2024年03月21日

鍼灸師の上手さはつくれる

鍼灸師の上手さはつくれる

今回は、上手い鍼灸師とそうでない鍼灸師はどこが違うのかという話です。私が上手さを追求してきたなかで、どこに着目しているのか、どういうことを上手いと思っているのかという話です。人によって何ができることを上手いと考えるかは違うので、私なりに意識して取り組んでいることを記していこうと思います。

鍼灸院や鍼灸師を選ぶときの参考になれば嬉しいです。同業の鍼灸師の方もぜひ一読ください。ヒントになることを書こうと思います。私は、鍼を刺すであるとか、灸をすえるという動作ではないところに上手さの本質があると考えています。


丁寧さをつくる


技術の基本はなんと言っても丁寧さだと思います。心がけの話をしても仕方ありませんので、丁寧さが具体的にどういう所作から生まれるのか、という話を書きます。

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触れる前に「触れますね」と言うのと言わないのでは印象がまるで違います。この仕事に慣れてくると、手が勝手に患者さんの体に触れてしまいがちですが、触れられる方は慣れているわけではありませんので、しっかり言葉がけをしてから触れるようにして驚かさないようにすることが大切だと思います。

触れるだけでなく、患者さんの後ろなど見えないところに移動するときも予告をするように心がけています。手元のカルテにメモをするとき、鍼灸の道具の準備をするときも、初めての患者さんは「何しているのだろう」と不安の種になってしまうことがあるしょうから、言葉に出してから行うようにしています。

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指先からグッと押すような触れ方は絶対にしないようにしています。目的の患部がピンポイントであっても、患者さんの体のどこかに手にひらなどを触れてから、指先を患部に持っていきます。指先で怪我から触れたからいって怪我するわけではありませんが、指先には爪がありますから患者さんの警戒心を刺激してしまいます。

学校で教わっていることかもしれませんが、慣れてくるとテキトーになりやすいので、経験を積んでいる鍼灸師ほど気をつけた方がよいです。

手掌の真ん中から動かす


指の第一関節を曲げると、いわゆる鷲づかみになります。誰もが攻撃性や威圧感を感じます。爪が立つので爪が刺さるような印象になります。爪を短く切っていてもです。爪をちゃんと短く切っているのに痛いと言われるのはなぜだろうと思っていたら、第一関節を曲げる力で押していないか見直してみるとよいです。

では、どこから曲げるかといえば指の付け根の関節であるMP関節です。意識は手のひらの中央を意識するのがよいと思います。

鍼灸師の手の使い方(MP関節から曲げる)

ここには労宮というツボがあります。労宮に玉をおいて、その玉を手のひらで掴むような動かし方です。ベテランの鍼灸師でもやっていないことが多いので、新人のときに身に着けてしまうと、ベテランを凌ぐ丁寧な触れ方ができるようになります。


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基本は圧はまっすぐがよいです。圧を加えた指の第一関節を使って硬結(筋肉の硬さ)を探そうとすると、グリグリしているような印象になってしまいます。違うと思ったら、圧を抜いて少し位置をずらして圧を入れ直すようにしています。

イ罎辰り圧を抜く


ゆっくり圧を入れていくことは、あまりにも常識なので省略して、圧を抜くときの注意点のみを書きます。いろいろな鍼灸師に触診をしてもらう機会があるのですが、指をパッと離してしまう方がいます。本当にもったいないです。指の圧が抜けたときの反動で筋肉が緊張してしまいます。患者さんが座っている状態であれば、患者さんの重心を揺らしてしまいます。


■リズムをつくる


患者さんは担当することになった鍼灸師との相性を気にすると思います。どうにもできない相性はあると思いますが、リズムを合わせることによって、相性がよいと感じてもらえることが増えると考えています。私は患者さんによってリズムを変えています。患者さんの動くスピードやしゃべる速度に合わせるようにしています。

性格的に起因するリズムだけではありません。腰が痛くて動きが鈍くなっているときは、私もゆっくり動くようにしています。


■協力関係をつくる


施術は、施術者が患者さんに何らかの刺激を与える一方向的なものに思いがちです。私は、患者さんに協力してもらうように積極的にお願いしています。

手に触れるときは、私から触れに行くのではなく、患者さんに手を差し出してもらうように声がけします。こうするだけで、患者さんは施術の参加者のひとりになります。患者さんの協力をさりげなく引き出すことで、施術はスムーズになります。流れのよい施術は上手く感じます。


■感覚を共有する


私が新人であったとき、感覚の共有をしっかりやっている鍼灸師があまりいないことに気が付きました。臨床経験が少なくても感覚を共有することで上手く思われやすいですし、実際に上手くなります。患者さんが感じている痛みや違和感をピンポイントで触れるだけです。「このあたりですね」とエリアで把握する鍼灸師が多いので、私はミリ単位で「ここですか?」と確認するようにしています。

「ま・さ・に、そこです!」

と言われたらOKです。


■鍼と灸をする前に上手さが決まる


ここまで読まれていかがでしょうか。鍼や灸などの道具のさばき方を問われる前に、上手さを決める要素がたくさんあると気づいていただけたでしょうか。

もしかしたら「心がけ」というふうに思われるかもしませんが、すべて具体的なテクニックがあります。練習さえすれば獲得できる上手さです。

ひょっとしたら、こういうことは師匠のもとで見て学ぶことかもしれませんが、きちんと要素に分けてトレーニングすると数ヶ月で劇的に上手さが変わります。実際に社内研修で指導していて成果が出ています。


■活法から学んだ上手さ


体の使い方や触れ方の原則は「活法(かっぽう)」という古武術由来の整体術をお手本にしています。施術が劇的に上手くなる鍼灸師が多いのですべての鍼灸師におすすめしたいものです。活法から学んだ上手さはすべて「患者さんがどう感じるか」がベースになっているので、成果はすぐに評価として返ってきます。

活法にはいろいろな技があり、その技に取り組むことによって自ずと上手さが身についてきます。なぜかといえば、ごまかしが効かないからです。ここに書いたことを意識してやらないと技が上手にできないからです。技が上手くできてるかどうかは、受け手も術者も見ている人もわかります。

鍼灸は「鍼を刺す」と「灸をすえる」という行為の印象ばかりに意識が向いてしまい、他の要素に意識が回りません。

私は鍼専門のように見られますが、触れ方や体の使い方の基本は活法ですし、動きを整えるという活法の視点でツボ選びをしています。「活法はいつ使っているんですか?」と聞かれることが多いのですが、私の基本は活法ですから、答えは「常に」です。

活法の個別の技もたいへん便利で効果的なので、鍼をする中でさりげなく紛れ込ませて使うことがあります。ヒーローの必殺技のように技名を叫びながら使っているわけではないので、空気のようになっています。

先日、鍼灸師の仲間と活法の勉強を品川で行いました。

そのときの練習風景を紹介して終わります。

名人が何気なく使っている技法が言語化されているので、見て盗む必要もありません。10年、20年かかって気づくような大切なことが、その場でわかります。もちろん、“わかる”と“できる”は大違いですが、上手さの意味がわかればすぐに具体的な練習を始められます。

練習が終わると「面白った」という感想ばかりです。上達を実感しやすいのも活法の魅力です。

活法(三角筋の補助)

鍼灸師のセミナーですが、こんなふうに鍼を使わずに手で患者さんにアプローチします。これは、肩が痛い人に対して三角筋の働きを補助するようなテクニックです。患者さんが脱力できる安心感を作り出すようにします。


活法の触れ方(肩関節の牽引)

患者さんの手を引くときの手つきの一例です。患者さんの手のどこに、どうやって力を加えればよいのか考えながら練習します。これは手根骨に力を伝えています。術者の方は手の指を握り込まず、必要なところだけに握っています。この例では第4、5指は握っていますが、第2、3指は開放しています。ちゃんと意味があります。


活法の触れ方(手に触れる)

これも実技指導の一コマです。いつでも、患者さんの体に触れる時はふわっとなるようにしています。指の第一関節を曲げてつかみにいかないようにしています。


活法の触れ方(離れ方)

患者さんの体から離れるときの手の使い方です。はじめて知ったときは衝撃が走りました。背中に当てている手のひらをパッと離すと、患者さんは後ろに引かれるような感覚になって、ほんのわずかですが重心が後ろに引けてしまいます。それを防ぐために指の背面を当ててから離れます。不思議なくらい自然な離れ方になります。

こうしたテクニックはさりげなく使うものですから、患者さんにテクニックとして認識されることはないと思います。「触れ方が上手」であるとか「触れ方が自然」という印象、つまり上手いと感じます。

ツボ選びも刺鍼も鍼灸師の腕の要素ではありますが、触れる前、触れる時、離れる時、どの場面においても上手さは存在しています。私は運よく活法に出会って触れ方の初歩を学ぶことができましたが、こうしたコツを知らずに悪戦苦闘している鍼灸師もいます。

活法は世界に誇れる日本の技術であり作法です。一人でも多くの鍼灸師に届けるために、ささやかではありますが普及活動を続けていきます。


マキタの掃除機で掃除新しく買ったマキタの掃除機、いい感じ♪

最後までお読みくださりありがとうございました。

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yoki at 17:55│Comments(0) 技術論 | 活法

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