仕事日記

2025年08月06日

恩師兵頭明先生

日本の現代中医学の父


先週、恩師の兵頭明先生とお会いしてきました。この機会をつくってくれたのは、鍼灸院ひなたの院長、山元大樹先生。一緒に整動鍼に取り組んでいる仲間の鍼灸師で、兵頭先生の下で学んだ時期があります。

兵頭明先生(左)、山元大樹先生(右)と撮影_栗原誠

兵頭先生は、鍼灸師にとって現代中医学の父と言ってもよい存在です。物腰が柔らかすぎて、ついスゴい先生であることを忘れがちですが、鍼灸師にとってはキングダムの王騎将軍を目の前にいるくらいのインパクトです。もっとわかりやすく言えば、日本の鍼灸師の教科書の礎を築いた人です。わかりやすい先生の著作物は中国にも影響を与えています。

学生時代、こんなスゲー先生に教わることができたのは幸運でした。昔の話になってしまいますが、私が学校を選ぶとき学術の厚みをもっとも感じるところを選びました。情報が少ないなか、ウェブサイトがもっとも充実していたのが母校の衛生学園でした。新しい学校が増えて入学のハードルは低くなりましたが、私が挑んだ入試では倍率は10倍でした。ですから、兵頭先生の指導を受けられることは特別だったのです。気がついていない学生のために言っておくと本当にスゲー先生なんですよ。

改めて兵頭先生の功績を紹介すると、何よりもまず中国から大量の学術を輸入したことです。出版された専門書の数は鍼灸業界で群を抜いています。教科書にも「兵頭明」の名前を見つけることができます。まさに、学術においては父のような存在です。

1970年代、中国との国交が回復すると同時に伝統医学の分野でも交流が盛んになってきたのですが、そのときに第一線で活動されていたのが兵頭先生なのです。私が在籍していた頃(1998-2001年)は、現代中医学の教育システムが構築されてきて、その恩恵を真っ先に得ることができました。そこで問題解決能力をたっぷり養うことができました。

兵頭先生の分厚い人脈も目を見張るものがあります。中国との学術交流に積極的に取り組まれ、その拠点が衛生学園でした。日本を出ずに中国の高名な先生から指導をいただく機会を得ました。その頃の学びは財産です。

時が経ち、私は「ツボと動きの関係」を考える整動鍼を創案して普及に努める立場になりましたが、片足を中医学に乗せているので、重心を乱すことなく新しい理論を展開できました。兵頭先生から見たら、私のやっていることは伝統的なものからだいぶ外れてしまっています。それでもかわいがってもらえるのは年齢を忘れて嬉しいものです。


認知症の専門家として


日本における中医学の普及、そして教育システムの構築と、これらの功績だけでもすばらしいのに、認知症の研究者としても第一線でご活躍されています。鍼灸ができること、鍼灸にしかできないことへの挑戦は、どこからエネルギーが湧いてくるのかと思うほどです。

近々、国内の認知症ケアの費用は(家庭内の統計に乗らない潜在的費用を含めると)年間20兆円に達すると言われています。医療費だけでもすでに2兆円を超えています。その負担は現役世代が背負うものであり、将来的には私たちが背負わせてしまう費用です。兵頭先生はこうした現状の解決策として、鍼灸の活用があると唱えています。

鍼灸の可能性を追求することは、私たち鍼灸師が活躍できるかどうかの域を超えて、社会全体の問題の解決策になりうるという視点は、ふだん目の前の業務に奔走していると忘れがちです。兵頭先生とお話しているうちに、自分の視野の狭さが恥ずかしくなりました。




無料で学べる中医学講座


こちらには無料で中医学を学べるビデオ教材があります。学生も学び直したい鍼灸師の方々もぜひ。

 中医学教育臨床支援センター
(視聴者登録をする必要があります)

こちらの書籍は入門書としておすすめです。図表がたくさんあって中医学の生理がわかりやすくまとまっています。こういうの、学生のときに欲しかったです。

中医学の仕組みがわかる基礎講義



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2025年07月23日

整動鍼プロモーション動画の撮影

参議院選挙の投票日の20日(日)は、品川でプロモーション動画の撮影を行いました。そのため、期日前投票を済ませておきました。選挙の行方が気になりつつも、この日は撮影に全力投球でした。



プロモーションする整動鍼について簡単にまとめました。
整動鍼は、「動き」を指標にツボの効果を明確に捉える新しい鍼灸理論です。動きの変化を即時に確認できるため、再現性と即効性に優れています。日本古来の古武術整体「活法」の思想を応用し、筋肉や関節の不調だけでなく、自律神経や内臓の不調にも対応可能です。整動鍼におけるツボは“張力の起点”と考え、解剖学にとらわれない視点からアプローチします。臨床の手応えと、自信を持って施術できる実感を得やすいのが特徴です。


海外に日本の鍼灸を紹介したい


患者さんから「次はいつスペインに行くんですか?」と聞かれることがあるのですが、予定が思った通りに立てられないというのが現状です。

事情を簡単に説明します。

2017年からスペインに定期的に行っていました。鍼灸を教える学校から呼ばれるかたちだったので受講者さんを私が集める必要はありませんでした。

ところが、コロナ・パンデミックをきっかけに途絶えてしまい、セミナーを開催するには自力で受講者さんを集める必要が出てきました。2023年には再開してたくさんの方が受講してくださったのですが、ふたたび新しい受講者さんを集めようとすると、地理的、言語的な壁が立ちはだかり簡単ではありません。


過去のセミナーの様子や感想をスペイン語で配信しても、「セミナーの詳細を教えてください」という質問が絶えません。それなりに出しているつもりでも、日本語で発信している情報と比べると少ないのです。

そこでプロモーション動画を作ろうと決意しました。10年以上も活動を続けているのに、ちゃんとしたプロモーション動画はなかったのです。その都度、想いをつづるような文章ばかりで日本語のものばかり。サクッと「整動鍼ってこんな感じか」と理解できるようなものが一つもないのです。


日本語で制作し、スペイン語と英語の字幕


海外セミナーは私の思い出づくりが目的ではありません。利益を出してビジネスとして成立させることが目標です。想像していただければわかるように、航空運賃と宿泊代がコストとしてかかることを考えると、相応の売上が必要です。特に私が開催するセミナーは、実技を一人ひとり指導するタイプなので、補佐役の講師も連れていきたいので価格設定は慎重になります。

受講者集めに多額の費用がかかってしまえば、いくら料金を高くしても赤字になってしまいます。スペインの受講者を集めるための紹介動画をつくってほしい、とスペインに在住している共同開催者から頼まれたのですが、すぐに「はい」とは言えません。個人の動画配信が珍しくない時代において、動画制作に躊躇することが時代遅れなんだと思いますが、実際は腰が重いものです。動画制作をするたびにYouTuberへのリスペクトが高まります。

とにかく編集がやっかいなのです。私の慣れない作業では10分間の映像をつくるのに数時間かかってしまうことも。

せっかく手間とお金をかけてつくるのなら、スペイン版だけではもったいないので日本国内でも配信するものを作ることにしたのです。日本語で話している動画に、スペイン語と英語の字幕をつけるというパターンです。


魅力を語るだけでなく実技も入れる


魅力を伝えるには、実際に使っている様子があった方がよいので、(鍼灸師が観たら)簡単に真似できそうなものを、いくつか用意しました。本当はすべてを投入したいのですが、整動鍼は厚みのあるカリキュラムなので興味ある人向けに厳選しました。患者さんが観ても、私がどんな考えで施術しているのか雰囲気がわかると思います。


撮影も編集もプロに依頼


内容を考えることに専念し、編集のストレスから開放されたかったので撮影も合わせてプロにお願いすることになりました。



鍼灸師の免許を持つ花田さんとは過去に2回お会いしたことがあり、安心して任せられるという確信がありました。全日本鍼灸学会の名古屋大会のときは美容鍼の長谷川亮先生との対談動画の配信でお世話になりました。本格的な機材を手際よく扱っている姿を見ただけで「できる人」とすぐにわかりました。


撮影は雰囲気で決まる


事前に2度の打ち合わせをし、7月20日(日)に撮影に挑みました。花田さん、助手のシブテンくん、モデル役のヒヨリさんとトモミさんを迎え、弊社からはカポスのスタッフの悠馬くんが助手として入りました。同じくカポスの石井くんが見学したいということで参加。賑やかな撮影現場となりました。

撮影は超順調。事前の打ち合わせが効いています。撮影の雰囲気も和やかで楽しくできました。スキルはもちろんなんですが、雰囲気って大事ですよね。そういうところへの気配りもさすがだなぁと思いました。私よりずっと若いのに本当にしっかりしています。

整動鍼プロモーション動画の撮影風景

撮影機材もすごかった!


これ全部でいくらなんだろう? 持ち込んだ機材を購入するお金があれば、かなりいい車が買えると思います。日頃、私たちもセミナーを会員にライブ配信するために撮影をしているのですが、桁が違います。ごめんなさい。何に謝っているのかわかりませんが。


完成したら無料配信


完成した動画は無料で配信します。メディアが何になるのかまだ決まっていませんがYouTubeかもしれません。もう、すでに第二弾も作りたくなっています。以前に出したDVDがすでに絶版となっているので、その内容を焼き直してみたいと思っています。無料配信はできないかもしれませんがリーズナブルに提供できるように努めます。


気になったら1日でも早く試してほしい


とはいえ、整動鍼が気になる方は1日でも早く始めてほしいのでセミナーに足を運んでください。品川(JR品川駅徒歩10分)で頻繁にやっています。はじめての方にやさしい1日セミナー「精粋 刺鍼即応編」は8月24日(日)です。名称の通り、鍼の即効性を堪能できる内容です。これはDVDにもプロモーション動画にも含まれていない内容です。学生も大歓迎です。従来の考え方とは異なるので、誰でも同じ条件で学べます。まだ間に合いますので興味があればぜひお越しください。

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2025年06月24日

誰かを特別扱いするとうこと

特別ではない側の気持ち


鍼灸院を経営する立場として気をつけていることの一つに「公平に対応する」があります。患者さんはそれぞれ症状が異なりますし、感受性も異なります。ですから、施術を画一的にすることはできません。使うツボは違いますし、鍼の数もそれぞれです。むしろ、それぞれの方に合わせて変えることが必要です。

私が考える公平は別のところにあります。それは対応の中に「特別」をつくらないことです。特定の患者さんにしかできないことをしない、今日しかできないことをしない、ということです。やろうと思ったら、いつでも誰にでもできる範囲でサービスを組み立てるようにしています。

特別なサービスを受け取る人は嬉しいですし、提供した方も気持ちよくなれます。ただ、受け取れなかった人はどのように感じるのか、その時の気持ちを想像することも必要かと思います。

学生時代にさかのぼりますが、ある鍼灸の勉強会に同級生と一緒に行きました。受付のすぐ隣で書籍を販売していたので、思い切って購入しました。一緒に行った同級生も購入したばかりの書籍を手に持って隣に座りました。

「内緒で会員価格にしてもらっちゃった」

と嬉しそうでした。販売を担当していた人と知り合いだったことで割引してもらえたそうです。そのときの気持ちは今でも覚えています。

この購入に際して、私は1円も損をしていません。その価格に納得して購入したのですから。ただ、隣に同じものを安く購入した人がいただけのことなのです。実害はありません。それなのに損をしてしまったような気分なり、自分の存在までフツー確定のようで、もやもやした気持ちが残りました。私だって特別扱いをしてほしかったのです。

販売係をしていた方は悪い人ではないし人情味あふれる人だと思うのですが、それ以来、私は親しくなれる気がしなくなりました。私の心が狭いだけのことかもしれません。割引してもらった同級生に「安くしてもらえてよかったね」と言えるくらい広い心があったらと思います。

ただ、こういう気持ちになるのは私だけではないように思うのです。


キャンセル料は必要?


鍼灸院に話を戻します。あるスタッフに言われました。「鍼灸院なのだからキャンセル料は必要ないのでは?」と。人情を表に出した方が経営にもプラスでは?という意見です。ありがたい意見ではあるのですが、その意見はしまっておくことになりました。

実は開業して間もない頃は、心が痛むという理由でキャンセル料を設定していませんでした。今は、みなさん時間を守って通ってくださっているので、ドタキャンはほとんどありません。しかし、キャンセル料を設定していないときは、ドタキャンは日常茶飯事で連絡が来ないことも珍しくありませんでした。

「とりあえず、その時間を確保しておいてください」と、行けたら行きますという意味合いの仮予約的なものが起きてしまいます。来院されるかもしれない時間は他の患者さんをお断りする他ありません。仮予約であっても実質的に予約枠は削られます。

現在は、直前の変更やキャンセルに対してキャンセル料をいただいています。現状になってからは仮予約のようなものはゼロになりましたし、ドタキャンもありません。その代わり、こちらもしっかり予約時間に対応できるように時間管理も徹底しています。ときには時間前に、最大でも5分遅れで施術室に案内できるようにしています。

もし、予約を守らない人に守っている人と同じように対応する(=キャンセル料をいただかない)、というのは平等かもしれませんが公平感は失われると思うのです。守っている人が損をした気分にならないことが最優先な気がします。

強調しておきたいことは、キャンセル料はキャンセルする人へのペナルティではないということです。目的は、通院している方が気持ちよく通院する環境をつくるためです。

「キャンセルする場合はキャンセル料が必要」という設定をすることで、不公平感が生まれにくくなります。これが正解かどうかわかりませんが、少なくとも私が患者で通院する立場であれば、公平だと感じます。

キャンセル料を請求することを機械的で冷淡な対応だと思う人もいるでしょう。「人情はどこに忘れてきたんだ?」と言われるかもしれません。キャンセル料が必要なところには通いたくない、と考える人もいるでしょう。そう考えれば経営上のリスクになりますが、日時を守ってくださる方が不公平感を抱いてしまう方が無視できないリスクではないかと思います。

人間なら誰でも自分を特別扱いしてほしいと思います。受ける側に入れば特別は嬉しいのですが、その枠に入れなかったとき、何も失っていないのに何かを失ったような気分になります。

特別の裏に潜むリスクについて、みなさんはどのようにお考えでしょうか。

こちらもよろしくお願いします。
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2024年10月14日

鍼灸師をやめるという選択

鍼灸師の悲劇


こんにちは。氷河期世代の鍼灸師、クリ助です。悲劇というのはそこではなくて鍼灸師という名称がそもそも悲劇を生んでいるという話です。

いったいどういうことか、ほとんどの人が心当たりがないと思いますのできちんと説明します。鍼灸師の人も、鍼灸師でない人も耳を傾けてほしいです。

鍼灸師をやっているといろいろな人から言われます。「鍼灸って何に効くの?」と。すでに受けている方であっても、完全に理解していないと思います。実は鍼灸師の私たちでさえ全貌がわからないのです。

そう考えると美容鍼は革命的です。今では当たり前となっている美容鍼ですが、少し前まで顔のケアに鍼を使う鍼灸師はほとんどいませんでした。Googleのトレンドを調べてみると、美容鍼という言葉が認知され始めたのは2006年です。まだ20年経っていません。

私が開業した頃(2003年)は誰も美容鍼という用語を使っていませんでした。ある時現れて瞬く間に広がっていったのです。なんとなく生まれたものではなく、この分野を開拓するために仕掛けた鍼灸師がいるのです。美容鍼という用語が広まると同時に「私が最初です」という鍼灸師が次々と現れ、あっという間に春秋戦国時代に突入していきました。未だに統一されていません。



あの先生は、なぜ商標を取らなかったのかと後悔しているのか、それとも申請したけれど蹴られてしまったのか、想像を巡らせるのだけで精一杯です。いずれにしても、美容鍼が一気に普及したのは「美容鍼」という呼称が大きく関わっていたと考えるわけです。


鍼灸は道具の名称


鍼灸は道具の名称でしかありません。整備士をスパナ師というようなものです。

美容鍼は、この短い言葉の中に「美容に鍼はいいんだね」というメッセージが含まれるのです。きれいになりたい人が目をとめる理由ができているのです。

「鍼灸」という文字から頭に浮かぶのは痛そうな鍼と熱そうな灸です。ネガティブなイメージばかりで、ベネフィットが伝わりません。つまり、鍼灸師という肩書が相手に与える情報は「痛い鍼と熱い灸をする人」なわけです。

「そんなことはないです。ちゃんと興味を持ってもらえます。」と言われてしまうかもしれませんが、それはどこかでちゃんとベネフィットの情報を得ている人です。NHKで特集番組が組まれたあと、問い合わせが増えるのは(うちは増えませんが…)、ベネフィットを視聴者に伝えているからです。だんだんと鍼灸の効果が知られるようになり、この20年で状況は大きく変わってきました。

私が駆け出しの頃は、通院して症状が大幅に改善しているにも関わらず、医師から「鍼灸を受けるのをやめなさい」と言われて通院をやめてしまう人もいました。鍼灸は、まじないやオカルト的なものと認識されていたのだと思います。鍼灸師が国家資格であることを医師が知らない時代が長く続いていました。

最近では医師が鍼灸院に通院しますし、医師の紹介で患者さんがやってくることもあります。鍼の技術セミナーに医師が参加されたりと、本当に時代は変わりました。

改めて言いますが、鍼灸は道具の名称でしかありません。鍼灸師も使う道具を言っているだけの名称です。「こいつら何モンだ?アヤシイぞ」となるのは当然です。だから鍼灸師という呼称が嫌いなのです。でも、そう名乗るしかないのです。


鍼灸師のスキル


鍼灸師という呼称は、効果が伝わらないという他に、スキルに対しても大きな誤解を生んでいまいます。たとえば、「上手い鍼灸師は太い鍼を短時間でたくさん刺せる」というように、施術のボリュームが評価対象になってしまうのです。

私個人としては、鍼灸師の本質は「ツボの専門家」と思っていますから、いかにツボの効果を引き出せるかが鍼灸師の腕の差だと思っています。ですから、細くて柔らかい鍼を必要なところだけに絞り込んで行うことの方が重要です。

SNSで鍼灸師でもない人がツボの専門家を名乗って、根拠がどこにあるのかわからない情報(〇〇のツボは〇〇)を発信してバズっているのを見ると複雑な気持ちになります。


商業的な鍼灸


商業的というとイメージが悪いかもしれませんが、現実として患者さんが受けられるのはほぼ商業的な鍼灸です。商業的に成り立っている鍼灸院しか存在していませんから。

鍼灸師は国家免許が必要な医療系職業であるにも関わらず、医療制度から距離を置かれています。キレイゴトを並べても資本主義の海の中で泳げなければ溺れてしまいます。商業的な思考がなければ鍼灸院を経営できません。

だいぶ前ですが「あなたのブログも結局は商売が目的でしょ」と揶揄するようなコメントをいただいたことを思い出しました。揶揄されたところで全くその通りなので、

「はい、商売で書いています」

と返答するだけです。

このブログも仕事として書いています。原稿料をもらえるわけではないので、この記事がいつのタイミングで収入になるかわかりません。確かなのは「ブログを読みました」という人と数え切れないほど出会ってきたことです。ブログは出会いをもたらしてくれるのです。患者さんになったり、セミナーの受講者になったり、ビジネスパートナーになったり、いろいろです。

私が何者であるかを発信するツールがブログです。「鍼灸師」という肩書きでは伝わらないから、自分の説明をしています。SNSや動画が主流の時代になりましたが、やっぱり私にはブログが性に合っているようです。じっくり考えて時間をかけて書く。時間が経ってもあせない内容を心がけています。


鍼灸師をやめて成功する人


整体師と聞いてどういうイメージを持つでしょうか。考えるまでもなく「身体を整える専門家」ですよね。羨ましくて仕方ありません。免許を取るために学校に通う必要もなく国家試験を受けることもなく「身体を整える専門家」の称号を手に入れることができるからです。

私のところで症状が軽くなった人にこんなふうに言われたことがあります。「あとは整体に行って根本から治してもらった方がいいですよね」と。「どうしてですか?」と返すと、「鍼灸は痛みを一時的にごまかしているだけなので、根本的に治すには整体に行った方がいいいんですよね?」と戻ってきて驚きました。

こんなやり取りを経験すると、私たちは「鍼灸も使える整体師」と名乗った方がよいのではないかと冗談ではなく思ってきます。鍼灸によって体を整えているのですから、鍼灸師は全員整体師です。

まじめに言いますが、鍼灸師が行う鍼灸は、整体鍼もしくは整体灸です。

色々な人がいて、鍼灸師であるにも関わらず、整体師を名乗って活動している者もいます。「なんてもったいないことを」と思いますが、彼らにしてみれば、正しく認識されずに損が確定している鍼灸師を名乗る方がもったいないのでしょう。


鍼灸×〇〇


若い世代の鍼灸師からこのような表現が発信されることが増えました。鍼灸の枠にこだわらずに他のスキルと積極的に掛け合わせて鍼灸師の可能性を広げようということだろうと思います。つまり、〇〇を入口にして鍼灸のファンになってもらおうという戦略なわけです。それか単に鍼灸にこだわるのはダサいというだけかもしれません。

いずれにしても、鍼灸が正しく理解され、今後の発展を願うなら「鍼灸師」という呼称を克服していかなければならないのは確かです。

最後の手段は「◯◯」のみで勝負することです。この「〇〇」は「鍼灸」以外なら何でもよいのです。肩書きの上では鍼灸師をやめるのですから勇気が必要です。お金も時間もかけて取った免許をしまい込むのですから。

実は、私は「あん摩マッサージ指圧師」の免許を表に出していません。せっかく取ったけれど、表に出さない方が(私にとっては)得だろうと判断してそうしています。鍼灸師だけで十分です。いや、鍼師だけでも支障ないかもしれません。灸をすえる場面がやってきたら「ちゃんと免許はありますよ」と証拠を見せたら済む話ですから。

この考えを延長していくと鍼師もいらなくなってくるのです。極端ですか?

その方が鍼灸の可能性を引き出せるなら別にかまわないと本気で思っています。私のモチベーションは、ツボを通じて人体に潜む法則性を探ることにあるので、今の私にふさわしい肩書きが見つかれば乗り換えます。それまでは鍼灸師を名乗っていきますが。


ソッカル


一つの試みとして準備しているのが、足専門のコンディショニングです。これまで「足のトラブルにも鍼がいいですよ」と言ってきたわけですが、「痛いところに鍼をすることもできますよ」と、刺激の一種として鍼もお考えくださいというメッセージになってしまいます。実際は、足の痛いところに鍼をするわけではなく背中などのツボを使って足のアライメントを整えて、痛みを取るだけでなく、可動性を改善させていきます。

ベースとしているのは整動鍼です。「ツボと動きの関係」をコンセプトにした新しい理論です。この理論を使えば、足の動きを改善させることができます。鍼治療でも足の動きを改善できますよ、という回り道はしたくないのでサービス名をつくることにしました。

しばらくは鍼灸院の中でやっていくことになりますが、鍼灸院という箱でやる必要はありません。鍼灸院という箱を外すことによって「鍼灸にできること」の一つとして説明する必要がなくなります。ダイレクトに「足のコンディショニングができます」と伝えられます。幸いなことに私のチームには人材が豊富ですから、任せていける体制をつくっていく予定です。



先日、足のコンディショニングを表す「ソッカル」を商標登録申請をしました。一応、「足が軽くなる」という意味です。「即軽くなる」でもあります。

当面、鍼灸師という免許の呼称が変更になることはないでしょう。このままでも、情報発信によって鍼灸の効果を誰もが当たり前に知ることができる時代がやってくるかもしれません。本当はそんな未来の方が楽でよいのです。


ツボネット(鍼灸の症例検索サイト)


鍼灸の可能性を知る意味でアクセスしてほしいサイトがあります。ツボネットです。私のチームで運営しています。3500以上の症例が登録され、鍼灸が何に効果があるのか実際の症例から探ることができるようになっています。また、どのツボがどの症状に使われているのか、データとして蓄積されています。

ツボネット

現在、月に40万ほどのアクセスがあります。このサイトを見た方から予約をいただくので、優れた集客ツールにもなっています。1万症例を目標にがんばっています。

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2024年04月28日

セミナーより論文の方が先という意見を見て思うこと

セミナーより論文や出版の方が大事という意見を見た


SNSにて、新しく体系化した技術は講習会よりも論文や書籍が先ではないか、という意見を見ました。誰に向けられた意見かわかりませんが、「整動鍼」という体系化したものをセミナーで広めている立場として思うところがありますので、私の目線から事情を書こうと思います。

あらかじめお断りしておきますと、反論を意図した内容ではありません。単にこういう理由があるんだと背景を書くだけですので、肩の力を抜いて読んでいただければと思います。

冒頭のご意見はとてもよくわかります。論文や書籍があれば、まずそれを読んで試して、深めたいと思ったらセミナーに行くという行動が取れます。無料に近い形で情報を手にして、それから有料のサービスを検討するという流れとなります。消費者の立場からすると、まずは無料お試しがほしいのは当然ですよね。


論文に整動鍼を書けない理由


それでは、まず論文を書かない理由について説明します。結論から言いますと、ぜったいに無理です。「ぜったい」と強い言葉になってしまいましたが絶望的です。

整動鍼では、まだ誰も言及していないツボの作用を100を軽く超える数含んでいます。また、A(刺激)→B(反応)というだけでなく、Bが引き金となって起こるCにも言及しています。そこから先もあります。論文に掲載できるとしたら、A→Bに絞り込んで書くしかありません。A→Bが不確かな状態ではB→Cを語れないからです。

それを積み重ねていくのが手順と思われるかもしれませんが、100を超える数の論文が必要となりますし、落合陽一が憑依して一週間に一つのペースで仕上げても700日です。臨床メインで仕事をしている私にはむずかしいです。仮に論文に全労力を費やしてしまえば、整動鍼の発展は少なくとも10年は止まります。

仮に論文ができたとしても、論文に専念することで臨床で実績が積み上がっていないので、見向きもされない可能性だってあります。あとですね、学術論文は整動鍼の宣伝になってはいけないので、整動鍼セミナーの内容とは距離を取る必要があります。

結局、整動鍼を一から説明しなければなりませんし、実績(症例)を示してほしいと言われるでしょう。だから、今はそれを積み上げて、論文が書かれるいつかのために準備を師ているのです。


書籍では伝えられないものが多すぎる


書籍の出版なら論文のように一つ一つエビデンスにこだわる必要がないので「こういう仮説ですよ」というノリで書けます。実際に、セミナーで使っているテキストがまさにそれですから。

出版したものをテキストとして使用するという方法もあります。ここからは私の考えになりますが、出版物で伝えられるのはごく一部で、私の力量ではきちんと伝えることはできません。

いちばん避けたいのは「効果がない」と判断されることです。セミナーを10年以上もやっているからわかるのですが、同じ文字情報やイラストを見ても、実際にやってみるとまちまちです。再現できるレベルまで身内で何度も確認してから外に出しているので、それを「効果がない」と判定されるのは、こちらとしても精神的に耐えられません。

あとは、出版してくれる出版社があるとは限りません。大量に売れるものではありませんから、仮に出せたとしても高額になるでしょう。PDFしてネットで販売する方法もありますが、そうしたなら「鍼灸師の本分を忘れて情報商材で儲けている」と陰口を叩かれるでしょうね、たぶん。

とは言っても出版についてはいつも前向きです。『ツボがある本当の意味』を出版してから5年が経ちました。次を出したい気持ちはありますが、整動鍼のカリキュラムを完成させることを優先してきました。

整動鍼の全貌を見ていない人は「10年もかかったのか」と思われるでしょうが、つくった側の立場から言うと、10年でまとめられたのは自分の能力からすると奇跡です。

施術室で朝から晩まで働きながら、夜間に執筆するとなると体力的に難しいです。体調を壊さないことが最優先です。一睡もせずにブログを書くとか、もうできません。悔しいですけど。


日々の臨床とセミナーだけで精一杯


できる範囲でやるという結論でやっているのがセミナーです。そういえば、以前に「セミナーをしている人は施術に専念していないので技術が信用できないので人を紹介しない」とSNSで公言している人がいました。

どういうふうに解釈するかは自由ですが、身内はみんな私が朝から晩まで施術をして、休診日はセミナー活動に費やしていることを知っています。セミナーは、デモンストレーションの施術と実技指導の連続なので、一週間休みなく鍼を持っています。もちろんたまには休んでいます。この調子で書くと忙しい自慢になってしまってカッコ悪いのでやめますね。


論文は私の仕事じゃない


論文を書く意義は十分に理解しています。でも、周りに求められているのは論文ではないと思うのです。新しいツボの作用を探すことを多くの方が望んでいると思います。

私が注力すべきは論文のネタになるツボの作用を探ることだと思うのです。論文は誰かが書いてくれたらいいのです。私が主宰する整動協会には200人を超える会員さんがいますので、きっと誰かがやってくれます。やらなければ、やらないでよいです。人に強いることは嫌いだからです。

とはいっても、私が見つけたツボはいつか誰かが論文にしてくれると思っています。期待せずに待っています。私が生きているうちでなくてもよいです。


内輪だけで盛り上がっているだけと言われても


私がこういう考え方ですから、整動鍼のセミナーをやっても「内輪で盛り上がっているだけ」と揶揄されることがあります。論文も書かず出版もしていないのですから、そう言われて当然です。

でも、その身内がどんどん大きくなっています。500人、1000人と身内が膨らんでいけばよいのではないでしょうか。もちろん、気をつけなければいけないのは組織の宗教化です。しっかり外と交流をもちながら、いろいろな価値観に触れて、いろいろな考え方を学んでいくことを忘れないようにします。

今年コラボセミナーを積極的に企画しているのは、こういう背景があります。

こちらもよろしくお願いします。
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