2014年09月28日

鍼灸院に行く前に、知っておいて頂きたいこと

鍼灸院で必要なマナー

私のところに限らず、鍼灸院でベストな施術を受けたいとお考えであれば、必ず守ってほしいお願いが1つだけあります。

症状の変化をそのままお聞かせ下さい。

時に、「そのまま」ではない返答を頂きます。患者さんから頂く情報が歪んでいると、施術も歪んだものになってしまいます。

鍼灸は二人三脚で行う治療であるため、「症状は伝えたのだから、あとは適当にやっておいて」というスタンスの方には向きません。その理由を詳しく解説します。

私のところだけでなく、鍼灸院を上手に利用するためのコツでもありますので、これから鍼灸を受けようと思っている方は参考にしてみてください。


■客観より主観を優先

患者さんが、自身の観察を怠ってしまうと良い治療とはなりません。なぜなら、鍼灸は、検査結果の数字を見ながら行おうものではないからです。

検査で異常がなくても、患者さんが「つらい」と言えば、何とかなる方法を探します。鍼灸にもいろいろありますが、患者さんの主観を大切にするのが鍼灸ですし、主観を大切にするのが得意なのが鍼灸師です

もちろん、すべての施術が主観によって運ばれるわけでもありません。客観的な評価がついてくるものもあります(≫突発性難聴の症例)。ただ、鍼灸治療の特性上、患者さんの主観が大切です。主観ということは、患者さんの訴えです。

頭痛のイラスト頭痛一つ取っても検査で数値化することは難しいものです。検査しても原因がわからない頭痛ばかりです。どんなふうに痛いのか、というのは患者さん本人しかわからないのです。私たちも、できるだけ客観的な特徴を集めようとして触診をします。特徴がわかれば、最適な対処法に近づくことができます。

触診は客観的なものが理想ですが、観測者によって見え方が変わりますから、施術者(鍼灸師)の主観から完全に外れることもありません。ですから、患者さんと施術者の主観を照らし合わせが重要になっていくのです

鍼灸師に求められるのは、症状を数値化することではなく、数値化できないつらさを理解することだと思います。そのために、患者さんの訴えと、触診から感じる『何か』を手がかりにするのです。


■結果が同じでも感想は異なる

劇的な改善例ばかりを聞けば、「鍼をすれば一発で症状が消える」と思い込んで、「魔法のような劇的変化を出すことが鍼灸の存在価値」だと思ってしまうでしょう。そんな場合、1回の施術で痛みが半分になった程度では、期待外れとなることがあります。現場でそう感じたことは数えきれません。

「10年間、何をしても軽減しなかった痛みが、1回の施術で半分になった。」

このような報告を頂いても、すぐには喜べません。「鍼灸を受けたというのに半分も症状が残っている」と不満に思っているかもしれないからです。私たちが「半分」だと思っていても、患者さんが「半分しか」と思っていたら、かみ合いません。

患者さんの言い方で、「も」と「しか」を区別できることがあります。

 「も」の方は、「だいぶラクになりました」となり、
 「しか」の方は、「まだ痛いんです」という言葉になります。


■感想をフィードバックする

鍼の施術シーン別の見方をすれば、患者さんの意識が、取れた痛み(症状)にフォーカスしているか、残っている痛み(症状)にフォーカスしているかの違いです。

患者さんの意識がどっちであったとしても、私たち鍼灸師がほしいのは、施術を受ける前と現在の違いです。さらに言えば、施術を受けてから現在に至るまでの経過です。

計画したとおりに症状が改善していないのであれば、治療方針を転換しなければなりません。変化が予測の範囲内にあれば、治療方針を変えるわけにはいきません。よい治療というのは、結果をフィードバックしながら行うものですし、そうした反省を行かせる仕組みを持っている鍼灸師がよい施術をしていると思います。

私たちが「前に何をしたのか覚えていない」というのでは、フィードバックできません。これと同じように、患者さんが「前との違いを覚えていない」は困ります。発作的な症状ならば、1週間の間に起きた回数や時間帯などを覚えておくか記録しておいてほしいのです。

「(治療)前と同じです」

と答えた患者さんに、強要しないように、

「月曜日は?」
「火曜日は?」
「水曜日は?」


と丁寧に1日ずつ聞いてみると、

「そういえば、この1週間は出ていないですね」

という結論になることがあります。覚えていない場合もそうですが、「1週間の無症状が偶然起こり得ること」だと思い込んでる方は、症状が良くなったかどうかは判断できないので、「前と同じです」と答えているのかもしれません。

こうした表現は、施術に手抜きをされないための防衛策なのかもしれませんが、きちんとした鍼灸師なら「1週間の無症状が偶然訪れた」という可能性をすぐに捨てたりしません。

「症状がどうであったか」というシンプルな質問にそのまま答えて頂きたいのです。これは私の都合でも何でもなく、そうでなければ正しいフィードバックができないからです。

本当に「前と同じ」なら、そのように答えて頂きたいですし、わずかでも違いを感じたのであれば、(それが鍼灸による効果と言い切れないとしても)その違いを知ることは重要です。他の要因(環境)に対しても目配りする意志はあります。


■患者さんの嘘がわかった時

嘘をつかれてしまうことがあります。「一生懸命やってもらったのに、前と同じと答えたら悪い」という患者さんの善意です。それがわかったときは、「気遣いは必要ありませんので、感じたままを教えてください。」とお願いしています。

明らかに改善した証拠(写真で可動域の違い)があるのに、「変化がわからない」と主張し続ける患者さんに対しては、「ご期待にお応えできません」と、その日で施術を終わりにしています。1年に1〜2人程度ですが…。

自己負担の大きい自由診療では、1回の施術で効果を(自己)判定したくなると思います。薬の効果は1ヶ月以上待てても、鍼灸の効果を1ヶ月待つ患者さんはいないと思います。ですから、1回目の施術で変化がわかるような施術を心がけています。長期の治療が必要な場合は、事前に納得して頂いてから治療を始めています。

鍼灸院で守るとお得なマナー(カポス)
初心者のための鍼灸院入門(カポス)

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yoki at 16:25│Comments(2) 鍼灸 | 仕事日記

この記事へのコメント

1. Posted by hamaguchi   2014年09月30日 14:22
いつも楽しく拝見しています。もしよろしければ相互リンクをしていただけないかと思いご連絡させていただきました。

誠に勝手ながら、以下の通りにリンクを貼らせていただきました。
ご確認の程、よろしくお願い申し上げます。
http://xn--vckg5a9gug9543an4q.com

ご検討の程、よろしくお願いいたします。
2. Posted by クリ助   2014年10月08日 23:20
>hamaguchiさん

いつもありがとうございます。

このブログは、自分が運営に関わっているサイトしかリンクを行っておりません(サイドバー左側のリンク)。

右側の「おともだち」のところであれば追加可能ですが、ここはRSS配信をしているブログでないと登録ができないエリアです。残念ながら追加することができません。申し訳ありません。

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