2023年04月13日
開業20周年の今日、これからの鍼灸師に伝えたいこと

開業20周年
おかげさまで、本日4月13日に開業20周年を迎えることができました。最初、開業して食べていけなかったら、バイトをしながら食いつないでいこうと思っていたので、この20年目を迎えられることに何とも言えない気持ちです。嬉しいというか、ホッとしたというか。
開業したばかりの頃は、長男も小さかったので、スタッフルームに連れてきて妻が世話をしながら仕事をしていました。鍼灸師ではない妻は、受付や事務作業などの業務を担当していました。時々、長男が泣き出すと、患者さんは「あれ?赤ちゃん?」と不思議そうにされていました。
当時を知る患者さんが来院すると「小さい子がいましたよね」と当時の通院の話になることがあります。おかげさまで、そんな長男は高校に通うまでになりました。
子育て経営
ある意味で、鍼灸院経営は子育てと同じようなところがあります。その時期によって必要なことが変わるし、時代によって常識も変化します。東大生のお母さんの子育て術が当てはまるとは限らないように、成功者のやり方をそのまま真似しても上手くいくとは限りません。
人も鍼灸院も思い通りにはいきません。人それぞれ歩みたい人生があるように、鍼灸院にも歩みたい道があるように思います。鍼灸院の経営者で所有者ではあるとはいえ、患者さんが通う施設です。血が通っている生き物のように思います。
そう思うと、鍼灸院経営はコントロールしようと思うより、鍼灸院の声を聞きながら進みたい方に手助けしてあげる方がよいと思うようになりました。
うちのような零細企業に、一般的な企業経営を持ち込む必要はないと思っています。ましてや、背伸びしてアメリカのGAFAMを真似する必要なんてありません。というよりも、いくら背伸びをしても届かないわけで…。私が見るべきは別にあると思うのです。
売上よりも大切なこと
小さな鍼灸院を育てながら自分も一緒に成長できれば十分と考えています。ですから、会社の規模を大きくしようとは思っていません。現在、20年前に始めた群馬の養気院と、9年前に始めたカポスの2院があります。この2院を9名で営んでいます。
私にとって、ちょうどいいサイズは大きくないと思います。安定して心地よいサイズは、今より少しだけ大きなチームかもしれません。
これは、あくまでも私の場合ですので、大きな会社と大きな売上を目指す鍼灸師がいてもよいと思います。鍼灸を産業といえるほどに押し上げる鍼灸師も必要だと思います。
という事情があるので、現在はスタッフの募集を積極的に行っていません。一緒に働きたい人が現れたらチームに迎え入れようと思います。不思議なことに、うちで社会人をスタートさせるスタッフがいるいっぽう、もともと別の鍼灸院を経営していた者もいます。
私自身も含めて、スタッフが才能を活かせる場であれば、それで十分です。
ですから、売上を年々伸ばしていくという目標はありません。チームの人数に応じた売上があればよいと思います。現在の売上が十分ではないときは売上を伸ばす努力をします。スタッフに貧乏をさせたくはありませんから。
環境が人を育てる
以前は熱心にやっていた社員教育ですが、今はやっていません。我が子が勝手に大きくなったように、私が育てようと思わなくても、スタッフは勝手に育つと思うようになったからです。経営者として私が取り組んでいるのは環境づくりです。
自分で用意しようと思ったら大金がかかる環境をあらかじめ用意しておくことが経営者としての責務であると考えています。この環境はスタッフだけでなく私の成長も促してくれます。私もスタッフと一緒に仕事をしながら、また練習に付き合いながら多くの気づきを得ています。
ただ、一口に環境と言っても合う合わないがあると思います。うちが用意した環境がベストとは限りません。合った環境が別にあると思います。雇用を始めてから10年近く経つので、退職者もたくさんいます。どうしても合わない人はいます。水が合わないのは誰のせいでもありません。
私の雇用に対する意思もだいぶ変わり、以前は「栗原さんの技術を学びたいです」と学習意欲をアピールするのが上手な人を採用していました。面白いことに、例外なく3年で退職していきました。
採用する側もされる側も「研修」に重心が偏りすぎていたのです。基本は働く場です。そんな簡単なことを見落としていたことに気がついた私は、採用の方針をガラリと変えました。
アピールする学習意欲は完全にスルーして「ここで一緒に働きたいです」と職場としての環境に魅力を感じている人を採用するようにしました。すべての採用がうまくいったとは言えませんが、少しずつ噛み合ってきているように思います。
この20年は試行錯誤の連続でした。この鍼灸院の経営者という立場が私を育ててくれました。これからもそうだと思います。
これからの鍼灸師に伝えたいこと
私とは時代も違うし環境も違います。だから、私は見本になれません。私にできることがあるとすれば「試行錯誤を続けていれば何かしら見つかる」と伝えることくらいです。
このブログははじめてから18年以上経っていますが、ここに記されているのは、成功法則でもなんでもなく試行錯誤です。
ブログを始めた頃、18年後の今日を想像できていませんでした。それどころか、いつまで鍼灸師を続けていられるかくらいの感覚でした。
鍼灸で食べていける人は一握り。やめてしまう人が多いのが現実です。免許をとった人が全員食べていけるようになったらいいとは思っていません。向いていない人は向いていません。
向いているか向いていないかを判断する前に「本当にやるだけのことはやったのか」と問いかけてほしいのです。運よく成長できる環境を手に入れられる人はごくわずかです。たいていは、自分で環境を取りに行かなければなりません。待っていてもやってきません。
動けば失敗もするでしょう。というより、必ず何か失敗します。そういうものだと思って行動するしかないのです。もちろん、患者さんに迷惑をかけたり、鍼灸の信用を落とすような行為はNGなのですが、就職活動や企画の失敗は、相手に謝ればなんとかなります。誤ってなんとかなる失敗はしておいた方がよいです。
続けてさえいれば、自分なりの何かが見つかるかもしれません。とはいえ、誰もがそうであるとは限りません。あきらめて別の業種に移ることも勇気です。
とりあえず、試行錯誤をしてみなければ何にもわかりません。本当の面白さも試行錯誤の向こうにあります。
一人では何にもできない
ここまでの話、私の努力みたいな書き方になってしまったかもしれませんが、私一人ではどうにもなりませんでした。家族の支えがあって今があります。鍼灸師の仲間や業者の方々にも支えられています。
私の知らないところで味方をしてくれた人もいるはずです。今でも、私の至らぬ点をいろんな人がカバーしてくれています。感謝しきれません。
鍼灸師人生も折り返しに入っています。これまで支えられてばかりでしたが、これからは支える側になっていかないといけないと思います。
鍼灸師をいつまで続けるかわかりませんが、海外に日本の鍼灸を伝えていくという目標があるので、しばらくはやめないと思います。

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