ひとりごと
2026年08月12日

ある新人ダンサーへの拍手
昨日はバレエの鑑賞をしてきました。

この公演を通じて鍼灸師として学ぶところが多くあったので共有しようと思います。公演そのものの感想はFacebookの方に書きました。谷桃子バレエの魅力に取り憑かれたファンとして冷めやらぬ感動を刻んでおきました。
Threadsで見る
Threads(スレッズ)にカーテンコールの映像をアップしたところ、多くの方から「いいね」を頂きました。これは私に対するものではなく、明らかに谷桃子バレエへの応援の意がこめられたものです。ちなみに、カーテンコールの映像は主催側から「世界に配信してください」とのことで撮影がOKになっています。
この日、シンデレラを演じた赤野芹奈さんは初の主役。この赤野さんを目当てにしたファンでチケットは争奪戦となっていました。私が投稿したThreadsのコメントを見ても、いかに赤野さんが応援されているかわかります。技術的に次元の高いパフォーマンスができていることは私が語ることでもありませんから、この場では「応援してもらえる」ということが仕事や人生においてどれだけ重要であるか考える機会にしたいと思います。
新人の魅力
赤野さんが新人のバレエダンサーであるように、私たち鍼灸師にも新人の時代があります。得てして鍼灸師はベテランが好まれるものですが、そのベテランは例外なく新人を経由しています。ですから、新人のときから患者さんから選ばれる理由をもっていたことになります。
新人らしからぬ貫禄があるという場合もあるでしょうが、特別なケースでしょう。多くの新人は新人らしい魅力を目指す方が現実的でしょう。
私はとうの昔に新人の時期を抜けてしまっているので、若さを羨ましく思う気持ちを横に置き、ベテランの立場で話を進めていいます。
私が出した結論は「応援したいと思わせる行動と態度」です。鍼灸師に限った話ではありません。新しいお店が近所にできたとします。入ってみて感じがよかったら応援したくなりませんか?「感じがよい」は主観的なものですが、人間の判断はその主観に支配されてしまうものです。
感じがよくなければ、いくら実力があっても選択肢に入れてもらえない場合があります。実際、私がそういうタイプの人間で、どんなに評判がよいお店であっても店員さんが横柄だったら行くことはありません。私にも心当たりがあり、美味しいと評判になっているのに、足を運ぶことがないパン屋さんやケーキ屋さんがあります。美味しさは味覚だけで決まるものではありませんから。
将来性を織り込む
誰かを応援したいと思うとき、その気持ちの根底には将来が楽しみという感覚が潜んでいると思うのです。私たち鍼灸師も言えることで、新人のときに患者さんから「この鍼灸師は将来が楽しみだ」と思っていただければ、将来性を織り込んで評価してもらいやすいでしょう。
極端な例になりますが、もうすぐ辞めそうな鍼灸師に「将来が楽しみだ」と思う人はいません。「この仕事は性に合っていないのかも」などと悩んでいれば、表情や言動に表れて見抜かれてしまうでしょう。
鍼灸師の成長を見守るというのは、患者さんにとっても有益です。同じ人にずっと診てもらいたいと考えている人が少なくありません。このように考えれば若さは魅力です。
将来性を引き出す
私のような年齢になると「将来が楽しみですね」とか「将来は夢はなんですか?」なんて聞かれることはありません。まだまだやりたいことが残っているので寂しいわけですが、将来性を織り込んでもらえなくなるのも現実です。
そもそも、私がそこを求めちゃいけないわけで、若手の将来性を拡張させる立場ですし、それを仕事にすべきでしょう。この立ち位置から思うのは、人から可愛がられている鍼灸師は将来が明るく見えます。
仕事に打ち込む姿勢だったり、患者さんを想う気持ちだったり、仲間との輪を大事にする心だったり、要素はたくさんあります。そして、自分のことばかり考えているなって思ったら、可愛さ半減です。
応援されるという実力
鍼灸は技術職ですが、人の要素が大きな比重を占めます。だから、どうしてもアートの要素を除くことができません。むしろアートなものであると考えることもできます。ただ医療的な立場からは、技術に裏打ちされたものでなければアートとして成立しないと考えておかないと危険です。
鍼灸が面白いのは、同じことを学んでも鍼灸師によって違いが出てくることです。技術的な下地がしっかりしているほど、その人らしさは光ってくるでしょう。そして、その人らしさは技術だけに現れるわけではありません。
仕事に向き合う姿勢だったり、患者さんを大切にする気持ちだったり、仲間との関係だったり。そういうものを含めて「この人を応援したい」と思ってもらえるのだと思います。
新人は技術ではベテランにかないません。当たり前です。経験した時間が違うのですから。でも、ベテランには取り戻せないものを新人は持っています。それが将来性です。
「今はまだここまでだけれど、この人はもっとよくなる」
そう思ってもらえること自体が、新人にとって一つの価値なのではないでしょうか。だから若いうちは、完成された人間に見せようとしなくてもいいのだと思います。
それよりも、患者さんや先輩や仲間から「この先を見てみたい」と思ってもらえる人でいること。その期待に応えるように技術を磨き続けること。
そしてベテランになったら、今度は自分が応援されることばかり考えるのではなく、若い人の将来性を見つけて、そこに光を当てる側に回る。赤野芹奈さんのカーテンコールに送られていた大きな拍手を見ながら、そんなことを考えていました。
人は、完成されたものだけに拍手を送るわけではないのでしょう。これからもっと輝いていく人にも、拍手を送りたくなるのです。
・鍼灸のクリ助ch.(YouTube)
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・はりきゅう養気院(群馬県/伊勢崎市)
・はりきゅうルーム カポス(東京/品川)
・整動協会(鍼灸師のための臨床研究会)
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2025年10月22日
5日前に腹痛で苦しむ
先日の日曜日、娘のバレエの発表会に行ってきました。パ・ド・ドゥという男女二人組の踊りを担当しました。パ・ド・ドゥは初めてでしたし、ゲストダンサーのプロと踊るのも初めてでした。娘のお相手を担当してくださったのは茂木恵一郎先生でした。バレエ界では知る人ぞ知る有名人です。

バレエ・スタジオの顔となる演目なので、失敗でもしたら教室に関わる人たちに迷惑をかけてしまいます。娘は心臓が口から飛び出るくらいのプレッシャーと戦っていました。孤独でしょうね。私には無理です(想造できなくて他人事になってしまうほど)。
しかも中学3年生、つまり受験生。すべてがぎりぎり。5日前には極限状態になってよくわからない腹痛。鍼治療も加えてなんとか2日程度ですみました。
最終的には実力を出し切って踊ることができたと思います。私は観客席で観ていました。専門家から見ればまだまだでしょう。でも親としては大満足のパフォーマンスでした。我が娘ながらよくやりました。かっこよかった。

バレエは一人ではできない
バレエを始めたのは3歳の頃でした。「習い事ならバレエとかどう?」と私が口にしたのがきかっけで市内のバレエ教室に通いはじめたのです。
プロを輩出するような教室であったこともあり、練習はそれなりに厳しかったようです。気持ちが折れて、やめたいと言って練習から逃げている時期もありました。
それでも平均すれば週5日の練習をずっと続けてきました。一日一日では違いはわかりませんが、半年、一年と月日を重ねるとはっきりと成果が出てきます。
転機は小学生から中学生になるときでした。バレエを続けるのが難しくなってしまったのです。幸いなことに新しい出会いがあり、教室を移籍して再スタートすることになったのです。また2年半前の話ですが、だいぶ前のように感じます。
再スタートに際して、私は娘に結果を出すことを条件としました。具体的にはコンクールで入賞をすることです。バレエにおいてコンクールが全てではないのは承知していますが、結果を証明するには公平な場だと思うからです。
厳しい要求を出したのには理由があります。バレエは一人でできないからです。バレエ教室の先生をはじめ、周りの協力がなければ踊れません。妻もほぼ毎日車で送り迎えをしています。これを当たり前だと思ったらバレエを続ける資格はありません。
バレエに限らず、何かを成し遂げようと思ったら誰かの協力が必要です。一人でできることなんて何もありません。一人でできるという勘違いを絶対にしてほしくなかったのです。
バレエを通じて、自分が好きなことを続けるには周りが納得する行動をとる必要があることを学んでほしいからです。お金もかかりますし、私の目線からいえば出費が惜しくないと思える踊りをしてほしいわけです。
応援してくれる人をどれだけ多くつくれるかが大事だぞ、ということで、今年からインスタグラムで活動報告もはじめました。まぁ、あっという間に私のフォロワー数を超えられたわけですが。娘だから許す!
次回は鍼灸師として、バレエに必要な体づくりについて書きます。結論を先走って結論を書いてしまうと、鍼灸はバレエダンサーのケアに最適です。次回の更新でお会いしましょう。
つづく…『バレエの体づくり』
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2025年06月26日

目標は何店舗?
鍼灸院を開業する鍼灸師は、そのゴールをどこに置いているのだろうか。なぜ、こんなことを書くのかと言うと、「クリ助さんの目標ってなんですか?」と聞かれることもあるからです。
11年前、品川に2院目の鍼灸院(カポス)を開業したとき「目標は何店舗ですか?」と何度も聞かれました。それからずっと群馬と品川の2院のままなので、満足していると思われているのか、私の器を見透かされているのかわかりませんが、最近では聞いてくれる人がいません。
ゴール設定をするとき、規模がわかりやすいのかなぁと思います。私個人の話をする前に周りの話をすると、規模拡大に関心が強い鍼灸師と、関心がない鍼灸師がいます。経営する側になると経営者として見られてしまうのですが、まずは鍼灸師という枠の中で考えてみたいと思います。
鍼灸師は免許でしかありませんから、所有する一人ひとりに生き方があります。医療を目指す人も、慰安を目指す人も、研究をしたい人も、教育をしたい人も、ビジネスとして割り切っている人も、趣味でやっている人も。
こういう話は、どうしても自分の立場から発するしかありませんので、私自身のことを語ろうと思います。クリ助はそんなふうに考えているのかぁ、とエンタメ感覚で読んでください。
夢とか野心とか
私が独立を決意したのは20代の半ば。鍼灸師になってからそれほど年数が経っていません。独立志向が強かったわけではないのです。独立したのは鍼灸をする環境をつくるためでした。もし、鍼灸ができる勤務先と出会っていれば、この頃に独立することはなかったでしょう。
将来の夢とか野心とか、そういうのではないのです。鍼灸しか頭にない青年が、鍼灸をしたいがために独立開業。鍼灸の免許を取ったのに鍼灸施術をできる職場がないという現実とただ向き合っていただけです。だから、年商〇〇億円とか、全国に◯◯院を展開なんていう、そういう話は眩しく感じます。鍼灸がしたい。それだけ。
貧乏してでも鍼灸
職場なんて選ばなければいくらでもある、と思うかもしれません。20年以上も前なので今とは事情がだいぶ違っています。鍼灸施術ができる就職先はほぼなく、あっても丁稚奉公のような弟子入り制度がたまにあるくらいで、それを就職と言ったら親を泣かせてしまいます。
行き場がないので、遠くを見つめてゴニョゴニョしていると、「マッサージやればいいのに」と頼んでもいないのにアドバイスをしてくれます。
現実はその通りで、マッサージの仕事はすぐに見つかります。ただし、免許もなく数日間の研修を受けただけの人と同じ立場です。専門学校を出た意味は…その前は大学も出ているし…とすべてが無駄になるように感じました。プライドの問題とか、そういうのではないのです。
傍から見れば、鍼灸もマッサージも同じです。免許が必要なのかも一般の人はわからないわけです。ただ、私には絶対に譲れないラインが鍼灸だったのです。贅沢なことは言いません。貧乏であっても鍼灸ができるなら、それでよかったのです。他に何もいりません。
鍼灸を職業にする、これが当初に描いていたゴールです。それってただのスタート、と思われるでしょうが、大真面目なゴールでした。私にとっては憧れの職業だったのです。当時の学校の入学倍率は10倍でしたしね。
がんばる方がラク
あれこれあって、今では鍼灸院を2つ経営するようになりました。セミナーも事業化しています。スタッフにも恵まれています。ゴールを通過した私は次のどこかに向かわなければなりません。私の中に二人の「わたし」がいます。食べて行けて満足しているわたし、もう一人は「こんなんで満足ってバカじゃね?」というわたしです。
この先でほしいものはなにか。正直にいえば、それを探しながら歩んでいるような感じです。家族を犠牲にして…とか、そういうテンションでは考えられない歳にもなりました。夜は寝なければ命がもちません。大げさではなくて。
睡眠時間を削ってブログを書いていた頃が懐かしいです。こんなジジ臭い言い回しをするつもりはないのですが、これも現実。がんばることよりも、がんばらないことが重要な年齢になってきました。
若い人には想像できないでしょう。がんばれないことが一番つらいのです。がんばる方が簡単です。本当ですよ。数を打って当たりを待てばよいのですから。
しごと趣味化計画
改めて自分自身を整理してみれば、鍼灸を仕事にしているのは鍼灸で財産を築きたいのではなく、他の職業に就いてしまったら鍼灸ができないからです。極論をいえば、鍼灸ができるなら仕事でなくてもかまわないのです。ただ、矛盾するようですが、仕事としてやってきたから、責任感や使命感を持ち続けて来られたのも事実です。仕事だからこそ到達できた完成度なんだと思います。
仕事と趣味の違い、それは誰が評価するかです。趣味であれば他人の評価は必要ありません。自己評価からの自己満足を回転させておけば成り立ちます。仕事はそうはいきません。評価は相手がするものだからです。
でも、思考が一周すると「相手の評価がすべて」というのは、寂しい気がするのです。自分が一番よいと思うことがもっとも評価される。自分が描く理想がお金になる。そんな状況に憧れがあるのです。
経営者であるくせに、◯年後に年商◯億みたいな目標はありません。売上はスタッフの収入に直結するのでスルーしてはいけない課題です。仕事ですから。
経営は仕事として相手の評価を一番に考え、鍼灸施術では自己評価も重視していきたいと考えています。経済的な基盤をきっちり整えた上で理想を追求するという意味です。スタッフの給与も上げたいですしね。
後継者のこと
私に後継者はいません。鍼灸院を誰かに託そう、セミナー業を誰かに託そう、と思っていません。一代で終わることになってもかまいません。むしろ後継者のことを考えるのはストレスです。継ぎたい人がいたら譲ります。
残したいものはあります。私が創案した整動鍼と、その整動鍼の臨床記録です。すでにセミナーで全国に鍼灸師に学んでいただいていますし、理論と実技はテキストと映像で記録され、臨床記録はツボネットに集めています。
年齢的に今がピークだと思われているかもしれませんが、自分では思っていません。ここ大事なところです。まだまだやれそうだという勘違いこそが原動力なのです。なので、もう少し盛り上げていこうと思っています。嬉しいことに、若い人たちと仕事をする機会が増えてきたので、エネルギーを吸い取るチャンスです。へっへっへ。
施設を大きくする計画
土地を買い足して鍼灸院の拡張計画が動き始めました。これは群馬の鍼灸院(養気院)の話です。現在はベッド4床ですが、2床を加えて6床にすることを考えてます。その一つは大きめの部屋にしようと思っています。それは、飛んだり跳ねたり、ラケットを振ったりと、その場で動いて変化を確かめられる空間です。プロを含むスポーツの愛好家に好まれるような鍼灸を提供したいのです。
鍼灸師になっていなかったら建築家になっていた、と思い込んでいるので気合いが入っています。楽しみすぎます。ブログをせっかく再開したので進捗状況をレポートします。ちなみに、土地はまだ手に入れていません。土地はまだない。
ウェブサイトを新しく
これも群馬の鍼灸院のことなのですが、ウェブサイトが古すぎて加齢臭がきつくなってきているので刷新します。未だにスマホ対応していないのですから伸びしろありすぎです。早く東京に追いつきます。力を抜いて楽しんでやろうと思います。
こちらもよろしくお願いします。
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・はりきゅう養気院(群馬県/伊勢崎市)
・はりきゅうルーム カポス(東京/品川)
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2022年07月07日
奇跡のドラマ「ハゲタカ」(NHK)
『ハゲタカ(NHK/土曜ドラマ)』が6月〜7月に再放送された。2007年に放送されてから15年経つが、今でも熱狂的なファンがいる。私がその一人である。録画したものを何度観たかわからない。このドラマは奇跡だ。脚本、俳優、演技、演出、音楽、どれ一つ欠けてもこの奇跡は生まれなかっただろう。
バブル崩壊後、瀕死の日本経済を舞台に荒稼ぎした外資ファンド「ハゲタカ」。敏腕ファンドマネージャーとして、次々と企業を買収し「ハゲタカ」と呼ばれる鷲津と、鷲津に正面から戦いを挑むエリート銀行マン芝野。2人のせめぎ合いを通し、企業買収の功罪、金に躍らされる人間の悲劇、会社の意味を浮き彫りにする。 (公式サイトより)
お金とは...
会社とは...
幸せとは...
バブル崩壊後の日本を舞台に、展開される企業の買収劇、そして再生劇。二人の男が登場する、一人は大森南朋が演じる、投資ファンド社長の鷲津政彦。もう一人は柴田恭兵が演じる、エリート銀行マンの芝野健夫。
15年かけて説いたナゾ
この記事の目的はドラマ『ハゲタカ』のあらすじを紹介することではない。15年間ずっとわからなかった謎が解けたことを、どこにいるかもわからない仲間(=ハゲタカファン)に報告するためだ。「ハゲタカってなに?」という人は、ここから先を読んでも面白くないだろう。だから、まずはハゲタカを観ろ。
むろん、ネタバレに配慮して書くなんて芸当は持ち合わせていない。しかし安心してほしい。ここでネタをバラしたとしても、ハゲタカの魅力が薄れることは絶対にない。そんなやわなドラマではないのだ。
このドラマには数多くの名言がある。その中に多くのファンを悩ませた台詞がある。
「やりなおしたいんなら何もやらないことだよ」
菅原文太演じる大木昇三郎(大手家電メーカー会長)が鷲津政彦に伝えた言葉だ。何度観てもこの言葉の意味がわからず悩んでいた(少なくとも10回以上はこのドラマを観た)。この台詞がこのドラマを解釈する上で極めて重要であることは間違いない。しかし、この台詞の謎を解いた者はいないのだ。少なくとも、私が納得できる解釈はどこを探してもなかった。
気を抜いていれば一瞬で過ぎ去ってしまうシーンだ。言葉をそのまま受け取ると意味が分からない。大木会長に言われた鷲津の表情も困惑していたように見える。
ネタバレになるが、この台詞に至る流れをかんたんに説明しておこう。
経営のカリスマが招いた赤字800億円
大空電機は日本を代表する総合家電メーカー。その大空電気が800億円の赤字を計上し倒産の危機に陥っていた。そこに目を付けたのが外資系投資ファンド「ホライズン・インベストメントワークス」。大空電機の株を大量に買い筆頭株主となる。大空電機の経営権を握って立て直そうとする。
リストラを頑なに拒む大木(会長)、会社を存続させるにはリストラはやむを得ないと考える鷲津(投資ファンド社長)。大木は、本田宗一郎、松下幸之助を連想させる経営の神様と称される男。しかし、そんな経営者も800億円という巨額の赤字を計上し、カリスマが時代に取り残されそうになっていた。
銀行マンから外資系投資ファンドへ
いっぽう、鷲津は元銀行マン。新人の頃、上司からの命令で融資を渋った結果、町工場の社長が自殺した。それをきっかけに銀行を去った。このドラマは、その鷲津がアメリカに渡り投資ファンドの日本法人の社長として日本に戻ってくるところから始まる。
経営に行き詰まった起業を買収し転売することで巨額の利益を得ていた鷲津は、世間からは金の亡者として扱われていた。しかし、それは仮の姿だった。ドラマが進行するにしたがって鷲津の本当の目的が明かされていく。
末期癌で余命わずかの大木会長に呼びだされた鷲津は、大木に巨額の赤字をつくった責任を問いかける。「企業も生き物です。あなたが死んだ後も生き延びなければいけない」と。
謎の台詞が出るのはこの後だ。
「やりなおしたいんなら何もやらないことだよ」
この台詞に鷲津も視聴者も困惑する。いや、それは違う。今ようやくわかった。鷲津は困惑していたのではなく動揺していたのだ。大木会長に見抜かれていたからだ。
鷲津の「日本を救う」は本当だった
鷲津は、銀行マン時代に人を死に追いやってしまったことを引きずっていた。そんな鷲津がハゲタカと揶揄される投資ファンドに身を移した経緯は詳しく説明されていない。この余白によってそれぞれの鷲津像が描かれるのである。この不親切な設定が、このドラマの魅力を深めている。
例の台詞の解くきっかけとなったのがこの本である。
とてもよい本だから2冊買っておけばよかった。 pic.twitter.com/hU6fnRJJPh
— クリ助@鍼灸師の遊び (@kuri_suke) July 7, 2022
もちろん、本当の答えではないかもしれない。でもそれでよいのだ。自分なりの答えを見つけることに意味があるのだ。
『欲ばらないこと』は仏教の教えを説いている。「生きることは苦である」とのことだ。
生きることはただでさえ「苦」なのに、生きることに執着することでもっと苦しみから逃れられなくなる、その執着が「欲」です。
鷲津は、町工場の倒産という企業の死が人命を奪うという現実を目の当たりにしたことから、「企業はどんな手段を使おうが生き延びなけれならない」と考えるようになったのだ。アメリカの投資ファンドに身を移したのも、不良債権処理に疲弊している日本の銀行では、企業を救うための資金を用意できないと考えたからであろう。もちろん、これも私の想像として語っている。
日本企業を外資で買い叩く鷲津の「日本を救いに来た」という言葉を信じる者はいなかったが、その言葉に嘘はなかったのだ。情に流されて企業経営を誤るくらいなら、無情になって経営にメスを入れなければならないと考えたのだろう。
日本企業の象徴とも言える大空電気。その倒産を回避させたい鷲津は焦っていた。大木会長に「やりなおしたいんなら、何もやらないことだよ」と言われたのはそんなときだった。
苦しみを追いかけてしまう鷲津
ストーリーの文脈から「やりなおす」というのは「企業を立て直す」という意味にとれる。しかし、大木会長は「あなたが人生をやり直す」という意味で用いているのだ。ここに気がつくまで15年かかった。
大木会長は見抜いていた。鷲津が企業を生かすことに執着することで苦しみから逃れられなくなっていることを。もちろん、大木会長の言うとおり、鷲津が何もやらなければ大空電機は倒産する。
だから、視聴者は混乱するのである。
企業を主語にしている限り、大木会長の「何もしないことだよ」は理解できない仕掛けなのだ。そのとき、大木会長は目の前の鷲津だけを見ていたのだ。一人の人間としての鷲津を救いたいと思っていたのだ。
目の前の人を常に優先してきたカリスマ
大空電機が倒産すれば、「カリスマ経営者」として讃えられていた大木会長の名誉に傷がつく。しかし、大木会長にとってはどうでもよいのだ。それは周りの勝手な配慮でしかない。
大木会長が昔も今も見ているのは「人」なのだ。「企業」の前に「人」なのだ。大木会長が守ってきたのは「企業」ではなく「人」だったのだ。大木会長が頑なにリストラを拒んできた理由でもある。
倒産の危機に何もしない大木会長は一見すると無責任のように見える。しかし実際は逆だ。目の前にいる「人」に対して責任を果たしてきたからこそ、大空電機を大企業に成長させることができたのだ。
すべてがつながったのではないだろうか。
いつしか我が人生のバイブルとなっていた『ハゲタカ』。
次はこのレベルのドラマにいつ出会えるだろうか。
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・はりきゅう養気院(群馬県/伊勢崎市)
・はりきゅうルーム カポス(東京/品川駅)
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yoki at 22:42│Comments(0)│
2022年03月26日
最近、仕事をしているときに楽しくないことがあるのです。楽しくない理由は「鍼灸が好き」だからです。突然、変なことを書き始めて混乱させてしまったらすみません。こういうことです。
「私は鍼灸がしたくて鍼灸師になりました。お金を稼ぎたくて鍼灸師になったのではありません」
という意味なんです。
鍼灸を仕事にしてしまった以上、お金という対価を得るための手段になってしまいます。夢中でやっていた頃は、そんなふうには考えず、鍼灸師で生計を立てられるようになったことへの喜びで満ちていました。
今の悩みは贅沢すぎます。食べていけるようになるまでは、お金を褒美のように考えられていたのに、15年後には「お金のためじゃない」なんて言い出しているのですから、勝手ですね。
退職金でカフェを始めるおじさまの気持ちがわかってきたような気もするわけです。お金のために働くことに飽きてしまったということなんだろうなぁと。それが合っているかどうかはどうでもよいのです。ただの妄想ですから。
話を戻すと、「鍼灸はライフワークだ」と考えている自分を再確認したという話なのです。売上にはあまり興味がありません。ただ、これでも鍼灸院の院長であり会社の社長でもあるので、スタッフのために売上は必要です。
本当は、もう少し私がガツガツしていた方がスタッフも収入が増えて喜ぶのかなぁと思ったりもします。あとですね、心のどこかで怖がっているのかもしれません。「昔はそうじゃなかったのに、金儲けに走り始めた」と言われることを。
今日は何を言いたいかと言えば、「鍼灸師としての腕を評価してほしくて鍼灸師をやっているのであって売上を褒められたくてやっているわけではないのだよ〜」ということなんです。逆に言えば、今の私に足りないのは売上に対する執念なんでしょうね。しっかりしろ、社長!
毎日、患者さんからいただくお代は本当にありがたいです。セミナーに参加してくださる鍼灸師からの代金も本当にありがたいです。おかげで明日も生きられます。
今日は、日記風に書いてみました。ときどき、発生する雑念も包み隠さずやっていこうかなという気分です。最近の私には「書きたいことを思うがままに」がありませんでした。
ブログは日記に戻し、気合を入れたいとき気合を入れるくらいにしていこうかなぁと思います。そんなわけで、脱力系のブログにシフトしていきます。つまらないと思われても、いいんです。だって書くだけで楽しいのですから。ちなみに、今回の内容は妻に愚痴ったことをそのまま書いただけです。

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