横浜詩人会 神奈川新聞掲載の詩 「手紙の詩」「港の詩」

横浜詩人会会員による、神奈川新聞掲載の「港の詩」「手紙の詩」です。

手紙の詩35 / 「カプセルに詰めた夢」荒船健次

手紙の詩35

「カプセルに詰めた夢

荒船健二

 

卒業の頃将来の自分宛に手紙を書き
カプセルに詰め 校庭の隅に埋めた
数十年ぶりに元のクラス仲間と会い
あの頃を思いカプセルを掘り出し
わたし宛の少年の手紙を読む
「世界の人々が明るく暮らせる自由
戦争を起こさない仕事に就きたい」
少年の大志はかなわなかったが
縛られる羽ばたけない社会は否
カプセルに詰めた平和への夢は続く




ケビの葉がさわさわ さわさわ
生まれたての蔓がひょろり ひょろり
あおい風の吹く季節の訪れに
手紙を書きたくなるのです 空へ
夜間に開かれた「詩の教室」のK先生
初めていただいた詩集の白い表紙は
紙魚がいっぱい 先生のお名前は
耳に届くこともなくなりましたが
アケビの花々の アケビの花粉の詩行を
なぞっています






めて女の子から来た手紙は 中学2年の春
同じクラスの美少女だった
一度 握手をかわして
それから長い時間が過ぎ
再会したのは30年後の同窓会
ドイツに留学していたという才女に変身
こちらはしがない技術屋で
たまには逢おうと誘ってはみたが
いまさら男はいらないというメールが来て
甘い夢はレーベンブロイの泡と消えた



(神奈川新聞掲載2012.3.4

手紙の詩34 / 「アケビの掌」方喰あい子

手紙の詩34

アケビの掌

方喰あい子

 

アケビの葉がさわさわ さわさわ
生まれたての蔓がひょろり ひょろり
あおい風の吹く季節の訪れに
手紙を書きたくなるのです 空へ
夜間に開かれた「詩の教室」のK先生
初めていただいた詩集の白い表紙は
紙魚がいっぱい 先生のお名前は
耳に届くこともなくなりましたが
アケビの花々の アケビの花粉の詩行を
なぞっています






めて女の子から来た手紙は 中学2年の春
同じクラスの美少女だった
一度 握手をかわして
それから長い時間が過ぎ
再会したのは30年後の同窓会
ドイツに留学していたという才女に変身
こちらはしがない技術屋で
たまには逢おうと誘ってはみたが
いまさら男はいらないというメールが来て
甘い夢はレーベンブロイの泡と消えた



(神奈川新聞掲載2012.3.4

手紙の詩33/「憲亮(けんすけ)へ―あなたの六歳の誕生日に―」中村純

手紙の詩33

「憲亮(けんすけ)へ―あなたの六歳の誕生日に―

中村純

 

憲亮のけんは憲法のけん。憲法は、
この国がもう戦争をしない、こど
もが大切にされる、自分の考えて
いること、大切なこと、いやなこ
とを言ってもいい、という約束の
こと。男も女も、目の見えない友
達も、韓国語を話す人も英語を話
す人も、同じように大事にされる、
という約束です。憲亮へ、一緒に
生きていきましょう。ママより。



(神奈川新聞掲載

手紙の詩32/「礼状」新井知次

手紙の詩32

「礼状

新井知次

 

雪が消えて
コートを脱ぎ捨てると
土の中から貨物列車の走る音が
ひそやかに耳をくすぐった
すると地面がかすかに割れて
緑の新芽が群れをなして大気を覗いた
列車は春の便りを運んでいたのか
春よ! お前に礼状を届けよう
宛先はゆるやかな光のなか
紙飛行機が宙に浮かんだ



(神奈川新聞掲載

手紙の詩31 / 「オレゴンの香」梅津弘子

手紙の詩31

オレゴンの香

梅津弘子

 

今年も シュレッダーの前で迷う
オレゴンの ホストファミリーの香を包んだ
青と赤線のエアメール もう 整理しようか
私を待っていた 彼女は 六十歳一人ぐらし
ベンツで走り 大の野球好き ベジタリアン
辞書を片手に 身ぶり手ぶりで想いを伝え
辛抱強く 温かく 三十日間のお付き合い
帰国後 年に数回 エアメールが届いた
犬のジョンが死んだ 庭のバラが咲いた と
数年前から もう オレゴンの香は届かない



(神奈川新聞掲載2012.3.11

手紙の詩30 / 「はつ恋」村山精二

手紙の詩30

はつ恋

村山精二

 

初めて女の子から来た手紙は 中学2年の春
同じクラスの美少女だった
一度 握手をかわして
それから長い時間が過ぎ
再会したのは30年後の同窓会
ドイツに留学していたという才女に変身
こちらはしがない技術屋で
たまには逢おうと誘ってはみたが
いまさら男はいらないというメールが来て
甘い夢はレーベンブロイの泡と消えた



(神奈川新聞掲載2012.3.4

手紙の詩29 / 「名前」森口祥子

手紙の詩29

名前

森口祥子

 

戦地の父に手紙を書くように言われて
文字に興味を持ち始めていた子どもは喜んだ
その頃の私は田舎町を行軍する兵隊の隊列を
「ヘイタイサーン」と追いかけて遊んでいた
でも「アタシノオトウチャン」を
郵便屋さんはどうやって探すのだろう
それでも父に手紙は届き「ナンデモイイカラ
ドンドンカイテオクッテクダサイ」と
返事が来た
父に名前があることを初めて知った日の



(神奈川新聞掲載2012.3.4

手紙の詩28 / 「返信」藤森重紀

手紙の詩28

返信

藤森重紀

 

こがねいろの ひかりの道を
妻とともに旅をつづける
とおい日のけものたち
偏西風に乗せた花まつりの案内状を
ことしもまた 読んではいまい
春にうまれた家族ゆえ
花の名で慈しんだ月日のために
好物のマタタビや 玩具など
よりふんだんに供える約束まで
周到に一行 書き添えたはずなのに



(神奈川新聞掲載2012.2.26

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