鍼灸師の裏話

2020年01月05日

バカではツボが減らせない


ツボの数、鍼の数


まずはこのツイートからどうぞ。

私にはこんなふうにストレートに言える勇気はありませんが、鍼灸の臨床において同じことを思っています。施術時に使うツボを減らすにはアタマが必要になります。鍼灸師という仕事は頭脳ワークです。

「気になるツボすべてに鍼をすればいいんじゃない?」

という人がいるかもしれないのですが、そうはいきません。バイキングで好きなだけ食べてお腹を壊すように、身体を刺激しすぎて状態を悪化させてしまいます。いかに少ないツボで身体を調整できるかが腕の見せ所です。

まさにこういう思考のことです↓


ツボと鍼の数が増えてくるとどうなってしまうのでしょうか。どんなふうになってしまうのか親しい鍼灸師が、ありがたいことに体験してくれました。ボリュームがある記事ですので、お時間のある時に開いてください。

グリーンノア鍼灸院のブログ『鍼100本打たれたらどうなるの?

刺激にはちょうどいい質と量があります。例に挙げたように料理で考えればよいのです。鍼は、モノとしてある料理と違って、適量が「どれくらい」なのか視覚的に見えません。時間の許す限り鍼をし続ける行為は止まらないわんこそばです。

料理人が、お客さんの限られた胃袋の範囲の中で最高の体験をしてもらうと、相手の好みや体調に合わせてコース料理をつくるように、鍼灸師も工夫をします。

もし「鍼をたくさんしてもらった方が患者さんは満足する」という鍼灸師がいたら、それはフードファイターを相手にしているからです。通常は、ちょうどいいツボの数、ちょうどいい鍼の数があります。


究極の一本


理想を言えば、一つのツボ、一本の鍼で仕上げたいものです。結果的にそういう時もありますが、一本だけに制約するのは極端すぎてやりづらくなります(そのツボで効果がなかったら終わりって…厳しすぎる)。

私の考えはゆるいので「できるだけ少なく」です。指導する際には、一つの症状に3〜7本くらいをおすすめしています。複数の症状があっても、10本以内におさまるようにしたいです。

ツボと鍼が増えて困るのは、刺激量の問題ばかりではありません。増えれば増えるほど、どのツボで効果が得られたのか判断できなくなります。

たとえば、鍼を100本したあと、仮に、患者さんが「良く効きました!」と言ったとして、どのツボが功を奏したのか判断のしようがありません。

次回の時も、偶然そのツボにヒットすることを期待して、100本スタイルを続けなければいけません。患者さんが100本に耐えられるファイターならばよいですが…。

私は、鍼を1本刺すたびに身体に起こる変化を確認します。鍼は一本でも必要なツボに適度な刺激を与えるなら著効が期待できます。今日もリウマチの患者さんで「背中が痛い」という方の手のツボに鍼を一本したら、「痛みがとれました」とおっしゃっていました。

胸椎の6番と小指のツボの関係を利用したからです。リウマチのように、身体の節々が炎症して痛む場合には、背骨の際(きわ)に、独特な圧痛(押すと痛みが出る所)が出ます。手のツボで胸椎6番の際(きわ)に作用させながら、炎症を抑える効果を狙いました。


鍼治療の醍醐味


このように、1つのツボにいくつかの目的を乗せることができます。それには、事前に患者さんの全体像を知っておく必要があります。刺鍼前の問診と触診が重要になります。

痛みのあるところに安全に刺鍼すれば、それはすべて鍼治療と呼べるものです。ただし、そこには限界があり、その限界を突き破るために理論があります。鍼治療の醍醐味は、患部に鍼をしなくても、ツボの効果によって遠隔からアプローチできることです。それを極めていくと、極小の刺激で症状を好転させることができます。

そもそも、ツボというものは、弱刺激で効果が長続きするところです。笑いのツボがそうでるように、みんなが同じとは限りません。相手に合わせて、その一点を探す仕事です。ここに鍼灸師という職業の面白さをやりがいがあります。

今日言いたかったのは「バカでは良い鍼治療ができない」ということです。でも、腕が良い鍼灸師ほど「鍼バカ」って呼ばれている可能性があるので注意してくださいね。そう呼ばれたい。

Twitterもやっています。
https://twitter.com/kuri_suke

【よろしければ投票してください】
応援クリックありがとうございます(1日1クリック有効)。
2つのランキングサイトにエントリーしています。
にほんブログ村 健康ブログ 鍼灸(はり・きゅう)へ  

yoki at 01:49│Comments(2)このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年06月21日

整動鍼®DVDが発売(6/20)になりました。
ご購入ありがとうございます。

予約開始時が絶好調で、ランキングトップになったいた日もありました!
フィットネス界の女王、ジリアン先生の上にいることに気がついた時は、びっくりしました。

整動鍼がジリアン先生に勝った


患者さんにも興味を持って頂いているのですが、プロ向け教材です。残念ながら家庭で役に立つ内容ではありません。3月に出版した『ツボがある本当の意味』は、専門領域に少し触れていますが一般向けです。

『ツボがある本当の意味』を読まれた方は、「実際の理論はどうなっとるんだ?」と思うはずです。理論の詳細には踏み込んでいないからです。Amazonのレビューを読んでも、具体的な理論や実践方法に触れていないことを残念に思っている人がいます。

本では、鍼灸に対する考え方を広げることに専念し、具体的な手法にはあえて触れなかったのです。流派を売り込んでいると思われたくなかったからです。

今回のDVDは、完全に具体的な方法を紹介するものです。『ツボがある本当の意味』を読んで物足りないと感じた鍼灸師におすすめです。期待を裏切らないようにがんばりました。「セミナーに参加してみたいけど、迷っていて...」という方もぜひ。


想像以上に苦労した撮影


このDVDづくりで苦労したのは、セミナー受講者が買って面白いと思う内容に仕上げることでした。入門的な内容でありながら、セミナーの常連さんを満足させる内容を考えなければならず、構想に大量の時間を注ぎました。その苦労話もあるのですが、記事にしづらいので、今回は撮影の裏話を書きます。

DVDを観て頂けるとわかりますが、映っているのはいつもの私ではありません。自然体とはほど遠い、がんばっている姿が映っています。映像は84分に収まっていますが、撮影には丸二日かかりました。撮影はハードスケジュールで、ほとんど休憩はありませんでした。現場のみんなが一生懸命でした。

時間がかかった理由は次の2つです。

|偲に説明するための的確な表現に調整する
∈戮くシーンを分けて撮影する

整動鍼DVD撮影現場01



患者モデルの女性にドキドキする


撮影は4月に都内の某レンタルサロンで行われました。ふだん施術している群馬や東京の院でやるのが一番ですが、カメラの位置に制限がでてしまうため、狭い個室は撮影に向いていないのです。

撮影に使ったスペースは10畳ほどあるので、どんな角度からでも撮影できます。都内には、こうしたレンタルスペースが多数あって時間単位で借りることができます。出版社のBABさんに手配して頂きました。

撮影には患者役のモデルが必要です。イメージを男性に偏らせたくなかったので「患者役は女性でお願いします」と出版社に依頼してありました。モデルが決まった時に、簡単なプロフィールを教えて頂いただけなので、どんな女性にモデルをして頂けるのか、当日まで分かりませんでした。

だから、ちょっとドキドキしていました。

理論編の撮影が終わる頃、その女性はやってきました。諸星美穂さんという、ヨガのインストラクターをしている方です。キレイな容姿にもドキドキしちゃうのですが、体の専門家であることにもドキドキしました。

前者はわかるとしても後者はなぜ?

体の専門家は鍼治療の変化に敏感なことが多いので、ごまかしが通用しないからです。映像を通して要領が伝われば良いのですが...ヤラセは嫌。

整動鍼DVDの撮影現場2



NGが出せない緊張感


撮影日の前から打ち合わせを何度も重ね、台本ができていました。実際に撮影してみると、他の部分と説明が噛み合っていなかったり、説明が分かりにくかったり、などの問題が出てきました。その場で台本に修正を加えたり、書き足しをしたりしながら撮影は進みました。普段のセミナーでやっていない内容だったので、その場で考えて、その場で覚えて、その場で演じる、という負荷のかかる時間でした。

セミナーは言い間違えがら、すぐに言い直せるので、一言一句決めておく必要はありません。でも、ここでは一瞬でも噛むとNGになってしまいます。

NGを出すと撮影が終わらなくなる...という巨大なプレッシャー。

私は、日常で味わうことがない緊張感に包まれていたのです。しだいに体から心が離れていくのです。そして、間違ってはいけないクリ助を監視しようとするもう一人のクリ助が生まれたのです。つまり、意識が浮いちゃって地に足が着いていない状態です。

整動鍼DVDの撮影現場3



発売日の延期


撮影の終わり2時間くらいは、「さあ、巻いていきましょう!」という声が何度も鳴り響いていました。

朝9時から夜10時までがんばったのですが終わりませんでした。3割ほど撮り終わっていません。緊急事態です。5月に発売をするためには撮り終わっていないと無理なのです。仕方なく、急遽、発売日を6月に延期して、撮影日をもう一日設けることにしたのです。

2週間後に2回目の撮影日を設定しました。念のため、朝から夕方までたっぷり時間を確保しておきました。これは正解でした。確保していた時間をいっぱいまで使うことになりました。

どのみち1日では足りなかったのです。
二日間必要であることを、誰も予測できなかったので、誰のせいでもありません。


2019年6月20日発売

※6/21現在21%OFF(お早めにどうぞ)


頼りになるアシスタント


出版社との打ち合わせから撮影当日のサポートまで、秘書のように私をサポートしてくれたのは、2月に入社したばかりの岡本悠馬くんでした。彼は、神戸で自分の院を順調に経営していたのに、私の誘いを受けて院を閉めて群馬にやってきたという、ありがたい変わり者なのです。

そんな彼に投げつけた最初のプロジェクトが、このDVD出版でした。仕事は期待をはるかに超えるレベル。私にしかできないこと、私でなくてもできること、を正確に見極めて段取りをつけてくれたのです。

撮影本番は、私が疲れないように荷物を持ってくれたり、台本を先回りして用意してくれたり、と至れり尽くせりのサポートを受けていました。

もし、彼がいなかったら私はパニックになっていたと思います。ハードスケジュールを平穏にこなせたのは間違いなく彼のおかげです。モデルの諸星さんに働きっぷりを絶賛されていたのが記憶に残っています。

整動鍼DVDの撮影を終えた栗原と岡本

(1日目の撮影を終えた栗原と岡本)


特典映像は必ず観てほしい


ふだんのセミナーのようにやってしまうとDVDの収まりません。そのため、台本は限りなくコンパクトにしてありました。ただ、コンパクトにしすぎてしまい、伝えたいことが十分に入っていないことが気がつきました。時間を配慮しすぎたのです。

「時間が余るなら、もっと言いたいことを台本に入れておけばよかった」

と後悔しました。

そこで、本編とは別に特典映像を用意することにしました。

ここからは自力です。群馬の養気院で撮影しました。そして、約40分の映像が出来上がりました。撮影に要した時間はなんと60分。事前に岡本くんが台本を用意して、本番では台本から大きくはみ出しながら、セミナーの時のように気持ちよくしゃべりました。その素材映像を、メンバーの一人、小堀くんが編集してくれました。

特典映像というと「観ても観なくてもいいもの」と思われるかもしれません。この特典映像は本編に入れようと思っていた内容が含まれていますから、必ず観てほしいです。

整動鍼を臨床で使うためのルールやコツなど、整動鍼を実践するために必要な情報ばかりです。本編の84分と特典映像の40分で、ぜひ整動鍼に感じてみてください。

新しい何かに出会えるはずです。


お知らせ


2019年5月10日(金)から、毎週金曜日は品川のカポスにて施術を行います。予約の際には「栗原希望」と告げて下さい。

・ネット予約はこちら
LINE@でも承っております。
カポスのLINE@のQRコード


Twitterもやっています。
https://twitter.com/kuri_suke

【よろしければ投票してください】
応援クリックありがとうございます(1日1クリック有効)。
2つのランキングサイトにエントリーしています。
にほんブログ村 健康ブログ 鍼灸(はり・きゅう)へ  

yoki at 03:24│Comments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2017年11月18日

鍼灸師が一流になれるかどうかはフィードバックの質と量で決まる


鍼灸師を苦しめている問題


鍼灸の免許を取って一生懸命やっていれば、難しい症状でも治せるようになって、いつか一流と呼ばれる・・・

そんな未来を描いている学生は少なくない気がします。私もなんとなく、そんなイメージを抱いていました。しかし、それは鍼灸師になって臨床に出た瞬間に崩れ去ります。

自分の成長曲線が全くイメージできないのです。
その理由は、トライアンドエラーが満足にできないからです。

どんな施術をしたら患者さんが良くなるのか、どんな施術をすると良くならないかを検証しながら、最適な施術を探していくのが本来です。

しかし、鍼灸ではその方法があいまいです。流派によっては脈診(橈骨動脈などの脈を術者が診る)だけだったり...と客観性があるとは言えないものが未だに残っています。

鍼灸といえばツボです。ツボ選びが鍼灸師の仕事の根幹です。「どのツボを使うか」は「選穴」と言われます。この選穴で鍼灸師の腕が決まると言ってもよいでしょう。

ツボ選びにおけるトライアンドエラーがとても大事なのです。要するに、ツボが効いたか効かなかったかを判断していくことです。しかし、この当たり前とも言える作業が満足にできません。ここが鍼灸師の弱点であり、鍼灸業界を混迷させています。

ツボにはどんな効果があるのか・・・

こんな当たり前のことがわかっていないのです。共通の見解がなく流派によって言っていることがバラバラです。

古典に書いてあるとか、著名な先生が言ったという理由だけで検証されることもなく、効くと信じて使い続けられています。疑ってはいけない空気で満ちています。


鍼灸を信じる必要はない


鍼灸は伝統医学です。先人に敬意を払うことは大切ですが、疑うことを放棄してしまったら信仰です。「そういうものだ」と信じることをしなければ始まらないのであれば宗教です。

鍼灸について「信じる」とか「信じない」とか言う人がいますが、そもそも、そういう話がナンセンスです。信じると信じないとか、何なのでしょうか。

鍼灸は信仰の対象ではありません。鍼灸は効くこともあるし、効かないこともある、というだけです。薬に置き換えれば誰も疑いません。症状によって効くことも効かないこともあるのは当たり前です。もちろん鍼灸師の腕の差も如実に出ます。

私たち専門家が約束すべきことは、鍼灸治療がどういう場合に効いて、どういう場合に効かないのかを把握しておくことです。そして、自分の得意分野をしっかり認識しておくことです。

鍼灸は医学です。でも、現代においてそういう地位で見てもらえないのは、効果を数値で説明できないことが大きな原因だと私は思います。



芸を磨いても鍼灸師は信用されない


ツボの「効く−効かない」を見極める能力が鍼灸師のスキルです。

効いているかどうかを判断できないのであれば、何年何十年やっても「慣れ」が積もるだけです。個人の中に非言語的な“何か”が蓄積されても、学術は発展しません。50年やって得られるのは“慣れ”だけです。

自分以外の人が再現できないものは“芸”です。鍼灸の世界には、名人芸のようなものは存在しますし、そのパフォーマンスを否定するつもりはありません。ただ、そういうパフォーマンスのベースは個性であると思っています。そういう鍼灸師の周りにはファンが集まります。タレントとして成功しているのです。

憧れるのは自由ですが、芸と技術はしっかり区別すべきです。

鍼灸で大事なのは間違いなく技術の方です。同じことが何度もできる再現性が大事です。再現性のあることをやることが、団体として組織として、職業として信用される近道です。


ツボの効果をフィードバックする


「鍼灸師にいちばん必要なものは何ですか?」と尋ねて「人間性」という答えが返ってきたら注意しています。人間性(イイヒト)では患者さんを救えませんから。患者さんを救いたいと思うなら技術を磨くしかありません。

トライアンドエラーには結果のフィードバックが不可欠です。ツボに鍼を1本したら、その場で効果を判定できなければなりません。しかし、これがやっかいなのです。客観的な判定が難しいからです。

私は“動き”を指標にすることにしています。動きなら客観的な指標にできます。動きに違いが出ていれば効果ありと判断します。仮に痛みが残っていても、動きが改善していれば効果ありと言えるのです。

判断指標があれば、1年でも大成長できるチャンスがあります。もし、何もなければ何年続けても同じです。何となく「上手になったかなぁ〜」と思う程度です。自分の成長曲線をイメージできなくなったら、仕事として面白くありませんし、患者さんに成長を期待して頂くこともできません。

技術が向上すればその分だけ責任も増えます。その責任を全うしていくことで、人間的に成長できるのだと思います。技術が人間性を育ててくれます。

スパイダーマンの「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という台詞が好きです。



お知らせ


前回の記事で紹介した来年(2018年)2〜4月の整動協会(活法研究会)セミナーの席が残りわずかとなっております。既に満席のものもありますので、興味がございましたらお早めにお申し込みください。

整動協会(活法研究会)セミナー一覧


【よろしければ投票してください】
応援クリックありがとうございます(1日1クリック有効)。
2つのランキングサイトにエントリーしています。
にほんブログ村 健康ブログ 鍼灸(はり・きゅう)へ  

yoki at 13:59│Comments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2016年10月10日

新ノウハウに飛びつく心理


鍼灸業界の裏側で繰り広げられる技術セミナーに経営セミナー。最近も「1秒で…」という文字が強調された技術ノウハウのDMが院に届きました。年々加熱するキャッチコピー。

新しい技術が紹介されれば振り向き、新しい経営ノウハウが目に付けば飛びついてしまう。熱心に情報収集しているつもりが、端から見たら情報に振り回されているなんてこと、あると思います。

最近では、私がそういう情報を提供する側に回っているので、誰かを振り回しているかもしれません。責任を感じながら情報発信をしています。あまり意識すると何も書けなくなるので、ほどほどに。

次から次へと新しいものを求めてしまう。

この心理の正体はいったい何なのでしょうか...。

「アンテナを張っている」という言い回しがあります。そのほとんどは前向きな意味で使われているようですが、前向きな意味ばかりではないと思うのです。


220727f81f3819227c905a3e22787375_s_400


私の場合、不安だからアンテナを張ってしまうのです。新しい情報に接し続けていないと不安な気持ちが収まらないのです。

自分だけが取り残されてしまうことが怖いのです。常に孤独になることを恐れているのです。周りを見ずに「自分が一番!」と思い込むのも才能かもしれませんが、私はそういうタイプではありません。謙虚と言えば謙虚ですが、自信がないのです。

開業すると、自分一人の力がどれだけ小さいかに気が付きます。仕事は、誰かに何かを提供しているようでいて、誰かの力を借り続けています。孤独になったら事業は“おしまい"です。経営者はみんな知っています。

だから、どれだけ自分に足りないものを他者(他社)から借りられるかが勝負だと思っています。そういう気持ちが年々強くなり組織づくりに力を入れています。


お金と孤独感


誰かと一緒にいても、孤独感から逃れることはできません。

私が独立して思ったのは、お金で誰かの能力を買うと孤独感が漂います。お金を介した関係、お金で買った関係だと思うからだと思います。取引が増えるほど孤独感も増えるのです。

お金だけでつながっていると感じた瞬間に空しさに襲われます。

学生の頃や勤務している頃はお金の関係を感じることはありませんでした。気持ちで繋がっている感覚に対して素直でした。


ブランコ


お金でつながる関係は社会の基盤です。プロの仕事はお金で価値を評価しなければいけませんし、それがもっとも公平な関係なのでしょう。社員に対しても同じように考えています。最終的にはお金で評価しなければなりません。

ただ、公平を求めすぎると孤独感が待っているような気がしてなりません。公平というのは「みんなと同じように扱われる」ということです。裏返せば、誰からも特別扱いされないという意味になります。

みな「自分を特別扱いしてほしい」と望んでいるものです。公平な社会や組織を望みながら、いっぽうで特別に扱われることを望んでいるのです。そういう矛盾を含めて人間だと思います。


孤独が一番のリスク


セミナー事業に関わって7年。たくさんの同業者と関わってきました。そして、今もたくさんの同業者とお付き合いがあります。始めた頃と比べると、事業に対する意識がだいぶ変わったように思います。最初は夢中で、代金を裏切らないように、それだけを考えていました。

次の段階として、「向上心」をくすぐるように考えるようになり、そして今、人と人をつなぐ事業であることを強く意識するようになりました。

もともと、橋本と立ち上げた活法研究会は「鍼灸師の横の繋がりを大事にする」というコンセプトですから、原点回帰です。

誰にとっても、どんな立場であっても、孤独が一番のリスクだと思うのです。


ネズミの綱渡り


開業も孤独な仕事です。派手な仕事など何一つなく、誰からも気が付かれない地味な作業を繰り返すばかりです。いくらやっても、患者さんが集まらなければ廃業です。

しかも、その不安は人に話しづらいのです。

家族は心配させたくないですし、友人にはプライドがあって泣き言を言えません。孤独になる条件がそろっているのです。その孤独を乗り越えたものだけが、事業主として生き残っていくのだと思います。体の健康も大事ですが、心の健康も同じくらい大事です。


仲間づくりのコスト


友達と仕事仲間は作り方が根本的に違うと思います。仕事の間柄というのは、相手の(稼げるはずの)時間を頂くので、相手の時間をお金で買うことになります。その時に費用が発生しないとしても、互いに費用を出し合って差し引きでゼロと考えるのが正しいように思います。

友達は、趣味や遊びを共有するわけですから、互いに時間に対するコストを意識することはありません。細かいことを言えば、自分の時間を自分で買っているわけです。

 仕事で会うとき=相手の時間を買う
 遊びで会うとき=自分の時間を買う

実際はこんなにキレイに分けられません。少なくとも私は仕事を楽しんでいるので区別しにくいです。時間を忘れて仕事に没頭していると、仕事とはいえ時間の概念が希薄になり、時間に対するコスト意識がなくなっていきます。

仕事を楽しんでいる者同士が集まっても、コスト意識が薄くなっていきます。これは、時間のコストを自己負担している状態です。

仲間は時間を共有する相手です。その時間は「時は金なり」という言葉があるようにタダではありません。このように考えると、仲間をタダで手に入れることはできません。仲間をお金で買うって意味ではありません。仲間と共有する時間をお金で買えるって意味です。


仕事とプライベートの境界線


セミナーに集まる参加者は仕事の関係です。でも、次第にその関係が変わっていきます。まるで友達同士のように仲良くなってしまうのです。

プロとして技術を習得するからには、お金になるかが大事です。でも、いったんお金に変わると分かってしまえば、あとは楽しんだ者勝ちかもしれません。少なくとも私はそういう感覚です。仕事は楽しめるほど良いと思っています。

しかし、医療者という立場では「楽しむ」とは言いにくいものです。「○○で困っている患者様のために・・・」という表現をすることを求められていると思います。

でも、モチベーションはそこではないのです。活法や鍼灸をやる理由が初めにあるわけです。それは、つまり「活法だからできること」、「鍼灸だからできること」がモチベーションだということです。そのモチベーションが、そもそもプライベートなものです。

仕事の間柄であっても、真に迫っていくとプライベートな領域に入ってしまいます。これを意図的にやったのが活法合宿です。


仕事の関係を越えた活法合宿 in 伊東


先月、活法研究会で「合宿」なるものを実施したのです。会員さんが20名ほど集まって伊東(静岡県)で一泊してきました。

東京から伊東まで約2時間


この企画は会員さん同士の親睦が目的です。仕事とプライベートと間を狙ったものです。だから今回は儲けなしで決行しました。

日頃のセミナーでは、仕事の関係が前提です。懇親会だけでは仕事の顔は外れません。そこを外したいと思ったのです。

みんなストレートには言わないですが、どこかに孤独感を抱えています。一歩踏み込んだことを求めているように感じました。実際に、家族や趣味の話で盛り上がりました。

合宿をやって得た結論は「孤独や不安を解消するには仲間が大事」だということです。どんなに書籍やDVDで情報を得たとしても、孤独や不安は解消されないのです。DMが送られてきても、大事なのはその内容ではなく、その先でどんな仲間と出会えるかだろうと思います。

私の中で「仲間づくり」が今後もテーマになっていきそうです。



この映像の中には自前のドローンを使用して撮影したものが含まれています。私自身、この合宿にプライベートを持ち込んでいます。趣味に付き合わせて悪いかな〜という気持ちもありましたが、持って行ってよかったと思っています。そういうところも含めて、クリ助なのですから。

活法研究会のブログには、合宿の詳しい様子を書いています。
活法合宿(前編)
活法合宿(後編)


【投票ボタン】
応援クリックありがとうございます(1日1クリック有効)。
2つのランキングサイトにエントリーしています。
にほんブログ村 健康ブログ 鍼灸(はり・きゅう)へ  

yoki at 00:56│Comments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加

2016年09月20日

■ゴルゴ13でもスコープなしでは200mが限界


なんとなく、前回の「鍼灸の国際規格を巡る闘争」の続きです。購入した『特集 ゴルゴ13シリーズ No.193』の鍼灸業界の闇を描いた「未病」の他にも、男心をくすぐる話が収録されています。

3話目の「スナイパーたち」は狙撃手同士の争いです。コードネーム「ゴルゴ13」、デューク東郷は、3人のスナイパーに狙われることになります。しかし、ゴルゴはその罠をかいくぐり、最後にはとっさの判断で仕掛けた罠で相手の弾道をそらします。


ゴルゴ13とM16


ゴルゴ13は途中、銃のスコープを壊されてしまいます。スコープは望遠鏡で的を狙うわけですから、これがないと遠方の的を正確に狙うことはできません。ゴルゴ13を狙うスナイパーは、スコープを失ったゴルゴ13に対して、次のように分析しています。

「※アイアンサイトでは、いかにお前といえど、有効照準距離は、200mでしかない!!

※アイアンサイト=銃身前方の照星と後方の照門を合わせて狙う照準器

ゴルゴ13自身も、

目視では、200mが限界……400m離れた相手から狙われたら、勝ち目はない……

と全く同じ分析をしています。この描写が物語るのは「武器の性能を才能や努力で越えることは難しい」ということです。重要なのは、武器の選び方。そして、その武器を最高の状態に仕上げ、それを使う機を逃さないように事前準備を万全にすることです。

これは、鍼灸師にとっても同じ。鍼灸師にとって、どんな鍼を選ぶかで勝敗が決まる時があります。才能や努力ではどうにもならない壁があるのです。


■メーカーに特注したい鍼がある


鍼灸の世界に入って18年になりました。しかし、これまで満足できるディスポーザブル鍼(使い捨て鍼)には出会っていません。このまま満足できない鍼を使い続けて鍼灸師人生を終えるのかと思うと、じっとしてはいられません。

不満があるのは鍼管です。

鍼管というのは、鍼を無痛もしくは微痛で刺すことができる日本独自の道具です。最近の鍼はディスポーザブル(使い捨て)が多いので、鍼管もプラスチックで出来ていて、1回使えば捨ててしまいます。


鍼灸用の鍼


鍼灸師が鍼をする時に、ツボに鍼管をセットします。当然、ツボの真ん中に鍼管を置くわけですが、鍼管が太ければ太いほど精度が下がります。ツボの大きさが1センチもあれば、鍼管の太さなど気になりませんが、1ミリのツボを狙うには、鍼管の太さが命取りになります。

太い鍼管では、いかにゴルゴ13といえど、最小照準サイズは、3ミリで限界!!

1ミリを狙うには、鍼管を使わずに刺すしかありません。上手に刺せば痛くありませんが、鍼管のように安定した無痛・微痛とはいきません。鍼管の効果は絶大なのです。

日本の鍼灸が細くて痛みが少ないことは世界の誇れることです。しかし、精度に課題が残ります。さらに大きな課題は、精度の課題があることを問題にしない業界です。鍼メーカーも、名のある鍼灸師が指摘しない限り、精度の高い鍼管に着手することはしないでしょう。

事情がどうであれ、私は精度の高い鍼管がほしいのでメーカーに働きかけます。もし、痛くなく、精度が高い刺入(正確には、切皮=せっぴ)が出来る鍼があったら世界一は間違いありません。国際規格を狙えます(笑)

もともと日本の鍼は細いのが特徴です。繊細さをさらに強調することができれば、日本鍼灸の存在感を世界に示すことができます。


■こんなに違う、鍼管の外径と内径


私が行っている整動鍼の勉強会では、受講者の鍼灸師に普段使っている鍼を持参して頂き、その鍼を練習で使っています。

受講者の方が使っている鍼は片っ端からチェックしています。見慣れない鍼があると、駆け寄って「それどこの鍼ですか?」と嗅ぎ回っています。そうやって自分の技術の特性にもっとも適した鍼をいつも探しているのですが、未だに出会うことができません。

とりあえず、手元にある鍼を並べてみました。


各メーカーの鍼を並べてみた


サイズの雰囲気が分かるように、一番左には爪楊枝を。色は別として鍼管の形状には個性があります。パイプをカットした形状ですが、その縁の研磨の状態も違います。丁寧に仕上げてあるメーカーもあれば「切りっぱなし?」と思えるようなメーカーも。

切りっぱなしだと、ケバが皮膚に触れるとチクッとします。鍼する前にチクッとしてしまうと、患者さんがビックリします。だから、できるだけ角を丸くしてある鍼管を選びたいです。鍼管の当たりはよいのに、鍼先がそれほどでもないパターンもあって、鍼を選ぶのはなかなか大変です。

お次は、外径と内径を比較してみます。左側の爪楊枝と比較すると、だいたいの大きさがイメージできると思います。左側の2つは爪楊枝がスッポリ入り入りそうです。


各メーカーの鍼の外径と内径を並べて比較


やってみたら、本当に入ってしまいました(^_^;)


鍼管に爪楊枝を入れてみた(入った!)


爪楊枝が入る内径で、精度の高い鍼ができるわけがありません。しかしながら、このことを問題にする鍼灸師があまりにも少ないのです。有名な先生が、メーカーに要求するのを待っているのですが、そうした動きがいっこうに見えないので、自ら動くしかありません。

日本鍼灸の特徴である鍼管。
日本の鍼灸師が鍼管にこだわらずして、どうするのか・・・と思います。



■鍼管の理想イメージ


実際に使っている鍼管を調べてみました(その時の様子はカポスの坂口が記事にしています)。その結果、もっともベターなもので内径が1.5mmでした。


鍼灸の鍼管 内経1.5ミリ


1.5mmあるということは、鍼の先がこの径の中で動くわけですから、刺入点が最大1.5mmズレるということです。3mmのツボのど真ん中を狙っても、時に外れてしまうということです。これが、この鍼管の性能の限界です。言っておくと、この鍼管が私が知る限り、もっとも精度が高いです。つまり、これが日本の鍼の限界値です。

私はもっと内径と外径を細くすることができると思っています。0.2〜0.3mmでも細くなったら嬉しいのです。この違いは大きな効果を生みます。

仮に0.3mmでも内径が小さいと、1.5-0.3=1.2mm。この数字がズレ幅の最大値。これが半径になるわけですから、狙えるツボの大きさは2.4mmです。

内径を小さくすると、問題も起こります。

問題1)挿管がしづらくなる

鍼管に鍼をセットする時に、内径が小さいほど難しくなります。これまでサクッと出来ていた片手挿管でまごつく可能性が出てきます。しかし、そこは練習でなんとかなります。精度を犠牲にしてまで挿管しやすくする意味はないと私は思います。

▼片手挿管



問題2)切皮(鍼が皮膚を貫く瞬間)が痛くなる

鍼管の目的は、切皮痛を最小にするところにあります。鍼管を使うことで、患者さんの精神的な負担は大幅に軽減します。

鍼管のおかげで、患者さんは「あれっ、全然痛くない〜」や「思ったより痛くなーい」と感じるのです。鍼管の圧によって、痛みが軽減しているので、内径を細くしたり、外径を細くするために管の厚みを削れば、その分だけ痛みが増してしまう可能性があります。とはいえ、「ないより断然痛くないだろう」というのが私の考えです。


■ミリ単位の精度にこだわる鍼灸師が増えている


私は「整動鍼」なるものを手がけています。従来の鍼灸は、体内の「流れ」に重点をおいたものです。内外の「出入り」に重点をおくと主張する鍼灸師もいるかもしれません。私は、これだけでは足りないと考え、「動き」に重点をおいた鍼灸理論を提唱しています。それが「整動鍼」です。

筋肉のコンディションをダイレクトに整えることができるので、筋肉痛や関節痛が瞬時に変化します。肩こりにも使えますし、肩こりと深く関わる頭痛や突発性難聴や耳鳴りにも効果的です。他にもいろいろ。過敏性腸症候群のような症状も得意としています(筋肉も関わっているという証拠)。

整動鍼 四肢編セミナーの写真


そんな整動鍼のセミナーには、全国から鍼灸師が集います。「鍼をしたら効果がすぐ分かる」という即効性が評価されていると自分では分析しています。動きで効果を判定できるので、患者さんにとっても、鍼灸師にとっても分かりやすい治療となります。こうした「ツボで動きを整える治療」は、ありそうでなかったのです。

この整動鍼を支えているのが取穴(ツボ探し)の技術です。ツボの効果には再現性があります。ただし、再現するには刺鍼の精度が必要です。一般の人が考える以上にツボは小さな反応です。プロの鍼灸師も整動鍼のツボの細かさを知ると唖然とします。そして、精度の高いツボから生まれる即効性と再現性に驚きます。

先日の懇親会では「理想の鍼」について意見が交わされました。

もっと細い鍼管を知ってる?
作ってくれるメーカーってあるの?
活法研究会で整動鍼用の規格を作れないだろうか…

と盛り上がりました。

あったら買います!

という声で一致したので、これは本格的に検討しようと思って動きはじめました。興味のあるメーカーさんは早めに声をかけてください。ノウハウと開発費の部分で協力させて頂きますから。

極細鍼管の鍼があったら買いたいと思った鍼灸師は、このブログに「欲しい」とコメントください。お願いします。

--
◎鍼灸院/養気院(群馬県)・カポス(東京都)
◎勉強会/活法研究会

【投票ボタン】
応援クリックありがとうございます(1日1クリック有効)。
2つのランキングサイトにエントリーしています。
にほんブログ村 健康ブログ 鍼灸(はり・きゅう)へ  

yoki at 00:12│Comments(54)このエントリーをはてなブックマークに追加
月別アーカイブ
記事検索
全記事にコメント歓迎
これから読みたい本