鍼灸院経営

2021年02月25日

後悔しない雇用(第1回)


自分が病気や怪我をしたときに不安だからと理由で雇用してはいけない


一人で鍼灸院をやっていると「自分に何かあったら…」と思うと不安なので雇用して収入を安定させたいという話をあちこちで耳にします。私はこういう話を耳にするたびに、強烈な違和感を抱きます。

自らの経験から断言できます。雇用しても経済的な不安は減りません。むしろ、不安材料は増えると思っていた方がよいです。

誤解しないでください。この記事は「雇用はやめた方がいい」と言うために書いているのではありません。「経済的な不安を解消するために雇用する」という考えで進むと失敗する可能性が高いことを、自らの経験から伝えたいのです。ストレートに言えば、雇用は経営者の不安解消の術にならないことを知ってほしいのです。


一人と二人では異業種


私は経営者としてまだまだですし、雇用してからの経験は7年しかありません。でも、これだけははっきり言えます。雇用する前と後では別世界です。鍼灸師を一人雇うだけでも、違う業種の仕事を始める覚悟が必要です。


彼の言う通りです。

どんなに想像力豊かでも雇ってみなければわからないことがあります。経験してきた者として厳しいことも書きますが、雇用で失敗して不幸になる鍼灸師が一人でも減るように、愛をもって自らの経験で得た教訓を惜しみなく出します。私のことが好きでも嫌いでも、将来雇用をお考えなら続きを読んでみてください。


スタッフに200%がんばってもらうつもり?


「一人で鍼灸院をやっていたら自分に何かあったら収入がゼロになるから鍼灸師を雇って大丈夫な状態にしておきたい」という考えは、一方通行な考え方です。

たとえば、一人雇って施術者が二人の鍼灸院になったとしましょう。そして、順調に患者さんが2倍になるという理想を想定してみます。この時の売上は2倍になっているわけですから、雇用したことでよかったなぁと思う状態です。

この順調な状態から、経営者が怪我をして施術ができなくなったと仮定します。一ヶ月くらいで復帰できれば問題は起こらないでしょう。しかし、半年以上お休みしなければならない怪我や病気だとしたら…。

お休みの間、雇っている鍼灸師(スタッフ)が100%がんばっても売上は半減ですよね。もし、今まで通りの売上にしなければならないとしたら200%の負担をスタッフに求めなければなりません。現実的に難しいです。負担の上乗せはせいぜい2割ではないでしょうか。そのスタッフのがんばりによって増えた売上を経営者がそのまま持って行くわけにはいきませんよね。

となれば、どのみち雇用しても自分がダメになれば売上は半減し、自分の取り分を確保することはできません。数人まとめて雇えば事情が変わりますが、その場合は固定費がいきなり数倍になりますし、スタッフを誰がまとめていくのか、という別の重い課題が降ってきます。むしろ経済的な不安もそれ以外の不安もケタ違いに増えてしまいます。


経営者に何かあって不安になるのはスタッフの方


経営者がある自分が施術できない状態になれば、自分が不安になるようにスタッフも不安になります。復帰の目処が立たなければ将来が不安になって、安心できるところを探すために退職するかもしれません。

責任感の強いスタッフであれば、「私ががんばっている間にゆっくり休んでください」となるかもしれません。だとしても、そこに頼るというのは違うと思いませんか。そもそも、スタッフは経営者の予期せぬ不幸に備えて働いているわけではないですよね。

ずばり言えば、経営者が体調を壊したらスタッフはやめていくでしょう。経済的な拠り所にしようと思って雇ったスタッフは、頼りたい時にはいないのです。


スタッフの不安を軽減するのが経営者の仕事


「何かあったら助けてもらえる」というのは、スタッフ側のメリットです。スタッフが病気や怪我をしても、経営者が穴埋めをできれば復帰を待つことができます。何かあってもすぐに職を失いません。雇用保険に入っていれば仕事ができなくなっても収入が途絶えません。

改めて書きますが、スタッフの存在は経営者の経済的な安心材料にはなりません。むしろ、スタッフの収入に責任を持つ立場になるわけですから、不安材料は増えると言った方がよいでしょう。


自分が不安なら保険に加入しよう


私は個人事業の時代から保険に加入しています。いわゆる生命保険やがん保険のことです。きっかけは息子が生まれたことです。自分に何かあったらこの子はどうなるんだろう...と思ったら心が不安でいっぱいになったからです。

現在は、個人と法人(経営する会社)で数種類の保険に入っています。私に何かあっても家族とスタッフの収入がプツっと切れないように備えています。

この記事は保険をすすめる目的ではないので、商品については書きませんし、質問されても答えません。経営者向けの保険は検索すればたくさん出てきます。

「病気や怪我が心配なら、雇用じゃなくて保険でしょ!」

と思うのです。雇用を不安解消の道具にしてはいけませんし、不安が増えることがあっても減ることはないと断言できます。不安材料が増えてもいいという覚悟がなければ雇用は諦めた方がよいとアドバイスします。

そもそもな話として「一人では不安なので雇用したい」という人の所で働きたい人はいるでしょうか。職場を探している人から見ても、経営者の不安が雇用の理由というのは的が外れていることがわかると思います。

次回は、孤独だからという理由で雇用するともっと孤独になるという話を書きます。
つづく…

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はりきゅう養気院(群馬県/伊勢崎市)
はりきゅうルーム カポス(東京/品川駅)
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2021年01月25日

不安をつくらない技術


臨床にデビューできる条件


ある鍼灸師から「研修した鍼灸師をデビューさせる時の基準ってなんですか?」と聞かれたとき、

「患者さんを不安にさせないレベルに達したら臨床でデビューさせます」

と答えました。

私を知っている人ほど意外な表情を浮かべます。普段セミナーで技術指導をしているので、技術を基準にした判断をしていると思われている気がします。

もちろん、技術レベルは大切にしています。でも、どんなに知識が豊富であっても、ツボの位置が正確にわかったとしても、患者さんが不安を感じていたら、よい結果にはなりません。

患者さんは、「体をあずけても大丈夫だろうか?」と判断するとき、術者の話し方や態度を見ています。それは理屈で説明しにくいかもしれません。人間も動物の一種として危険性を直感的に瞬時に判断する能力が備わっていますから、そんな機能が私たち鍼灸師に対しても使われているはずです。

ですから、技術的以外の部分も臨床で重要視しています。ですが、こういう部分にセミナーでフォーカスすることは滅多にありません。臨床ではとても大切なことではありますが、指導するとなったら欠点を指摘しなければなりません。きっと楽しいセミナーではなくなってしまいます。


不安をつくらないから安心が生まれる


この記事のタイトルをみて、なぜ「安心をつくる技術」ではなく「不安をつくらない技術」なのだろうかと思った方かもしれません。この記事で一番伝えたいことをタイトルにこめてみました。

日頃から臨床(施術)は、自分を含め減点方式で評価しています。なぜなら、臨床で加点しようとする心理は欲を生むからです。臨床では欲が敵になります。患者さんに「よくなってほしい」という気持ちだけで十分で、それ以上の感情は欲になってしまいます。

それは「よい評価を得たい」という感情であり、患者さんの気持ちに寄り添えなくなっている状態です。

がんばることもよくありません。臨床には用意してあるものしか持ち込めません。本番で120%の力が出るわけではありませんし、運良く出てもまぐれですから再現できません。そもそも臨床には減点要素がたくさんあって100点を取るのが難しいです。

臨床はいかに減点されないようにするかを考えています。

一番大きな減点要素は鍼灸師の健康状態です。どの仕事もそうですが、健康でなければよい仕事はできません。精神も安定しません。鍼灸師が不安定であれば患者さんに不安が生まれます。

次に、鍼灸師の言動です。私たちの発する言葉やしぐさ、すべて患者さんに伝わっています。ささいなことに発した「あっ」という言葉が患者さんを不安にさせてしまうこともあるでしょう。私も自分が気が付いていないだけで、患者さんを不安にさせてしまう言動をしているはずです。


行かない理由をつくらないという経営


鍼灸の効果はテレビやSNSを通じて拡散されているので、患者さんが鍼灸院に行かない理由は「不安だから」だと考えています。不安が期待を上回ってしまえば、鍼灸院に行くことはありません。

鍼灸院に足を運ぶ方も不安がないわけではないでしょう。「勇気を振り絞って来ました」という方が少なくありません。そういう方に「安心ですよ」と伝えても、あまり意味がありません。安心は売り込むものではなく、患者さん自身の中で生まれる感情ですから。

不安は不安材料があるから生まれます。私たちにできることは、その不安材料を丁寧に取っていくことだけです。不安材料が見当たらなくなった状態が「安心」です。安心づくりを、ケーキにデコレーションしていく作業のように考えないようにしています。

私は経営者でもあるので、利用してくださる方が多いほど嬉しいです。経営者としても重視しているのが「不安をつくらない」ことです。不安材料を探して削るようにしています。技術や鍼灸師の人柄はプラス要素ですが、いくらそこを磨いても、不安を感じる鍼灸師であったり鍼灸院であれば患者さんが来てくれません。


不安をつくらない技術


私が特に意識しているのは、目と声と間(ま)の3つです。

〔棔亡擬圓気鵑鮨燭団召宛る


「目は口ほどに物を言う」ということわざがあるように、人は相手の目から多くの情報を読み取ることができます。技術的に向上しても、目が泳いでいれば「自信がないのかしら」と思われてしまいます。自信なさそうな鍼灸師に身をあずけたいと思う人はいません。

謙虚さは必要ですが影で必要な心構えであって、患者さんの前で出しすぎはよくないと思っています。「まだまだ未熟者なので…」という態度は患者さんを不安にさせてしまいます。どんなに技術を磨いても上には上がいるのが技術屋の世界です。最高は約束できません。

その時点におけるベストを尽くすしかないのですから「今ある技術を出し尽くします」というメッセージを患者さんに伝えるべきだと思います。患者さんの目をしっかり見ることで、その気持ちが伝わりやすくなります。

自信というのは「何でもできる」ことを根拠にするものではなく、「できること」の範囲を知ることで生まれる感覚だと考えています。つまり、「できること」と「できないこと」をしっかり区別できることが自信の根拠になるのです。


∪次砲呂辰りと発声し即答する


私は滑舌がよくないので、発声に気をつけています。モゴモゴしたしゃべり方では伝わりにくく、伝わらないということは不安になります。時には即答が難しい質問をいただくことがあります。

答え方に迷って考え込んだりゴニョゴニョと話してしまうと患者さんに余計な不安を与えてしまいます。私は、難しい質問だと感じたら、体裁よく答えようとせず「難しい質問ですね」と即答してしまいます。必ずしも、どんな質問に対しても手を動かしながら答える必要はないと思っています。

難しい質問への対策として私が推奨するのは、「はっきりと発声する」というルールを自分の中につくっておくことです。はっきりした言い方しか許されないと決めておくことで、わからないときは「わからない」と答えるしかありません。または「難しい質問なので時間をください」と言うこともできます。

私の経験では、答えられないことがあっても、それが理由で患者さんは離れていきません。しかし、不安を感じたら離れていきます。

自信ができたらはっきりと発声するようになると考えていたら、それまでの患者さんはその様子を見て不安になり離れていってしまいます。自信がつくどころか、自信がどんどん落ちていきます。はっきりと発声することで患者さんは安心し、施術を継続的に受けてくれるようになります。そうなると結果が出る機会も増えて自信がつきます。


4屐謀度な距離感


もっともセンスが問われるところかもしれません。「適度」としか表現できない距離感は、患者さんの性格にもよりますし、年齢によっても変わります。初回と2回目以降でも異なります。術者のキャラクターによっても異なります。総合的に判断してその時その時の距離感をつかむしかありません。

ここでいう距離感とは、患者さんとの物理的な距離だけでなく心理的な距離も含みます。近づきすぎて馴れ馴れしすぎたら「なにかあるのかしら」と不安になります。離れすぎていたら他人事のように扱っていると思われ「ちゃんと親身になって診てくれるのかしら」と不安になります。

考えてやることではないという意見もあるでしょう。できている人にとっては当たり前の感覚かもしれません。生まれ持ったセンスを否定できません。と言いつつも、普段から意識することで距離感は磨けるものと信じています。

日本語の「間」という言葉は本当に便利です。物理的な距離、心理的な距離、そしてタイミングまでを同時に含むからです。間を制する鍼灸師が臨床を制すると私は思っています。


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2020年11月05日

品川で鍼灸院+セミナールーム+α」のつづき

はりきゅうメイトで鍼灸師の孤独を解消する


品川のはりきゅうルーム カポス(以下、カポス)は来年の1月に移転します。移転先は港南口です。現在は鍼灸院専用で物件を借りていますが、広めにしてセミナールームを兼ねます。そして、さらに加わるが「はりきゅうメイト」という部屋です。誰のために何のために行うのか説明します。

はりきゅうメイトは、

・鍼灸師の仲間づくり
・鍼灸師のファンづくり


に視点を置いた鍼灸施設です。鍼灸師の孤独を解消するメディアとして考えています。鍼灸師が感じる孤独の背景には、〔筏を活かせる所に就職できない、開業しようと思っても相談相手がいない、5蚕囘な相談をする相手がいない、などあります。

この3つの孤独を同時に解決する方法として、はりきゅうメイト(以下、メイト)を考えました。それでは具体的に説明します。メイトに登録した鍼灸師は、カポスと同じフロアに併設される施術室を使うことができます。ある意味ではレンタル施術室です。施術室をもたない鍼灸師が必要な時だけ借りることができます。

品川セントラルガーデン
品川セントラルガーデン



鍼灸師を顔で選ぶ


これだけでは、一般的なレンタルスペースと変わりません。メイトは情報する共通のプラットホームを持ちます。

各個人が発信する情報を同じウェブサイト上に集めて、品川周辺で自分に合った鍼灸師を探している人に届けます。カポスと競合する可能性もありますが、それよりも相乗効果の方が期待できます。メイトから発信するのは鍼灸師の個性です。個性といっても飾った演出ではなく、ありのままでよいのです。

鍼灸師は、鍼灸師である前に一人の人間です。患者さんは治るところに行きたいと思っていても、施術者の顔が見えない鍼灸院では不安だと思います。どこの鍼灸院もスタッフの顏が見えるように工夫をしていますが、メイトではさらに強調してスタッフの顏が見えるようにします。メイトに登録する鍼灸師は自営業者として扱われます。独自の、ブログ、ウェブサイト、SNSから情報発信をします。


鍼灸師が持つスキマ時間を社会に役立てる


よりたくさんの人から知られるように、メイトも独自のウェブサイトを制作し、そこをプラットホームとして各鍼灸師への動線をつくります。個別に努力して情報発信をして、施術室の家賃を支払いながら患者さんを待つ必要ありません。予約が入った時間帯だけメイトの施術室を使えます。

開業資金や家賃を気にすることなく開業ができます。メイトはすべての鍼灸師に向いているとは言えません。本格的に開業して丸一日施術したいと思ったらメイトは規模が限られてしまいます。メイトは、本格的な開業前の準備期間としても利用できます。

また、午前だけ開業したい鍼灸師であるとか、勤務が終わった後や職場がお休みの時だけ、に自分で集めた患者さんを1〜2名だけ施術したい人に向いています。また、アパートの一室に男性の患者さんを招くことに抵抗がある女性鍼灸師にも最適です。


鍼灸師の才能を眠らせたくない


活躍したくても機会や環境に恵まれない鍼灸師はたくさんいます。「機会や環境を自分でつくるものだ」と言ってしまえば話が終わります。自分が通ってきたから自信を持っていえますが、自分の能力を発揮できる所にたどり着くまで大変でした。自分の努力もありましたが、けっして自分一人の力だけではありません。影から支えてくれた人がいました。

鍼灸師の免許を持っていてやる気に満ちていれば軽い審査でメイトに登録できるようにする予定です。学派や流派は問いません。私と同じ整動鍼である必要はありません。

メイトから大きな収益を上げる予定はありませんが、ボランティア活動ではないので、コストを回収できるように登録料や利用料を頂く予定です。ただし、高すぎると感じれば、そもそものコンセプトが失われ魅力が低下してしまうので利用料はできるだけ抑えます。

今月中にメイトのロゴマークをつくったり、ウェブサイトの制作に入ります。募集は12月中に行います。募集人数は10名を予定しています。

カポスとメイトの内装相談


施設(内装)は12月末までに完成するように準備しています。起動は来年の2月を予定しています。詳しい内容が決まり次第報告します。

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2020年11月03日

日本の鍼灸が世界から評価される日(4)」のつづき

来年からセミナー会場が使えない


前回の記事で書いた「群馬の臨床研究と臨床トレーニングを兼ねた施設」には、海外から研修生も受け入れたいと思っています。それには、世界が新型コロナウイルスの不安から抜け出すことが条件になります。再来年の2022年から受け入れができることを願っています。

どのみち、来年の2021年は建設の年になるので、始動は国内海外問わず2022年以降になります。というわけで、来年の2021年はセミナーに集中していきます。

そのセミナーですが、今年(2020年)の8月に危機が訪れました。7〜8年くらいお世話になってきた会場が今年いっぱいで閉鎖するという通知が来たのです。来年のセミナー会場がありません。

貸会議室はたくさんありますが、今まで特別な配慮をしていただいてきたので、近い条件の会場を探すのは難しいのです。全国から受講者をお迎えしているので、アクセスがとても重要です。


アクセスが最高の品川へ


これまで使っていた池尻大橋(東急電鉄田園都市線)の近くで探す手もありましたが、社内で相談したところ品川にしようという意見でまとまりました。品川であれば、羽田空港からも近く、新幹線が停車します。セミナーを開催する地としてこれ以上の立地は見つかりません。

すでに品川には、鍼灸院「はりきゅうルーム カポス」を経営しているので、鍼灸院とセミナー会場を一つにまとめる計画が動き出しました。

カポスが移る品川の新しい物件
借りた物件から見える景色



お金の不安を乗り越えろ


良い事ずくめな計画のようですが、ぎょうさんお金がかかります。定員20名のセミナーを開催するにはそれなりの広さが必要です。家賃が増えます。そして内装費も乗っかります。

今年は新型コロナウイルスの影響を受けて、鍼灸院の売上が低迷しただけでなく、セミナーの売上も大幅に減りました。

こういう年に支出を増やす決断をするのは、緻密な計算の他に勇気が必要です。かかる費用が具体的に見えてきたら反対意見が出てくると思っていました。群馬にも施設を計画しているわけですから、売上が見込みを大きく下回れば会社は傾きます。

時には私にブレーキをかけてくれるメンバー。彼らから反対意見が出るのを待っていましたが、「これはチャンスです」としか出てきませんでした。社内の結束力が一段と高まり、見舞われたピンチをチャンスに変えようと力を合わせ始めました。追い風を受ければ前を見て進むだけです。

もちろん、気持ちだけで前に進むのはリスクがあります。資金がショートしたら右も左も向けなくなります。コロナ禍が始まったばかりの頃、向こう一年間は売上が大幅に低迷しても大丈夫なように資金を調達しておいたことが後ろ盾となっています。


最大のリスクはお金より健康


セミナーを品川で行えば、会場代は年間で数百万円かかります。現在の2〜3倍の費用になる計算です。それを考えると家賃が上がっても元が取れると言えます。

でも、忘れてはいけなのが、‘眩費と▲札潺福爾稜箴紊低迷したら、の2つです。△魄き起こす最大のリスクは新型コロナウイルスではありません。私が健康を害したり、怪我をしてセミナー講師ができなくなることが最大のリスクです。年間60日講師を当たり前のように務めていくことは、当たり前ではありません。その都度会場を借りれば、もしもの時に経費が出ていきません。

でも、リスクばかり考えていては前に進めませんし、やるなら攻めの姿勢を貫いた方が面白くなります。そこで考えたのが「はりきゅうメイト」です。セミナーができるように借りた物件は、鍼灸院(カポス)一つだけでは広すぎます。そこで、借りた物件を半分に分け、片方にもう一つの鍼灸院をつくることにしました。それが「はりきゅうメイト」です。

¥灸師の仲間づくり
鍼灸師のファンづくり

に視点を置いた鍼灸施設です。詳しくは、次回の記事に書きます。

つづく...「鍼灸師の個性を才能が集まる『はりきゅうメイト』

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2020年05月03日

鍼灸院の成功と失敗


昨日、私のTwitterのタイムラインに衝撃的な情報が流れてきました。2年前の開業された鍼灸師が閉院するという知らせでした。ご本人にご迷惑がかかるといけないので、具体的に紹介することはやめておきますが、ツイートの「いいね」が、ものすごい勢いでが伸びていきました。

その「いいね!」に背景にある気持ちは、会員からこれまでの2年間の労いに対してだと思います。そして、シェアしてあるブログの記事に心を打たれたからだと思います。魅力的な人間性が伝わってくる記事でした。

私は3回読み返しました。経営がうまく行かなかった原因についての分析も赤裸々にされていて、開業している鍼灸師やこれから開業を考えている鍼灸師の胸に届いたのだと思います。この記事を読んで思うところ、考えるところがあったので、この記事を書いています。

改めて考えてみたのは、成功の定義です。

あらかじめお断りしておきますが、成功の定義は人それぞれでよいと思っています。だから、私の考えを押しつけるつもりもありません。みなさんが成功の定義を考えるきっかけになればいいなと思って、考えたことを書いてみます。


事業規模が小さいからこそつぶれない


開業している鍼灸師は、一人で個人事業を営んでいることが多いです。100人以上の鍼灸師を雇っている鍼灸院は知りません。つまり、鍼灸業界は最小単位の事業の集まりです。

コロナ禍の最中にあって、この最小単位というのは吉であるように思います。なぜなら、経営者自身が耐えることで時間が稼げるからです。従業員がいれば、必ず給料が発生します。まったく仕事がなくても給料は支払わなければなりません。給料が出なくても我慢して働き続ける従業員はいません。

経営者は、給与を減らしたり未払いにしておくことができます。経営者一人で営業していれば、自分が我慢さえすれば済みます。自宅を診療室にしていれば、固定費もあまりかかりません。事業規模が小さければ、事業を休眠させることが可能です。

鍼灸師は、大きな設備を必要とせず一人で開業できてしまいます。やり方にもよりますが、少ない固定費で事業が継続できます。だから、固定費が支払えずに倒産するリスクが小さな業種です。企業間取引も少ないので連鎖倒産も起こりません。

鍼灸師は小さな個人事業の集まりだから、こんな状況になっても、しぶとく生き残りやすいのです。


順調なのはラッキーなだけ


私は、6年前から従業員を迎えて鍼灸院をやっていますが、経営者としてもっとも慎重にやってきたのは運転資金の確保です。順調であっても「一時の幸運でしかない」と心の中で唱え続けて来ました。

不運はコロナ禍としてやってきました。

私の院も売上が落ちています。4月でいうと東京の鍼灸院(はりきゅうルーム カポス)は7割減です。運転資金があるので給料はしっかり払い続けられる見込みです。その運転資金は、開院前に準備しておきました。その準備しておいた資金を毎年繰り越してきたのです。

カポスを開院する際に、鍼灸師を二人雇いました。そのとき用意した運転資金の額は、1年間の家賃と1年間の2人分の給与でした。1年間の売上がゼロでも雇用し続けられる状況をつくっておいたのです。

運転資金は融資は受けず貯蓄でつくりました。融資は、資本に左右されず目の前の機会をつかみにいくという意味ではありがたいものですが、私はもともと計画から実行まで3年をかけるタイプなので資金もその3年間で用意します。


「忙しいから」という理由で雇うのはリスクが高い


「患者さんが増えて来たから鍼灸師を雇おう」という考えはとても危険です。自分の忙しさを解消することが目的であれば、新規の患者さんを断ればよいのです。鍼灸院は他にいくらでもあるのですから。

貯めるか、借りられる(そして返せる)アテができて、ようやく雇用に乗り出せます。繰り返しになりますが、「患者さんが増えて来たから」ではうまくいきません。

うまくいかない理由は運転資金の問題だけではありません。忙しいときは忙しいので、指導したり、仕組みをつくったり、マネジメントする時間が十分取れないのです。寝る時間を削ってやることになります。忙しくなる前に、運転資金を用意して雇うべきなのです。

偉そうなことを言える立場ではありません。私は、忙しくなりすぎて寝る時間がだいぶ減ってしまいました。昼間は施術をしながら過ごし、深夜に経営者としての業務を繰り返していました。体を壊さなかったのはラッキーなだけです。1年で休日と呼べる日は数えるほどしかありませんでした。

ラクをしたいから従業員を雇いたい、孤独だから従業員を雇いたい、と考えていたら裏目に出ます。実際は、さらに忙しくなって孤独感が増すでしょう。

孤独は誰かと一緒にいるから解消されるのではなく、理解されないことで生まれます。人が増えるほど理解を求める努力が必要ないっぽう、理解されない場面も増えます。あきらめず理解を求める努力をし続けられる人だけが雇える資質があると思います。


私が雇用をする理由はチームづくり


私が鍼灸師を雇うのは、1人では実現できないことに挑戦するためです。品川に(私が常駐しない)鍼灸院をつくったのは、整動鍼が再現性ある技術であることを証明するためでした。

私の会社は鍼灸院経営と並行してセミナーを運営しています。今は自粛中で売上はマイナス100%ですが、ふだんは売上全体の50%を占めています。

セミナーは年間60日以上あるので施術の合間にできる業務ではありません。申込みの受付や入金を管理する事務的な仕事がたくさんあります。ありがたいことに、ほとんど任せられる体制ができています。セミナーに使うテキストや動画のアップデートにしても、チームで取り組んでいます。

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2020年1月撮影


今は、ツボネットの構築に挑戦しています。これは、全国の鍼灸院から症例を集めるというプロジェクトで、鍼灸の可能性を症例で提示していくものです。これだけ大きなシステムになると、私一人で管理しきれません。

DSCF0524
2019年撮影


院の経営も同じです。私一人では思いつかないアイデアが出てきます。私一人では実践できないことができます。話がそれてしまうので実例は別の機会にします。


アリは高いところから落ちても死なない


私は続けて行くことが成功の条件だと思っています。売上が条件ではありません。1億の売上があっても、それ以上に支出が続けば倒産します。500万円の売上であっても経費が100万円であれば倒産しません。

多くの鍼灸院は後者のパターンに当てはまります。コロナ禍で売上が半分の250万円になっても、貯金が250万円あれば一時しのぎはできます。これは言いたいことを伝えるための例ですから、実際の数字はわかりません。

また、原価に占める人件費の割合がとても高く、鍼灸師一人で経営していれば、人件費も経営者自身にかかっているので、耐え忍ぶには有利です。

アリは体重が軽いため、自分の身長の100倍の高さから落ちても死にません。鍼灸師も経営母体が小さいため、非常時に強いのです。この理屈は大企業には通じないので、話から外します。


大企業を意識しすぎる鍼灸師は危ない


ここからは、かなり個人的な意見になりますが、私は大企業の戦略をマネしないようにしています。

gafam


アメリカの代表的なIT企業を指す言葉に「GAFAM(ガーファム)」という言葉があります。Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftの頭文字です。最近では、MicrosoftとNetflixを入れ替えた、「FAANG(ファング)」という言葉も出てきました。

有名なのでご存じの方も多いと思います。

faang


こうしたIT企業の創業者や社長は優れた経営者であることは間違いなく、それは疑いようのない事実です。学ぶことがたくさんあることは間違いありませんが、追いかけないようにしています。業種も環境も違い過ぎるからです。

彼らと同じレベルかそれ以上の商才があっても、強烈な運がなければGAFAMにはなれません。運は自分で引き寄せるもの、という考え方もありますが、引き寄せられる運にも限界があります。それが現実です。

そもそも、GAFAMを意識する必要がありません。優秀な企業をわざわざアメリカに求めなくても、日本にも優れた企業が数えきれません。地元にも近所にも優れた企業がきっとあるはずです。売上高を自分の会社の価値にしていません。無理なく長く続けられて、楽しく働ける会社であることの方が大切です。

売れるビジネス書は大企業の成功談になります。鍼灸院は最小単位の企業サイズなので真逆に位置しています。大きな企業になれないのは、鍼灸師の努力不足ではありません。大きな企業になるメリットを持たないからです。生物の生存戦略に通じるものがあります。

それぞれの生き物に最適なサイズがあるように、企業に最適なサイズがあります。アリがゾウの生存戦略を学んでも役立たないことが多いのです。


10人の愛されるチームをつくるため


結論は走りながら出しますが、今の時点では、会社のメンバーを10人にしたいと思っています。6年前は12人と考えていたので2名減らしました。 銑イ両魴錣鯔たすように考えています。ちなみに現在は8名+学生アルバイト1名です。

〜完が互いにコミュニケーションしやすい
東京と群馬の2箇所で鍼灸院を展開できる
シフト制が可能になる(休みを選びやすい)
ぅ瓮鵐弌爾瞭れ替わりにスムーズに対応できる
ゥ札潺福爾旅峪佞できる人がいる

企業としたら10人は零細企業です。経営者の集まりに行ったら「たった10人?」と鼻で笑われるかもしれません。でも、私はこの10人から信頼されていれば満足ですし、この10人が外から愛されていれば嬉しいです。規模なんてどうでもよいのです。

最後になりましたが、この記事の結論です。
私の成功の定義は「愛されつづけること」です。


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