2022年05月18日

鍼治療の遠隔アプローチ(肋骨を使った手指の調整の例)

鍼治療には局所的アプローチと遠隔的アプローチがある


鍼治療には、痛みなどの症状があるところに直接鍼をする局所的なアプローチ方法と、症状のあるところに作用するツボを使う遠隔的なアプローチがあります。ときに「痛いところにするのが鍼治療」と誤解されていると思うことがありますので、鍼治療の魅力を「遠隔」をキーワードに書いていこうと思います。

まずは、こちらの動画(約1分)をご覧ください。



今月開催したセミナーでの一幕です。指の関節の曲がりが悪くて完全に曲がりません。一般的には、これは指の症状であり、指の関節に原因があると考えます。指を繰り返し曲げたり伸ばしたりするようなリハビリを繰り返して、少しずつ改善を促していきます。

鍼治療のスゴイところは、改善に日数がかかるような症状でも瞬間的に変化が出ることです。もちろん理由があります。リハビリなどの一般的治療と鍼治療では何が違うのでしょうか。

第一に、原因のとらえ方が違います。一般的には指の関節に原因があると考えて、指の関節そのものにアプローチします。前腕にある指を動かすのに使う筋肉をマッサージするなどの方法もあります。

鍼治療ではツボを使用することができます。患部(悪いところ)の周辺に発生する硬結(筋肉の中に生まれる硬いところ)をツボと呼ぶこともありますが、離れたところに作用を届けられるのが本当のツボと考えることもできるのです。


解剖学では説明できない人体のしくみ


動画の症例でアプローチしたのは肋骨です。「なぜ肋骨?」と思われるかもしれませんが、これを構造的に理解するのは少し難しいかもしれません。なぜなら、肋骨の筋肉と指をつなぐ構造がないからです。人体の構造を理解しようとする学問は「解剖学」と言われていますが、この解剖学には限界があります。

この症例のようなアプローチを解剖学から発想することはできないのです。皮肉なことに、勉強すればするほど、解剖学的な視点にとらわれてしまうのです。

鍼治療の担い手である鍼灸師は、解剖学的に説明できないカラダの変化を頻繁に目にします。解剖学では説明できない仕組みがあることを感覚的に理解できます。


肋骨と肩甲骨の関係


肋骨と肩甲骨の関係をみていきましょう。

肋骨は内蔵を守る役割を担いながら呼吸運動を助けるはたらきを担っています。肋骨は筋肉に覆われています。肩甲骨にも覆われています。

その肩甲骨は鎖骨を介してくっついているだけで、肩甲骨は体幹と直接つながっていません。肋骨に乗っているような構造です。この構造のおかげで、ヒトは腕を自由に動かすことができるのです。

肩甲骨は体幹に乗りながら自由に動くいっぽうで、完全に自由であると体幹から離れて身体が壊れてしまいます。そうならないように、肩甲骨は体幹との間で張力を保っています。この力の加減は絶妙かつ巧妙です。弱すぎれば肩甲骨は体幹から剥離し、強すぎれば凝り固まってしまいます。

肩こりは肩甲骨の動きが悪い状態


肩甲骨にはさまざまな筋肉がくっついています。

・肩甲挙筋
・前鋸筋
・菱形筋
・広背筋
・僧帽筋

これらはぜんぶ肩こりの人が訴える筋肉ですから、肩こりは肩甲骨に関連する筋肉の不調和と言ってもよいです。ですから、私は「肩こりを治す=肩甲骨の動きをよくする」と考えています。凝っている位置を確認することは大切なのですが、肩甲骨がちゃんと動いているか、という目で観ることも大切です。


しつこい肩こりは呼吸筋が原因


ただ、これらの筋肉が肩こりのすべてではありません。このほかに、呼吸に関わる筋肉が肩こりに関わっています。上後鋸筋です。前回のブログに詳しく書いたのですが、一言でいうと肋骨にくっついている筋肉です。もっとも深層にある筋肉で、しつこい肩こりを治療するときには、見逃したくない筋肉です。

この上後鋸筋がカタくなると肋骨の動きが悪くなるので呼吸が浅くなって、背中が重くなります。


理由はわからなくても再現できる法則


ここで肋骨と指の動きが関係するという話に戻ります。理由はよくわかりませんが、肋骨を動かしている上後鋸筋が緊張してカタくなると、指の関節もカタくなってしまうのです。

「その証拠を見せろ!」と言われると困るのですが、上後鋸筋の緊張を取ると指の動きがよくなるので、そうとしか言えません。

「なぜか?」という理由は研究者に任せて、私は臨床に役立つ関係性をお伝えすることに専念します。それにしても不思議です。


鍼治療ならではの効果を追求する


何層にもなっている背中の筋肉の中で一番奥にある上後鋸筋にアプローチできるのは鍼くらいです。ですから、こうした関係に気づけるのは鍼灸師だけかもしれません。カラダには、これに似たような関係性が数え切れないほどあります。

患者さんのお体に鍼をしていると、思いもよらぬところに効いていることがあります。反応ルートのすべてが解明されているわけではありませんから、鍼治療している鍼灸師は気づきの毎日なのです。鍼を通じて知られざるカラダの仕組みに出会えるのは、鍼灸師の特権であると思います。

病院で治らない症状が鍼で治ることがある、というのは不思議なことではないのです。鍼でしかできないアプローチがあるからです。けっして「病院で治らなくて鍼なら治る」という意味ではありませんが、病院医療のスキマを埋めるのに間違いなく役立っています。

こうした鍼治療に興味のある専門家の方は「整動鍼の理論」もご覧ください。

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はりきゅう養気院(群馬県/伊勢崎市)
はりきゅうルーム カポス(東京/品川駅)
整動協会(鍼灸師のための臨床研究会)


yoki at 17:13│Comments(0)

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