ツボ(経穴)

2024年01月03日

運動連鎖の鍼灸理論とは何か

鍼灸師には色々なタイプがいます。私はどういうタイプかというと運動連鎖に関心が強く、鍼灸師が使える理論の構築に使命感を抱いています。今回は、専門家向けの内容に偏りますが、専門知識を持たない人でもわかるように努めて書いてみます。

運動連鎖を研究する意義は何なのか、鍼灸にどんなメリットをもたらすのか、丁寧に説明します。読み終わった頃には鍼灸のイメージが大きく変わるかもしれません。パラダイムシフトを目指して今年もがんばっていきます。

さっそくなのですが、昨年の年末ににX(旧ツイッター)投稿したポストをご覧ください。



肩こりは多層構造


このCGを見るとわかるように、肩の筋肉は多層構造になっています。肩こりを招く筋肉の代表格として僧帽筋を取り上げる場合が多いのですが、僧帽筋だけで説明できるほど肩こりが簡単なものでないことが一目瞭然です。むしろ、僧帽筋に覆われた深層の筋肉こそ肩こり解消の鍵を握っています。

鍼は深いところに刺激が届くということで、しつこい肩こりに対して「マッサージより鍼の方が…」と鍼のメリットを唱える人もいます。確かに皮下に鍼先を届けられるのは鍼だからこそで否定しようのないメリットです。ただ、際限なく深く刺入できるわけではありません。


深く効かせるワザ


患者さんと話をしていて、深い鍼ができる鍼灸師の方が腕があると勘違いされていると思う場面があります。安全に深刺しできることも技術の一面ですが、そう簡単ではないところが鍼治療です。

鍼治療は痛い部分に直接鍼をするばかりではありません。ツボを利用して、深部に効果を届けることも鍼治療です。そうした知恵を集結したものがツボ理論があります。もっとも有名なものが経絡(けいらく)という学説です。

この学説は、たとえば手にあるツボを使って腸の働きを整えたりと刺鍼点とは離れたところに効果が及ぶことを説明するのに便利です。古典的な理論はこの経絡一択と言ってよいほど影響力を持っています。私たち鍼灸師は必ず学校で経絡学説を習っています。

鍼灸が発展してきたのは、紛れもなく経絡学説のおかげです。鍼治療は物理療法でありながら、物理療法を超えた方法であると言えます。

ここで伝えたいのは、ツボの遠隔作用を使えば深部の筋肉に効果を届けることができるということです。この作用を最大限に利用することが鍼灸師の面白さだと考えています。安全に深部に効果を届けることができます。もともと鍼灸の鍼は注射と比較すれば驚くほど細いのですが、浅めの刺鍼で済むならなおさら安全です。


経絡の限界


ただ、そう簡単にはいかないのです。なぜなら、経絡学説は筋肉を対象としたものではなく、内蔵を対象とした理論だからです。頚や背中の細かな筋肉に効果を届けようと思っても、経絡は筋肉に対して緻密ではありません。今風に言えば、筋肉に対しては解像度が粗すぎるのです。

経絡学説には欠陥があると言いたいのではありません。そもそも、経絡は筋肉系の学説ではなく、内臓系の学説なのです。ですから、関節や筋肉を得意とする鍼灸師の多くが経絡学説よりも解剖学を拠り所にしています。患部の筋肉や周辺の神経の走行を考えながら刺鍼点を決めています。

私の立場からも経絡は絶対的な学説とは言えません。鍼灸理論の発展を願うなら、経絡を尊重しつつその限界を探る姿勢が大切だと考えています。


運動連鎖を利用して筋肉と関節を整える


前置きが話が長くなってしまいましたが、鍼の最大のメリットは深部にある患部を直接刺激できることでなく、ツボの効果を利用して深い部分に作用を届けられることにあると考えています。頚や肩の深い筋肉に対しても、手や足など離れたところにあるツボからアプローチできます。

とはいえ、言うは易し行うは難しです。筋肉や関節を調整するための理論がないからです。ターゲットになる筋肉に作用するツボがどれになるのか、それを示す地図がありません。内蔵とツボの関係を示したのが2000年以上前に記されていた前述の経絡ですが、その後、筋肉とツボの関係を示した精微なものは出ていないのです。

そこで着手することにしたのです。それがおおよそ12年前です。その基本となる考えは連動です。この筋肉がはたらいているときは、どの筋肉が一緒にはたらくのだろうと考えていきます。細かなことを言えば、筋肉単位ではなくもっと細かな単位で調べていきます。

背中の筋肉に鍼をすると、頚の筋肉が柔らかくなるなどの変化が起こるのですが、その変化はピンポイントで出現します。その変化には規則性があって、その規則性を追っていくと、頚椎の◯番に出ている問題なら胸椎の◯番で調整できるといった具合に対照表をつくれます。


膨大な検証


この調査は時間もかかるし手間もかかります。孤独な作業です。その孤独を解消するために、成果を発表するセミナーを行うことにしました。私自身が何度も検証して再現できるものをセミナーで全国の鍼灸師と共有しました。私だけができるのと誰でもできるのでは意味も価値もまったく異なります。

誰でも再現可能という普遍性が評価され、続編を希望する声が高まりセミナーはシリーズ化していきました。それが整動鍼です。ありそうでなかったツボと動きの関係を解いた理論なのです。この理論を手にすることで、運動器疾患に対する手が広がります。

一見すると関係のないところに鍼をすると、肘や膝がよく曲がるようになったりするので患者さんが驚きます。動きがよくなると痛みも同時に軽減します。関節や筋肉の調和が取れて、筋肉や関節に余計な負荷がかからなくなるからです。


整動鍼の症例3000以上を無料公開


実際に出ている成果を示したのが「ツボネット」です。こちらのサイトには3000症例以上がアップロードされています。どんな症状に対してどんなツボを使ったのかわかります。

すぐにお気づきになると思いますが、症例は筋肉や関節の問題ばかりではありません。胃腸やメンタルのトラブルなども多数あります。筋肉や関節の状態は内臓の調子と深い関わりがあるため、整動鍼で胃腸やメンタルの調整もできます。

ツボネットの症例は3000以上

他にも、突発性難聴など顎関節の影響を受けやすい耳の症状なども整動鍼の守備範囲になってきます。筋肉や関節の状態は深く内臓と関わっているためです。これこそまさに経絡学説が示す鍼灸の効果です。つまり、整動鍼は従来の鍼灸の効果はそのまま活かしながら、動きとツボという新しい関係に挑戦し適応範囲を大きく広げることに成功したのです。


鍼だからできる緻密な調整


頚こりや肩こりも、結局は他の筋肉との調和が乱れてしまった結果です。腰との調和が乱れていたら腰にあるツボが決め手になります。腕との調和が乱れていたら腕にあるツボが決め手になります。

ポストの動画でご覧頂いたように、頚や肩の筋肉は何層にもなっていて緻密にはたらいています。この緻密さに対応するような緻密な連動が隠れています。こうした連動を理解すればするほど、緻密な調整ができるようになります。この緻密な調整は鍼だからこそ可能です。

「運動連鎖」という言葉からイメージするより、かなり細かいと思います。


学び始めると止まらない


同業の鍼灸師から「難しそう」と言われることもあります。1日でマスターできるほど簡単なものではありませんが、マスターしてしまえば難しい症状に対応できるようになります。テーマに分けてカリキュラムを用意しているので、段階的に連動を扱えるようになっていきます。

臨床で使ってみると面白くなって止まりません。

現在でも理論は発展していますが、カリキュラムが膨れすぎないように10編できたところでストップをかけました。流れに身をまかせて鍼灸師向けのセミナーをやってきましたが、これからのことを考えると、連動を緻密に調整できるからこその効果をもっとアピールしていくことが大切だと思っています。どうしたらアピールできるのかと考えたとき、やはり独自の効果があることを示していかなければならないと思うのです。

年末にも触れたのですが、理論と技術を具体的なサービスに昇華できるように努めていきます。もちろん従来の施術もやっていきますのでご安心ください。

最後になりますが、

整動鍼を学んでみたいと思った鍼灸師の方は、1月28日(日)の刺鍼即応編が手頃なので、ぜひご検討ください。残りわずかですのでお急ぎください。鍼灸の全く違う世界を案内します。

▶詳しくはこちら

こちらもよろしくお願いします。
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yoki at 21:52│Comments(0)

2023年08月31日

鍼灸師から見たジョジョ立ち


ジョジョの奇妙な冒険』に出てくるキャラたちの個性的な立ち方を「ジョジョ立ち」と言います。ちゃんと定義があって「手足の関節をひねった独特な立ち方」とされています。『現代用語の基礎知識』にも掲載されているれっきとした日本語です。知らない人は、この機会に覚えておきましょう。

さあ、ご一緒に、ジョジョ立ち!

ジョジョ立ち
出典:https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1616405773

『ジョジョの奇妙な冒険』を知らない人でも、この立ち姿に見覚えがあるのではないでしょうか。「あの絵、苦手」という声もたくさん聞きます。実は、私も最初は気持ち悪い絵だなぁと思っていたのですが、ある時期を境にジョジョ立ちが極めて優秀な表現であることに気が付きました。

骨盤の表現が気持ち悪いほどリアルなのです。

ジョジョ立ちについて詳しく知りたい方は、恐ろしいほど完璧に解説しているページを見つけたのでこちらをご覧ください。

「ジョジョ立ち」の意味とは?元ネタから立ち方まで一覧で解説

とりあえず先に進ましょう。

このジョジョ立ちは奇妙な立ち方でありながら、リアリティがあるのです。実際、ちゃんとマネができる姿勢なのです。ただし若さがないとむずかしい姿勢です。

だから、読者は無意識にジョジョ立ちしているキャラクターに若さを感じるのです。その理由に迫るのが今回の目的です。


ジョジョ立ちはイタリア生まれ?


そもそも、作者の荒木飛呂彦先生は、何からヒントを得てジョジョ立ちを思いついたのでしょうか。幸いなことに荒木先生の著作『荒木飛呂彦の漫画術』の中でエピソードが記されています。

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連載前のイタリア旅行がきっかけだったとあります。ローマのボルゲーゼ美術館の「アプロとダフネ」を見て、漫画で描けたらいいなぁと思ったそうです。

これを読んで、改めて「やっちまたぁ」と思いました。実は新婚旅行でイタリアに行ったときに「アプロとダフネ」を観に行くはずだったのですが、その日の朝は寝坊をして行けなかったという苦い思い出があるのです。すぐ近くまで行っておきながら逃すという痛恨のミス。

証拠の記事)ボルゲーゼ美術館に寝坊して行けなかった話

制作したベルニーニはバロック芸術の巨匠でベルニーニは「ローマのために生まれ、ローマはベルニーニのためにつくられた」と言われているほど。ベルニーニがジョジョ立ちが生まれるきっかけになっているなんて。驚きを隠せません。

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出典:Wikipedia

石から削り出したことを疑いたくなるほどの肉体の滑らかさ。そして緻密で繊細な植物の表現。ミスが絶対に許されない仕事です。絵と違って下書きができません。こんなの人間業とは思えません。本当に人間なんですか?


ジョジョ立ちの秘密は骨盤にあり


荒木先生は著書の中で、ベルニーニの「アプロとダフネ」の螺旋状に回転して上昇するようなポーズに心を奪われたことを記しています。

ジョジョ立ち
(C)荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社 (C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

ここで改めてジョジョ立ちを見てみましょう。ご覧の通り、ジョジョ立ちにはいくつもパターンがあり、どれもジョジョ立ちです。この特徴は身体の螺旋表現にあるわけですが、身体の専門家として考察しジョジョ立ちに本質に迫っていこうと思います。

『荒木飛呂彦の漫画術』に次のようにあります。

実際にポージングを描くときに気をつけねばならないのは、人体骨格の構造と動きを正しく把握する、ということです。ただねじっていればいいわけではなく、腰を出すときに足がどうなるか、膝がどの位置にきて、肩がどんな動きをするか、すべてがつながって流れがありますから、そこを理解しなければポージングは描けません

これを読んで改めて漫画家はすごいなと思いました。人体をちゃんと調べているのです。加えて興味深い一文がこれです。

『ジョジョ』では人体骨格の限界まで追求したポージングをしています

確かに、がんばればなんとか真似できるポーズなのです。個性的でありながら、構造的な破綻がないのでリアリティを感じるのです。年齢を重ねるときついポーズでもあります。


ジョジョはなぜ気持ち悪いのか?


ジョジョ立ちから得る印象はさまざまだと思います。「気持ち悪い」という感想も少なくありませんが、その気持ち悪さは色気の一種ではないでしょうか。この色気は骨盤の傾きから生まれると仮定して話を展開することにします。

ジョジョ立ちそれぞれの骨盤を見てください。真っ直ぐなものが見当たりませんよね。どの漫画家の絵も骨盤を感じるかといえばそうではありません。個人の感想になりますが、ジョジョほど骨盤を感じられる漫画を他に知りません。

荒木先生が骨盤を強く意識していることは、荒木先生の言葉からも間違いありません。先程の文章の中にちゃんと証拠があります。

「腰を出すときに足がどうなるか、膝がどの位置にきて、肩がどんな動きをするか」

まず骨盤の位置を設定し、そこからポーズの詳細をつくっていく手順が想像できます。骨盤の方向が決まると、その骨盤に応じた姿勢が生まれます。そこから胸の向き、膝の向き、顔の向きを決めていくのでしょう。

ジョジョのキャラクターたちが今にも動き出しそうなのは、リアルな骨盤描写が躍動感を生み出しているからでしょう。ジョジョ立ちをしているキャラクターが細身であることも骨盤表現を引き立てています。


骨盤は本当に歪むのか?


整体院などでよく使われる「骨盤の歪み」という表現。この意味を深く考えている人は多くありません。腰に痛みや違和感があると、どこかにズレがあるかもしれないと理解したような気分になっていないでしょうか。

実は、プロでも意見が分かれるほど難しい話なのです。骨盤がどのように動くのか、その詳細は謎に包まれています。骨盤の仙腸関節と言われる関節は強靭な靭帯に包まれているので、動くはずもなければ歪むはずもないと考える医療者もいます。



ここでジョジョ立ちに戻ってみましょう。

骨盤の方向を決めているのは股関節と腰椎です。股関節と腰椎の柔軟性がなければ骨盤の方向を自由に決めることはできません。ですから骨盤が歪むと聞いたときは、股関節と腰椎の可動性も考える必要があるのです。

股関節と腰椎の広い可動域は、若さの象徴でもあります。ジョジョのキャラクターたちが、生き生きと見えるのは、若さ特有の可動性を無意識に感じ取っているからでしょう。

完成度は別として、腰に痛みや重さがない人ほど真似しやすいはずです。逆に、激しい痛みがあればジョジョ立ちどころではありません。骨盤を自由に動かしやすいときほど、コンディションがよいと感じているわけです。


骨盤の歪みと痛みは関係ない


これを踏まえて、一般的な骨盤の歪みについて考えます。多くの場合、止まった姿勢(立っているか、寝ているか)で歪みを判断することが多いです。身体が真っ直ぐであるかどうかを判断するためです。

臨床にたずさわっている人であれば、真っ直ぐだから痛みがないとは限らないことを知っています。逆も言えます。曲がっているのに痛みがないことも珍しくありません。

真っ直ぐであるか否かのチェックでは、痛みがあるなしはよくわからないのです。つまり、歪んでいるように見えるのに痛くないというケースや、歪んでいないのに痛むケースと遭遇します。

「歪んでいるから痛いんです」と言われたら納得したくなるのですが、現実はそうではありません。

臨床で重視すべきは可動性です。痛みがある人は例外なく可動性が低下しています。動かない方向があります。ですから動ける方向ばかりに姿勢が偏るのです。これが本当の歪みです。

姿勢というのは運動の一部を切り抜いたものです。寝かされた状態、立たされた状態というのは、運動の一部とは言い難いわけですから、姿勢と呼べるかどうか疑問です。

ジョジョ立ちを改めて見てください。動きの一瞬を切り取ったものに見えます。ジョジョ立ちを見たときに、無意識にその瞬間の前後の風景を想像してしまうのです。ジョジョ立ちには時間軸を生み出す効果があります。

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出典:にじめん

この時間軸の話は鍼灸治療と深い関係があります。患者さんの身体を観るときに止めて観るのか。それとも動きの一部を切り抜いて観るのかで、大きな違いになります。

私は「骨盤の歪み」という表現を使いませんが、腰痛であったならできない動作を探します。その動作ができるように身体を調整します。こうした視点で鍼治療を行うことを「整動(せいどう)」と呼んでいます。

鍼は鎮痛するだけと思っている患者さんもいますから、ときどき、

「痛みが取れたけれど、ちゃんと治すには整体院で歪みを取っておいたほうがいいですか?」

なんて質問されるわけですが、私としては「やりづらい動き(=歪み)」を取っているので、「あ、それはですね…」と返答につまるのです。世間に流れている鍼灸のイメージというものに困惑することがあります。


仙腸関節は動いている


骨盤の位置を決めているのは、股関節や腰椎ばかりではありません。仙腸関節が関わっています。この仙腸関節については専門家でも意見が分かれるところです。

仙腸関節は体表から触れることができないばかりか、動きがとても小さいのでどんなふうに機能しているのか謎に包まれているのです。わずかな動きには機能的な意味がないと考えて「動かない」と主張する人たちがいます。

私は逆の立場です。そのわずかな動きが仙腸関節の役割なのだと考えて「動いている」と考えています。動いていることに意味がないのであれば関節になっている理由がありません。

わずかでも動くことまではわかっているのだから、その役割を探すのがアカデミックな態度であると信じています。仙腸関節はわずかな動きであっても制限されてしまうと腰痛などの症状の原因になると考えています。

しかし、触れることができない関節ですから検証がむずかしいのです。動くようになったら症状が軽くなるという仮説の上で鍼治療を行って成果を出しています。仙腸関節に鍼を届かせるのはむずかしいので、周辺や脊柱を介してアプローチしています。


仙腸関節は全身の関節のハブ(中継装置)


私は、仙腸関節を全身の関節のハブ(中継装置)のように考えています。とはいえ、やはり謎に包まれている仙腸関節ですから、そういう仮説のもとで施術をするしかありません。成果を出すことで妥当性を確認しています。

本当のところは何かわからないと諦めていたところ、その謎を唯一解いた男が日本にいました。少なくとも、これまで私が目にした説明の中でもっとも理に適っている理論です。その男は、仙腸関節の形状から「こう動いているに違いないだろう」というところまで、まるで連立方程式を解くような流れで説明するのです。

その男は、山梨県を拠点に施術と研究を行っている柔道整復師の吉岡一貴先生のことです。今年の7月、直接指導を受ける機会に恵まれました。

吉岡一貴先生の骨盤塾で骨盤を持つクリ助

その詳細を語る時期がいずれやってきます。ここでは簡単に紹介します。


仙腸関節が姿勢を決める


吉岡先生によると仙腸関節は姿勢に大きく関与しているとのことです。わずかな動きに役割があると考えています。私の見解と全く同じでした。

ただ、ここから先がすごかったのです。仙腸関節の形状が、機能的左右差(利き手、利き足)を作っているという、私の想像を超える理論を展開しています。

身体に潜んでいる左右差には意味があると考えているのです。むしろ、左右差があった方がエネルギー的にロスが少ないというのです。目からウロコが何度も落ちました。



仙腸関節が機能していないと、ジョジョ立ちはむずかしくなります。ですから、ジョジョ立ちから仙腸関節の健全な動きを読み取れるのです。


ジョジョ立ちを演出する骨盤内の大腰筋


まずはこの見事なジョジョ立ちご覧ください。ジョジョ立ちの多くに、この腰を突き出したようなポーズが多く見られます。

吉良吉影のジョジョ立ち
出典:Amazon

きれいなジョジョ立ちに欠かせないのは大腰筋です。大腰筋は、腰椎と股関節を結ぶように通っている長い筋肉です。

大腰筋

ジョジョ立ちがきれいなのは、上半身と下半身を結ぶきれいな曲線があるからです。

このポーズは腰を突き出しているというより、右脚を後方に伸ばしながら引いているのです。別のキャラクターでも同じ特徴が見られます。

ョジョ立ちに表れる特徴的なライン

脚を後方に伸ばしながら引くという動きに、大腰筋が腰の深いところで関わっています。

一般的に大腰筋は、股関節を曲げる作用があると説明されているのですが、正確ではないと考えています。脚を後方に引いたとき、その脚が前方に戻ろうとする力となっています。

引いた脚が元に戻る力です。その力をイメージするのは簡単です。ベッドの上で横向きに寝たときのことを想像してください。海老反りは続けられませんが、お腹を包み込むように丸まった姿勢は続けられますよね。

この大腰筋の柔軟性が低下して伸びなくなると脚を後方に引けなくなります。歩くときの歩幅が小さくなります。

そうなったときすぐに調整したいところですが、残念ながら大腰筋は表面から触れることができない深い位置にあるためマッサージができません。意識することも難しいのです。唯一意識できるのがジョジョ立ちかもしれません。半分冗談で半分まじめです。

この大腰筋は高齢者になると、柔軟性が低下してくるので年齢を重ねるほどジョジョ立ちが難しくなります。ジョジョ立ちに若々しさを感じるのは私たちが無意識に健全な大腰筋を感じているからなのです。


大腰筋に作用するツボ


この大腰筋は鍼で働きを回復させることができます。説明した通り深い位置にある筋肉なのでリスクが高いので、鍼で当てることに積極的になる必要はありません。

足のツボを利用します。その名も「大腰」です。古典的な経穴「太衝」に近い位置にあります。なぜ、大腰筋を調整するツボがこんなところにあるのでしょうか。私がこのツボの作用に気がついたのは、ジョジョ立ちで大腰筋のラインをきれいに作ろうとするとき、足の親指を意識して伸ばす必要があると気がついたからです。

ツボネット(大腰)


出典:ツボネット 

親指を意識しながら後方に引こうとすると、股関節が内旋して大腰筋が伸ばされます(腰椎の辺りに緊張が入る感じ)。逆に小指側を意識すると股関節は外旋して股関節の外側の中殿筋という筋肉に力が入ります。

歩行時は、足の親指の方が小指をよりも形状的に長いので自然に親指が後ろ引かれます。何も意識することなく大腰筋にテンションがかかるのです。その後、引かれた脚が自然に前に戻ってくるのは、伸びた大腰筋が縮もうとするからです。



このCGアニメーションでは、大腰筋と腸骨筋の連動を表しています。脚が後ろに引けたときに黄色く光っています。もっと緻密にCGをつくるなら、脚が後ろに引けたとき腰椎が前弯します。腰椎を弓のようにしならせるはたらきもあるのです。


ツボで動きを整える


このように動きの本質を考えると、ツボで調整できるようになります。筋肉と筋肉のつながりを解剖学として理解することは大切ですが、同時に力の流れを考える必要があります。力の流れが見えないと、使うツボが見えてきません。

かくいう私が常に見えるわけではありません。ジョジョ立ちを考察したように、日々の臨床の中で考えながら少しずつ目を養い知見を蓄えているにすぎません。

ツボにはまると、動きが見違えるように変わります。大腰によって大腰筋が整うと、歩幅が広がります。股関節の可動域が広がるのがわかります。スマホの万歩計機能で実際に歩数が変わったことを報告してくださった方も。

慢性的な腰痛や高齢者の腰痛において著効を示すこともあります。

こうした視点からツボを選ぶ鍼治療は、これからの鍼灸にとって必要なものだと考えています。一般的なイメージに寄り添って表現するなら鍼とツボで行う整体です。

こうしたコンセプトが鍼灸に普及していけば、「歪みは鍼で直らないから整体でポキポキしてもらっています」という方が減るはずです。

歪(ゆが)みを歪(いび)つな動きと定義するなら、鍼で歪みを直していくことができるのです。姿勢は動きの切り抜きですから、もちろん姿勢もよくなります。

鍼灸の世界において、こうした取り組みはは始まったばかりです。ツボと動きの関係の探求は鍼灸師でなければむずかしいでしょう。鍼灸と鍼灸師の可能性を広げるために「整動鍼」という呼び名を付け普及活動を行っています。


おまけ


ネオが弾丸を避けるシーン。若い人は知らないかな…。
マトリックス_ネオが弾丸を避けるアクション
出典:Netflix JAPAN

これは大腰筋がはたらいている動きではありません。
膝です。

yoki at 19:08│Comments(0)

2020年01月06日

再現性とはなんだろう?


鍼灸がもっとも早急に乗り越える課題は再現性ではないでしょうか。この記事の中で使う「再現性」は次の2つの条件を同時に満たすものと定義しておきます。

〃り返し同じ結果が得られる
誰が行っても同じ結果が得られる

いわゆる「腕を上げる」は,鯡椹悗浩こΔ任后,魘砲瓩討い韻侈梢遊櫃肪します。名人になればなるほど、他人には真似の出来ないものになっていきます。「私にしかできない」という技術は、競技の世界であるならば素直に賞賛できます。

しかし、医療という場においては、特定の人しかできない技術は手放しで喜べません。誰もが同じことができて、はじめて医療の進展と言えるからです。△痢崔が行っても同じ結果が得られる」を求める姿勢がなければ、鍼灸が市民の医療になることは夢のまた夢です。



鍼灸では、未だに,鯆匹さ瓩瓩討个りです。△僚斗彑に気がついている鍼灸師が少なすぎます。鍼灸師が個性を伸ばすのは、再現性の担保ができてからでも遅くありません。楽譜通りに弾けないピアニストが自由な表現を追求しても相手にされないように、鍼灸も想定通りの変化を起こせない鍼灸師に自由を求めても、独りよがりであると言われます。

そう言われないように、私の取り組みを5つ紹介します。

1.ツボの位置をしっかり定める


ツボの位置は比較的自由です。国家試験で答えればよいのは、大まかな位置です。実技で示す必要もなく、文言で覚えておけば良いのです。

たとえば、「合谷」というツボ。教科書には「手背、第2中手骨中点の橈側」とあります。勘の良い人なら、すぐに気がつきますが深さの情報がありません。人間は立体的ですから平面的な情報だけもらってもたどり着けません。
合谷(ごうこく)の位置


「オフィスのあるビルは教えてもらったけど何階にあるんだ?」となりますよね。何階にあるのかは自分で考えなさいというルールなのです。「私はこう思う、僕はこう思う、俺はこう思う...」になります。

ある人気講師は「あなたが合谷だと思った所が合谷でいいんですよ」と「鍼灸は自由であっていいんです」と教えてくれます。肯定してくれる講師を嫌いになる受講者はいません。だから、ゆるい教え方の方が受講者に好まれます。

私は、ミリ単位でツボの位置を定めるべきであると考えています。それが合っているか間違っているかを判断するのは、臨床において再現性の条件である,鉢△鯔たるかどうかです。私が定義した位置を社内メンバーやセミナー受講者と共有し、高い確率で同じ変化を導けたら妥当な位置であると考えています。


2.使うツボの数を少なくする


一度の施術で使うツボの数は少ない方がよいです。ツボを100個も使ってしまったら、どれが効いたのかわかりませんよね。

「ツボの複合的な作用がある」という反論があるかもしれません。確かにそれはあるでしょう。しかし、再現性を高めるには不向きな発想です。ただでさえ、鍼灸は複数の要因が重なる療術であるのに、ツボの数を増やしてしまったら絶望的になります。

ツボは単独でも効果があります。まずは、ツボ単体で考えやすいように臨床では無駄なツボを使わない工夫をすべきです。再現性が高くなれば、臨床においても期待する効果が得られやすいので、患者さんにとっても利が高いのです。加えて、患者さんの負担も少ないというメリットもあります。


3.特別なテクニックは使わない


ライバルの鍼灸師を出し抜こうとして、他の鍼灸師が真似のできないテクニックを追求したくなるものです。
特別な鍼

それはそれとして、誰でもできる技法の範囲で結果を出すことが再現性を高めるには必要です。ただ、誤解してほしくないのは「下手な鍼灸師でもできる」という意味ではありませんし「練習の必要はない」という意味でもありません。「練習をすれば80%の人が到達できる」くらいの意味で書いています。


4.説明できないことはやらない


臨床経験が豊富でも難しいのは、自身の施術を解説することです。実際の臨床では、特別な事情がない限り、患者さんに患者さん用の説明だけで十分です。同業である鍼灸師に専門的な解説をする必要はありません。

ですから、ツボ選びに「なんとなく」があっても臨床は成り立ってしまいますし、中には「必要なことは手が勝手にしてくれる。君もそうなるように練習しなさい」という、解釈不可能な指導をする鍼灸師もいます。

そのツボを使うには意味がある


誰もが認識可能な情報を共有しながら、解説を交えて施術することは難しいです。実際の臨床で行うかどうかは別として、第三者に解説できる心構えは大切にしています。


5.あいまいな言葉は使わない


再現性の条件◆崔が行っても同じ結果が得られる」のためには、用いる専門用語はしっかり定義しておく必要があります。

鍼灸においては、あいまいの最たるものは「気」です。どんな意味にも使える変幻自在の便利な単語です。定義のないまま説明をされ、「わかるだろ?」と言われても「何のことですか?」と返答するしかありません。
スライス1

「気」という言葉を使ったらいけないとは言っていません。定義のない「気」という言葉は受け取る側の解釈次第であることを承知の上で使うべきです。そこに留意できなければ、再現性のある鍼灸が訪れることは永遠にないでしょう。

Twitterもやっています。
https://twitter.com/kuri_suke

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yoki at 10:19│Comments(0)

2019年05月05日

鍼灸師の間で賛否両論の『ツボがある本当の意味』


「経絡は信仰である」の真意


3月14日の出版した『ツボがある本当の意味』は重版を2回しました。おかげさまで売れています。鍼灸師の間でも話題になっています。一般の人には少し難しいところもありますが、鍼灸を受けている方であれば、興味を持ちながら読めると思います。



この本は「経絡は信仰である」と書き出しています。この一文は、私が意図的に仕掛けたものです。鍼灸師であるならば、誰もが「おや?」と思うでしょう。怒り出す鍼灸師もいます。鍼灸師を敵に回したいわけではないのです。

最初の一文で感情的になってしまうと、冷静に読めなくなってしまいます。本当に伝えたいメッセージが受け取れず誤解をすることになると思います。実際に、Amazonのレビューを読むと、それらしいものが含まれています。どのみち、賛否両論がある内容です。新しい視点を入れたので否定的意見が出るのは仕方ありません。

ここで、はっきり言っておきますが、私は経絡理論を否定していません。言いたいのは「経絡の存在が明らかでない現実を否定してはいけない」ということです。

「昔から言われているからある」とか「経絡を感じるからある」という理由は、存在の説明にはなりません。

存在していることも、存在していないことも、証明できていない現時点では、「経絡はあるかもしれないし、ないかもしれない」という他ありません

それを「ある」という前提で話が進んでしまうと、宗教と区別できません。誤解のないように補足しますと、宗教や信仰を否定したいのではありません。鍼灸を医学として発展させようとする意志があるならば、宗教的要素は除く必要があると考えているのです。

古代、医術と呪術の区別は曖昧でした。多くの専門家は、鍼灸は呪術から生まれたと説いています。私もそう思います。経験が蓄積され、ある時を境に呪術と決別します。そのきっかけをつくったのが経絡理論の可能性があるわけです。

経絡は実在感が高いからです。経絡の走行は、神経、血管、筋肉と重なる部分が多いため、感覚的に実在しているように感じます。私も、鍼された時に、経絡の走行に何かを感じることは多いです。

鍼をすると、神経、血管、筋肉の知見だけでは説明が難しい現象が数多く起きています。だから、何かあるのでしょう。信仰とは切り離し、起こる現象をできるだけ説明できるようにと考案された経絡。

だから、経絡の存在を盲信したり、『素問』や『霊枢』と行った古典を信仰することは逆戻りです。当時の科学的思考が生みだした書物だと思うのです。

月日は流れ、現代人が持つ知見は当時とは桁違いです。現代に生きる私たちは、私たちなりに科学的姿勢で鍼灸理論と向き合わなければならないはずです。

経絡は、2000年前に考案されたデザインであり、診察のガイドラインです。この理論に基づいて臨床を行うと、理論が示す通りの反応(身体変化)が見られます。だから、正しいかのように思うのですが、経絡理論に反した現象があることも忘れていけません。ここから目を背けていると、鍼灸は古いままです。


地動説と天動説


地動説と天動説の話をする前に、天動説からおさらいしておきましょう。

天動説は、「地球は宇宙の中心にあり静止しており、全ての天体が地球の周りを公転しているとする説(ウィキペディアから引用)」です。

(日本では)太陽は東から昇り、南の空を通過し西に沈みます。星空も太陽と方向に天空を移動します。だから、地球が止まっていて太陽や星が動いていると説明できます。しかし、星の動きを詳細に観察すると、矛盾が生じてきます。矛盾とは言わなくても、無理が生じてきます。

天動説の限界を破ったのは地動説です。現在では地動説が常識です。この常識がつくられたのは、コペルニクス(1473〜1543年)の地動説を受け継いだガリレオ・ガリレイ(1564〜1642年)が亡くなった後です。

コペルニクスとガリレオガリレイ


ひっそりと地動説を唱えたコペルニクスに対して、ガリレオ・ガリレイは、地動説を大々的に唱えたことで、カトリック教会から有罪判決を受けてしまいました。判決の誤りをローマ教皇が認めたのは、350年後の1992年です。とはいえ、今でも宗教的な理由から天動説を信じている人はいるようです。

調べていたら、地動説の原型はフィロラオス(紀元前470年頃 - 紀元前385年)まで溯ることを知りました。フィロラオスは、あのピタゴラスの定理で有名なピタゴラス(紀元前582年〜紀元前496年)の後継者の一人です。

鍼灸医学が生まれた中国の事情はどうだったのでしょうか。

ウィキペディアの情報では、「夫天地、空中一細物」(「われらがいる天地も、無限の宇宙空間のなかで見れば、ちっぽけな物にすぎない」)を例に挙げ、地動説の考え方を示していたのですが、続きの「有中之最巨者」(「握できる最大の存在でもある」)に目を向けると、地上に居る人の目線から宇宙を語っているように思えます。ですから、中国の地動説はよくわかりません。


鍼灸学の原典である『素問』『霊枢』が書かれた時代は2000年以上前です。少なくとも、コペルニクスが唱えたような地動説があった記録はありません。


経絡の矛盾を連想させる、天動説のCG


天動説は、星の動きをすべて説明しようとすると無理が生じますが、ある程度まで説明できます。経絡も人体に起こる反応をある程度までなら説明が付きます。ですから、天動説と経絡説は似ていいると言えます。

経絡も大きな目で見れば、理屈が通りそうでも、細かいところで奇妙な蛇行があります。拙著の中で記した豊隆というツボが典型です。

豊隆の蛇行


太陽系の惑星の動きを、天動説と地動説で比較すると一目瞭然です。

via GIFMAGAZINE


左が地動説(Heliocentrism)で、右が天動説(Geocentrism)です。

仮に、天動説(Geocentrism)しか見なかったら「こんなに複雑で奇妙な動きをするんだ」で落ち着く人がいるかもしれませんが、地動説(Heliocentrism)
を見たら、「こっちが正解だね」と直感的に思うはずです。

一言で言えば、天動説(Geocentrism)は不自然なのです。地球を中心に置くと、これほど複雑な軌跡になってしまうのです。エネルギーの無駄です。自然の摂理からして天動説はあり得ません。

人体はエネルギーを節約するように出来ています。人間に限らず生命は超省エネ機構です。無駄のないように出来ています。こういう目で経絡の走行を眺めると、細かい点で無駄があります。天動説のCGシミュレーションの惑星の奇妙さと同じものを感じるのです。


アイデンティティ化してしまう経絡


経絡はあるのかないのか、という議論は重要ではありません。重要なのは、経絡がもたらしてきた成果と、経絡が抱える限界です。

天動説によって、ある程度まで自然の摂理を把握できたように、経絡も人体の摂理を把握するのに役立っています。しかし、時代が変わる中で鍼灸にも変化が必要です。天文学が、天動説から地動説に移り変わったように、そろそろ鍼灸にもパラダイムシフトが必要なのではないでしょうか。

地動説のアイデアを生んだフィロラオスから数えると、地動説が受け入れられるまで、2000年以上かかっています。

天文学において、アリストレスやプトレマイオスが支配的だったように、鍼灸においては『素問』や『霊枢』の存在感が強く、新しいアイデアが認められにくい空気があったと考えても不思議ではありません。

ひょっとすると、鍼灸にも地動説に相当するものが考案されていたのかもしれません。歴史の中に埋もれてしまったなら、とても残念なことです。

心理学には「認知的不協和」という言葉があります。「これまでの情報と新しい情報の間に不一致が生じた時、不一致を軽減する行動が起こる」というものです。

いったん経絡理論があると信じてしまうと、それがアイデンティティとなり壊されることを恐れます。「経絡は信仰である」と言われて、「経絡はあるんだ!」と意地になるのは、まさに認知的不協和です。

誰でもいったん信じたものは、簡単にひっくり返したくありません。「信じる」ということは大きなエネルギーが必要だからです。

信じたものによって景色が変わります。だから、経絡を信じれば、体で起こる現象に経絡というフィルターがかかります。矛盾する現象は見えなくなってしまうのです。このように、経絡」という観念ができあがるのです。

やっかいなのは、ひとりひとり経験が異なるために、できあがる観念もひとりひとり違うものになります。「みんな違ってよい。それが鍼灸の魅力だ」という考えもありますが、鍼灸を医療と考えるなら、深刻な問題です。


鍼灸学の本質はツボにある


イメージの力は自分自身に対してだけでなく、他人も変えられるほど強力です。ですから、強力なイメージを持つ鍼灸師にはパワーやカリスマ性を感じます。

それも鍼灸師としての在り方ですが、イメージ力の勝負になりますので、鍼灸を使うことの意味が薄れていきます。実際に、鍼を使わなくなる鍼灸師は少なくありません。

「鍼灸学の本質は何か」

と問われたら、私は「ツボ」だと答えます。特定の位置(座標)がもたらす作用を観察して整理していくことが、鍼灸学の本質だと思っています。経絡も本質を追究して考案されたデザインであり、診察のガイドラインだと思います。ツボが先に研究され、研究の成果をまとめるために経絡が考案されたと考えるのが自然です。


お知らせ


2019年5月10日(金)から、毎週金曜日は品川のカポスにて施術を行います。予約の際には「栗原希望」と告げて下さい。

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yoki at 22:23│Comments(0)

2019年03月09日

拙著『ツボがある本当の意味』(3/14発売)の見本が届きました!

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鍼灸を受けている患者さん、これから鍼灸院に行こうと思っている人にもおすすめできます。もしかしたら、先入観のない一般の人の方が理解しやすいかもしれません。

この本の元ネタは、鍼灸師向けに連載していた記事なので、出版社に話を持ち込んだ時に不安があったのですが、「これは一般の人が読んでも面白い内容ですよ」と予想以上の回答を頂きました。

ふだん、鍼灸師向けにセミナーをやっているので、一般向けに何か情報発信をしたいと常に思っていまた。その想いがついに実現しました。BABジャパンさんのおかげです。

決め手は、「従来の鍼灸の常識とまったく違う」という点でした。奇をてらったわけではなく、臨床の現場で必要なスキルをゼロベースで積み上げたものです。結果的に、学校教育で教える鍼灸とは、大きく異なるものになりました。

この本は、経絡とツボを切り離して考えることを提案しています。鍼灸理論(ツボ理論)の発展には、いったん古典(2000年以上前のもの)が説く理論を白紙に戻し、現象レベルで考えることが必要です。

従来、ツボは経絡上にある点であると考えられてきました。線路の上に駅があるように。でも、それは一つの考え方に過ぎません。オリオン座が、誰かが星を結んで描いたものです。

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オリオン座の上に、ベテルギウスがあるわけではなくベテルギウスの上に線が引かれたのです。星の光を見ることはできても、星と星を結ぶ線は見えません。星という光る現象があり、そこに意味付けをするために、線が引かれたのです。


経絡は目に見えない


経絡は星座と同じです。

「経絡現象」という言葉がありますが、実際には経絡現象は目に見えません。いっぽうツボには確かな感触があり、ツボが引き起こす現象は目に見えます。脳科学的なデータもしっかり取れてきています。

鍼灸を現象ベースで積み上げていく方が鍼灸を発展させます。現象ベースで積み上げる時、経絡よりツボを中心に考えた方が効率的です。ハッキリ言えば、経絡を調べるよりもツボを調べる方が賢いのです。

私がこの本で提案しているのは、「星座の線をいったん外して星空を眺めてみましょう」ってことです。でも、そんなに簡単なことではありません。

まず星(ツボ)がどこにあるのかを見定める感覚が必要です。ツボは目に見えないので、感じなければなりません。ソムリエが味で生産地と年代を言い当てるように、鍼灸師の感性もツボの位置を特定します。

その位置を特定したら、そのツボが引き起こす現象を拾い出します。たとえば、膝のツボに鍼をした時に腰のどこに変化が起こるかを探します。指先の感覚で筋肉の弾力性を感じ取ります(実際には筋膜の変化を感じ取っているのかもしれません)。さらに、私が取り組んで来たのは、その時に起こる動き(関節の可動性)の変化です。


ツボの特定と理論化までのプロセス


取り組んできたのは次の3つです。

.張楷恭个鯡昔堂修薫銘屬鬟潺蠱碓未把蟲舛垢
▲張椹撫による変化を追う
△汎阿の変化を照合する


さらに、

ぅ張椶肇張椶隆屬砲△覺愀言を探す

を加えることで、鍼灸に「整動」という概念をつくることができました。一番難しい仕事がい任后´↓ができることが前提だからです。´↓ができると、身体上で起きていることが視覚化できます。あくまでも感覚的な話です。

感覚的な話では理論化できないのでい虜邏箸大事です。セミナーでは,鉢い嚢柔されています。△鉢はとても時間がかかる作業なので、ここをショートカットし、結論( 椨ぁ砲鯏舛┐討い泙后つまり、途中のプロセスは誰も知りません。

ある人が「クリ助ほどトライアンドエラーを繰り返している鍼灸師はいない」と言いました。その通りかもしれません。ツボによる効果を1つ1つ確かめていく作業は膨大です。臨床経験が長いだけではできません。

重要なのは記録を取り続けることです。先に待っているものを誰も約束してくれない状態で、記録を取り続けるのは孤独です。でも、その記録をもとに施術をすると患者さんが良くなっていくので、孤独より嬉しさの方が勝っていました。

こうしたツボを探すプロセスはセミナーでも見せたことがありません。セミナーの受講者の目的は結論ですから、そこに時間を割けません。

今月、出版記念イベントという機会を頂いたので、そこで話そうと思います。具体的な作業は実際に見てもらわないと伝わりにくいので、実演が一番かと思います。


経絡とツボの正体(出版イベント)



出版記念イベントを3月24日(日)を行います。鍼治療に明るい医師二人を招いて、ツボの正体についてディスカッションします。鍼灸師だけでは、ツボを客観的に説明できないと考え、私の感覚を解剖してもらおうと思います。

私が提唱した整動鍼が正しいかどうか、というのは科学的にまだわかりません。現時点で言えるのは、私が定義したツボの位置に刺激をすると、誰がやっても全く同じ結果が得られることです。

年間70日以上をセミナーに費やし、全国の鍼灸師にツボの位置と理論を提供しています。2017年からはスペインでも活動を始めました。習熟度が一定以上を超えると同じ結果が得られることがわかっています。こういう評判が伝わると科学的に検証できるのではないか、と考えられるようになります。

ツボの位置が曖昧では実験にならない

と考えるのが研究者です。

条件を限りなく同じにできる整動鍼は実験に最適なようです。しかも、1つ1つのツボで変化を確認できるので1本の鍼だけで実験ができます。何十本も鍼をして成果を出す方法では、刺鍼の刺激で起こる現象は調べられても「ツボとは何か」に迫ることは永遠にできません。

ツボに鍼を1本して変化を確認できる

ということが研究ではとても大事です。整動鍼が鍼の治効メカニズムに興味を持つ研究者から注目される理由はここに集約されています。

つづく…


予約注文始まっています。



◎出版記念イベント(講演・対談・実演)(3/24)


鍼灸師と医師で解き明かす 経絡とツボの正体
会場:FinGATE KAYABA(東京)
参加費:2,000円(1部)/3,000円(2部)
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