思い出の患者さん

2012年01月05日

昨日から2012年の営業を始めました。

予約はいっぱい。

診療時間が始まると次々と電話が鳴りました。
数えていませんが15件くらいありました。

新年からありがたいことです。
必要とされるというのは嬉しいことです。
もっと必要とされるために何をすべきかを今年も考えて行きます。
欲張りすぎないように自分の能力の範囲で。



昨年を振り返ると、震災や原発事故という大きな出来事がありました。直接ではありませんが、親戚が被災したり、計画停電の影響を受けたり、生活と精神に影響が出ました。被災者のことを考えると精神が不安定になるので、気を紛らわせるように過ごしていました。

プライベートでは、父が病気で入院しました。一時はどうなるかわからない深刻な状態にもなりました(今は安定していますが入院中)。

ちょうどその頃、ある女性の患者さんが母親の付き添いで通院していました。

お母さんは娘さんの病状が心配で、いつも不安な表情を浮かべていました。きっと家でもそうなのだろうと思い、娘さんのいないところで「お母さんが不安な顔をしていると娘さんも不安になると思うので、嘘でもよいから不安を隠して接するようにしていただけますか。」とお願いしました。

しかし、強い口調で言い換えされてしましました。

「患者の家族というのは不安になるものなんです!!」
(あなたには患者の家族の気持ちなんてわからいでしょ!という意味)

患者さんが不安なく過ごせるようにと起こした行動が完全に空回り。それがきっかけとなり信頼関係が一瞬にして崩壊しました。その日を最後に来なくなりました。

このやりとりが、私の父が集中治療室に入っていた時期と重なっていたため、私の心は折れそうでした。父が生きるか死ぬかという時期に(本当は付き添いをしたい気持ちを抑えて仕事をしている時に)、「あなたには患者の家族の気持ちがわからない」と指摘されたことの重さ。

この重さに押しつぶされない精神力を鍛えることが大事なのかもしれません。
しかし、そうしようとすると鈍感な人間になってしまうのではないかと不安です。敏感でありながらも折れない心というのは難しそうです。未だに克服できません。

医療はテクニカルな部分がとても大事です。気持ちだけでは患者さんを救えませんから。ですが、医療現場はメンタルなものに支配されているような気もするのです。あらゆる感情を肯定し、その感情の動きをとらえながら、その波に逆らうことなく技術を振るうことができたら一流なのかもしれません。

昨年より一つでも多くの「希望」を患者さんに見せることができますように。
星に願いを込めながら2012年の鍼灸師ライフを始動させました。

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yoki at 00:01│Comments(10)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2011年12月09日

Relax(スノーボード・バックパッキング/埼玉県深谷市

患者さんのお店のブログを覗いてみたら施術の感想が書かれていました。どんな感想が書いてあるのか思うとドキドキします。

5年ぶりに来院した患者さんです。普段はプライバシーの関係で、どこの誰が来院しているのか具体的なことは書きませんが、今回は患者さんが実名で体験レポートを書かれているので例外です。患者さんにも「お店のこともブログで紹介しますね」と予告済み。

今度は、患者さんの方がドキドキする番です。

お隣の埼玉県でスノーボード店を営む、こしみずさんです。お隣と言っても深谷市なので、この伊勢崎市と隣接しています。近い距離です。こしみずさんのお店まで30分くらいでしょうか。伊勢崎市の中心街までと変わらぬ距離です。なぜなら、ここは群馬と埼玉の境界線とう中途半端なところだからです。

さてさて、施術の内容はスノーボードの転倒による怪我の後遺症です。レントゲンを見せていただくと、骨折がハッキリ写っています。今でも折れたままです。レントゲンを見る限りでは、ものすごく痛そうなのですが、強い痛みは緩和されています。怪我をしてから2年近く経つので、その間に和らいだようです。

骨が折れているのに痛くない (違和感や軽い痛みはあるけれど)

これって治療家として重要なことです。レントゲンでは語れない世界があるのです。その世界で私たち鍼灸師は勝負しています。

レントゲンに写るのは骨。骨を観るには都合がよいのですが筋肉は写りません。決まった姿勢で撮ることが多いので、動いた時の様子はわかりません。レントゲンはある瞬間の「直立の背骨」を切り抜いたものです。

「スノーボード(仕事)を楽しみたい」という要望に対して私ができることは、骨をくっつけることではありません。2年近く離ればなれになった骨は、もうそこが定位置です。事故の衝撃で椎骨(背骨)の棘突起(とさか)を折れたのですが、ここが折れることによって衝撃が吸収されて、軽く(軽くはないのですが…)済んだのかもしれません。

F1マシンのボディがコックピットへの衝撃を吸収するために壊れやすいという話に似ています。そういう意味では折れたことに感謝なのです。

もし、施術において折れた部分を責めるような態度で施術に望めば、“"大事なところに目を向けられなくなります。

"求められているのは、生活やスポーツをする上で問題になっている不協和音をどうにかすることです。動きに調和が取れていないことによる違和感や痛みが出ているのです。骨折の痛みを避けようと体は頑張ってきました。その頑張りは永遠に続くわけではありませんから、どこかで「もうダメ…」となるわけです。

"対処すべきは、今苦しんでいる筋肉をサポートすることです。動く時には必ず支点となる部分があります。同じ動きでも立っている時と座っている時では違います。支点が機能しないと新しい支点を体は探します。探しているうちに痛みが出てくることが多いのです。

この支点を探し出すところがミソです。実際に動いてみないとわかりません。見当がついたら、そのポイントを押したまま動かすと、不思議なくらいに症状が消えてしまうことがあります。押した指が仮の支えになったからです。

「支え」と表現すると、硬くしっかりした部分のように思われるかもしれませんが、「支え」となる部分は十分な柔軟性をもっていなければなりません。柔らかいから、必要な時にキュッと収縮して力を出せます。この収縮力が支えとなるパワーです。

痛いところが悪いのであれば、痛いところをどうにかすればよいです。そういう場合もあります。ただ、そういうケースばかりではありません。痛いところが悪くない時は、痛いところをいじっても症状はごまかせてもよくなりません。悪いところも悪気があってそうしているわけではありません。だから優しい気持ちで接したいと思います。

調和を大事にする東洋医学って面白いでしょ?


今シーズンのRelaxは絶好調になるはずです。たぶん(笑)
山やスノーボードが好きな方は、ぜひ深谷のRelaxへ。
パタゴニアも扱っています。私も近々。

店舗情報
Relax(バックパッキング&スノーボード/埼玉県深谷市)
Relax Blog

こしみず店長の養気院体験談
約2年ぶりの快眠(Relax Blog)
はり治療2回目(Relax Blog)


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yoki at 00:07│Comments(4)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2010年08月19日

■シンプルイズベスト

前回の症例(妊娠中の耳閉感)で書き残したことがあります。

シンプルに対処するメリットです。
 
 ・耳閉感
 ・胸が苦しい
 ・夜中に目が覚める
 ・不安と怖さでドキドキして寝付けない(時々)


こういった症状に、耳の治療、不眠症、動悸・・・をそれぞれ考えていくと手数が増えます。手数が増えることはよくありません。手間を惜しんでいるのではありません。手間が増えれば増えるほど、効果は分散し、効果の検証も難しくなります。

 <手数が増えすぎた時のデメリット>
  ・効果が下がる
  ・効果が見られなかった時に問題点を見つけられない

可能な限り、施術はシンプルな方がいい、というのが私の考えです。
そのためには、患者さんの回復を信じなければいけないわけです。

鍼灸で治しているようだけれども、実際には患者さんの回復力が治しているわけで、鍼灸でできるのは、回復力が正常に働くようにするお手伝いだけ。

鍼をして患者さんの症状がよくなると、どうしても鍼が治したような錯覚に陥ります。私もそうですし、患者さんも近い感覚をお持ちになると思います。

シンプルにするメリットは他にもあります。
良い状態が安定することです。

補助が少なくて回復したのなら、それは患者さん自身の力によるものが大きいと言えます。

周りが助けすぎると、自立できなくなってしまうのです。
(介護に似ているかもしれませんね。)

たくさん手を出す方が有り難いと感じる患者さんが多いのも事実です。それは、ただ単に「たくさんした方が早くよくなる」と考えているからで、患者さんが早く治ろうとして手数を求めるのは自然なことです。

患者さんがしてほしいと思うことに応えることと、患者さんのニーズに応えることは違う場合があります。

通院回数を少しでも減らし、患者さんの時間とお金がムダにならないようにするのも鍼灸師の仕事の一つです。「長く通ってもらった方が儲かるでしょ」なんて意地悪なことを言う人もいますが、そんなことはありません。早く治った患者さんほど、新しい患者さんを紹介してくださるので、早く良くなった方がやはりよいのです。

体も症状も千差万別。どんな症状でも1回というわけにはいきません。根気が必要なものもいっぱいあります。長くかかるものを少しでも短縮させる、そのためには知恵も必要です。東洋医学にはヒントがいっぱい隠されています。


■謎の復視

よい話ばかり書いてもなんですから、あることを見落として治療が長引いてしまった例も書きます。

復視の患者さん(男性)で、ヒドイ肩こりと頭痛が伴っていました。
復視というのは、物が二重に見える症状で、この患者さんは右半分が二重に見える状態になっていました。CTなど、様々な検査をしても原因がわからず発症から3週間後に私のところにやってきました。精神状態もよくありませんでした。

初回の施術から症状は回復して、徐々に二重に見える範囲が狭くなっていきました。ただ、スパッと症状が軽くなるというより、一進一退を繰り返しながら徐々にという回復でした。

施術が14回目に差しかかったとき、思いもよらないことを患者さんが口にしました。
「シックハウス症候群」ではないかと。

突然だったので、何のことかと思いました。

事前の問診で、症状が発生する1年前くらいからPC作業で目を酷使していた、と話を訊いていたのでてっきり眼精疲労が発展したものだと思いこんでいました。

患者さんの説明によると、症状が発生する1ヶ月前、家のリフォームを行い、その部屋で寝ていたということです。疲れた時はその部屋で休んでいたようですが、症状はよくなるどころかさらに悪くなっていたようです。横になると症状が悪化すると解釈していました。私もそのそのまま受け止めていました。

対策として、部屋を封鎖し他の部屋で寝るようにしたら症状がどんどん軽くなっていきました。

ただし、それらしい化学物質は検出されていません。

証明はできなくても、状況からして部屋に何らかの問題があったことは間違いないと思います。本当の原因がなんであれ行動が吉と出たのでよいのです。

その後、患者さんの体調がみるみる回復し、復視、肩こり頭痛、みんな治ってしまいました。最近では、疲れたときだけ鍼灸を利用しています。

鍼もそれなりに効いていたようですが、部屋を封鎖するという処方がもっとも効いたようです。環境が整わない限り症状はよくならないという例でもありますし、環境が同じでもそこそこ鍼が通用していたという例でもあります。思い出となっている症例です。

臨床はいつも謎解きです。

次から次へと新しい謎がやってきます。謎解きのパートナーは患者さんです。
だから、患者さんとの信頼関係が大事です。

時々、この仕事を「探偵みたいだなぁ」と思うことがあります。
複雑な体と環境をシンプルに読み解こうとする仕事です。

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yoki at 17:16│Comments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2010年05月06日

20代男性の患者さん。かたぎの人の話です。
仕事の疲れを解消するためにやってきている方なのですが、背中にケガをしてしまい、それから腕がいつも以上に重くなってしまったようです。

背中の傷

ビス(ねじ)の頭と接触し皮膚に痕が見えます。
数日前のものなので、生々しさが残っています。

事の順番からして、背中のケガが腕の症状を引き起こしたことが十分に考えられます。以前なら、関係ありそうだな、と何となく処理してしまっていました。

最近では、「動作の連鎖性理論」を用いているので、このケガが具体的にどこに影響を及ぼすのか見えるようになりました。あまりにも典型例だったので、患者さんに撮影の許可をもらいました。

キズの下には肩甲骨がありますが、ここから中心方向(背骨のある方向)に進むと肩甲骨が途切れるところがあります。内側の縁なので、ここを内縁(ないえん)と言います。

この内縁は、連鎖性理論から言うと肘の動きと密接に関わっています。肘の周囲にあるツボと肩甲骨内縁のツボが対応しています。ただ、正経十二経脈上(ツボを結んで12本に分けたもの)のツボだけでは運動構造に対応しきれないので、その他のツボ(名もないツボ)も使っています。

肘のツボ

異常が出ている部位や動作がわかると自動的に、肩甲骨内縁のどの部分に問題があるのかわかります。この患者さんは、「重い」と異常を感じる部位と関係するところにキズがありました。状況から判断すると、2つあるキズのうち、強く影響しているのは下の方です。

下のキズの高さにあるのは魄戸(はくこ)というツボです。この魄戸に鍼をしてみると、その直後には肘が軽くなりました(患者さん談)。

さらに、この魄戸と肘のある部位(写真参照)は、項(うなじ)のコリとも関係していて、天柱というツボの外縁と関係があります。尋ねてみると、「実はここも気になっていた」と話してくれました。

理論と実際がピタリと一致した瞬間です。

天柱の外jpg

魄戸というツボ1つで、肘の重さ、そして項のコリを同時に解決。

気になる肘の部分、気になる項の部分、それぞれに鍼をしてもラクになると思います。ただ、これだと原因を放置してしまう恐れがあるのです。

原因を解消したいので、動作を分析してツボを決めているわけです。
根本にアプローチする一つの方法です。

この方法に2年くらい前から取り組み、最近はアレコレできるようになってきました。ただ、お気づきの方(専門家で)もいらっしゃるはずですが、正経十二経脈とは全く別のシステムです。

私の場合、運動器疾患に対して正経十二経脈をよりどころにすると結果があまりよくありませんでした。「理論通りにならないものだなー」と一人悩む時期がありました。

そんな時、活法に出会い、運動器と正経十二経脈というペアを解消した途端に目の前が明るくなりました。経絡やツボの概念がない中で施術をする、というのは衝撃的でした。何かを知ることで何かが見えなくなるんだなー、とこの時はずいぶんと思いました。

肩甲骨内縁と肘関節の関係

鍼灸師になったばかりの頃は、「鍼灸は肩こりや腰痛ばかりではない。いろいろな症状に対応できる」ことを伝えたくて仕方ありませんでした。

今はちょっと違います。肩こりや腰痛に真剣です。真までスッキリさせることは簡単ではありません。まだまだ腕が及ばないものだってあります。鍼灸師なら対処できて当たり前と言われる肩こりと腰痛。当たり前とされている症状にきめ細かい対応ができる、というのも鍼灸師としてカッコイイ気がしています。

参考図書:『図解 関節・運動器の機能解剖(上肢・脊柱編)』

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yoki at 00:02│Comments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2008年11月13日

■ダメ出しされた問診

問診
(写真はイメージです)

ある患者さんのことを思い出します。
あの日から何年も経ちます。

触診しながら問診をしている時のことでした。
ある患者さんがこう言いました。

「上手い先生は何も聞かなくてもわかるものだよね。」

問診が否定された瞬間でした。

不意打ちをくらった私は「問診をするのは…」と必要性を説明しました。
しかし、真剣に耳を傾けてくれることはありませんでした。

その患者さんが帰ったあと、なぜあんなふうに言われたのだろう、と考えたのです。これを機に問診の位置づけを再確認することができました。

その後、このように問診を拒む患者さんはやってきません。同じことが何度もあるとへこむので、対策をとったからです。その方法は一番最後に。



■名人は不問診!?

問診を重視する私は、患者さんの症状について詳しく訊くようにしています。まず問診、そして触診中も気になるところがあれば尋ねます。

 問診=症状の確認

そうやって症状の本質(原因)を探し、解決策を導いています。触診だけで、いろいろ見抜いてしまう鍼灸師もいます。「不問診治療」なんて言葉もあるくらいです。何も聞かずにすべてがわかればそれは一番スゴイことです。

ただ、そこまでのレベルにたどり着くまでは、たくさんの質問を重ねて触診と患者さんの回答を照らし合わせなければなりません。

そもそも、名人は本当に聞かないで何でもわかるのでしょうか・・・
訊かずにわかることが名人なのでしょうか・・・



■歴史

鍼灸の触診

辛い症状で悩む患者さん、特にどこに行っても治らないと苦しんでいる患者さんの症状は複雑です。

全身には歴史が刻み込まれています。過去に負った怪我、わずらった病気の歴史はツボの反応として残ることが多いのです。

その中から、患者さんが“今”つらい症状と関わりの深い反応を探す必要があります。効率よく間違いなく探すためにはピント合わせが必要です。

数ある反応の中から、今必要な反応にフォーカスするのです。
フォーカスは問診で行います。

 問診=歴史にフォーカスする

時系列に整理しないで体を診ることは、ちょんまげ頭でスーツを着ているのを奇妙だと思わないのと同じでしょうね。



■環境

ツボ人形

極論ですが、患者さんが鍼灸院にやってきて、施術しなくてもラクになってしまえば、患者さんの目的は達成されます。

本当にある話ですが、患者さんの症状が環境から来ている場合、その環境を変えるための助言だけで劇的に改善してしまうことがあります。そういうことは、いくら触診してもわかりません。問診でしか知り得ないものです。

 問診=環境を知る

生活上、ラクになる場面、辛くなる場面を知ることはツボ選びのポイントでもあります。たとえば、ストレスの胃痛と食べ過ぎで胃痛ではツボが違います。



■テスト

鍼や灸をするたびに、「どうですか?」と患者さんに尋ねます。
症状の変化はその都度確認します。的中すればすぐに変わるものです。

患者さんも鍼灸師も、起こっている変化を確認していきます。

臨床はテストの繰り返しです。テストがなければ、鍼灸師の思いこみに基づかなければなりません。一方的になりますし、経験が豊富だとしてもその経験の範囲内までしか想像できません。

 問診=共通認識の形成

二人三脚です。どんなに優秀な鍼灸師も患者さんの協力を得られなければ、よい仕事はできません。協力を得られるように工夫するのも鍼灸師の腕の一つです。



■目的

さて、ここで再確認。

患者さんとは?

「施術を受ける人」でしょうか・・・

施術を受けるだけの人はお客さんです。
患者さんは深刻な悩みを抱え、はっきりとした目的をもっています。

患者さんは「治りたい人、ラクになりたい人」です。

患者さんの目的を確認した瞬間から、鍼灸師には使命が生まれます。

 問診=鍼灸師の目的意識を形成

鍼灸師が目的を持ち、それを受け取ることが患者さんの目的となります。
患者さんには「受け身」を調えて頂く必要があります。



■コリ当て名人

最初の話に戻ります。
問診を拒んだ患者さんは、

あの時の患者さん、目的は「施術を受けること」にあったのでしょう。連れて行かれたレストランのテーブルで「本日のおすすめ」を待っていたのだと思います。思い返しても、深刻に悩んでいる様子はありませんでしたから。

あとで気がついたのです。あの患者さんが「上手い先生は聞かなくてもわかる」と言っていた意味に。

おそらく「ここ凝っていますね」というコリ当てのことだったのです。「コリをほぐしてほしい」と目的が限局されたものならば、あれこれと質問をするのは、まわりくどいはずです。

「コリの部分にだけ施術してほしい」という単純な要望であることに気がつかなかったのは「そういう方は来ない」という思い込みがあったからです。

鍼灸院には様々な目的をもった方が来院されます。先入観は邪魔になります。白紙の状態で問診に臨むよう心がけています。



■不問診の真実

不問診は技術です。信頼を得るテクニックです。

顔色を見ただけで病名がわかれば、スゴイと思いますよね。「この鍼灸師なら治せる」と思ってしまいますよね。実は、私が鍼灸師になるきっかけとなったのがコレです。高校生の時、ある鍼灸師は私の膝にポンと手を触れました。それだけで悪い方を当ててしまったのです。

それですべてを見抜いたかといえば、そうではありません。そのあとで詳しく症状を聞かれました。決して、不問診のまま施術を始めたわけではないのです。

最終的にはいろいろ訊かれたはずですが、悪い方を「当ててもらった」という印象が強く残ったのです。ここがポイント。

名人といえども、聞かずに何でもわかるはずがありません。会った印象、触れた印象からわかることをネタに信頼を得るパターンは多いです。雑談のようであって、その正体は「意図的な問診」であることは少なくありません。

 信頼を得る → 質問する

信頼を得る方法は何でもよいと思います。でもこの順番だけは揺るぎません。信頼できない人に、体の辛さなんて話せませんから。



■問診の可能性

問診には可能性があります。患者さんが治るから治らないか、分かれ道になることだってあります。患者さんが発した一言が施術のヒントになります。

患者さんは、症状に関係あると思うことは話してくれます。でも「関係ない」と患者さんが判断したものは話してくれません。もしくは、遠慮して(色々言ったら悪いからと)隠すこともあります。

たとえば、頚が痛いという患者さん、足首に痛みがあっても話してくれないかもしれません。でも、関連性が潜んでいることは少なくありません。

これほど重要な問診ですが、鍼灸学校では問診技術は習えませんでした。カリキュラムにはあったのですが、紹介程度でしたから…。

鍼灸師になるためには3年間の専門課程を経て国家資格に合格しなければなりません。この3年間の知識と技術を活かすには問診力だと思います。

開業してから気がついた問診の重要性。
学生時代に気がついていれば、もっとラクだったかもしれません。

問診は丁寧に訊くだけではダメなのです。



■近頃、問診を拒む患者さんが来ない理由

理由1
ウェブで問診について説明
問診を重要視するスタイルであることを前もって告げているから。
詳しく聞いて欲しい、という方だけやってきます。

理由2
予約時に断っているから。
患者さんの目的を見極める質問を用意しています。

理由3
雰囲気づくりを頑張っているから。
「聞く耳」をつくっておく努力です。話したくなってしまえば、こちらのものです(笑)

理由4
聞かないから。
「話したくないなら聞かないぞ」という割り切った態度をこちらも取ります。「もう来なくてもいいですよ」というメッセージでもあります。どうしても協力を得られない場合、縁がなかったということで…。もちろん最終手段です。

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yoki at 10:47│Comments(8)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加
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