2022年05月10日

本当につらい肩こりの原因は僧帽筋の奥にある

本当につらい肩こりの原因は僧帽筋の奥にある


しつこい肩こりに悩んでいる方が私の鍼灸院に次々とやってきます。口を揃えて「マッサージしてもらっても、その場だけですぐに戻っちゃうんです」と言います。それにはきちんとした理由があります。

肩こりの本当の原因にマッサージが届いていないからです。腕の問題ではありません。肩こりの原因となっている筋肉は深いところにあるため、揉みほぐすのが難しいのです。これから、本当の肩こりの原因について書きます。ちょっと難しいかもしれませんが、ぜひついてきてください。

肩こりの原因を理解する上で大切なのは呼吸です。呼吸と呼吸筋を理解していただきながら、関連するツボと経絡を思い出すことで、解法を導くことができます。というわけで、まずは呼吸の基本をしっかりおさえておきましょう。




]彰峩擇馬捷を動かして呼吸する


外肋間筋で吸って内肋間筋で吐く


呼吸するとき、肋骨の助けを借りています。その肋骨を動かしている筋肉の一つに肋間筋があります。息を吸うときに肋骨を引き上げる外肋間筋と、息を吐くときに肋骨を引き下げる内肋間筋に分かれています。文字通り、肋骨と肋骨の間にある筋肉です。

肋間筋


肋間には肋間神経が走っているので、呼吸に合わせて痛む場合は肋間神経が関わっていることもあります。肋間神経痛が疑われる場合には、肋間筋の過緊張を緩和することで改善できることが多いです。

ただ、肋間筋に鍼をするのは気をつけないといけません。深度に気をつけないと気胸になってしまうからです。気胸になると肺から空気が漏れて呼吸が苦しくなってしまいます。ですから、肋間に鍼をする場合には細心の注意を払います。

肋間神経痛の治療


一番よいのは肋間に鍼をせずに効果を出すことです。具体的な方法としては、痛みを感じる位置を確認したら、そこから肋骨に沿って脊柱の方に移動します。すると、棘突起と言われる背骨の突起のすぐ横に圧痛が見つかります。例外なくあるといってよいでしょう。圧痛のところは筋肉が緊張しているので、押圧した際に指が沈んでいきません。

肋間神経痛の治療点の探し方


この部分を緩めることができると肋間神経痛がその場で軽減します。すぐに痛みが完全に消えてしまう場合も珍しくありません。棘突起のすぐ横の圧痛を探し出せれば難しくありません。もし、この方法でまったく軽減しない痛みであれば、肋間神経痛ではなく、肋骨や肋間筋を損傷している可能性があります。

肋間筋は呼吸に必要な肋骨の運動を担っているわけですから、肋間筋の働きが悪くなると呼吸が浅くなってしまいます。これを防ぐためには、肋骨の根元である脊柱のなめらかな動きが重要です。つまり、背骨の動きと呼吸は深く関係しているのです。


⊂絽綉筋と下後鋸筋


上後鋸筋は手の経絡で調整する


上後鋸筋は、息を吸うときに肋骨を引き上げて胸郭を広げます。下後鋸筋は、息を吐くときに、上がって行く横隔膜につられて肋骨が上がらないように下方に抑え込むはたらきがあります。2種類の筋肉について考察してみます。ツボを重ねてみると興味深いことがわかります。

上後鋸筋から説明します。
脊柱の第6頚椎〜第2胸椎から始まって、第2肋骨から第5肋骨で終わります。

  始まり       終わり

  第6頚椎 ーーーー 第2胸椎
  第7頚椎 ーーーー 第3胸椎
  第1頚椎 ーーーー 第4胸椎
  第2頚椎 ーーーー 第5胸椎

手の経絡


ここでツボとの関係を見ていきましょう。脊椎の7番と胸椎の1番の間には督脉という経絡に属する大椎(だいつい)があります。この大椎が冷えると背中や首筋がぞくぞくしてきます。かぜの引き始めによく見られる症状です。発熱する前であれば、この大椎に灸などを使って温める施術がよく効きます。

発熱して汗が出ているような状況になったら大椎は使いません。寒い日にマフラーをする意味というのは、この大椎を守るためです。すぐ近くには風門というツボがあります。まさに、という名前です。ただ、やはり引き始め(東洋医学ではま風邪が体内に侵入していない状態をみなす)は大椎の方が有効だと思われます。

大椎の下には、陶道(とうどう)というツボがあります。同じように督脉に属します。「陶」という字を調べてみると、「もやもやして晴れない」という意味があります。私はこの意味が見逃せないと思っています。呼吸と精神との関係を感じとれます。

次に、上後鋸筋が終わるところに注目してみましょう。肋骨に終わっているのですが、その肋骨の高さには次のようなツボがあります。

 第2(3)肋骨 風門
 第3(4)肋骨 肺兪
 第4(5)肋骨 厥陰兪
 第5(6)肋骨 心兪
 
肺兪というツボがあり、二つ下には心兪というツボもあります。心肺機能と深い関わりを感じます。間に「厥陰」という現代では見慣れない言葉があるのですが、ちょっと難しいのでここでは割愛します。臨床的に、心肺機能を整えるのに重要なツボであるとだけ書いておきます。

ここで経絡を考えてみましょう。経絡と臓腑は関連づけられています。肺兪、厥陰兪、心兪と関連が深いのは、それぞれ手太陰肺経、手厥陰心包経、手少陰心経です。全て手(腕)にあります。しかも、陰経と言われる内側です。

上後鋸筋は息を吸うときに肋骨を引き上げて胸郭を広げるはたらきであることを思い出してください。手の経絡の陰経は吸気と関係が深いと言えるのです。

下後鋸筋は足の経絡で調整する


次に下後鋸筋です。

下後鋸筋は、第12(または11)胸椎〜第3腰椎から始まり、第9胸椎から第12(または11)で終わっています。終点の高さに注目すると、次のようなツボがあります。

 第9(10)胸椎 肝兪
 第10(11)胸椎 胆兪
 第11(12)胸椎 脾兪
 第12胸椎(第1腰椎) 胃兪

始まりの高さに注目すると、次のようなツボがあります。

 第1(2)腰椎 三焦兪
 第3(3)腰椎 腎兪

足の経絡


それぞれの名前のつく経絡は、足太陰脾経、足陽明胃経、手少陽三焦経、足少陰腎経です。一つ例外がありますが、足の経絡です。

ここでも思い出しましょう。下後鋸筋は息を吐く時に肋骨を下方に抑え込むはたらきです。つまり、足の経絡は呼気との関係が深いと言えるのです。

このように人体の構造と経絡を結びつけて考えると面白い発見があります。患者さんが「吸うときに嫌な感じがある」と訴えるなら、手の経絡(陰経)に注目すればよいですし、「吐く時に嫌な感じがある」と訴えるなら、足の経絡に注目すればよいのです。

手と足で呼吸のサイクルをつくっていると考えることもできます。四つ足動物なら手と足が協調して動くので説明するまでもありませんが、私たちヒトも手と足の協調が大切です。デスクワークばかりしていると呼吸のバランスが崩れてしまうのです。


上後鋸筋は隠れた肩こり筋


肩こりの原因として僧帽筋ばかり取り上げられますが、なかなか治らない病的な肩こりは、上後鋸筋が関連していると考えています。肩こりが取れた瞬間に呼吸が深くなったと感じた経験はありませんか? まさに上後鋸筋が正常にはたらいて深い呼吸ができるようになったからです。

肩こりの原因は僧帽筋だけじゃない"


肩こりの重要な筋肉だといっても、マッサージではほぐしにくいのです。だから、マッサージしても取れない肩こりは、上後鋸筋が原因になっていると言えるのです。

直接鍼をしようと思ったら、肩甲骨の内側が使えます。上後鋸筋が終わるところです。この辺りのコリを訴える方は多いです。初診ではしっかり肋骨を触診し、肋骨に付着している緊張を狙います。

上後鋸筋は腕の経絡(陰経)と関係していることを思い出せば、腕を揉みほぐすことも有効です。鍼灸では肘まわりのツボを使うという手があります。

そして、忘れてはいけないのが上後鋸筋は下後鋸筋と連動していることです。つまり下後鋸筋を整えるという発想も大切なのです。肋骨上の緊張を狙うほか、下腿を揉みほぐすことや、膝周りのツボを使うという手があります。

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はりきゅう養気院(群馬県/伊勢崎市)
はりきゅうルーム カポス(東京/品川駅)
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yoki at 19:47│Comments(0)

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