2024年04月28日
セミナーより論文の方が先という意見を見て思うこと

セミナーより論文や出版の方が大事という意見を見た
SNSにて、新しく体系化した技術は講習会よりも論文や書籍が先ではないか、という意見を見ました。誰に向けられた意見かわかりませんが、「整動鍼」という体系化したものをセミナーで広めている立場として思うところがありますので、私の目線から事情を書こうと思います。
あらかじめお断りしておきますと、反論を意図した内容ではありません。単にこういう理由があるんだと背景を書くだけですので、肩の力を抜いて読んでいただければと思います。
冒頭のご意見はとてもよくわかります。論文や書籍があれば、まずそれを読んで試して、深めたいと思ったらセミナーに行くという行動が取れます。無料に近い形で情報を手にして、それから有料のサービスを検討するという流れとなります。消費者の立場からすると、まずは無料お試しがほしいのは当然ですよね。
論文に整動鍼を書けない理由
それでは、まず論文を書かない理由について説明します。結論から言いますと、ぜったいに無理です。「ぜったい」と強い言葉になってしまいましたが絶望的です。
整動鍼では、まだ誰も言及していないツボの作用を100を軽く超える数含んでいます。また、A(刺激)→B(反応)というだけでなく、Bが引き金となって起こるCにも言及しています。そこから先もあります。論文に掲載できるとしたら、A→Bに絞り込んで書くしかありません。A→Bが不確かな状態ではB→Cを語れないからです。
それを積み重ねていくのが手順と思われるかもしれませんが、100を超える数の論文が必要となりますし、落合陽一が憑依して一週間に一つのペースで仕上げても700日です。臨床メインで仕事をしている私にはむずかしいです。仮に論文に全労力を費やしてしまえば、整動鍼の発展は少なくとも10年は止まります。
仮に論文ができたとしても、論文に専念することで臨床で実績が積み上がっていないので、見向きもされない可能性だってあります。あとですね、学術論文は整動鍼の宣伝になってはいけないので、整動鍼セミナーの内容とは距離を取る必要があります。
結局、整動鍼を一から説明しなければなりませんし、実績(症例)を示してほしいと言われるでしょう。だから、今はそれを積み上げて、論文が書かれるいつかのために準備を師ているのです。
書籍では伝えられないものが多すぎる
書籍の出版なら論文のように一つ一つエビデンスにこだわる必要がないので「こういう仮説ですよ」というノリで書けます。実際に、セミナーで使っているテキストがまさにそれですから。
出版したものをテキストとして使用するという方法もあります。ここからは私の考えになりますが、出版物で伝えられるのはごく一部で、私の力量ではきちんと伝えることはできません。
いちばん避けたいのは「効果がない」と判断されることです。セミナーを10年以上もやっているからわかるのですが、同じ文字情報やイラストを見ても、実際にやってみるとまちまちです。再現できるレベルまで身内で何度も確認してから外に出しているので、それを「効果がない」と判定されるのは、こちらとしても精神的に耐えられません。
あとは、出版してくれる出版社があるとは限りません。大量に売れるものではありませんから、仮に出せたとしても高額になるでしょう。PDFしてネットで販売する方法もありますが、そうしたなら「鍼灸師の本分を忘れて情報商材で儲けている」と陰口を叩かれるでしょうね、たぶん。
とは言っても出版についてはいつも前向きです。『ツボがある本当の意味』を出版してから5年が経ちました。次を出したい気持ちはありますが、整動鍼のカリキュラムを完成させることを優先してきました。
整動鍼の全貌を見ていない人は「10年もかかったのか」と思われるでしょうが、つくった側の立場から言うと、10年でまとめられたのは自分の能力からすると奇跡です。
施術室で朝から晩まで働きながら、夜間に執筆するとなると体力的に難しいです。体調を壊さないことが最優先です。一睡もせずにブログを書くとか、もうできません。悔しいですけど。
日々の臨床とセミナーだけで精一杯
できる範囲でやるという結論でやっているのがセミナーです。そういえば、以前に「セミナーをしている人は施術に専念していないので技術が信用できないので人を紹介しない」とSNSで公言している人がいました。
どういうふうに解釈するかは自由ですが、身内はみんな私が朝から晩まで施術をして、休診日はセミナー活動に費やしていることを知っています。セミナーは、デモンストレーションの施術と実技指導の連続なので、一週間休みなく鍼を持っています。もちろんたまには休んでいます。この調子で書くと忙しい自慢になってしまってカッコ悪いのでやめますね。
論文は私の仕事じゃない
論文を書く意義は十分に理解しています。でも、周りに求められているのは論文ではないと思うのです。新しいツボの作用を探すことを多くの方が望んでいると思います。
私が注力すべきは論文のネタになるツボの作用を探ることだと思うのです。論文は誰かが書いてくれたらいいのです。私が主宰する整動協会には200人を超える会員さんがいますので、きっと誰かがやってくれます。やらなければ、やらないでよいです。人に強いることは嫌いだからです。
とはいっても、私が見つけたツボはいつか誰かが論文にしてくれると思っています。期待せずに待っています。私が生きているうちでなくてもよいです。
内輪だけで盛り上がっているだけと言われても
私がこういう考え方ですから、整動鍼のセミナーをやっても「内輪で盛り上がっているだけ」と揶揄されることがあります。論文も書かず出版もしていないのですから、そう言われて当然です。
でも、その身内がどんどん大きくなっています。500人、1000人と身内が膨らんでいけばよいのではないでしょうか。もちろん、気をつけなければいけないのは組織の宗教化です。しっかり外と交流をもちながら、いろいろな価値観に触れて、いろいろな考え方を学んでいくことを忘れないようにします。
今年コラボセミナーを積極的に企画しているのは、こういう背景があります。
こちらもよろしくお願いします。
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