「活法の視点! ムチ打ち後遺症の正体」
と合わせてお読み下さい。

■「ムチ打ち」は「外傷性頚部症候群」のこと
交通事故などによって、頚にダメージを受けるのが「ムチ打ち」と言われています。「ムチウチ」と書いたり、「むち打ち」と書いたり、表記も統一されていません。いずれにしても、頚がムチのようにS字に煽られるから、この呼び名になったのだと思います。
正式には「外傷性頚部症候群」です。「頚椎捻挫」と診断されていることも多いです。「頚椎」は「頚の骨」で、「捻挫」とは、関節や筋肉に強い負荷がかかり炎症や腫脹(ふくらんではれること)がある状態のことです。骨折したり、靱帯が断裂する手前で踏みとどまった状態です。
「外傷性頚部症候群」と言われると原因が特定できているような気持ちになりますが、実際はそうでもありません。治療するには名が指す範囲が広すぎます。「クリ助の鍼灸院はどこですか?」という質問に「群馬県」と答えるようなものです。だいたいのイメージはできるのですが、私に会いたいと思う人からすれば情報が大雑把ですよね(笑)
■本当は複雑なムチ打ち
頚椎捻挫は、足首の捻挫と比較してみると複雑です。同じ捻挫でも、頚椎の捻挫はタチが悪いのです。頭と背中をつなぎ、左右の腕をつなぐポイントですから、わずかな関節の狂いも大きな問題を引き起こします。
問題を引き起こすのは上半身だけではありません。たとえば仙骨(尾てい骨が付いているおしりの骨)が原因になっているケースも目立ちます。
仙骨は、背骨の下末端にあります。背骨の上末端は頭蓋骨、下末端は仙骨という関係です。頭に受けた衝撃は仙骨にも伝わりますし、仙骨に受けた衝撃は頭部まで伝わります。交通事故で仙骨がダメージを受ける場合も多いと思います。
■問診と観察がカギ
ここから、治療のポイントを説明します。
問診がとても大事です。事故の状況を患者さんから聞き出します(思い出したくない時はそれなりに)。その時に負った傷やダメージがヒントになります。たとえば、「肘をぶつけて、しばらく痛かった」と語れば、それをヒントにします。肘が頚の可動域を制限して痛みを招いていることもあるのです。
次に、頚の動きをチェックします。「右に向けるのか?左に向けるのか?上下は?」と。痛みがあるのであれば、可動域に問題があります。動きが制限される時に違和感や痛みがあれば、その位置も重要です。その位置から、どこにダメージを受けたのか推測することができるのです。
たとえば、顎を引いて痛みが出る場合と、顔を天井に向けて痛みが出る場合では、ダメージを受けた場所が違うと考えます。原因が別のところにあります。同じところが痛むとしても、伸ばした時に痛む場合もあれば、縮めた時に痛む場合もあります。これでも、原因が異なります。
■防衛意識をキャンセルする
治りやすいのは、伸ばした時に伸ばしたところが痛む場合です。痛む局所や、同じ筋肉上の硬結を緩めると改善することも多いです。これに対し、治りにくいのは、縮めた場所が痛む場合です。防衛反応としての可動域制限であることがほとんどで、原因点が離れていることばかりです(痛いところに鍼をしても効果が薄い)。
「ムチ打ちの後遺症」として症状が残っている場合のほとんどが後者です。私が経験している範囲では、肩甲間部と言われている背中や肩甲骨の内縁に原因が残っています。脚に衝撃を受けているなら、仙腸関節(骨盤の関節)も疑います。
活法的な言い方をすれば、頚と胸椎(背骨)、頚を肩甲骨、頚と仙骨の連動性が失われている状態です。この連動性を回復させると頚の痛みが取れていきます。
すると脳の防衛意識がキャンセルされます。「動いても大丈夫」という信号が脳に伝わるからです。裏を返せば、ムチ打ち後遺症は「動いたらマズイ」という思い込みが脳に染みついている状態です。
■ムチ打ちの勘違いはツボで解ける
ムチ打ち治療の本質は、筋肉や神経に優しくすることではなく「脳の勘違い」を解くことにあると言えます。活法には、その勘違いを一瞬で解く技もあります。鍼灸では、連動性に注目して「動いても痛くない」と脳に再認識させていきます。
連動パターンに基づいて選びを選びます。従来の経絡経穴理論(ツボ理論)とは全く違います。この方法が、私が提唱している「古武術鍼法」です。
具体的なツボの使い方は専門的で細かい話になりますので、ブログでは断念します。つい先日行われたセミナーの中で古武術鍼法の理論と実践の細かいところまで紹介することができました。その時のテーマは、このブログの内容と“連動”させて「ムチ打ち」。

正直に言うと、私の取り組みが同業の鍼灸師にどう評価されるのか不安でいっぱいでした。酷評される可能性もありますから。結果は大好評でした。なので、今はほっとしています。
「ムチ打ち症状のツボ」を期待してここまで読んで下さった方、申し訳ありません。特効穴(ムチ打ち専用のツボ)があるわけではなく、連動パターンに基づき、その症状に合ったツボを使います。
よく使うツボがたくさんあって、この記事では書ききれないため、「このツボ!」シリーズで少しずつ展開していきます。気長にお付き合いください。
ひとまず、「活法の視点!」シリーズは終わりにします。
(シリーズを最初から読む→「歪みと動きの中心」)
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この記事へのコメント
1. Posted by sano 2012年10月29日 23:16
いつも面白い記事ありがとうございます。
前回の記事を読んでから、まだ、全身の連動性を考えてまではできていないのですが、
問題を起こしている筋肉の中で、中心位置を考えて鍼をすると、痛みを発している部分や緩めたい筋緊張がとても簡単に筋肉が緩むことが多く
結構使えますね〜^^
今後も、こういった理論講座楽しみにしています。
前回の記事を読んでから、まだ、全身の連動性を考えてまではできていないのですが、
問題を起こしている筋肉の中で、中心位置を考えて鍼をすると、痛みを発している部分や緩めたい筋緊張がとても簡単に筋肉が緩むことが多く
結構使えますね〜^^
今後も、こういった理論講座楽しみにしています。
2. Posted by クリ助 2012年11月04日 02:00
>sanoさん
いつもコメントありがとうございます。連動性の分析が進めば、きっと革新的な鍼法になると信じています。
先日、活法研究会のセミナーの中で「古武術鍼法」を披露する機会を頂きました。見たり体験したりの感想を頂いております。
近い日に、このブログ内で紹介しようと思っています。また、一段落したら「このツボ!」シリーズを再開します。「このツボ」で紹介するツボをピースのようにつなぎ合わせていくと、古武術鍼法になりますよ。
理論だけで応用できてしまうsanoさんの臨床力に感服です!
いつもコメントありがとうございます。連動性の分析が進めば、きっと革新的な鍼法になると信じています。
先日、活法研究会のセミナーの中で「古武術鍼法」を披露する機会を頂きました。見たり体験したりの感想を頂いております。
近い日に、このブログ内で紹介しようと思っています。また、一段落したら「このツボ!」シリーズを再開します。「このツボ」で紹介するツボをピースのようにつなぎ合わせていくと、古武術鍼法になりますよ。
理論だけで応用できてしまうsanoさんの臨床力に感服です!