2019年02月10日

出版に際して(4)古典理論の弱点

古典理論の弱点


(3)鍼灸が理解される方法」のつづき

古典理論は内科である


経絡と経穴。経絡は気の流れるルートと説明されることが多いです。経穴はツボのことです。経絡上にあるツボのことを経穴と言います。

経穴という言い方は、経絡ありきで名付けられたものです。ですから、経穴は経絡理論を必要とするものです。しかし、実際には経絡理論では説明できない現象が数多く経験されています。

経絡に依存しないツボ学が必要です。日々、科学技術が発展し、ニュートンの力学では説明できない現象が起こり、理論は進化しています。鍼灸だけが、2000年以上前の理論にすがる理由がどこにあるのでしょうか。近代の物理学者が、ニュートンを否定していないように、新しい理論展開は、古典を否定することになりません。

「古典を大事にしよう」と言っておけば、新しいことに着手しない理由をつくれます。でも、時代から取り残されて衰退するでしょう。古典を大事にしたいなら、なおさら新しいことにチャレンジすべきでしょう。

古典理論の弱点は、「動き」に関する理論がすっぽり抜けていることです。もともと、古典鍼灸は内科です。肩こりとか腰痛のイメージが付いてしまっていますが、『素問』や『霊枢』をペラペラめくってみればわかりますが内科です。

現代の鍼灸師の立場と、古典鍼灸の理論は大きく解離しています。つまり、現代の医療の中で鍼灸師に内科的な役割が求められていないのです。

そこで、内科的な役割の一端を担えるポテンシャルを示したいと思うわけです。そして、ポジションを狙うチャンスを待ちます。取り組みは既に始まっています。身近なところで、病院と連携した研究が2017年の年末から動いています。

もう一つは、現代の鍼灸師が求められている役割に応じられる理論を構築することです。筋肉や関節を対象とした理論のことです。筋肉や関節にあるツボが、動きに関係していないはずがありません。この前提を軸にして理論を構築します。



経絡では動けない


経絡は基本の縦線があり、その縦線を結ぶように横線があります。縦線が強めで横線が弱めの網状のモデルです。体内の情報の流れも縦がメインです。

結論を先に言うと、経絡理論は体を支える構造を示しています。経絡理論の目的は、動く仕組みを説明するためではありません。

自信を持って言えるのは、動きは複雑で緻密なもので、経絡が示す線では説明がつかないことです。ピアノを弾く指を見れば分るように、ヒトは複雑な動きが可能です。信号系統は経絡のように単純であるはずがありません。経絡で説明できない決定的な論拠は、流れが一方向であることです。動きを制御するには、双方向の情報伝達が必要です。

経絡理論を頭から離して、体を動かしている信号系統を明らかにしなければ、動きの調整はできません。私が最初に目を付けたのは脊柱です。脊柱が体の反射(勝手に動く反応)に関与していることは、既に知られています。

脊柱の動きが悪くなくなると、全体の動きが鈍ることは経験的に誰でも知っています。関心を注いだのは、そこから先です。

脊椎一つ一つが特定の動きと相関があるはずだ!

という仮説を立て、脊柱一つ一つの動きと各部の動きの関係を調べていきました。これが整動鍼の始まりです。患者さんの症状が肩痛なら、痛みが出る動きと脊柱の状態に相関関係がないか調べました。脊柱のすぐ際の緊張(筋肉のこわばり)を触診で感じ、記録を取り続けました。

また、脊柱の緊張を解くツボが手足にあることも分かりました。これも、各ツボに鍼をした時に、変化している脊柱はないか触診で調べました。こうした作業を毎日毎日何年も続けて来ました。直感ですぐに見つかるものもあれば、探し出すのに、何年も費やしたものもあります。


整動鍼®の誕生


経絡が何にでも使えるなら新しい理論などいりません。実際の臨床では足りないことばかりです。その中でもっとも足りないのが、動きの理論だったわけです。2014年、動きの理論の基礎が出来上がりました。当時は、古武術から着想を得たので「古武術鍼法」と名付けました。しかし、イメージが古武術に引っ張られて、本来伝えたい「動きの調整」が隠れてしまうので、2015年に「整動鍼」と改名しました。

まだ、整動鍼は一流派に位置づけられていますが、私がやりたいのは、自分がつくった流派の普及ではありません。伝えたいのは「動きとツボの法則性」です。動きの公式を明らかにして、治療やコンディショニングに利用してほしいのです。

こうした動きとツボ(身体の特定部位の緊張)を明らかにできるのが鍼治療しかありません。鍼ほど、ピンポイントで刺激できるものはありません。余計な刺激を入れず、必要部分だけを刺激できます。この事実に気が付いてしまってから、鍼治療の臨床の現場が、動きの法則性を調べる最先端の研究室になったのです。ハイテクな機器はありません。情熱と感性が明らかにしています。

もちろん、正誤をどこかで評価してもらわないと個人的な経験から抜け出せません。現在は、セミナーを開催し、その法則性を受講者が持ち帰り、それぞれの臨床の場で「再現性があるかどうか」という検証をしています。

セミナーに参加している鍼灸師は、検証に参加することが目的ではありません。すぐに実践で使える実用的なものを望んで参加しています。

その期待に応えるために、セミナーでリリースする前には、私自身が何十回と現場で試し、再現性を慎重に確かめています。その上で、社内で追試も重ねるようにしています。そうやって、効果を確かめてから外に出しています。

だから、受講者は安心して得たツボを現場で使うことができます。それでも、エビデンス(科学的根拠)にはならない、と言われるでしょう。医学的に社会的に認められるには、鍼灸師だけでなく、外部の研究者と共同で検証が必要です。

嬉しいことに、私の願いは研究者に届いています。既に始まっている研究もありますし、新たに「研究しましょう」というお話も頂いています。出せるタイミングで公表します。

次回は、ツボの臨床データを収集し整理している「ツボネット」について説明します。

つづく…


◎出版記念イベント(講演・対談・実演)(3/24)


鍼灸師と医師で解き明かす 経絡とツボの正体
会場:FinGATE KAYABA(東京)
参加費:2,000円(1部)/3,000円(2部)
申込フォーム

Twitterもやっています。
https://twitter.com/kuri_suke

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yoki at 18:39│Comments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 ツボ(経穴) | 東洋医学(中国医学)

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