2026年05月11日
なぜ“あの先生”が選ばれるのか:合理の穴に落ちる技術屋

教える仕事
2009年からセミナー事業を行っているので「人に伝える」ことを仕事にして17年が経ちました。そんな私ですが、子どもの頃から教師に憧れて…なんていう背景はありません。でも振り返ってみると、教える仕事を学生時代から色々やっていました。これが自分でも不思議なんです。
大学生のときは、アルバイトで家庭教師、冬はスキー教師(当時は準指導員を所有)をしていました。変わったところでは健康運動サークルの先生の助手なんかもやりました。鍼灸の専門学校に入ってからは、塾講師で高校生を教えることに。このバイトは予習がきつくて3ヶ月でやめました。さっき書いたように「教えたい」という感情でやっていたわけでないのです。
鍼灸師になってからもセミナー事業を始めることになるなんて思っていませんでした。こういう書き方をすると仕事に対する情熱を疑われてしまいますが、私としては教えることは常に手段という位置づけでした。それぞれに目的があったのです。
たとえばスキー教師。お金がなかったので交通費もリフト券も買えませんでした。なので、宿に住み込みで入り、お客さんの食事の準備や後片付けをしたり、そして昼間にはスキー場に行って練習。こんなふうにスキーの腕前を上げて資格を取って、スキー教室に入り込んで…という流れでした。
塾講師は時給がよかったからです。お金に目がくらんで始めたんですが、毎回予習が必要だったので、実質的な時給は最低ランクに。3か月しかもたなかった理由はこれです。認識が甘すぎました。ごめんなさい。
合理には穴がある
前置きが長くなりましたが、今回はセミナーを長く運営してきた者として、セミナー事業から得られるもの、そして限界について書こうと思います。
セミナーをやってきてよかったのは、何をおいても同業者を中心に“人とのつながり”が増えたことです。全国各地に知り合いが増え、国境を超えたつながりもできました。“人とのつながり”は私との関係だけではありません。セミナーを舞台にして受講者さん同士がつながっていきます。「仲良くしているあの人とあの人はセミナーがきっかけだったなぁ」と声には出さずに楽しんでいます。
「鍼灸師として食べていく」ということに限って言えば、一匹狼でもよいと思います。ただ、私には無理です。「この仕事、最高だね」と言い合える仲間がいないと幸福感を得られません。好きなものでは合理を追求できないのが人間の性(さが)というものでしょう。そうはいいつつも、セミナーで提供する価値については合理をパッケージングするように努めています。内容にどれほどの経済的価値があるのかは理性で考えています。
一度セミナーに来てくださった方はわかると思うのですが、私の講義も実技も理論も合理で固めています。それをウリにしています。だから、私の説明が足りないと受講者を合理の穴に落としてしまうことがあります。合理の穴とは、合理的な施術ほど価値があると思って施術が事務的になることです。臨床の現場では合理的すぎるものは嫌われます。
評価の矛先
私は頭の中でシミュレーションしたことがあります。どんな症状にも効果がある魔法のツボがあったとします。そのとき、2つの使い方があります。一つ目は「こういうとき、よく効く定番のツボがあるんです」と言ってから施術をします。二つ目は「私だけは、こういうとき、このツボがよく効くと知っています」と言ってから施術をします。魔法のツボなので効果はテキメンです。
シミュレーションしたのは、施術を受けた方が何を「すごい」と評価するかです。一つ目はおそらく東洋医学。二つ目はおそらく施術をした鍼灸師。そしてファンが多くつくのは二つ目のパターンです。合理的な施術には代わりがあると無意識の中で判断がくだされるからです。直接的な言い方をすれば希少性を演出した方がファンがつきやすいということです。
実は、むかし言い方を変えて試してみたことがあるのです。著効が出たあとに「東洋医学ってすごいですよね」「鍼灸ってすごいですよね」と「東洋医学」や「鍼灸」を主語にした言い方をすると、患者さんがこう言ったのです。「鍼灸のこと、ちょっと疑っていたんですよ。こんなに効くとは思っていなかったです。近くにも鍼灸院があるので次からそっちに通おうと思います。」と。
「鍼灸師なら誰がやってもこれくらいの効果は出せます」と思われたら、近くの方が便利だと思うのは当然です。
だからといって「オレだから治せるんですよ、ドヤ!」ってのはダサいわけで、じゃあどうすればいいのかって考えたくなるのが私の性です。
つづく…
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yoki at 07:00│Comments(0)│
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