2021年07月27日

これからの「鍼灸の効果」の話をしよう(後編)

<前編>はコチラ

どんな現象が効果といえるのか


「鍼灸が効いた」とは何を指しているのでしょうか。どんな現象が効果と言えるのでしょうか。これがわかれば鍼灸の価値を評価しやすくなるのですが、現実はあまくありません。

鍼灸の施術後に観察できる現象こそ効果、と考えるのが科学的な思考です。しかし、観察できる現象はほんの一部です。

患者さんが「スッキリしました」と言ったときの「スッキリ」には、肉体的の変化(たとえば血流量の変化)の他に心理的な変化もあります。どちらも計測するには機材も必要で普段の臨床で数量化するのは困難です。

実際のところ、患者さんに起こる変化は術者の五感でとらえるしかありません。科学的視点からしてみたら、頼りなく感じるかもしれませんが、五感による総合評価は人間の特権とも考えられます。現実的に考えれば、五感を研ぎ澄まし公平感を意識しながら効果を評価していくしかありません。

将来的には、現象を観察して科学的に評価できる仕組みを整えるべきです。そうしなければ、鍼灸だけが取り残されてしまいます。伝統を守ることは、既存の方法にしがみつくことではありません。既存の方法に疑問をぶつけながら前に進む強い意志が「伝統」を創っていくのだと信じています。


効果を判断する3つの方法


鍼灸の効果を実感できる人が少なければ、とうの昔に鍼灸は消え去っていたでしょう。2000年以上に始まって現在も行われているということは、人々が効果を実感してきたからに他なりません。科学では証明できない価値が潜んでいると考えるのが妥当です。少なくとも必要とする人がいたという事実は曲げられません。

実際の臨床の場面では、どのように効果が判断されているのでしょうか。

鍼灸の効果


ー膣囘な効果


患者さんが自身が得る好転感です。その場で感じられるものもあれば、施術後しばらくしてから感じるものもあります。簡単に言えば、患者さんの「効果ありました」という言葉をそのまま受け止めるということです。逆に「効果がなかった」という場合も同様です。

客観的な効果


変化を体感できなくても検査の数値が改善している場合があります。

たとえば、突発性難聴などです。私の鍼灸院では、病院での治療と並行して行うケースや、病院での治療が終了した後に行うケースがよくあります。前者の場合、鍼灸の成果のみを取り出すのは難しいのですが、後者は数値の変化によって効果を推測できます。

苦しいのは、突発性難聴における鍼治療の効果に十分なエビデンスがないことです。現状では「効果があったかもしれない」とまでしか言えません。

信じる効果


「効果が出ていますよ」という鍼灸師の言葉を信じて、患者さんがそれを信じるパターンです。

その場では改善した感覚がなくても1〜2日経ってから症状が大きく改善するパターンがあります。こういうとき、患者さんは改善している感覚がなくても、施術者はよい手応えをつかんでいることがあります。患者さん本人が気が付かない変化を捉えているからです。

実際に、「明日か明後日には今よりも軽くなってると思いますよ」と伝えて終わりにすることもあります。その通りになれば、患者さんは「効果のある施術を受けた」と思います。予告通りのことが繰り返されれば患者さんは私たちの言葉を信じてくれるようになります。

疑い深い患者さんよりも信じてくれる方の方がやりやすいのが本音です。しかし、患者さんの信じる力に頼りすぎると、鍼灸が信仰の対象になってしまいます。医療であるならば、軽く疑いをかけられているくらいの方がちょうどいいのかもしれません。


効果の証明コスト


鍼灸の臨床において、成果一つひとつに対して効果の証明書を添付できません。現実的なことを言えば「効果が出たらしい」を「効果があった」と処理し、「効果がわからなかった」を「効果がなかった」と処理しないと進めません。

ただし、鍼灸に限った話ではありません。鍼灸に限らず治療の効果というのはあいまいです。

効果をあいまいにしているのは鍼灸ばかりではありません。病院にて、医師が「効果がないらしい」と判断すれば、薬や治療方が変更され、患者が「効果がないらしい」と感じれば、別のところに相談しにいきます。

効果の有無をきっちりさせるにはコストも時間もかかります。臨床では他に優先すべきことがあるので、そこにこだわることはできません。バランスを考えると、効果があいまいのまま残ってしまうのは仕方のないことです。

効果を体感しやすくなる臨床のコツ


ここからは臨床テクニックの話になります。ここまで読み進めていただいた方に感謝の気持ちを込めて、できるだけ客観的な姿勢で患者さんが効果を感じられるように、普段から私が行っていることを紹介します。

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気になるところにはペンで印をつけています。いったん別のところに目や手を移動させても、あとで同じところに確実に戻れるからです。そうすることで、施術の前後で変化を比較しやすくなります。

そもそも手の感覚はあいまいです。だからせめて位置だけでも確実にしておこうという単純発想です。ただ、大半の鍼灸師は行っていません。素人っぽく見えるからかもしれませんが、患者さんはそうは思わないと思います。丁寧に間違いなくやろうとしている姿勢と受け止めてくれます。

痛みなどの症状を感じる姿勢や動きを再現する


どこが痛いのかを丁寧に効いても、どうしたら痛いのかの聞き取りがあまくなるケースがあります。施術直前に、無理のない範囲で症状の再現を行ってもらうようにしています。施術直前であることが重要です。そして、施術直後にも同じことことをやってもらいます。

前後をしっかり比較したい場合には置鍼(鍼をしばらく刺して待つ)ではなく、単刺(刺したらすぐに抜く)の方が有利です。なぜなら、時間経過が少ないので、ちょっとした変化にも気づけるからです。時間が経つと「さっきはどうだったかな?」と記憶がぼやけます。

また、単刺は、効果がなければすぐに次の手に移行できるので、施術時間内にいろいろ試せます。

触診の圧を精密にコントロールする


体に痛みがあるときは触診の圧を利用します。押す圧が強すぎると「そんなに押されたら痛いに決まってる」になりますし、弱すぎると「最初から痛くない」になります。

ちょうどいい圧痛(押された痛み)を出しておくと、施術後の変化がわかりやすくなります。もちろん、前後は同じ圧であることが重要です。


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たとえば五十肩の治療だとしましょう。1回の施術で完全に痛みが取れることは希ですが、1回の施術で好転することはよくあります。もし「痛みはどうですか?」と施術後に尋ねると、患者さんは痛みを再現しようとします。痛みがゼロになっていない限り「まだあります」と返ってきます。

可動域をチェックすると、最初よりも増えていることがあります。前と同じ角度なら痛みが軽減していると言えます。五十肩を痛みの症状から動かない症状に置き換えるだけで、変化を読み取りやすくなります。問題をすり替えているように思う人がいるかもしれませんが、問題を視覚化する意味があり大切なことです。

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できるだけ変化を予告するようにしています。症状が変化した際に施術の結果がもたらしたことを認識してもらうためです。施術の精度と同じくらい予告の精度も大切にしています。言われたことが実際に起これば、患者さんは「効果によるもの」と安心できます。


さいごに


ここまでお付き合いくださりありがとうございます。長くなってしまいましたが、それでも「効果とは何か」というテーマを完結にまとめたつもりです。壮大なテーマなので、これだけで対談のテーマとして十分なくらいです。

この記事はあくまでも私の視点からのものです。もちろん違った意見もあるでしょう。いろいろな意見が触れ合うことで鍼灸はもっとわかりやすいものになっていくでしょう。

私は臨床ベースの鍼灸師ですが、研究ベースの鍼灸師と交流を深めていくことで、さらに効果を明瞭化することができると思います。科学から効果を証明する取り組みもタイミングをみてやっていきたいです。そのために十分な余裕を持てるようにしようと思います。

twitterもよろしくお願いします。
https://twitter.com/kuri_suke

はりきゅう養気院(群馬県/伊勢崎市)
はりきゅうルーム カポス(東京/品川駅)
整動協会(鍼灸師のための臨床研究会)

yoki at 11:06│Comments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 鍼灸 | 仕事日記

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