2022年01月09日

鍼灸師に必要な技術と問われる人間性

鍼灸師に必要な技術と問われる人間性


今回のテーマは、「どういう人間が鍼灸師としてふさわしいのか」という考察です。鍼灸師を長くやっているといろんな鍼灸師と出会います。すぐにやめてしまう鍼灸師もいれば、長く続けている鍼灸師もいます。

やめたいという鍼灸師を止める気はありません。でも、やめたくないのに、やめなければならない状況に追い込まれる鍼灸師には、踏みとどまってほしいと切に思います。もし、「鍼灸師に向いていない」と思っているならば、それは勘違いかもしれないのです。

向き不向きをどこで判断しているのかさえ分かれば対策を打つことができます。優秀な人材の流出を防ぐことができるのです。

それでは、さっそく考察に入っていきましょう。


鍼灸師が成功するための3要素


成功の要素を、「技術」「マーケティング」「人間性」の3つに分解されていることが多いように思います。 ひとつひとつを丁寧に掘り下げていくことで、具体的にどんな努力が必要か見えてくるはずです。

今回は、3つめの「人間性」に着目して掘り下げてみます。同業の間では、「鍼灸師は人間性の勝負です」という意見が目立ちます。「人の体に触れる職業だから…」という理由だと思いますが、人間性が問われるのは鍼灸師に限りません。直接顧客と接触しない仕事でも、上司や部下、そして同僚との関係を築こうとするとき、人間性は問われます。

ですから、人間性の問題は鍼灸師に限った話ではありません。重要なことは、具体的に問われる行動です。そこまで掘り下げていかないと、「クルマはデザインが重要です」のようなぼやけた話になってしまいます。


人間性を構成する6要素


その前に、「人間性」という言葉を使う側が何を意味しているのかと考えておく必要があります。それぞれだと思いますが、想像力をフル稼働して並べてみました。

.曠好團織螢謄
▲灰潺絅縫院璽轡腑
性格
じた目
ゥ織譽鵐叛
人間力

こうして要素に分けることで、どこに課題があるのか絞り込むことができます。この他に相性という問題もありますが、あえて外しました。なぜなら、相性は患者さん側が言う話であって、こちら側がする話ではないからです。

もし相性の話をするなら、それは集客の段階でミスマッチが起きていると考えるべきです。患者さんの期待にズレが生じないように情報発信することが礼儀です。大げさなキャッチコピーで引き寄せて、不安を煽りながら囲い込むのはマーケティングとは程遠いものです。

話を戻して、5要素を一つ一つ考えてみます。

.曠好團織螢謄


日本語にすると、「おもてなし」や「おもりやり」です。鍼灸院は、高いホスピタリティが求められるところだと思っています。鍼灸師になる人は本来的にホスピタリティが高いように思います。

問題になるとすれば2つです。一つは、わざとらしいホスピタリティです。商売のためにやると、その意図は患者さんに筒抜けなので逆に患者さんが離れていきます。ですので、ホスピタリティはお金や仕事のために磨かない方がよいと思います。

では、どういう考えがよいかというと、自分のためです。ホスピタリティは必ず自分に返ってきます。これを、私は「ホスピタリティ反射」と名付けました。患者さんへの「おもてなし」や「おもいやり」は必ず返ってきます。

ですからホスピタリティは「仕事を気持ちよいものにする」という目的で磨くべきだと思うのです。仮に売上が変わらないとしても、働いている時間が気持ちよくなるわけですから、人生の価値が上がることを意味します。

▲灰潺絅縫院璽轡腑


会話が得意な人は臨床中の雑談も上手です。でも、錯覚してはいけないのは、会話が盛り上がることと、その臨床の価値が上がることは別物です。気持ちよく会話ができると「うまく行った」と錯覚してしまうことがあります。

患者さんは、よくなりたくて施術を受けているわけですから、評価されるのは施術です。施術を円滑にするためのコミュニケーションという観点からスキルを磨かないと空振りしてしまうかもしれません。

また、私たち鍼灸師におけるコミュニケーションの核心は、口ではなく手にあると思います。「目は口ほどに物を言う」という言葉がありますが、「手は目ほどに物を言う」のです。

人は、触れ方に、その人を感じます。

性格


生まれながらの性格は変えられないかもしれませんが、明暗は変えられます。写真で考えてみてください。同じ景色が写り込んでいても、明るさを補正すると印象は変わります。

名称未設定のデザイン

明るいほどよいわけではなくて、ちょうどいい明るさがあります。患者さんの明度に合わせないと、眩しく感じさせてしまいます。「あの人、テンション高すぎで疲れる〜」ってありますよね。

私は、患者さんの明るさより1段階上に設定するように心がけています。具体的な調整は、声量で行っています。患者さんの声量より少し多めにする意識です。

じた目


どうにもならないこともあるので、どうにかできる部分を工夫するしかありません。身だしなみに気をつけるのは言うまでもありません。個人的には、アクセサリーはいっさいつけません。鍼灸師にとって、いちばん大事な見た目は清潔感だと思います。

ゥ織譽鵐叛


「人間性が大事です」という人は、その人自身がタレント性の力を実感していたり、活用しているのだと思います。ただ、「技術より人間性だよ」という言葉には賛同できません。タレント性で患者さんを集めても、技術がなければ救えません。「技術がないのに人気がある」という状況は鍼灸に限った話ではありません。

人間力


人間性とよく似た言葉ですが「人間力」という言葉があります。大事だと思うのですが、このままだと曖昧です。私なりに、別の言葉に置き換えて具体化しようと考えたすえ「安定した精神」がベースであるという結論に至りました。「健全な魂は健全な体に宿る」という言葉あるように、基礎は、体調の安定です。食事、睡眠、適度な運動という基本中の基本を大切にすることがもっとも大切です。


相性の問題


改めて相性の話になります。「相性が大切だよ」という意見を時々見かけます。その通りですが、これは患者さん側から言うことなので、私は言わないようにしています。

区別しておきたいのは、「人間的な相性」と「得意分野との相性」です。

前者はどうにもできないのですが、友達づくりの話ではないので問題ではないと考えています。技術を介した関係である限り、相性の問題が100%になることはありません。個人的な感覚ですが、影響するとしてもせいぜい10%です。

後者は、適切な情報発信ができていれば問題になりません。集客においては、患者さんの期待感がズレないように注意を払う必要があります。


信用の作り方


私が大切にしているのは3つです。

 屬錣らない」と言える勇気


駆け出しの頃は、わからないことがあったら信用されないと思って、何か訊かれたら一生懸命答えをつくっていました。今は違います。「なんででしょうね〜」とか「わからないですね〜」とか「不思議ですね〜」と躊躇なく返してしまいます。

今は、わからないと素直に言える人がプロだと思っています。わかっていること、できることが増えるほど素直に「わからない」と言えます。

∈覗韻料択


どうしたら信用されるのかと考えている期間がありました。初期の頃は、治ったら信用されると思っていて、治療効果で信用を得ようとがんばっていました。でも、半分しか正しくありませんでした。

「最善の選択」であると患者さんが納得したときに信用が生まれます。ですから、最善ではないと思うときは、他の選択肢を示すことが信用につながります。もし、通院している患者さんが「本当に通い続けて大丈夫なのかしら」と疑問を持っているならば、信用が目減りしていることを疑った方がよいです。

小さな予見


「私の症状は治りますか?」と訊かれます。その背後になる心境は理解できますし、できるなら「治ります!」と答えたいです。ただ、反射的に答えるのは無責任というもの。そこで、私は「小さな予見」と名付けたことを実践しています。

これは、施術をした結果起こりそうなことを、あらかじめ予告しておくことです。治るか治らないかはわからなくても、鍼灸をした直後に起こる変化は推測できます。翌日に起こりそうなことも推測できます。

「治る」は、変化の延長上にあります。考えてみると「治る」の定義はあいまいなのです。医師に「治ってます」と言われたのに「まだ痛い」という状況は珍しくありません。これは、医療者が伝える「治った」と患者が感じる「治った」にズレがあることを意味しています。

つまり、「治る」は指標として曖昧です。このことに気がついてからは「変化」を指標にすることにしました。「さっきより痛くありません」という患者さんの主観も変化に含めます。できるなら、可動域の変化が客観的でよいのですが、使える場面は限られます。

ね想の技術


直後変化がわかりやすいものがよいです。小さな予見をしやすいからです。鍼をした直後に変化を感じれば、その変化が鍼によるものだと誰も疑いません。鍼施術の価値を伝えやすく、対価を得やすくなります。私たちは、患者さんに鍼灸の価値を伝える努力が必要ですが、それは説明力ばかりではありません。「伝わる技術」という観点もとても大切です。


「技術はあって当たり前」と言う人


技術の追求に終わりはありません。と同時に、これくらいの技術があれば十分という基準もありません。「できている」と思った瞬間に、進歩は止まり後退が始まります。

患者さんの悩みをすべて解決できる技術がこの世に存在しない限り「当たり前」も存在しません。

「技術はあって当たり前」と言う人はコンサル業に多く見られ、「鍼灸師は技術ばかり追いかけていてマーケティングが足りないから世の中に認めてもらえない」という論理で私たちに語りかけてきます。マーケティング視点が重要なことは理解できますが、「あって当たり前の技術ってなんですか?」と私は全力で問うでしょう。

技術の追求は自己満足だと揶揄されます。実際、すぐにお金になるわけではありません。だからといって最低限でよいという理屈は成り立ちません。お金になるならない関係なく、向上に努めていく姿勢こそが鍼灸師の資質ではないでしょうか。

できれば稼ぎたいけど。

twitterもよろしくお願いします。
https://twitter.com/kuri_suke

はりきゅう養気院(群馬県/伊勢崎市)
はりきゅうルーム カポス(東京/品川駅)
整動協会(鍼灸師のための臨床研究会)

yoki at 18:19│Comments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 鍼灸 | ひとりごと

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
月別アーカイブ
記事検索
全記事にコメント歓迎
これから読みたい本