動作

2013年04月03日

■最近のマスコミによると

034627最近、テレビや新聞で頻繁に言われるようになっていることがあります。

それは、「腰痛の8割は原因不明で、慢性腰痛のほとんどは心因性である」という類の話。「ストレス」という言葉が原因の説明に使われることもあります。

この話を信じるか受け流すかは自由です。

私は受け流してきましたが、想いが収まらず書くことにしました。「ストレス」で腰痛を片付けるのは乱暴だと激しく思っています。

私は催眠術や心理療法は使えません。でも、慢性腰痛に対応できます。「どんな腰痛でも100%」とは言えませんが、高い確率で改善のお役に立てます。私に限ったことではなく、多くの鍼灸院が対応できるはずです。整体でも同様に。

慢性腰痛を、マスコミの言うとおり原因不明としてしまえば何もできません。心理カウンセラーにでもなって、心のケアをするしかありません。

もちろん原因不明の腰痛はあると思います。でも、8割がそうだという話を信じるわけにはいきません。「原因不明」というのは、ごく一部の(権威ある)人が言っているだけのことです。信じたところで私の現場には役立ちません。



■心因性の裏側には

ここで冷静を取り戻しておきます。

「心因性」という表現の裏側には何があるのでしょうか。それは、単に「痛みのある所に異常が見当たらない」ということです。

そういう場合は、痛みのある場所に何かを施しても成果が表れにくいのです。鍼灸でもマッサージ、何であろうが原因にないところに施しても、効果は期待できません。

原因が痛みの位置と離れたところにあるならば、そこを狙う必要があります。その「離れたところ」を探すためには理論が必要です。

その位置を「心」とする考え方、つまり「心因性」とすることは間違いと言い切れません。痛みは、心の状態で感じ方(強さ)が変わるからです。でも、これは「心は痛みの尺度を変える」ことを指摘しているにすぎません。



■慢性腰痛の原因

では、慢性腰痛の原因をどこに求めるか・・・
答えは一つではありません。ここでは私の答えを書きます。

不動則痛、動則不痛」という言葉があります。2009年に私が勝手に作ってしまった言葉で、「動かないから痛い、動けば痛くない」という意味です。活法の教えがヒントになって生まれました。元々はもっと単純で、「痛くない=居たくない」という言葉遊びのような教えです。

動物である人間は、同じところに居続けることを嫌うのです。同じ姿勢を続けることも嫌うのです。生来、人間は痛くなければ動き回りたい生き物です。

痛いから動けない」のは、感覚的に誰でもわかりますが、その逆は盲点です。「動けないから痛い」ことも考える必要があります。

大まかな話ですが、急性腰痛の場合は、「痛いから動けない」ことが多く、慢性腰痛の場合は、「動けないから痛い」場合が多いのです。

 急性 = 痛いから動けない(から考える) 
 慢性 = 動けないから痛い(から考える)


ここまでの話をまとめると、慢性腰痛を改善させたいなら動きを改善させればよいのです。私の観察によれば、慢性腰痛の人のほとんどが動きに問題を抱えています

柔軟性の衰えも問題ですが、痛みに直結しているのは連動性です。連動性の失われた状態で動かすから痛むのです。立ちっぱなし座りっぱなしのような、幅のない動作でも同様です。

「何をしても痛い、痛みのない姿勢が見つからない」場合は、「不動則痛、動則不痛」が当てはまらず、別の原因を疑って慎重に対応しています。



■慢性腰痛に必要な発想

慢性腰痛を改善しようとするなら、動きの観察が必要だと考えています。「動きの観察」ですから、動きの中にヒントがあります。ですから、レントゲンやMRIではヒントが得られません。

動きの観察は、至ってシンプルです。動きにくい方向、苦手な姿勢、痛みや違和感の出る姿勢を探すだけです。左右差がもっともわかりやすいかもしれません。捻るような動きを観ることも重要です。また、ちょっと難しくなりますが、関節の動く順番もヒントになります。

こうした観察を繰り返していると、法則性に気がつきます。

動作が行われるとき、必ず支持点が生まれます。移動するポイント支持するポイント、この2点が重要なのです。これは、体が崩れないようにバランスを保持するために、絶対に必要なことです。要するに、骨や筋肉は単独で動いていないのです。

シーソーモデル
動くためにはパートナーが必要です。「腰が痛いから腰を揉む」というのは、ペアの片方しか相手にしていないのと同じです。「いくら揉んでも治らない、だから心因性だ」というのは、盲目的だと言わざるを得ません。

痛いところにアプローチする、というのは発想の出発点かもしれませんが終着点ではありません。ラジオの音声が乱れたとき、ラジオの故障を疑うの素直な行動です。でも、雪の日には電波が乱れることを知っていれば、天候が原因ではないかと並行して疑うことができます。

慢性腰痛を治す発想、それは、勇気をもって患部から目を遠ざけることから始まります。慢性腰痛と言っても、その種類はさまざまです。つまり、動きの問題は一つではないのです。慢性腰痛はこのツボ!と決めつけることはできません。

問題点がハッキリすれば、ツボが決まります。

動作分析で問題点を探すのが古武術鍼法です。話の展開を自分の方に引き寄せて恐縮ですが、こうした技術から見る限り、「慢性腰痛のほとんどが心因性」という説に心が傾くことはありません。



■心の軽視はありません

常に温厚でありたい私ですが、今回の記事は主張を強くしてあります。敵は作りたくありませんが、疑問に思うことは書いた方がよいと考えました。味方がいると信じて書いています。

念のため、最後にもう一度書きます。

痛みの感じ方は、精神状態で弱くも強くもなることは確かです。それを否定しているわけではありません。むしろ、精神状態までコントロールしてこそ一流だと思っています。

【関連記事】
離れたツボ、その効果』(2009.10.12)
不動則痛、動則不通(動作の連動性理論)』(2009.10.18)


■セミナー案内

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◆マル秘テクニック公開セミナー(下半身編)

 4月21日(日) 募集中(定員満…2013.4.5現在)

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活法研究会

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yoki at 01:08│Comments(16)

2013年02月17日

動きがわかるとツボがわかる(スノーボードのイメージ)

ツボで動く身体(からだ)をつくる」のが私の研究テーマ。

動く身体(からだ)」のメリットで強調したいのは次の3つです。

1.痛み(こり)が取れる
2.疲れが取れる
3.運動パフォーマンスが上がる


この他に、体調を整えたり病気を治すことにも応用できます。「身体が動く」ようになると、その位置に応じた内臓の調子が上がるからです。

最近の記事には、筋肉や骨格に対するアプローチばかり書いていますから、「鍼=筋肉」というイメージにならないように気をつけます。とはいえ、得意分野を書くのが一番だと考え、本日も「動き」を話題とした記事にします。


スノーボーダーの症例を紹介します。
(感想をメールを頂き、許可を頂けたので掲載します)
先日の左側腰の下辺りに打ってもらった鍼がかなり効いたらしく、クビだけではなく、腰から足まで左側が、一本の張りつめていたいた糸が切れたかのように、ツレがなくなり、腰の動き、足の動きがスムーズになりました。

3年前の怪我以前でも、階段を降りる際には、いつ脚をつまづき転び落ちるか、いつも怖い思いで降りていました。手摺を持たないと正直怖かったです。

かえって今では、今までスムーズに動いていたと感じといた右側のツレが気になるようにまでになっています。

私も「ここまで変化したかッ!」と驚く感想です。

患者さんの訴えは頚のコリ感でした。このコリを取ろうとして使ったのが、「次リョウ(じりょう)」という仙骨にあるツボです。そうしたら、私の意図を越えて、腰の動きや脚の動きまで改善しました。まさに連動!

次リョウ

この症例では、想像を超えた効き方をして、本音を吐けば「ラッキー♪」です。全てを見通して施術できてれば一流なのですが…。今の実力では、この症例を分析し次回に活かすことを考えます。次回は「そんなのお見通しさっ」なんて余裕の態度を見せたいものです(笑)

この症例のポイントです。

「頚の後から脚の後にかけて糸が張ったようなツレ」ということは、後の左側全体にツレ感があったわけです。そのツレが一点で解決できていることに注目してください。

問題は一点にあり、その一点が全体に影響を及ぼしていたことになります。ただし、その一点はコリ感のある頚ではなく仙骨(腰)でした。もし、頚のコリ感に鍼をしていたら、同じ結果にはならなかったでしょう(過去の検証から)。

原因点(悪いところ)と発現点(嫌なところ)は違う、ということです。素人とプロの違いは、原因点を見つけられるか否かであると思います。さらにいえば、原因を作る起因(きっかけ)まで、視野に入れた臨床ができる人が一流になれるのだと思います(がんばります)。

さて、頚からアキレス腱を結ぶラインにツレがある場合、どこを緩めればよいのでしょうか。「末端を狙う」という法則があります。この方法は、一本の筋肉を対象とするならば使えますが、今回のように頚からアキレス腱まで多数の筋肉が関わっている場合は使いづらいです。

連動構造を分析するには、どうしたらよいか...。私が出した結論はバランス保持です。

シーソーをイメージしてください。

板を平行に保つためには、中心からの距離がポイントですよね。同じ重さの玉があれば中心から等距離に置けば板は傾きません。骨格には、このような玉の置き場が無数にあるイメージです。どこかが重くなれば、その逆側が同じだけ重くなればバランスが取れます。


シーソーモデル

実際の肉体は重さが変わるわけではありません。こり固まって動かなくなった筋肉が重さになるとイメージしてください。実際、動かない筋肉は動作にとってはお荷物になるわけですから。

筋肉のコリ=仮の重さ(「仮重(かじゅう)」と定義します)

多くのコリは「身体の重さ感を補正するためにできた」と考えます。補正が必要ない状態にすることが、私の施術イメージです。

こうした発想は、経絡(一般的なツボ理論)からはかけ離れているはずです。古武術鍼法では、どの経絡であるかは重要ではありません。また、経絡は「流注」という連続性(つながり)が重要ですが、古武術鍼法では「空間的な距離(感)」が重要です。

この話は経絡とは別の話です。経絡を否定するわけでも発展させているわけでもありません。全く別の話です。


ここで症例に戻ります。

次リョウの鍼で起きた体感の変化を整理します。メールの他にリスニングした内容を加えています。

1.項(うなじ)のコリが消えた
2.股関節の内旋(内捻り)がラクに=お姉さん座りの形がラクに
3.太ももの外側のツッパリが消えた
4.骨盤を左右に振る動きがラクに
5.膝の屈伸がラクに
6.歩行、階段の上り下りが自然に

1〜6をまとめて説明できたらいいな、と思います。
すぐにわからなかったので、こういう時こそ学ぶチャンスです。

研究段階の域を完全に脱していませんが、この症例で問題になっていた動きは、「母趾球を軸とする下肢の内旋」です。「母趾球を地に付けたまま、踵を外側に開き出して股関節を捻る」という動きです。同様の症例が重なってくればハッキリします。

脚の捻りAB

立位において、母趾球が股関節を内側に捻る時の回転軸になる場面があります(やってみるとわかりますが、外捻りの時に母趾球は回転軸になりにくい)。

ですから、次リョウは「母趾球を回転軸とする下肢の動きを改善させた」と仮説が立てられます。しかも、項(うなじ)のコリと関係があるかもしれない、というところまで言えるのです。今回の症例で改善を促したかったのは、頚椎の3番です。

動きの分析から、「頚椎3番−仙椎2番(次リョウ)−母趾球」がつながったように思います。

この記事に書いてあることは、検証が十分ではありませんし、臨床を重ねなければ内容に保証がつけられません。「じゃあ書くな」って話ですが、記事にしてみたのは「どうやって使うツボを決めているのか」にお答えしたかったからです(質問が多いため)。動作分析の方法やその後の検証についても想像していただけるのではないでしょうか。

ついでに書きます。踵を支点とする股関節の内旋を改善するには、上リョウというツボが便利です。症状名では坐骨神経痛になるでしょう。この記事の症状と似ていますが、やりにくい動作が異なります。

これらのツボがある仙骨というのは、身体の動きに大きく関わっています。活法でも大事にしているポイントです。人骨の中で、「にんべん」が使われているのは仙骨だけです(活法の師匠に言われて気がつきました)。どの骨も大事ですが、仙骨には特別なものを感じます。


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yoki at 08:17│Comments(7)

2012年10月11日

活法の視点! 歪みと動きの中心
活法の視点! 動作における中心の位置と半径
活法の視点! 整体で整えるべき中心「正しい姿勢とは?
と合わせてお読み下さい。


活法で中心を取り戻す


前回の記事で、「静的バランスと動的バランスが一致している」理想モデルと、「静的バランスと動的バランスが一致するとは限らない」現実モデルを提案しました。

経験上、理想モデルが通用する体の方が治療がラクです。体を真っ直ぐにすれば症状が改善するからです。実際に、改善する例は多数あります。

しかし、そうでない場合があります。「骨盤を整えてもらったのに腰が治らない」とおっしゃる患者さんも見受けられます。

こんな時に役立つのが現実モデルです。「動いている時の中心がどこなのか」という視点を加えるだけで解決の糸口が見つかることがあります。

見た目は問題ないのになぜか症状が取れない。そんな時、中心をズラすと劇的に症状が改善することがあります。


活法_動的安定(動きの調整)


中心を整えるための理論は、実にシンプルです。本来の中心で身体を動かすだけです。患者さん自らが動くことで本来の位置に戻す方法と、術者が患者さんの身体を動かす方法の2つがあります(具体的な方法はセミナーで)。

活法の視点から見ると、次のような注意が必要です。

動的に安定している(無理なく動ける)のに、見た目の中心に合わせようとすると動きが悪くなるのです。「矯正は成功したのに症状は悪化」という事態を招きます。


活法_静的安定(見た目の調整)


人は誰でも生まれながらのクセ(曲)があります。そのクセ(曲)を補正するためのマガリ(弯)は必要なものです。必要でないものはユガミ(歪)です。

患者さんを見たとき、それがマガリ(必要なもの)なのか、ユガミ(必要ないもの)を判断するのは、動きです。動きの観察やテストで判断します。

碓井流活法では「ユガミのない心と身体を目指します。理想な姿勢は、真っ直ぐに見えることではなく、時と場合に応じた姿勢です。時と場合によっては、それが真っ直ぐになるだけです。

続けてきた活法理論ですが、そろそろ大詰めです。
次回は、鍼に応用しやすい理論の話です。

(つづく…鍼灸で中心を整える方法


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yoki at 16:00│Comments(0)
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