ツボ(経穴)
2020年01月06日
再現性とはなんだろう?
鍼灸がもっとも早急に乗り越える課題は再現性ではないでしょうか。この記事の中で使う「再現性」は次の2つの条件を同時に満たすものと定義しておきます。
〃り返し同じ結果が得られる
誰が行っても同じ結果が得られる
いわゆる「腕を上げる」は,鯡椹悗浩こΔ任后,魘砲瓩討い韻侈梢遊櫃肪します。名人になればなるほど、他人には真似の出来ないものになっていきます。「私にしかできない」という技術は、競技の世界であるならば素直に賞賛できます。
しかし、医療という場においては、特定の人しかできない技術は手放しで喜べません。誰もが同じことができて、はじめて医療の進展と言えるからです。△痢崔が行っても同じ結果が得られる」を求める姿勢がなければ、鍼灸が市民の医療になることは夢のまた夢です。
鍼灸の保険適用、鍼灸師みんなで力を合わせれば日本でも夢じゃない。高い再現性を実現するのが早道。 https://t.co/DgODa9BUbV
— クリ助🌰人体と人生のツボ探し (@kuri_suke) January 6, 2020
鍼灸では、未だに,鯆匹さ瓩瓩討个りです。△僚斗彑に気がついている鍼灸師が少なすぎます。鍼灸師が個性を伸ばすのは、再現性の担保ができてからでも遅くありません。楽譜通りに弾けないピアニストが自由な表現を追求しても相手にされないように、鍼灸も想定通りの変化を起こせない鍼灸師に自由を求めても、独りよがりであると言われます。
そう言われないように、私の取り組みを5つ紹介します。
1.ツボの位置をしっかり定める
ツボの位置は比較的自由です。国家試験で答えればよいのは、大まかな位置です。実技で示す必要もなく、文言で覚えておけば良いのです。
たとえば、「合谷」というツボ。教科書には「手背、第2中手骨中点の橈側」とあります。勘の良い人なら、すぐに気がつきますが深さの情報がありません。人間は立体的ですから平面的な情報だけもらってもたどり着けません。

「オフィスのあるビルは教えてもらったけど何階にあるんだ?」となりますよね。何階にあるのかは自分で考えなさいというルールなのです。「私はこう思う、僕はこう思う、俺はこう思う...」になります。
ある人気講師は「あなたが合谷だと思った所が合谷でいいんですよ」と「鍼灸は自由であっていいんです」と教えてくれます。肯定してくれる講師を嫌いになる受講者はいません。だから、ゆるい教え方の方が受講者に好まれます。
私は、ミリ単位でツボの位置を定めるべきであると考えています。それが合っているか間違っているかを判断するのは、臨床において再現性の条件である,鉢△鯔たるかどうかです。私が定義した位置を社内メンバーやセミナー受講者と共有し、高い確率で同じ変化を導けたら妥当な位置であると考えています。
2.使うツボの数を少なくする
一度の施術で使うツボの数は少ない方がよいです。ツボを100個も使ってしまったら、どれが効いたのかわかりませんよね。
「ツボの複合的な作用がある」という反論があるかもしれません。確かにそれはあるでしょう。しかし、再現性を高めるには不向きな発想です。ただでさえ、鍼灸は複数の要因が重なる療術であるのに、ツボの数を増やしてしまったら絶望的になります。
ツボは単独でも効果があります。まずは、ツボ単体で考えやすいように臨床では無駄なツボを使わない工夫をすべきです。再現性が高くなれば、臨床においても期待する効果が得られやすいので、患者さんにとっても利が高いのです。加えて、患者さんの負担も少ないというメリットもあります。
3.特別なテクニックは使わない
ライバルの鍼灸師を出し抜こうとして、他の鍼灸師が真似のできないテクニックを追求したくなるものです。
それはそれとして、誰でもできる技法の範囲で結果を出すことが再現性を高めるには必要です。ただ、誤解してほしくないのは「下手な鍼灸師でもできる」という意味ではありませんし「練習の必要はない」という意味でもありません。「練習をすれば80%の人が到達できる」くらいの意味で書いています。
4.説明できないことはやらない
臨床経験が豊富でも難しいのは、自身の施術を解説することです。実際の臨床では、特別な事情がない限り、患者さんに患者さん用の説明だけで十分です。同業である鍼灸師に専門的な解説をする必要はありません。
ですから、ツボ選びに「なんとなく」があっても臨床は成り立ってしまいますし、中には「必要なことは手が勝手にしてくれる。君もそうなるように練習しなさい」という、解釈不可能な指導をする鍼灸師もいます。
誰もが認識可能な情報を共有しながら、解説を交えて施術することは難しいです。実際の臨床で行うかどうかは別として、第三者に解説できる心構えは大切にしています。
5.あいまいな言葉は使わない
再現性の条件◆崔が行っても同じ結果が得られる」のためには、用いる専門用語はしっかり定義しておく必要があります。
鍼灸においては、あいまいの最たるものは「気」です。どんな意味にも使える変幻自在の便利な単語です。定義のないまま説明をされ、「わかるだろ?」と言われても「何のことですか?」と返答するしかありません。

「気」という言葉を使ったらいけないとは言っていません。定義のない「気」という言葉は受け取る側の解釈次第であることを承知の上で使うべきです。そこに留意できなければ、再現性のある鍼灸が訪れることは永遠にないでしょう。
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2019年05月05日
「経絡は信仰である」の真意
3月14日の出版した『ツボがある本当の意味』は重版を2回しました。おかげさまで売れています。鍼灸師の間でも話題になっています。一般の人には少し難しいところもありますが、鍼灸を受けている方であれば、興味を持ちながら読めると思います。
この本は「経絡は信仰である」と書き出しています。この一文は、私が意図的に仕掛けたものです。鍼灸師であるならば、誰もが「おや?」と思うでしょう。怒り出す鍼灸師もいます。鍼灸師を敵に回したいわけではないのです。
最初の一文で感情的になってしまうと、冷静に読めなくなってしまいます。本当に伝えたいメッセージが受け取れず誤解をすることになると思います。実際に、Amazonのレビューを読むと、それらしいものが含まれています。どのみち、賛否両論がある内容です。新しい視点を入れたので否定的意見が出るのは仕方ありません。
ここで、はっきり言っておきますが、私は経絡理論を否定していません。言いたいのは「経絡の存在が明らかでない現実を否定してはいけない」ということです。
「昔から言われているからある」とか「経絡を感じるからある」という理由は、存在の説明にはなりません。
存在していることも、存在していないことも、証明できていない現時点では、「経絡はあるかもしれないし、ないかもしれない」という他ありません
それを「ある」という前提で話が進んでしまうと、宗教と区別できません。誤解のないように補足しますと、宗教や信仰を否定したいのではありません。鍼灸を医学として発展させようとする意志があるならば、宗教的要素は除く必要があると考えているのです。
古代、医術と呪術の区別は曖昧でした。多くの専門家は、鍼灸は呪術から生まれたと説いています。私もそう思います。経験が蓄積され、ある時を境に呪術と決別します。そのきっかけをつくったのが経絡理論の可能性があるわけです。
経絡は実在感が高いからです。経絡の走行は、神経、血管、筋肉と重なる部分が多いため、感覚的に実在しているように感じます。私も、鍼された時に、経絡の走行に何かを感じることは多いです。
鍼をすると、神経、血管、筋肉の知見だけでは説明が難しい現象が数多く起きています。だから、何かあるのでしょう。信仰とは切り離し、起こる現象をできるだけ説明できるようにと考案された経絡。
だから、経絡の存在を盲信したり、『素問』や『霊枢』と行った古典を信仰することは逆戻りです。当時の科学的思考が生みだした書物だと思うのです。
月日は流れ、現代人が持つ知見は当時とは桁違いです。現代に生きる私たちは、私たちなりに科学的姿勢で鍼灸理論と向き合わなければならないはずです。
経絡は、2000年前に考案されたデザインであり、診察のガイドラインです。この理論に基づいて臨床を行うと、理論が示す通りの反応(身体変化)が見られます。だから、正しいかのように思うのですが、経絡理論に反した現象があることも忘れていけません。ここから目を背けていると、鍼灸は古いままです。
地動説と天動説
地動説と天動説の話をする前に、天動説からおさらいしておきましょう。
天動説は、「地球は宇宙の中心にあり静止しており、全ての天体が地球の周りを公転しているとする説(ウィキペディアから引用)」です。
(日本では)太陽は東から昇り、南の空を通過し西に沈みます。星空も太陽と方向に天空を移動します。だから、地球が止まっていて太陽や星が動いていると説明できます。しかし、星の動きを詳細に観察すると、矛盾が生じてきます。矛盾とは言わなくても、無理が生じてきます。
天動説の限界を破ったのは地動説です。現在では地動説が常識です。この常識がつくられたのは、コペルニクス(1473〜1543年)の地動説を受け継いだガリレオ・ガリレイ(1564〜1642年)が亡くなった後です。
ひっそりと地動説を唱えたコペルニクスに対して、ガリレオ・ガリレイは、地動説を大々的に唱えたことで、カトリック教会から有罪判決を受けてしまいました。判決の誤りをローマ教皇が認めたのは、350年後の1992年です。とはいえ、今でも宗教的な理由から天動説を信じている人はいるようです。
調べていたら、地動説の原型はフィロラオス(紀元前470年頃 - 紀元前385年)まで溯ることを知りました。フィロラオスは、あのピタゴラスの定理で有名なピタゴラス(紀元前582年〜紀元前496年)の後継者の一人です。
鍼灸医学が生まれた中国の事情はどうだったのでしょうか。
ウィキペディアの情報では、「夫天地、空中一細物」(「われらがいる天地も、無限の宇宙空間のなかで見れば、ちっぽけな物にすぎない」)を例に挙げ、地動説の考え方を示していたのですが、続きの「有中之最巨者」(「握できる最大の存在でもある」)に目を向けると、地上に居る人の目線から宇宙を語っているように思えます。ですから、中国の地動説はよくわかりません。
鍼灸学の原典である『素問』『霊枢』が書かれた時代は2000年以上前です。少なくとも、コペルニクスが唱えたような地動説があった記録はありません。
経絡の矛盾を連想させる、天動説のCG
天動説は、星の動きをすべて説明しようとすると無理が生じますが、ある程度まで説明できます。経絡も人体に起こる反応をある程度までなら説明が付きます。ですから、天動説と経絡説は似ていいると言えます。
経絡も大きな目で見れば、理屈が通りそうでも、細かいところで奇妙な蛇行があります。拙著の中で記した豊隆というツボが典型です。

太陽系の惑星の動きを、天動説と地動説で比較すると一目瞭然です。
左が地動説(Heliocentrism)で、右が天動説(Geocentrism)です。
仮に、天動説(Geocentrism)しか見なかったら「こんなに複雑で奇妙な動きをするんだ」で落ち着く人がいるかもしれませんが、地動説(Heliocentrism)
を見たら、「こっちが正解だね」と直感的に思うはずです。
一言で言えば、天動説(Geocentrism)は不自然なのです。地球を中心に置くと、これほど複雑な軌跡になってしまうのです。エネルギーの無駄です。自然の摂理からして天動説はあり得ません。
人体はエネルギーを節約するように出来ています。人間に限らず生命は超省エネ機構です。無駄のないように出来ています。こういう目で経絡の走行を眺めると、細かい点で無駄があります。天動説のCGシミュレーションの惑星の奇妙さと同じものを感じるのです。
アイデンティティ化してしまう経絡
経絡はあるのかないのか、という議論は重要ではありません。重要なのは、経絡がもたらしてきた成果と、経絡が抱える限界です。
天動説によって、ある程度まで自然の摂理を把握できたように、経絡も人体の摂理を把握するのに役立っています。しかし、時代が変わる中で鍼灸にも変化が必要です。天文学が、天動説から地動説に移り変わったように、そろそろ鍼灸にもパラダイムシフトが必要なのではないでしょうか。
地動説のアイデアを生んだフィロラオスから数えると、地動説が受け入れられるまで、2000年以上かかっています。
天文学において、アリストレスやプトレマイオスが支配的だったように、鍼灸においては『素問』や『霊枢』の存在感が強く、新しいアイデアが認められにくい空気があったと考えても不思議ではありません。
ひょっとすると、鍼灸にも地動説に相当するものが考案されていたのかもしれません。歴史の中に埋もれてしまったなら、とても残念なことです。
心理学には「認知的不協和」という言葉があります。「これまでの情報と新しい情報の間に不一致が生じた時、不一致を軽減する行動が起こる」というものです。
いったん経絡理論があると信じてしまうと、それがアイデンティティとなり壊されることを恐れます。「経絡は信仰である」と言われて、「経絡はあるんだ!」と意地になるのは、まさに認知的不協和です。
誰でもいったん信じたものは、簡単にひっくり返したくありません。「信じる」ということは大きなエネルギーが必要だからです。
信じたものによって景色が変わります。だから、経絡を信じれば、体で起こる現象に経絡というフィルターがかかります。矛盾する現象は見えなくなってしまうのです。このように、経絡」という観念ができあがるのです。
やっかいなのは、ひとりひとり経験が異なるために、できあがる観念もひとりひとり違うものになります。「みんな違ってよい。それが鍼灸の魅力だ」という考えもありますが、鍼灸を医療と考えるなら、深刻な問題です。
鍼灸学の本質はツボにある
イメージの力は自分自身に対してだけでなく、他人も変えられるほど強力です。ですから、強力なイメージを持つ鍼灸師にはパワーやカリスマ性を感じます。
それも鍼灸師としての在り方ですが、イメージ力の勝負になりますので、鍼灸を使うことの意味が薄れていきます。実際に、鍼を使わなくなる鍼灸師は少なくありません。
「鍼灸学の本質は何か」
と問われたら、私は「ツボ」だと答えます。特定の位置(座標)がもたらす作用を観察して整理していくことが、鍼灸学の本質だと思っています。経絡も本質を追究して考案されたデザインであり、診察のガイドラインだと思います。ツボが先に研究され、研究の成果をまとめるために経絡が考案されたと考えるのが自然です。
お知らせ
2019年5月10日(金)から、毎週金曜日は品川のカポスにて施術を行います。予約の際には「栗原希望」と告げて下さい。
・ネット予約はこちら
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2019年03月09日
拙著『ツボがある本当の意味』(3/14発売)の見本が届きました!
鍼灸を受けている患者さん、これから鍼灸院に行こうと思っている人にもおすすめできます。もしかしたら、先入観のない一般の人の方が理解しやすいかもしれません。
この本の元ネタは、鍼灸師向けに連載していた記事なので、出版社に話を持ち込んだ時に不安があったのですが、「これは一般の人が読んでも面白い内容ですよ」と予想以上の回答を頂きました。
ふだん、鍼灸師向けにセミナーをやっているので、一般向けに何か情報発信をしたいと常に思っていまた。その想いがついに実現しました。BABジャパンさんのおかげです。
決め手は、「従来の鍼灸の常識とまったく違う」という点でした。奇をてらったわけではなく、臨床の現場で必要なスキルをゼロベースで積み上げたものです。結果的に、学校教育で教える鍼灸とは、大きく異なるものになりました。
この本は、経絡とツボを切り離して考えることを提案しています。鍼灸理論(ツボ理論)の発展には、いったん古典(2000年以上前のもの)が説く理論を白紙に戻し、現象レベルで考えることが必要です。
従来、ツボは経絡上にある点であると考えられてきました。線路の上に駅があるように。でも、それは一つの考え方に過ぎません。オリオン座が、誰かが星を結んで描いたものです。

オリオン座の上に、ベテルギウスがあるわけではなくベテルギウスの上に線が引かれたのです。星の光を見ることはできても、星と星を結ぶ線は見えません。星という光る現象があり、そこに意味付けをするために、線が引かれたのです。
経絡は星座と同じです。
「経絡現象」という言葉がありますが、実際には経絡現象は目に見えません。いっぽうツボには確かな感触があり、ツボが引き起こす現象は目に見えます。脳科学的なデータもしっかり取れてきています。
鍼灸を現象ベースで積み上げていく方が鍼灸を発展させます。現象ベースで積み上げる時、経絡よりツボを中心に考えた方が効率的です。ハッキリ言えば、経絡を調べるよりもツボを調べる方が賢いのです。
私がこの本で提案しているのは、「星座の線をいったん外して星空を眺めてみましょう」ってことです。でも、そんなに簡単なことではありません。
まず星(ツボ)がどこにあるのかを見定める感覚が必要です。ツボは目に見えないので、感じなければなりません。ソムリエが味で生産地と年代を言い当てるように、鍼灸師の感性もツボの位置を特定します。
その位置を特定したら、そのツボが引き起こす現象を拾い出します。たとえば、膝のツボに鍼をした時に腰のどこに変化が起こるかを探します。指先の感覚で筋肉の弾力性を感じ取ります(実際には筋膜の変化を感じ取っているのかもしれません)。さらに、私が取り組んで来たのは、その時に起こる動き(関節の可動性)の変化です。
取り組んできたのは次の3つです。
.張楷恭个鯡昔堂修薫銘屬鬟潺蠱碓未把蟲舛垢
▲張椹撫による変化を追う
△汎阿の変化を照合する
さらに、
ぅ張椶肇張椶隆屬砲△覺愀言を探す
を加えることで、鍼灸に「整動」という概念をつくることができました。一番難しい仕事がい任后´↓ができることが前提だからです。´↓ができると、身体上で起きていることが視覚化できます。あくまでも感覚的な話です。
感覚的な話では理論化できないのでい虜邏箸大事です。セミナーでは,鉢い嚢柔されています。△鉢はとても時間がかかる作業なので、ここをショートカットし、結論( 椨ぁ砲鯏舛┐討い泙后つまり、途中のプロセスは誰も知りません。
ある人が「クリ助ほどトライアンドエラーを繰り返している鍼灸師はいない」と言いました。その通りかもしれません。ツボによる効果を1つ1つ確かめていく作業は膨大です。臨床経験が長いだけではできません。
重要なのは記録を取り続けることです。先に待っているものを誰も約束してくれない状態で、記録を取り続けるのは孤独です。でも、その記録をもとに施術をすると患者さんが良くなっていくので、孤独より嬉しさの方が勝っていました。
こうしたツボを探すプロセスはセミナーでも見せたことがありません。セミナーの受講者の目的は結論ですから、そこに時間を割けません。
今月、出版記念イベントという機会を頂いたので、そこで話そうと思います。具体的な作業は実際に見てもらわないと伝わりにくいので、実演が一番かと思います。
出版記念イベントを3月24日(日)を行います。鍼治療に明るい医師二人を招いて、ツボの正体についてディスカッションします。鍼灸師だけでは、ツボを客観的に説明できないと考え、私の感覚を解剖してもらおうと思います。
私が提唱した整動鍼が正しいかどうか、というのは科学的にまだわかりません。現時点で言えるのは、私が定義したツボの位置に刺激をすると、誰がやっても全く同じ結果が得られることです。
年間70日以上をセミナーに費やし、全国の鍼灸師にツボの位置と理論を提供しています。2017年からはスペインでも活動を始めました。習熟度が一定以上を超えると同じ結果が得られることがわかっています。こういう評判が伝わると科学的に検証できるのではないか、と考えられるようになります。
「ツボの位置が曖昧では実験にならない」
と考えるのが研究者です。
条件を限りなく同じにできる整動鍼は実験に最適なようです。しかも、1つ1つのツボで変化を確認できるので1本の鍼だけで実験ができます。何十本も鍼をして成果を出す方法では、刺鍼の刺激で起こる現象は調べられても「ツボとは何か」に迫ることは永遠にできません。
「ツボに鍼を1本して変化を確認できる」
ということが研究ではとても大事です。整動鍼が鍼の治効メカニズムに興味を持つ研究者から注目される理由はここに集約されています。
つづく…
予約注文始まっています。


「鍼灸師と医師で解き明かす 経絡とツボの正体」
会場:FinGATE KAYABA(東京)
参加費:2,000円(1部)/3,000円(2部)
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鍼灸を受けている患者さん、これから鍼灸院に行こうと思っている人にもおすすめできます。もしかしたら、先入観のない一般の人の方が理解しやすいかもしれません。
この本の元ネタは、鍼灸師向けに連載していた記事なので、出版社に話を持ち込んだ時に不安があったのですが、「これは一般の人が読んでも面白い内容ですよ」と予想以上の回答を頂きました。
ふだん、鍼灸師向けにセミナーをやっているので、一般向けに何か情報発信をしたいと常に思っていまた。その想いがついに実現しました。BABジャパンさんのおかげです。
決め手は、「従来の鍼灸の常識とまったく違う」という点でした。奇をてらったわけではなく、臨床の現場で必要なスキルをゼロベースで積み上げたものです。結果的に、学校教育で教える鍼灸とは、大きく異なるものになりました。
この本は、経絡とツボを切り離して考えることを提案しています。鍼灸理論(ツボ理論)の発展には、いったん古典(2000年以上前のもの)が説く理論を白紙に戻し、現象レベルで考えることが必要です。
従来、ツボは経絡上にある点であると考えられてきました。線路の上に駅があるように。でも、それは一つの考え方に過ぎません。オリオン座が、誰かが星を結んで描いたものです。

オリオン座の上に、ベテルギウスがあるわけではなくベテルギウスの上に線が引かれたのです。星の光を見ることはできても、星と星を結ぶ線は見えません。星という光る現象があり、そこに意味付けをするために、線が引かれたのです。
経絡は目に見えない
経絡は星座と同じです。
「経絡現象」という言葉がありますが、実際には経絡現象は目に見えません。いっぽうツボには確かな感触があり、ツボが引き起こす現象は目に見えます。脳科学的なデータもしっかり取れてきています。
鍼灸を現象ベースで積み上げていく方が鍼灸を発展させます。現象ベースで積み上げる時、経絡よりツボを中心に考えた方が効率的です。ハッキリ言えば、経絡を調べるよりもツボを調べる方が賢いのです。
私がこの本で提案しているのは、「星座の線をいったん外して星空を眺めてみましょう」ってことです。でも、そんなに簡単なことではありません。
まず星(ツボ)がどこにあるのかを見定める感覚が必要です。ツボは目に見えないので、感じなければなりません。ソムリエが味で生産地と年代を言い当てるように、鍼灸師の感性もツボの位置を特定します。
その位置を特定したら、そのツボが引き起こす現象を拾い出します。たとえば、膝のツボに鍼をした時に腰のどこに変化が起こるかを探します。指先の感覚で筋肉の弾力性を感じ取ります(実際には筋膜の変化を感じ取っているのかもしれません)。さらに、私が取り組んで来たのは、その時に起こる動き(関節の可動性)の変化です。
ツボの特定と理論化までのプロセス
取り組んできたのは次の3つです。
.張楷恭个鯡昔堂修薫銘屬鬟潺蠱碓未把蟲舛垢
▲張椹撫による変化を追う
△汎阿の変化を照合する
さらに、
ぅ張椶肇張椶隆屬砲△覺愀言を探す
を加えることで、鍼灸に「整動」という概念をつくることができました。一番難しい仕事がい任后´↓ができることが前提だからです。´↓ができると、身体上で起きていることが視覚化できます。あくまでも感覚的な話です。
感覚的な話では理論化できないのでい虜邏箸大事です。セミナーでは,鉢い嚢柔されています。△鉢はとても時間がかかる作業なので、ここをショートカットし、結論( 椨ぁ砲鯏舛┐討い泙后つまり、途中のプロセスは誰も知りません。
ある人が「クリ助ほどトライアンドエラーを繰り返している鍼灸師はいない」と言いました。その通りかもしれません。ツボによる効果を1つ1つ確かめていく作業は膨大です。臨床経験が長いだけではできません。
重要なのは記録を取り続けることです。先に待っているものを誰も約束してくれない状態で、記録を取り続けるのは孤独です。でも、その記録をもとに施術をすると患者さんが良くなっていくので、孤独より嬉しさの方が勝っていました。
こうしたツボを探すプロセスはセミナーでも見せたことがありません。セミナーの受講者の目的は結論ですから、そこに時間を割けません。
今月、出版記念イベントという機会を頂いたので、そこで話そうと思います。具体的な作業は実際に見てもらわないと伝わりにくいので、実演が一番かと思います。
経絡とツボの正体(出版イベント)
出版記念イベントを3月24日(日)を行います。鍼治療に明るい医師二人を招いて、ツボの正体についてディスカッションします。鍼灸師だけでは、ツボを客観的に説明できないと考え、私の感覚を解剖してもらおうと思います。
私が提唱した整動鍼が正しいかどうか、というのは科学的にまだわかりません。現時点で言えるのは、私が定義したツボの位置に刺激をすると、誰がやっても全く同じ結果が得られることです。
年間70日以上をセミナーに費やし、全国の鍼灸師にツボの位置と理論を提供しています。2017年からはスペインでも活動を始めました。習熟度が一定以上を超えると同じ結果が得られることがわかっています。こういう評判が伝わると科学的に検証できるのではないか、と考えられるようになります。
「ツボの位置が曖昧では実験にならない」
と考えるのが研究者です。
条件を限りなく同じにできる整動鍼は実験に最適なようです。しかも、1つ1つのツボで変化を確認できるので1本の鍼だけで実験ができます。何十本も鍼をして成果を出す方法では、刺鍼の刺激で起こる現象は調べられても「ツボとは何か」に迫ることは永遠にできません。
「ツボに鍼を1本して変化を確認できる」
ということが研究ではとても大事です。整動鍼が鍼の治効メカニズムに興味を持つ研究者から注目される理由はここに集約されています。
つづく…
予約注文始まっています。
◎出版記念イベント(講演・対談・実演)(3/24)
「鍼灸師と医師で解き明かす 経絡とツボの正体」
会場:FinGATE KAYABA(東京)
参加費:2,000円(1部)/3,000円(2部)
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2019年02月14日
ツボネットの思想と描く未来像
ツボネットは、「鍼灸の症例が検索できるツボ辞典」ということで試験運転を昨年から始めています。現在、症例数は700を超えています。一つのサイトにこれほどの症例が蓄積されていることでもスゴイことです。1000を超えるのは時間の問題です。
現時点では、参加鍼灸院が少ないのが課題です。もっともっと増えないと目指す利便性に届きません。とはいえ、急ぐと症例の質が担保できなくなるので、現在は少数の鍼灸院と基盤づくりをする時期であると割り切っています。
今年の春には軌道に乗せる計画ですが、中長期的な視点で運営していいます。
5年後には、300以上の鍼灸院が参加し、10000症例が検索できる未来を描いています。これだけの数が揃っていると、データベースとしての価値が高くなります。データという資産を活かしてさまざまな取り組みができます。
症例が集まっていると、「鍼灸は何に効く?」という疑問にも簡単に答えられます。各鍼灸院ががんばって、適応症状を説明するより、一ヶ所に集めてしまった方が効率が良いです。手が空いた分だけ鍼灸院が一番重要な仕事(技能の研磨や専門知識を蓄えるなど)に専念できます。
ツボネットは鍼灸院が育てる
ツボネットは、鍼灸院がアップする症例によって支えられ成長していく仕組みです。クチコミサイトがクチコミによって成長するのと似ています。
ですから、ツボネット成長の鍵は鍼灸院が症例提供に参加したくなる仕組みにあります。症例を提供した時のリターンが具体的にイメージできなければ参加してもらえません。そのリターンとは、得意な症状に患者さんが集まりやすいことです。
なぜ、そう言えるのか、一般の訪問者のメリットを説明すると全体象が見えてきます。
鍼灸の効果がわかる
提供された症例は、データベースに格納され、グラフ化したり、統計処理したり、価値を付加して閲覧者に届けます。鍼灸がどんな症状に効果があるのか、各ツボがどんな症状に使われているのか、各症状にどんなツボが使われているのか、データとして知ることができます。
新ツボも含まれているので、鍼灸師が知らないツボも時々出ています。たとえば、地天や精霊。
鍼灸を利用しようか迷っている人は「自分の症状に対して効果があるのか」と思っているはずです。その問いにデータで答えるのがツボネットです。症例を参考にした決断ができます。
鍼灸を受けようと思っていても、なかなか一歩が踏み出せない人は効果に関する情報が明瞭でないからだと考えています。けっして安くない鍼灸院の料金(保険が適用されないので仕方ないのですが...)。誰でも、効果がわからないものに、時間とお金はかけられません。
もちろん、ツボネットの情報が完全に客観的とは言えません。症例はプライバシーに触れるものは入れてありませんから、ごまかそうと思えばごまかしができます。しかし、そういうインチキは滅多に起こりません。
なぜなら、架空の症例を書くのは、本物の症例を書くより難しいからです。やってみるとわかりますが、架空の症例を書くことは豊かな想像力が必要です。
症例を登録する際には、「使用したツボ」を登録する必要があります。理論的に説明しにくいツボは同業から怪しまれます。実は、裏側で互いの症例を評価し合う仕組みが働いています。ズルすると損するように設計しています。
鍼灸院のリターン
症状と提供している鍼灸院は紐付けされます。症例をアップした鍼灸院ほど露出が増えます。患者さんは、たくさんの症例を持っている鍼灸院を選びたくなると思います。数だけの勝負にならないように、同業から高く評価された症例ほど目立つように設計しています。
各鍼灸院は、症例以外にもアピールしたいことはたくさんあるでしょう。しかし、そこにボリュームを付けてしまったら、一般的なポータルサイトと違いがありません。あえてクチコミも掲載されません。鍼灸院の雰囲気や印象よりも、院の実績や実力を見てもらうコンセプトです。
鍼灸院にしてみると、院の情報の前にワンクッション入るので、遠回りしているような気分になるかもしれません。でも、患者さんに信用され安定した経営を実現するための、一番の早道にになると信じています。私の信念です。もちろん、この方法で結果は出ています。
毎年毎年、集客ツールと言われるものがリリースされていますが、患者さんが求める本質を理解する、という軸がなければ、経営はトレンドに流されてしまいます。
宣伝しない方が信用される
広告にお金をかけて割引などを効果的に使えば、患者さんを引き寄せることができるかもしれません。でも、信用を集めることは難しいかもしれません。広告はできるだけ地味な方がよいと思っています。何にもしなければ、存在そのものを知ってもらう機会がゼロになって、そもそも経営していけません。
いろいろな人がいますから、全ての広告が悪だと考える人もいます。このブログも「どうせ広告目的で書いているのだから信じられない」と言われることもあります。でも、その言葉を真に受けたらどんなサービスも生まれてきません。
要は、情報の誠意があるかどうかだと思います。
私の誠意はツボネットに込めました。宣伝という意識を捨て、ありのままを伝えようとしています。鍼灸院の実際が分かれば、必要とする人が現れてきます。行きたいと思った時に、迷わないように必要な情報が見つかりやすいように設計しています。
こうやって鍼灸の実際を伝える活動をしているのは、鍼灸には現在の医療の弱点を補う力があると思うからです。鍼灸院で患者さんを診ていても思いますし、病院内での施術する時にも感じます。
ツボネットの使い方
一般向け
ツボネットに悩みの症状を入れてみてください。地域を絞ることもできます。検索ワードに関係する症例の一覧が表示されます。同時に日本地図が表示されるので、症例を提供した鍼灸院の地域と院名がすぐにわかります。
検索ワードに病名や感覚(ビリビリやチクチクなど)を入れても大丈夫です。一致する症状が表示されます。700件以上の症例があるので、ご自身にそっくりな症例が見つかるかもしれません。
マニア・プロ向け
担当している患者さんとそっくりな症例を探して施術のヒントにすることができます。使われているツボを試すこともできますし、理論的な背景を想像して、見立てを鍛えることもできます。
ツボネットのツボマップは精細です。人体図をつくるだけで半年かけています。精細なツボマップを見るのは利用登録(無料)です。症例をアップしている鍼灸院は、さらにマップをフル拡大できるのでミリ単位で位置を確認できます。
ツボの統一規格を目指す
本来はすべての鍼灸院に参加資格がある良いのですが、現実はそうはいかない事情があります。鍼灸師によって、ツボを選ぶ理由もツボの位置もバラバラだからです。もちろん、それを統一しようという業界の動きはありまして、WHO(世界保健機関)でも、規格づくりをしています。
ただし、その位置にエビデンス(科学的根拠)があるわけではありません。その位置に疑問を持ってもよいのです。むしろ、何の疑問を持たずに従ってしまってはツボ理論は発展しません。
私はWHOに依存しない規格を提案しています。提案しているツボの位置はすべての再現性がある位置です。個人的な趣向やクセを極限まで排除し、誰がやっても同じ変化を引き起こせるツボのみをツボネットで扱っています。
整動協会が普及に努めている整動鍼の症例がツボネットにアップされています。鍼灸業界の統一規格というわけではありませんから、現時点では「勝手な規格ですよね?」と言われた時に否定はできません。。しかし、こうして同じ規格の症例が集まれば、世界規格と言えなくても意味は見えてきます。正式な実験によって証拠をつかもうとする時の手がかかりになります。
間違いは正して、より妥当な位置に修正しなければなりません。間違いあるという結論に至るためにも、情報を集めて整理した方がよいでしょう。最終的なゴールはエビデンスを伴う統一規格です。ツボネットがきっかけになれば嬉しいです。
◎出版記念イベント(講演・対談・実演)(3/24)
「鍼灸師と医師で解き明かす 経絡とツボの正体」
会場:FinGATE KAYABA(東京)
参加費:2,000円(1部)/3,000円(2部)
≫申込フォーム
Twitterもやっています。
https://twitter.com/kuri_suke
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yoki at 06:55│Comments(0)│
2019年02月11日
「(4)古典理論の弱点」のつづき
信用できるツボのデータとは
「本当のツボ辞典をつくりたい」という気持ちからツボネット構想が生まれました。2015年くらいのことです。「整動鍼®」という呼び名が出来た頃です。
もし整動鍼が生まれていなければ、ツボネットは生まれませんでした。鍼灸師なら誰でも作れるものではありません。「ツボ」「理論」「症状」という3要素を共有していることが条件です。感覚的な施術はデータ化できませんし、集めたとしても利用価値が低いものになります。

ツボの位置一つとっても、それぞれの鍼灸師が思い思いの場所を選んでいたら、集まるデータが信用できません。もちろん、個人差がゼロになることはありませんが、最初の設定を厳密にておくことで、データの価値は飛躍的に上がります。
ツボはミリ単位
実は、鍼灸の臨床データを信用できない理由の一つがツボの位置なのです。ツボの位置は鍼灸師によってバラバラですし、1人の鍼灸師でも、時と場合によって同じ名称のツボを違うところに取ることがあります(ミリ単位で比較した時)。
そもそも、ツボの大きさはどれくらいなのでしょうか?
考える際に重要な前提があります。ツボは指圧する所なのか鍼をするところなのか、をはっきりさせる必要があります。一般向けの書籍や雑誌に掲載される情報は、指を前提にしているはずです。ネットで検索して得られる情報の多くも、一般向けに書かれていれば、それは指圧を想定したものです。
本来、ツボは刺鍼点として研究され理論化されたものです。灸の方が早い時期から行われていた可能性がありますが、鍼のようにミリ単位でツボを使い分けるのは難しいです。
日本では、米粒大とか半米粒大という大きさのお灸が発展していますが、そうしたお灸には、純度の高いもぐさ(お灸に使われる蓬の葉からつくるふわふわしたもの)が必要です。古代の中国大陸で日本で使われているようなお灸があった形跡は報告されていません。
ツボは刺鍼点という前提で理論化され、指圧点として一般向けに知識が普及されているわけです。このズレがどうしても気持ち悪いわけです。感覚的な意味だけでなく、本来のツボのポテンシャルが覆われてしまうからです。
北斗神拳の経絡秘孔とツボ
鍼灸の古典は、2000年以上前に書かれています。そこには、あらゆる病気に挑んだ記録があります。すべての病気に有効だったと言えませんが、ある程度の成果が出ていなければ、記録もされないですし、理論化もされず、残ることもなかったでしょう。
つまり、ツボの効果は「何となく」ではないと想像できるわけです。私自身のことを振り返っても、高校生の時に、はっきりとした効果を体感したから鍼灸師になりました。『北斗の拳』でケンシロウやトキが、自信をもって経絡秘孔(ツボ)を突きます。その世界は漫画だと理解していながらも、北斗神拳の経絡秘孔はツボとしての理想像でした。
鍼灸師になって、患者さんのツボに鍼をしていると、時に自分でも信じられないくらいの効果が出ることがあります。いわゆる「まぐれ」というやつです。まぐれだとしても、目の前で劇的な効果を見てしまうと、心は踊ります。
『北斗の拳』で憧れていた経絡秘孔が漫画の世界ではなくなってしまうのです。もちろん、内臓破裂なんてことは絶対に起こりません。イメージの底にあるのは、トキが治療として使っていたツボです。
症状と原因、原因とツボ
臨床を重ねているうちに、動きに注目すると、ツボの精度が高ければ同じ変化が起こることに気が付きました。ツボの位置が変われば起こる変化も変わります。病気や怪我が治るためには、必要な変化があります。
たとえば、膝が痛い時。大腿部の前面(大腿四頭筋)が過緊張をしていたり、後面(大腿二頭筋)が過緊張していたりするわけです。膝の痛みを取りたい時に、こうした筋肉を適度な緊張に戻すことが治療になります。
だから、「膝のツボ」と単純に言えないわけです。同じことがどこでも言えます。「五十肩のツボ」も、「腰痛のツボ」も、「頭痛のツボ」も厳密な情報ではありません。でも、ツボの情報というのは、このように病名や症状名と紐付けされています。
ツボは現象と紐付けしておいた方が、はるかに実用的です。ただし、そこには確かな理論が必要になります。
つづく…
◎出版記念イベント(講演・対談・実演)(3/24)
「鍼灸師と医師で解き明かす 経絡とツボの正体」
会場:FinGATE KAYABA(東京)
参加費:2,000円(1部)/3,000円(2部)
≫申込フォーム
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https://twitter.com/kuri_suke
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yoki at 19:00│Comments(0)│