2023年12月02日

経絡(けいらく)の始まりを探る

前回の記事と一部重なりますが、今年は鍼灸師人生で大きな節目ということで現在の気持ちを残す意味で意味で改めて違った角度から書きます(10年後、自分が書いた記事を読むのが面白い)。

今年が節目となる理由は整動鍼のカリキュラムが完成したからです。10年かけて10編をリリースしました。と言っても、この記事で私のことを知った人は何のことやらとなっていると思いますので、私の活動と経歴を簡単に説明します。


人生を変えた活法


鍼灸院は開業したのは20年ほど前です。そして14年ほど前になりますが2009年にセミナーを事業として始めました。最初は活法(かっぽう)という古武術由来の整体からでした。この技術の出会いと伝えるという経験が私の鍼灸師人生を大きく変えることになりました。

「なぜ鍼灸師なのに整体?」と思われるかもしれませんが、当時、技術の伸びに不安を抱えていた私は整体にヒントを求めに行ったのです。私が担当している患者さんは、私が今も整体の講師をしていることを知らないので「整体にも行って歪みを直してもらった方がいいですか?」などと聞いてきます。

臨床の現場では話が長くならないように「整体もできるんですよ」と口にすることはありません。本当は「鍼や灸で整体をしている」と言いたいのですが、混乱させてしまうことを懸念して飲み込んでいます。

整体を定義するのは難しいのですが、「骨の位置を直す」のが整体だと認識されている方が多いです。うちの鍼灸院で「整体にも行った方がいいですか?」と尋ねてくる患者さんは、鍼灸で痛みやしびれが取れても、ちゃんと骨格を直さないと根本治療にはならないのではないか、と考えているように思います。

鍼灸では整体のように骨格の調整ができないというのは誤解です。本当は「そもそも整体とは」という話をしなければいけないのですが、早く本題に入りたいので割愛します。鍼灸が骨格に作用しているという話をしようと思います。


ツボと連動


活法という整体を通じて身体の連動を学びました。一見関係なさそうなところが関係しているなんてことがたくさんあるのです。鍼灸学校で解剖学や運動生理学は勉強するのですが「連動」に着目しません。トレーナー志望の学生が自主的に学んでいたという印象です。

ですから、たいていの鍼灸師にとって「連動」という視点は馴染みがありません。ですが、ツボに鍼をすると連動に変化が起こるのです。連動しているところは刺激したツボから離れていても変化が起こるのです。

意識をせずとも、鍼灸師がツボに鍼灸で刺激をすると動きが変わっているのです。ただ、多くの鍼灸師がそこに注目していませんでした。せっかくのツボの効果に気づかず素通りしている状況にあったのです。

私の中に使命感のようなものが芽生えました。

ツボと動きの関係を明らかにするというテーマが目の前に現れたのです。活法で起こる変化を鍼で再現できないかと考えながら施術をするようになったのです。


「古武術鍼法」改め「整動鍼」に


得られた知見は、古武術へのリスペクトから「古武術鍼法」と名付けたのですが、古武術の印象が強すぎて、本来伝えたい「ツボと動きの関係」が隠れてしまうので翌年には「整動鍼(せいどうしん)」と呼ぶようにしました。

「体を整える」という意味の「整体」になぞらえて「整動」を採用し、鍼を中心に使うので「整動鍼」と名付けました。説明しなくても「動きを整える鍼」とわかるようになりました。

2014年、今から9年前のことです。


脊柱を軸に理論を組み立てる


この整動鍼は、理論の軸を脊柱に設定しました。脊柱が自由に動く状態が健康であるという基準をつくりました。真っ直ぐか曲がっているかより、可動性を重視します。曲がっているように見えても不自由なく動けば問題なしと考え、逆に真っ直ぐに見えても動かなければ問題ありと考えるのです。

四肢(腕や脚)の動きは、脊柱と連動しているのだから問題が生じれば脊柱に現れるとシンプルに考えます。このシンプルな考え方から出発し、どことどこが関係しているのかを調べ続けて、テーマごとにまとめました。それが整動鍼のカリキュラムで10年続けてきたものです。

鍼は連動を探すには最高のツールです。極点を刺激できるので、その刺激の応答が極めてシャープに現れるのです。変化したところがピンポイントでわかるということです。

鍼でなくても手を使って周辺の筋肉を揉みほぐしても変化は出るのですが、変化が出るところが広くなるので、どこに作用しているのか、その一点を知ることが難しいのです。

鍼は点で効くので点で変化が起こります。

点しか変化しないことが臨床でのデメリットにならないように、動きの起点になるところを対象にします。簡単にいえば、動き始めで重要なところを狙うのです。初動が良くなると周辺に波及していきます。

こうした動きの調整を経験的にされている鍼灸師はたくさんいると思います。整動鍼のみが動きを整えられると言いたいのではありません。ツボが本来持っている「動きが整う効果」を探し出して整理したに過ぎません。


動くから痛みが取れる


患者さんが求めているのは、動きの改善より痛みの軽減だと言われることがあります。興味深いことに、動きが整うと関節や筋肉の負担が減るため痛みも軽減します。整動鍼は痛みを軽減させるという目的においても高い効果を示してくれます。

というより、痛みの改善が得意な方法なのです。整動鍼は、関節や筋肉を整えて痛みまで軽減させるという、患者さんが思い描いている整体そのものです。

この着眼点と実際の効果に多くの鍼灸師が興味を示してくれるようになりました。セミナーは初年度から満席になるほど大盛況。

コロナ禍という苦しい時期もありましたが、セミナーも10年続けてくることができました。最初は、1編しかなかったカリキュラムも今年で10編になりました。色々なテーマでやってきて、ようやく整動鍼の全体像を明らかにできました。


ツボとツボとのつながりを地図にする


整動鍼の理論は簡単に言えば、ツボとツボのつながりです。あるツボに鍼をすると、別のあるところに変化が生じます。さらにそこから変化が別にツボに伝わっていきます。連動の経路があるのです。よく知られた経絡(けいらく)とは、完全に別のルートです。つまり、ツボと動きの関係は経絡では説明できないのです。

整動鍼は経絡とは全く異なる理論です。整動鍼の理論を知っている鍼灸師にしか引き出せないツボの効果があります。この整動鍼ならではの部分に魅力を感じる鍼灸師に整動鍼を伝えてきました。
整動鍼の理論に着手してからゴールは経絡と決めていました。


整動鍼を通じて経絡の始まりを探る


たまに誤解されるのですが、私の目的は経絡を否定することではありません。整動理論を経絡より優れていると言いたいわけでもありません。まだ見ぬツボの効果に出会いたいだけなのです。

同じ身体を観ているのだから、異なる視点で追求していても出会うことになるだろうと、ぼんやりと思っていました。整動鍼に理論の始まりがあったように、経絡にも理論の始まりがあったはずです。

古代の人は、何かを観て経絡学説を仕立たのです。整動鍼を追求しているうちに、彼らが観たものと同じものに立ち会っているような感覚が芽生えてきました。何を観て経絡という発想に至ったのか、理論の始まりとなる原糸のようなものに興味が湧いてきました。

「経絡原糸編」と名付けた整動鍼の十番目。経絡をつくった鍼灸家の意識に触れることができるかもしれません。

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(2023年11月26日撮影)


カリキュラムは一区切りとなりますが、終わりではありません。むしろ、十の編を練り上げていくという仕事が始まります。また、臨床家として整動鍼を使いこなすという課題は存続します。理論をつくったからと言って使いこなせるわけではありません。むしろ、私より上手に使いこなす鍼灸師がこれからどんどん出てくるはずです。楽しみです。

こちらもよろしくお願いします。
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yoki at 23:48│Comments(2) 鍼灸 | セミナー

この記事へのコメント

1. Posted by 斉藤淳   2023年12月06日 19:59
私は当初、栗原さんのブログから活法に興味を持ち、最初に活法のセミナーに参加し、そこから古武術鍼法、整動鍼と続けて受講してまいりました。
今回の編をもって一旦一区切りとなりますが、栗原さんをはじめとしてこれまで関わってこられたスタッフの皆さんに敬意を表するとともに、素晴らしい理論・技術に出会う事が出来たことを感謝申し上げたいと存じます。
本当にありがとうございます。
2. Posted by クリ助   2023年12月16日 12:13
コメントありがとうございます。活法を始めた頃、今の状況を全く想像できませんでした。本当に人生わからないものです。

活法との出会いが、多くの鍼灸師との出会いに発展しました。本当に不思議です。整動鍼がここまでに至ったのも、私の取り組みに期待をしてくださった鍼灸師の皆さんのおかげです。こちらこそ、ありがとうございます。

一区切りですが一区切りでしかなく、整動鍼の進化は現在も続いています。引き続きよろしくお願いします。

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