2024年05月26日

鍼灸が評価されるために必要なこと

今月は、NHKで立て続けに鍼灸の特集がありました。私は20年以上鍼灸の世界にいますが、こんなことは初めてです。

あなたが変わるトリセツショー ツボのトリセツ


冨永愛と巡る鍼灸・漢方薬の新たな世界


鍼灸をこのような位置まで引き上げてくださった先輩方や関係者の皆様にはどれだけ感謝しても感謝しきれません。頭が下がる思いです。

ようやくここまで来たと思う一方、満足できていない気持ちの方が強いです。鍼灸の効果に対する疑いは根強くあります。鍼灸が選択肢から外されていると思う場面がが多々あるからです。

私は鍼灸師ですから、鍼灸を受ける人の数を増やして利益を出したいという本音を隠すつもりはありません。最近流行りの「ポジショントークではないか?」という批判を浴びる前に「はい、ポジショントークです」と前置きしておきます。とはいえ、利益のことを考えて鍼灸師をしているわけでもないというのも本音です。

私が鍼灸の道に入ったのは、私自身が鍼灸院の患者だったからです。興味があって鍼灸院に行ったわけではなく、両親に連れていかれたという受け身なスタートです。鍼灸院に対してネガティブな感情がありました。そんな私が鍼灸師になり鍼灸院を経営し、鍼灸師が集う研究会を主催しているのですから、人生わからないものです。


「鍼灸がなくても困らない」という人


私自身がそうであるように、何かがきっかけで鍼灸が身近なものになります。「鍼灸なんてあってもなくても関係ない」と思っている人も多数いますが、そういう人はただ鍼灸特有の恩恵に気づいていないだけです。

¥灸でなければできないこと
鍼灸の方が早く解決できること
o灸の方がコストが低いこと

それは、この3つになると思います。

鍼灸師になると「集客しましょう」という話が中心になります。その前にこの3つを考えておかないと、整体や民間資格のセラピストの中に埋もれて消耗してしまいます。

「鍼灸の方がスゴイ」なんて言うつもりはありません。鍼灸の方が優れているところを探すことが鍼灸師の仕事です。この意識をもって仕事に取り組んでいれば、医療や慰安などのサービスの中に入っても存在感を失うことがありません。

逆の言い方をすれば、鍼灸の優れているところを見つけられなければ「良くなればなんだっていいでしょ」に言い返すことができず、提供するサービスの価値を見失っていきます。


エビデンスについて


私が鍼灸師をしてもっともストレスを感じる言葉は「エビデンス」です。鍼灸を否定する人は正義感が強い人だと思います。「効果が証明されていない非科学的な治療法は存在してはならない」という信念を感じます。ただ、その正義感は過去のものとなり、その正義感を振りかざせば振りかざすほど自らの無知を宣伝することになります。

『東洋医学はなぜ効くのか』によると、鍼に関するランダム化比較試験の報告数は2000年頃から急激に増えて2010年には6倍くらいに増えています(年間約50→年間約300)。

東洋医学はなぜ効くのか


鍼灸に効果があることは科学的に事実となっています。誤解されていることがあります。「効果がある」というのは全員に効果があるという意味ではありません。条件によって効果は変わりますので、時には効果がわからない人もいます。効果は100%保証ではありません。

繰り返しになりますが、鍼灸に効果があるというのは、全員が確実に恩恵を得られるという意味ではありません。ただし、鍼灸の現場では「効果があるときとそうでないときがある」という曖昧な態度は不信感につながります。鍼灸師は、各々の技量と経験によって効果が出せそうか判断しながら患者さんと接しています。

鍼灸師のウデによって効果が大きく変わることも事実です。効果があると感じている患者さんも、どの鍼灸師でも効果は同じと思っていないはずです。どうせなら、より高い効果を出せる鍼灸師の施術を受けたいと考えているに違いありません。


スキルについて


論文には、どのツボを使ったか書いてあるのですが、そのツボにどんな鍼灸師が行ったかまではわかりません。同じツボを使っても、スキルが高い鍼灸師が行ったなら、もっと大きな効果を示せたかもしれませんし、スキルが高い鍼灸師だから効果を示せたと言うこともできます。

実は、ツボの位置は鍼灸師によって違います。「正確な位置」という定義もあいまいです。1〜2ミリでもズレたら効果が出ないと考える鍼灸師もいれば、1センチくらいズレても問題ないと考える鍼灸師もいて見解はバラバラです。表面的な位置ばかりでなく、深さや角度の問題もあるので、ツボの位置だけでも複雑です。

刺鍼する際も、あまり痛みが出ない場合もあれば痛みを感じる場合もあります。刺入時の痛みも効果に影響しているでしょう。

上手さを評価することは現実的にむずかしく、公平性の高い情報をここに書くことはできません。ですので、私がどんな鍼灸師が上手いと考えているのか、個人的に思うことを書きます。

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古来から伝わるツボには名前があります。一つひとつ区別されているということは、それぞれに特有の効果があるからと考えられます。仮に、たくさんの鍼を同時にしてしまうと、一つひとつのツボがどのような変化をもたらしたのか確認できません。鍼の効果は、鍼の数で決まるわけでも刺激の強さで決まるわけではありません。ツボの個性を利用している鍼が効果が高いのです。

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このツボに鍼をしたら身体がどのように変化するのかを緻密に予測できる鍼灸師の方がウデがよいと考えます。その変化は受け手(患者)がわかるものが望ましいです。たとえば可動域です。動きが制限されていた関節が動き始めたらわかります。すべての症状で可動域に違いが出るとは限りませんので、触診を工夫して変化を共有することもできます。

5甸囘な変化を重視している


鍼灸の感想に多い「気持ちよかった」「軽くなりました」という言葉。その言葉を疑うわけではありませんが、客観的なものではありません。

検査に表れない不調を得意とするのが鍼灸という位置づけもありますから、客観性よりも患者さんの感覚(主観)が大切であると考えることができます。ですから主観的なものを尊重しながら、客観性を忘れない鍼灸師が望ましいと考えています。一つ前に書いた可動域もその一つです。

ぢ┯性を大切にしている


鍼には即効性と遅効性のどちらもあります。その場で変化がわからなくても1〜2日後から症状が軽減していくことは珍しくありません。また、何度か受けて初めて軽減する症状もあります。そういう場合、気づかないだけでその場で何かが変化しています。その変化を読み取って大切にしている鍼灸師はウデがあると思います。

タ佑茲辰篤によって使うツボが変わる


同じ症状でも、人によって原因は違います。たとえば頭痛一つとっても、候補となるツボはたくさんあるわけです。患者さんの個性や、その日の体調に合わせてツボを選択できる鍼灸師の方がよいウデをしていると思います。


ビジネスについて


鍼灸が評価されるために必要なのは、ウデばかりではありません。長年鍼灸に携わっていて思うことがあります。それは、稼いでいる鍼灸師しか相手にしない人がいるということです。ビジネスが成功しているかどうかだけが興味の対象なのです。

深いことを書くつもりはありませんが、経済的な成功が社会的地位を押し上げるという側面から考えると、たくさん稼ぐ鍼灸師が増えることは鍼灸が評価される一つの要因になるでしょう。ただ、個人的には、売上自慢ばかりしている鍼灸師がいたら距離を置きたくなります。


開業について



とはいえ、避けては通れないお金の話。鍼灸をビジネスで考えるなら、資本力に左右されにくい部類に入ります。資金がいらないと言ったら語弊がありますが、免許を取るための資金である数百万円と、加えて数百万円があれば施設や用具を用意することができます。勉強時間や練習時間などのコストを除いて計算すれば、1000万円があれば開業できるビジネスです。

個人的に1000万円が安いとは思いませんが、一般的に1000万円の資金で開業できるビジネスは、お金がかからない側に位置づけられるビジネスでしょう。

これは魅力であると同時に参入障壁が低いという大きなマイナスがあります。競合がひしめき合う中で存在感を示さなければいけない構造だからです。

鍼灸だけでもそうですが、街を歩けば国家免許を必要としない整体やマッサージ系のサービスに溢れていて、国家免許を持つ鍼灸師がその中に埋もれてしまいます。肌感覚として免許を持つアドバンテージはありません。免許は何の社会的地位も与えてくれません。

参入障壁が低い施術系ビジネスにおいて、免許取得費用を負担している鍼灸師はディスアドバンテージな状況と言えます。鍼灸師が開業するときには、こういう現実をすべて受け入れて同時に鍼灸の優位性をしっかり持たなければなりません。


パーソナリティについて


鍼灸師の誰かが有名になることで、鍼灸の知名度が爆発的に上がるということは考えられます。ただ、誰も望まないイメージで固まってしまうこともあり、良いのか悪いのかむずかしいところです。

鍼灸師は一人でも業が成り立つので、組織に属さず一人で開業してやっている人が多いです。その鍼灸師のパーソナリティが経営に大きな影響を与えます。患者さんにしても、技術的な差がわからなければ鍼灸師のパーソナリティが判断材料になるでしょう。

ただ、パーソナリティに偏りすぎるとタレント業になってしまうので、気をつけたいところです。


研究について


認知されるための方法としての王道はやはり研究だと思います。これについても私の目線から思うことを書きます。ちょっと自分のことを棚に上げてしまう部分もあるのであらかじめお断りしておきます。

鍼灸師は開業して一人で経営している場合が多く、研究をする余裕がないという現状があります。自分自身も含めて擁護すると、必要性はわかっているけれど目の前のことに追われてしまうのです。

オブラートに包まずに書けば、直接的な見返りがないのです。「君のように目先のことしか考えない鍼灸師がいるからいつまでも評価されないのだ」とお叱りを受けるかもしれません。

市井の鍼灸師から見て、研究のためにお金と時間を使える鍼灸師はほんの一握りです。鍼灸師として食べていけるかどうかの瀬戸際にいては研究のことは考えられません。

仮にがんばって研究にお金を使い執筆したとしても、収入が増えるわけではありません。広告費にお金を投じた方が収入が増えるという現実があります。

開業鍼灸師の立場からいうと、研究には経済的メリットがないのです。ないと言ったら言い過ぎですが、リターンが読めません。研究は投資として魅力的に映らないのです。

これで話を終わりにしたら未来がありませんので、現実的にできることを考えていきます。

鍼灸師が経済的余裕を持てるように


それができないのが問題だと言われたらおしまいですが、「経済的余裕を持たなければいけない」というのは避けては通れない考え方です。研究で評価される前に、目の前の患者さんに高く評価してもらえるように注力することが経済的余裕をつかむ第一歩です。

私は鍼灸師がみんな研究に携わる必要はないと考えていて、余裕ができた分だけでよいと思っています。

負担のない方法で行う


市井の鍼灸師の力を合わせて大きな力にするという考え方です。ドラゴンボールの元気玉と同じ発想です。いろいろな方法があると思いますが、私が取り組んでいるのは症例を集結させることです。鍼灸院はそれぞれ症例を持っているのですが、バラバラに持っていたのでは力になりません。

症例を書く手間はかかるにしても、慣れたら1症例30分程度で書くことができます。施術の結果に過ぎないので効果におけるエビデンスを示す必要はありません。一つひとつにエビデンスはなくても、症例が100例、1000例と集まるほど統計的な魅力が増してきます。

とはいえ、30分程度であっても見返りがなければ続けられません。私が用意したプラットホーム(ツボネット)では、集客に結びつくように設計をしています。症例を見た方から予約をいただけるようになっています。投稿した症例が50〜100くらいに達すると集客効果が生まれてくるようです。

現在、3400ほどの症例が集まっています。訪問者は右肩上がりで、PV(ページビュー)が月間46万に成長して、海外からのアクセスも増えています。

ツボネットの症例数

この数では満足できません。月間100万PVが次の目標です。私ががんばるだけでは増えませんので、参加する鍼灸師を増やさないといけません。

現在は、私が主宰する整動協会の会員に無料で提供しているだけですが、このプラットホームに可能性を感じる鍼灸師からの問い合わせも増えているので考える時期に入ってきています。

こちらもよろしくお願いします。
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インスタグラム(ほぼ趣味)

はりきゅう養気院(群馬県/伊勢崎市)
はりきゅうルーム カポス(東京/品川)
整動協会(鍼灸師のための臨床研究会)


yoki at 22:54│Comments(0) 東洋医学(中国医学) | 鍼灸

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