鍼灸院経営

2021年08月19日

はりきゅうメイト閉鎖とはりきゅうルーム・カポス拡張のお知らせです。

今年から始めた、鍼灸師の独立開業応援企画「はりきゅうメイト」を閉鎖することになりました。空いたスペースは併設されているはりきゅうルーム・カポス拡張のための利用します。

はりきゅうメイト


「せっかく始めたのだからもう少しやってみたらどう?」

という声も聞こえてくるのですが、傷が広がっていない今こそ撤退の絶好のチャンスと考えました。鍼灸師の独立を応援する事業として昨年から準備し、今年に運営を開始しましたが、見込んでいたほど利用希望者が集まりませんでした。コロナ禍の影響もあるかもしれませんが、わかっている中でのスタートでしたから、やはり私の失敗です。

この事業に未来を感じて、準備から実際の運営まで担当してくれたスタッフにはたいへん申し訳ない気持ちでいっぱいです。ただ、このままでいると次の機会まで失ってしまうため撤退を決意しました。

最初に書いたとおり、はりきゅうルーム カポスを拡大します。現在はベッド3台ですが、はりきゅうメイトの閉鎖によって5台に増やすことができます。これに伴ってスタッフを増やそうと考えています。縁があるといいなぁ。

昨年まで品川駅の高輪口にあったカポスですが、そのときもベッドは3台でした。実は、港南口に移転してから来院数が増えていて移転がプラスに出ていました。コロナ禍にあってもニーズが増えていることを考えると、カポスの拡大する方が正しい選択になりそうです。

英語ができるスタッフもいますし、英語圏の人にカポスを知って頂く努力をします。日本にいながら外国人の患者さんを診ることができるので、考えようによっては国際的なステージになるかもしれません。そもそも品川という地を選んだのは、羽田空港が近いからでした。

「日本の鍼を受けるならカポスがいいよ」

と噂になるようにがんばっていこうと思います。今、英語チームが英語版サイトの刷新に取りかかっています。世界で働くことに憧れを抱く鍼灸師に、日本にいながら国際的な活躍ができる鍼灸院として認めてもらえるように努めていきます。もちろん、これまで通り、頭痛、突発性難聴、耳鳴りなど、カポスが得意としてきたことも継続していきます。


英語で対応する楠さん
 ↓ ↓ ↓



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はりきゅう養気院(群馬県/伊勢崎市)
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2021年08月08日

テキストの画像化


後悔しない雇用(2)スタッフを雇っても孤独からは逃げられない」のつづき

一人鍼灸院から9名のチームに


一人で鍼灸院を営んでいると、「そろそろスタッフを雇ってみたい」と考える時期があります。求人をして雇用する人も、そのまま一人でやり続ける人も、雇って再び一人に戻る人も。考え方やスタイルはいろいろです。

この記事は同業者向けで「雇用で後悔してほしくない」という気持ちで書きます。私一人の経験でしかありませんが、一人鍼灸院から9名のチームになるまでの経緯を試行錯誤の痕跡がわかるように書くのでヒントにしていただければ幸いです。

実は、開業間もない頃にもアルバイトを雇っていたことがありました。でも1年に満たないうちに雇用は続けられなくなりました。売上が少ない状態だったので、自分の利益はゼロで人件費だけが出ていく状態でした。いったん仕切り直し再スタートしたのです。2003年のことですから18年も前です。

当時はすべてが未熟すぎて、今から思えば当然の結果でした。失敗の直後から妻と二人でコツコツと経営をして2年目にはプラスマイナスゼロ。3年目から利益が出るようになりました。5年目くらいには患者さんが増えすぎて新規をお断りしていました。

それから数年後、活法(古武術整体)セミナーのお手伝いをするようになって、私の鍼灸師としての流れが大きく変わりました。毎年毎年が予想ができない1年で、過酷な時期もあり乗り越えてきました。少しずつ認知されてきた整動鍼も、激流の中で生まれました。

この整動鍼(当時は「古武術鍼法」と呼んでいた)が次の雇用のきっかけとなりました。整動鍼は再現性を重視した鍼法で、誰がやっても同じ変化をもたらすことができることを特徴としています。その再現性が雇用に有利だと考えました。鍼灸師の技術のバラツキを最小化することができるからです。

2013年に鍼灸師2名を雇い、2014年から品川駅近くに鍼灸院を開院したのです。私は群馬にいながら経営をしていました。遠隔からの経営も大きな挑戦でした。

当時の記事「鍼灸師求人(東京都港区) はりきゅうルーム・カポス
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それから数年経ち、スタッフの入れ替わりがあり、オープニングメンバーと代わって新しいスタッフ2名と学生アルバイト1名の3名で営んでいます。私は週1回、金曜日だけ施術をしています。

いっぽう、群馬では私の他に4名の鍼灸師が所属しています。私の妻は鍼灸師ではありませんが、経理や雑務などの裏方をしています。

まとめると、現在は、品川が3名、群馬が6名。9名のチームで鍼灸院とセミナーを営んでいます。けっして大きなチームではありませんが、開業当初からは考えられない組織です。私の仕事の幅も広がりました。鍼灸師、講師、経営者という3つの職種を行ったり来たりの毎日で充実しています。

以上が、最初の雇用から現在までの流れです。失敗も含めてよい経験をしてきました。すべてが糧となっています。当初と考えを変えたところもあります。その一つが新人の役割についてです。


新人の役割


昨年の春は新卒を1名採用しました。しかし研修中に突然辞めてしまいました。戦力として期待していたので残念でしたが、起こりうることとして備えなければならないと反省し、勉強になりました。そしてこの出来事をきっかけに、新人の役割を踏み込んで考えることになりました。

さっそく今春も新卒が入ってきました。鍼灸学校を卒業したばかりなので臨床(実践)の経験がありません。

以前の私であれば、臨床に出るまでは「研修期間」として、勉強や練習に時間を使えるようにしていました。「臨床に出る=戦力になる」という考えだったのです。研修期間は人材への投資と考えてコストを惜しまないようにしていました。また研修中に売上に貢献できないのは仕方ないことと考え、割り切っていたのです。理想を求めすぎて、会社の規模以上の投資になってしまったのです。

大いに反省した私は、新人の役割を考え直すことにしました。今までは大企業のマネをしすぎていたのです。小さな会社には小さな会社のやり方があるはずだと頭をを切り替えました。

そもそも、鍼灸院の仕事は施術だけではありません。患者さんが気持ちよく通えるように掃除をしたり、洗濯したりという環境を整える仕事があります。こうした仕事はメンバーが少しずつ分担しながらやっています。

これらの仕事をすべて新人に任せる、という話はありません。施術をする者にとっても重要な仕事と位置づけています。私も掃除や洗濯に参加しています。

では、新人ができることってなんでしょうか。答えは一つではありませんのでアイデア次第だと思います。すぐに着手できると考えたのは広報です。もっと私たちの取り組みを社会に向けて発信していく余地があります。



情報発信量と来院数の関係


2003年から鍼灸院をやってきて確かなのは、情報発信量と新規の患者さんの予約は比例関係にあることです。ですから、情報発信は超重要事項です。チームが大きくなればそれに応じた発信量が必要なので、伸ばしていく必要があります。私の頭はどんどん古くなっていきますし、若手の登用がこれからの鍵になります。

開業したばかりの頃は、ブログをする人が増え始めた頃で、フェイスブック(日本語版2008年〜)やツイッター(日本語版2008年〜)はありませんでした。インスタなんて影も形もありませんし、広告にYoutubeを使う環境も発想もありませんでした。

ネットで鍼灸院を探す人もまだ多くなく、チラシやポスティングの方がメジャーでした。費用がなかったという理由で私はほぼ無料で発信できるネットに力を注ぐしかなく、ブログをコツコツと更新しはじめました。まさにこのブログです。

第1回は2004年10月17日でした。『ツボって何だろう...

一瞬で読める浅い記事です(^。^;)

ブログを始めたばかりは何の変化も起きませんでしたが、2005年3月には毎日のように更新をしていました。開業3年目を迎えようとする頃ですが、患者さんも増えていました。当時は、一人でやっていたので空き時間のほとんどを執筆に充てていました。ちょっとその頃が羨ましいです。


ブログの本当の価値


SNSの時代に入る前はブログに全集中で報われました。SNSやYoutubeの時代に入ってからは、時代に合わせるようにしてみました。一巡してやっぱりブログが大事と思っています。

実際にブログは廃れていません。このライブドアブログの無料プランもずっと生き残っているのでありがたいです。noteが出たとき乗り換えも検討しましたが有料にするつもりがなかったので、このブログに自分の鍼灸師人生を刻んでいこうと決めました。

過去の記事はすべて残してあります。役に立たない記事もありますし一貫性もありません。いろいろな出来事があって思考も価値観も変わっています。でも、変わらないことがたった一つあります。それは、この18年ずっと鍼灸をやり続けてきたことです。この事実は誰も覆せません。

どんなことを書いたら患者さんが集まるかのか、という視点も経営には必要な観点だと思います。しかし、私は中長期で考えるとあまり関係ないように思います。その時その時、鍼灸への想いを語るので十分と思っています。集客のことばかり考えていたら、楽しくありませんし続けられません。

自分が鍼灸師という職業を楽しむことを最優先に考えています。まだ見ぬ患者さんをイメージするより現実的で具体的で嘘がありません。私の鍼灸に対する姿勢や気持ちが患者さんや同業者に伝わることで道が拓けてきました。


広報を通じて学んでほしいこと


どんな媒体で情報を発信するとしても基本になるのは文章です。何も考えていないと何も書けません。考えているつもりでも、書けないときは考えていない証拠です。

新人さんに記事を書いてもらうと発見があります。そんなふうに見えるんだ、とか。伝えたつもりになっていたなぁ、とか。新人の目を通じて経営を見直すことができます。

また、新人さんも、書くことを通じて院の理念や方針を再確認ができます。また、患者さんの気持ちを想像する習慣もできます。

わかっているつもりを減らすことが書く目的です。書くことが苦手な人もいます。よく勘違いされるのですが、上手い文章を書く必要なんてありません。

そもそも作家ではありませんし、読み手も名文を期待しているわけではありません。文章から仕事に対する姿勢が伝わればよいのです。

スタッフに書いてもらうときに、指示しているのは「自分の目線で書くこと」だけです。文体や書式への指示はありません。この仕事を通じて自分の目を養ってくれたらよいのです。

みんな感性が違うし思考のパターンも違います。それぞれの良さを鍼灸に活かせるようにサポートをするのが私の仕事です。私自身もこのブログを通じて自分の感性を磨き、思考を整理していこうと思っています。

まだまだ私自身が勉強中です。雇用をしなければ気づけなかったことがたくさんあります。私自身の人間としての成長のために雇用を続けていきます。至らぬ点ばかりですが、これからもよろしくお願いします。


最後に当院のTwitterを紹介してこの記事を終わります。こんな感じで自由です。




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2021年05月07日

スタッフを雇っても孤独からは逃れられない


孤独を理由に雇用してはダメ


「一人鍼灸院は孤独だから人を雇いたい」とお考えなら、絶対に雇用しない方がよいです。なぜなら、もっと孤独になるからです。

そもそも、孤独でない経営者なんているのでしょうか。断言しますが、一人鍼灸院であっても従業員がいても経営者は孤独と付き合っていかなければなりません。その孤独は決断の責任を取るという立場から生まれるものです。経営者の言い訳を許してくれる人はいません。これが孤独を感じる理由です。けっして、人が近くにいないから孤独を感じるのではありません。


寂しさと孤独は違う


孤独を感じている人が都会に出ても孤独です。人がたくさんいるのに孤独を感じます。むしろ孤独感がどんどん増していきます。なぜでしょうか。そこにいるのは“わたし“を理解してくれる人ではないからです。

人がいない時に感じるのは寂しさです。理解してもらえないときに感じるのが孤独です。寂しさと孤独は心の中で区別するのが難しいです。本当は孤独を感じているのに、賑やかさを求めてしまうのです。いくら賑やかになっても理解者がいなければ孤独は続きます。

孤独を和らげる理解者はたくさん必要ではないと思います。自分を深く理解してくれる人が一人でもいれば孤独を感じません。私はそうです。


孤独を感じたら


一人で経営していて孤独を感じたら、まずやるべきことは雇用ではなく理解される努力です。家族や友達に仕事で実現したいとことを正確に理解してもらうことが優先です。

この努力を怠り雇用してしまうと孤独感が増します。それは都会に出て孤独感が増すのと原理とたぶん同じです。「理解されていない」という状況が際立ってしまうのでしょう。

何を隠そう、私自身が「理解されていない」という状況に苦しんでいた時期があります。今だって、100%理解されているなんてことはありません。どんなに近くにいても、別の人間であるわけですから、私のことはわかりません。自分のことだってわからないのに、誰かが100%理解してくれるなんてありえません。これはポジティブな割り切りです。誰かに抱く期待感を適度にチューニングできれば孤独を感じにくくなります。


孤独にさせない


雇用において重要なのはスタッフを孤独にさせないことです。経営者の孤独問題は二の次三の次くらいにしておくくらいでなければ上手くいきません。スタッフを孤独にさせない方法は一つしかありません。スタッフを理解することです。

言うは易しです。理解したつもりになっている場合が多いです。理解できたら理解を示すところまでやらないと意味がありません。理解しようとしている姿勢が伝わってはじめて孤独を和らげる効果になります。

これは患者さんに対しても同じです。理解をしようとしている姿勢を伝えることで患者さんを孤独にさせないように努めています。


提案の扱い方


スタッフが増えれば増えるほど、全員の意見が一致しづらくなります。でも、経営者は決断をしなければいけません。それは誰かの提案を不採用にするということです。チームづくりという視点からいえば、採用した提案よりも不採用にした意見や案の扱いの方が重要です。雑に扱えば、誰も提案しなくなってしまいます。振り返れば反省ばかりです。


理由なく雇ってはいけない


患者さんが増えてくると、どこからともなく「そろそろスタッフを雇ったらどうですか?」という声がやってきます。無視した方がよいと思います。雇用のための雇用では目的を見失って迷子になります。「忙しいから」と「孤独だから」であれば、雇用で解決することはありません。

個人的には、一人では実現できない目的ができたとき、特別な事情が発生した場合だけ雇用を検討すればよいと思います。

雇っていると「すごいね」と言われることがありますが、雇用したからといって鍼灸師としてのランクは1ミリも上昇しません。


個人的には雇用して大正解


雇用せずに経営するという道もありました。スタッフが辞めていったとき「これでおしまい」と一人に戻ることもできました。選んだのは雇用し続ける道です。チームがなければできない仕事を知ってしまったからです。道は半ばです。これからチームの真価が問われます。

人間的にも雇用しなければ気づけないことがいっぱいあります。ダメダメな自分と向き合えるので心の成長のきっかけになります。

嫌な経験もしてきました。嘘をつかれたり、約束を破られたり、引き抜かれたり、突然いなくなったりと...。そのときはダメージがありますが、起きた意味を丁寧に考えていくと、これからすべきことが見えてきます。雇用を続けるという強い意志がある限りすべてが学びとなります。

雇用して収入が増えるかどうかは人それぞれでしょう。売上が順調でもパンデミックが起これば一瞬にしてマイナスに傾きます。小回りの利く個人の方が窮地をしのぎやすいと思います。昨年はたいへんでしたが、お金の勉強をするよいきっかけになりました。

雇用すべきかどうか。

正解は人それぞれです。タイミングもあると思います。ただ、一つだけ自信をもって言えるのは、雇用は孤独の解消にはならないということです。

つづく...


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2021年02月25日

後悔しない雇用(第1回)


自分が病気や怪我をしたときに不安だからと理由で雇用してはいけない


一人で鍼灸院をやっていると「自分に何かあったら…」と思うと不安なので雇用して収入を安定させたいという話をあちこちで耳にします。私はこういう話を耳にするたびに、強烈な違和感を抱きます。

自らの経験から断言できます。雇用しても経済的な不安は減りません。むしろ、不安材料は増えると思っていた方がよいです。

誤解しないでください。この記事は「雇用はやめた方がいい」と言うために書いているのではありません。「経済的な不安を解消するために雇用する」という考えで進むと失敗する可能性が高いことを、自らの経験から伝えたいのです。ストレートに言えば、雇用は経営者の不安解消の術にならないことを知ってほしいのです。


一人と二人では異業種


私は経営者としてまだまだですし、雇用してからの経験は7年しかありません。でも、これだけははっきり言えます。雇用する前と後では別世界です。鍼灸師を一人雇うだけでも、違う業種の仕事を始める覚悟が必要です。


彼の言う通りです。

どんなに想像力豊かでも雇ってみなければわからないことがあります。経験してきた者として厳しいことも書きますが、雇用で失敗して不幸になる鍼灸師が一人でも減るように、愛をもって自らの経験で得た教訓を惜しみなく出します。私のことが好きでも嫌いでも、将来雇用をお考えなら続きを読んでみてください。


スタッフに200%がんばってもらうつもり?


「一人で鍼灸院をやっていたら自分に何かあったら収入がゼロになるから鍼灸師を雇って大丈夫な状態にしておきたい」という考えは、一方通行な考え方です。

たとえば、一人雇って施術者が二人の鍼灸院になったとしましょう。そして、順調に患者さんが2倍になるという理想を想定してみます。この時の売上は2倍になっているわけですから、雇用したことでよかったなぁと思う状態です。

この順調な状態から、経営者が怪我をして施術ができなくなったと仮定します。一ヶ月くらいで復帰できれば問題は起こらないでしょう。しかし、半年以上お休みしなければならない怪我や病気だとしたら…。

お休みの間、雇っている鍼灸師(スタッフ)が100%がんばっても売上は半減ですよね。もし、今まで通りの売上にしなければならないとしたら200%の負担をスタッフに求めなければなりません。現実的に難しいです。負担の上乗せはせいぜい2割ではないでしょうか。そのスタッフのがんばりによって増えた売上を経営者がそのまま持って行くわけにはいきませんよね。

となれば、どのみち雇用しても自分がダメになれば売上は半減し、自分の取り分を確保することはできません。数人まとめて雇えば事情が変わりますが、その場合は固定費がいきなり数倍になりますし、スタッフを誰がまとめていくのか、という別の重い課題が降ってきます。むしろ経済的な不安もそれ以外の不安もケタ違いに増えてしまいます。


経営者に何かあって不安になるのはスタッフの方


経営者がある自分が施術できない状態になれば、自分が不安になるようにスタッフも不安になります。復帰の目処が立たなければ将来が不安になって、安心できるところを探すために退職するかもしれません。

責任感の強いスタッフであれば、「私ががんばっている間にゆっくり休んでください」となるかもしれません。だとしても、そこに頼るというのは違うと思いませんか。そもそも、スタッフは経営者の予期せぬ不幸に備えて働いているわけではないですよね。

ずばり言えば、経営者が体調を壊したらスタッフはやめていくでしょう。経済的な拠り所にしようと思って雇ったスタッフは、頼りたい時にはいないのです。


スタッフの不安を軽減するのが経営者の仕事


「何かあったら助けてもらえる」というのは、スタッフ側のメリットです。スタッフが病気や怪我をしても、経営者が穴埋めをできれば復帰を待つことができます。何かあってもすぐに職を失いません。雇用保険に入っていれば仕事ができなくなっても収入が途絶えません。

改めて書きますが、スタッフの存在は経営者の経済的な安心材料にはなりません。むしろ、スタッフの収入に責任を持つ立場になるわけですから、不安材料は増えると言った方がよいでしょう。


自分が不安なら保険に加入しよう


私は個人事業の時代から保険に加入しています。いわゆる生命保険やがん保険のことです。きっかけは息子が生まれたことです。自分に何かあったらこの子はどうなるんだろう...と思ったら心が不安でいっぱいになったからです。

現在は、個人と法人(経営する会社)で数種類の保険に入っています。私に何かあっても家族とスタッフの収入がプツっと切れないように備えています。

この記事は保険をすすめる目的ではないので、商品については書きませんし、質問されても答えません。経営者向けの保険は検索すればたくさん出てきます。

「病気や怪我が心配なら、雇用じゃなくて保険でしょ!」

と思うのです。雇用を不安解消の道具にしてはいけませんし、不安が増えることがあっても減ることはないと断言できます。不安材料が増えてもいいという覚悟がなければ雇用は諦めた方がよいとアドバイスします。

そもそもな話として「一人では不安なので雇用したい」という人の所で働きたい人はいるでしょうか。職場を探している人から見ても、経営者の不安が雇用の理由というのは的が外れていることがわかると思います。

次回は、孤独だからという理由で雇用するともっと孤独になるという話を書きます。
つづく…

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yoki at 22:50│Comments(0)

2021年01月25日

不安をつくらない技術


臨床にデビューできる条件


ある鍼灸師から「研修した鍼灸師をデビューさせる時の基準ってなんですか?」と聞かれたとき、

「患者さんを不安にさせないレベルに達したら臨床でデビューさせます」

と答えました。

私を知っている人ほど意外な表情を浮かべます。普段セミナーで技術指導をしているので、技術を基準にした判断をしていると思われている気がします。

もちろん、技術レベルは大切にしています。でも、どんなに知識が豊富であっても、ツボの位置が正確にわかったとしても、患者さんが不安を感じていたら、よい結果にはなりません。

患者さんは、「体をあずけても大丈夫だろうか?」と判断するとき、術者の話し方や態度を見ています。それは理屈で説明しにくいかもしれません。人間も動物の一種として危険性を直感的に瞬時に判断する能力が備わっていますから、そんな機能が私たち鍼灸師に対しても使われているはずです。

ですから、技術的以外の部分も臨床で重要視しています。ですが、こういう部分にセミナーでフォーカスすることは滅多にありません。臨床ではとても大切なことではありますが、指導するとなったら欠点を指摘しなければなりません。きっと楽しいセミナーではなくなってしまいます。


不安をつくらないから安心が生まれる


この記事のタイトルをみて、なぜ「安心をつくる技術」ではなく「不安をつくらない技術」なのだろうかと思った方かもしれません。この記事で一番伝えたいことをタイトルにこめてみました。

日頃から臨床(施術)は、自分を含め減点方式で評価しています。なぜなら、臨床で加点しようとする心理は欲を生むからです。臨床では欲が敵になります。患者さんに「よくなってほしい」という気持ちだけで十分で、それ以上の感情は欲になってしまいます。

それは「よい評価を得たい」という感情であり、患者さんの気持ちに寄り添えなくなっている状態です。

がんばることもよくありません。臨床には用意してあるものしか持ち込めません。本番で120%の力が出るわけではありませんし、運良く出てもまぐれですから再現できません。そもそも臨床には減点要素がたくさんあって100点を取るのが難しいです。

臨床はいかに減点されないようにするかを考えています。

一番大きな減点要素は鍼灸師の健康状態です。どの仕事もそうですが、健康でなければよい仕事はできません。精神も安定しません。鍼灸師が不安定であれば患者さんに不安が生まれます。

次に、鍼灸師の言動です。私たちの発する言葉やしぐさ、すべて患者さんに伝わっています。ささいなことに発した「あっ」という言葉が患者さんを不安にさせてしまうこともあるでしょう。私も自分が気が付いていないだけで、患者さんを不安にさせてしまう言動をしているはずです。


行かない理由をつくらないという経営


鍼灸の効果はテレビやSNSを通じて拡散されているので、患者さんが鍼灸院に行かない理由は「不安だから」だと考えています。不安が期待を上回ってしまえば、鍼灸院に行くことはありません。

鍼灸院に足を運ぶ方も不安がないわけではないでしょう。「勇気を振り絞って来ました」という方が少なくありません。そういう方に「安心ですよ」と伝えても、あまり意味がありません。安心は売り込むものではなく、患者さん自身の中で生まれる感情ですから。

不安は不安材料があるから生まれます。私たちにできることは、その不安材料を丁寧に取っていくことだけです。不安材料が見当たらなくなった状態が「安心」です。安心づくりを、ケーキにデコレーションしていく作業のように考えないようにしています。

私は経営者でもあるので、利用してくださる方が多いほど嬉しいです。経営者としても重視しているのが「不安をつくらない」ことです。不安材料を探して削るようにしています。技術や鍼灸師の人柄はプラス要素ですが、いくらそこを磨いても、不安を感じる鍼灸師であったり鍼灸院であれば患者さんが来てくれません。


不安をつくらない技術


私が特に意識しているのは、目と声と間(ま)の3つです。

〔棔亡擬圓気鵑鮨燭団召宛る


「目は口ほどに物を言う」ということわざがあるように、人は相手の目から多くの情報を読み取ることができます。技術的に向上しても、目が泳いでいれば「自信がないのかしら」と思われてしまいます。自信なさそうな鍼灸師に身をあずけたいと思う人はいません。

謙虚さは必要ですが影で必要な心構えであって、患者さんの前で出しすぎはよくないと思っています。「まだまだ未熟者なので…」という態度は患者さんを不安にさせてしまいます。どんなに技術を磨いても上には上がいるのが技術屋の世界です。最高は約束できません。

その時点におけるベストを尽くすしかないのですから「今ある技術を出し尽くします」というメッセージを患者さんに伝えるべきだと思います。患者さんの目をしっかり見ることで、その気持ちが伝わりやすくなります。

自信というのは「何でもできる」ことを根拠にするものではなく、「できること」の範囲を知ることで生まれる感覚だと考えています。つまり、「できること」と「できないこと」をしっかり区別できることが自信の根拠になるのです。


∪次砲呂辰りと発声し即答する


私は滑舌がよくないので、発声に気をつけています。モゴモゴしたしゃべり方では伝わりにくく、伝わらないということは不安になります。時には即答が難しい質問をいただくことがあります。

答え方に迷って考え込んだりゴニョゴニョと話してしまうと患者さんに余計な不安を与えてしまいます。私は、難しい質問だと感じたら、体裁よく答えようとせず「難しい質問ですね」と即答してしまいます。必ずしも、どんな質問に対しても手を動かしながら答える必要はないと思っています。

難しい質問への対策として私が推奨するのは、「はっきりと発声する」というルールを自分の中につくっておくことです。はっきりした言い方しか許されないと決めておくことで、わからないときは「わからない」と答えるしかありません。または「難しい質問なので時間をください」と言うこともできます。

私の経験では、答えられないことがあっても、それが理由で患者さんは離れていきません。しかし、不安を感じたら離れていきます。

自信ができたらはっきりと発声するようになると考えていたら、それまでの患者さんはその様子を見て不安になり離れていってしまいます。自信がつくどころか、自信がどんどん落ちていきます。はっきりと発声することで患者さんは安心し、施術を継続的に受けてくれるようになります。そうなると結果が出る機会も増えて自信がつきます。


4屐謀度な距離感


もっともセンスが問われるところかもしれません。「適度」としか表現できない距離感は、患者さんの性格にもよりますし、年齢によっても変わります。初回と2回目以降でも異なります。術者のキャラクターによっても異なります。総合的に判断してその時その時の距離感をつかむしかありません。

ここでいう距離感とは、患者さんとの物理的な距離だけでなく心理的な距離も含みます。近づきすぎて馴れ馴れしすぎたら「なにかあるのかしら」と不安になります。離れすぎていたら他人事のように扱っていると思われ「ちゃんと親身になって診てくれるのかしら」と不安になります。

考えてやることではないという意見もあるでしょう。できている人にとっては当たり前の感覚かもしれません。生まれ持ったセンスを否定できません。と言いつつも、普段から意識することで距離感は磨けるものと信じています。

日本語の「間」という言葉は本当に便利です。物理的な距離、心理的な距離、そしてタイミングまでを同時に含むからです。間を制する鍼灸師が臨床を制すると私は思っています。


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