2020年05月03日

コロナ禍でも鍼灸院が倒産しないのは事業規模が小さいから

鍼灸院の成功と失敗


昨日、私のTwitterのタイムラインに衝撃的な情報が流れてきました。2年前の開業された鍼灸師が閉院するという知らせでした。ご本人にご迷惑がかかるといけないので、具体的に紹介することはやめておきますが、ツイートの「いいね」が、ものすごい勢いでが伸びていきました。

その「いいね!」に背景にある気持ちは、会員からこれまでの2年間の労いに対してだと思います。そして、シェアしてあるブログの記事に心を打たれたからだと思います。魅力的な人間性が伝わってくる記事でした。

私は3回読み返しました。経営がうまく行かなかった原因についての分析も赤裸々にされていて、開業している鍼灸師やこれから開業を考えている鍼灸師の胸に届いたのだと思います。この記事を読んで思うところ、考えるところがあったので、この記事を書いています。

改めて考えてみたのは、成功の定義です。

あらかじめお断りしておきますが、成功の定義は人それぞれでよいと思っています。だから、私の考えを押しつけるつもりもありません。みなさんが成功の定義を考えるきっかけになればいいなと思って、考えたことを書いてみます。


事業規模が小さいからこそつぶれない


開業している鍼灸師は、一人で個人事業を営んでいることが多いです。100人以上の鍼灸師を雇っている鍼灸院は知りません。つまり、鍼灸業界は最小単位の事業の集まりです。

コロナ禍の最中にあって、この最小単位というのは吉であるように思います。なぜなら、経営者自身が耐えることで時間が稼げるからです。従業員がいれば、必ず給料が発生します。まったく仕事がなくても給料は支払わなければなりません。給料が出なくても我慢して働き続ける従業員はいません。

経営者は、給与を減らしたり未払いにしておくことができます。経営者一人で営業していれば、自分が我慢さえすれば済みます。自宅を診療室にしていれば、固定費もあまりかかりません。事業規模が小さければ、事業を休眠させることが可能です。

鍼灸師は、大きな設備を必要とせず一人で開業できてしまいます。やり方にもよりますが、少ない固定費で事業が継続できます。だから、固定費が支払えずに倒産するリスクが小さな業種です。企業間取引も少ないので連鎖倒産も起こりません。

鍼灸師は小さな個人事業の集まりだから、こんな状況になっても、しぶとく生き残りやすいのです。


順調なのはラッキーなだけ


私は、6年前から従業員を迎えて鍼灸院をやっていますが、経営者としてもっとも慎重にやってきたのは運転資金の確保です。順調であっても「一時の幸運でしかない」と心の中で唱え続けて来ました。

不運はコロナ禍としてやってきました。

私の院も売上が落ちています。4月でいうと東京の鍼灸院(はりきゅうルーム カポス)は7割減です。運転資金があるので給料はしっかり払い続けられる見込みです。その運転資金は、開院前に準備しておきました。その準備しておいた資金を毎年繰り越してきたのです。

カポスを開院する際に、鍼灸師を二人雇いました。そのとき用意した運転資金の額は、1年間の家賃と1年間の2人分の給与でした。1年間の売上がゼロでも雇用し続けられる状況をつくっておいたのです。

運転資金は融資は受けず貯蓄でつくりました。融資は、資本に左右されず目の前の機会をつかみにいくという意味ではありがたいものですが、私はもともと計画から実行まで3年をかけるタイプなので資金もその3年間で用意します。


「忙しいから」という理由で雇うのはリスクが高い


「患者さんが増えて来たから鍼灸師を雇おう」という考えはとても危険です。自分の忙しさを解消することが目的であれば、新規の患者さんを断ればよいのです。鍼灸院は他にいくらでもあるのですから。

貯めるか、借りられる(そして返せる)アテができて、ようやく雇用に乗り出せます。繰り返しになりますが、「患者さんが増えて来たから」ではうまくいきません。

うまくいかない理由は運転資金の問題だけではありません。忙しいときは忙しいので、指導したり、仕組みをつくったり、マネジメントする時間が十分取れないのです。寝る時間を削ってやることになります。忙しくなる前に、運転資金を用意して雇うべきなのです。

偉そうなことを言える立場ではありません。私は、忙しくなりすぎて寝る時間がだいぶ減ってしまいました。昼間は施術をしながら過ごし、深夜に経営者としての業務を繰り返していました。体を壊さなかったのはラッキーなだけです。1年で休日と呼べる日は数えるほどしかありませんでした。

ラクをしたいから従業員を雇いたい、孤独だから従業員を雇いたい、と考えていたら裏目に出ます。実際は、さらに忙しくなって孤独感が増すでしょう。

孤独は誰かと一緒にいるから解消されるのではなく、理解されないことで生まれます。人が増えるほど理解を求める努力が必要ないっぽう、理解されない場面も増えます。あきらめず理解を求める努力をし続けられる人だけが雇える資質があると思います。


私が雇用をする理由はチームづくり


私が鍼灸師を雇うのは、1人では実現できないことに挑戦するためです。品川に(私が常駐しない)鍼灸院をつくったのは、整動鍼が再現性ある技術であることを証明するためでした。

私の会社は鍼灸院経営と並行してセミナーを運営しています。今は自粛中で売上はマイナス100%ですが、ふだんは売上全体の50%を占めています。

セミナーは年間60日以上あるので施術の合間にできる業務ではありません。申込みの受付や入金を管理する事務的な仕事がたくさんあります。ありがたいことに、ほとんど任せられる体制ができています。セミナーに使うテキストや動画のアップデートにしても、チームで取り組んでいます。

DSCF8295
2020年1月撮影


今は、ツボネットの構築に挑戦しています。これは、全国の鍼灸院から症例を集めるというプロジェクトで、鍼灸の可能性を症例で提示していくものです。これだけ大きなシステムになると、私一人で管理しきれません。

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2019年撮影


院の経営も同じです。私一人では思いつかないアイデアが出てきます。私一人では実践できないことができます。話がそれてしまうので実例は別の機会にします。


アリは高いところから落ちても死なない


私は続けて行くことが成功の条件だと思っています。売上が条件ではありません。1億の売上があっても、それ以上に支出が続けば倒産します。500万円の売上であっても経費が100万円であれば倒産しません。

多くの鍼灸院は後者のパターンに当てはまります。コロナ禍で売上が半分の250万円になっても、貯金が250万円あれば一時しのぎはできます。これは言いたいことを伝えるための例ですから、実際の数字はわかりません。

また、原価に占める人件費の割合がとても高く、鍼灸師一人で経営していれば、人件費も経営者自身にかかっているので、耐え忍ぶには有利です。

アリは体重が軽いため、自分の身長の100倍の高さから落ちても死にません。鍼灸師も経営母体が小さいため、非常時に強いのです。この理屈は大企業には通じないので、話から外します。


大企業を意識しすぎる鍼灸師は危ない


ここからは、かなり個人的な意見になりますが、私は大企業の戦略をマネしないようにしています。

gafam


アメリカの代表的なIT企業を指す言葉に「GAFAM(ガーファム)」という言葉があります。Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftの頭文字です。最近では、MicrosoftとNetflixを入れ替えた、「FAANG(ファング)」という言葉も出てきました。

有名なのでご存じの方も多いと思います。

faang


こうしたIT企業の創業者や社長は優れた経営者であることは間違いなく、それは疑いようのない事実です。学ぶことがたくさんあることは間違いありませんが、追いかけないようにしています。業種も環境も違い過ぎるからです。

彼らと同じレベルかそれ以上の商才があっても、強烈な運がなければGAFAMにはなれません。運は自分で引き寄せるもの、という考え方もありますが、引き寄せられる運にも限界があります。それが現実です。

そもそも、GAFAMを意識する必要がありません。優秀な企業をわざわざアメリカに求めなくても、日本にも優れた企業が数えきれません。地元にも近所にも優れた企業がきっとあるはずです。売上高を自分の会社の価値にしていません。無理なく長く続けられて、楽しく働ける会社であることの方が大切です。

売れるビジネス書は大企業の成功談になります。鍼灸院は最小単位の企業サイズなので真逆に位置しています。大きな企業になれないのは、鍼灸師の努力不足ではありません。大きな企業になるメリットを持たないからです。生物の生存戦略に通じるものがあります。

それぞれの生き物に最適なサイズがあるように、企業に最適なサイズがあります。アリがゾウの生存戦略を学んでも役立たないことが多いのです。


10人の愛されるチームをつくるため


結論は走りながら出しますが、今の時点では、会社のメンバーを10人にしたいと思っています。6年前は12人と考えていたので2名減らしました。 銑イ両魴錣鯔たすように考えています。ちなみに現在は8名+学生アルバイト1名です。

〜完が互いにコミュニケーションしやすい
東京と群馬の2箇所で鍼灸院を展開できる
シフト制が可能になる(休みを選びやすい)
ぅ瓮鵐弌爾瞭れ替わりにスムーズに対応できる
ゥ札潺福爾旅峪佞できる人がいる

企業としたら10人は零細企業です。経営者の集まりに行ったら「たった10人?」と鼻で笑われるかもしれません。でも、私はこの10人から信頼されていれば満足ですし、この10人が外から愛されていれば嬉しいです。規模なんてどうでもよいのです。

最後になりましたが、この記事の結論です。
私の成功の定義は「愛されつづけること」です。


Twitterもやっています。
https://twitter.com/kuri_suke

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yoki at 18:29│Comments(1)このエントリーをはてなブックマークに追加 鍼灸院経営 

この記事へのコメント

1. Posted by 針立酔候   2020年06月22日 20:41
この記事には全く関係ないのですが(すいません)
捨て目の話を拝見したので(当方は鍼灸院を営んでいますが全くホームページやブログやSNSが無知のためしておりません。)
僕が尊敬する義父(氣功師&整体師)から耳にタコが出来るくらいに言われた事は『捨て目捨て耳』を持って初めて治療家あるいは臨床家として飯が喰えると言う言葉です。いつも栗原先生には教えてられますし、思い出させていただけます。有難うございます。僕の針立酔酔候は柳ジョージの唄『酔って候』からきています。(笑)だから酔った時にコメントしています。失礼を致しました。

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