横浜詩人会 神奈川新聞掲載の詩 「手紙の詩」「港の詩」

横浜詩人会会員による、神奈川新聞掲載の「港の詩」「手紙の詩」です。

2009年11月

港の詩25 / 「つるみがわ」 藤森重紀

港の詩25
つるみがわ
藤森重紀

 

鶴を見たと古人が名づけた川に
思い出にかじかむ小舟を流しつづけた
かなしみが港の篩にかけられて
ほほえみにかわる浜のさざ波
やがて
ミナトからミナモトへ
命のみなもとは回帰でもあると
みず穂のさやぐ小山田へ向けて
慈しんだ生きものたちを抱きしめ
永い道程を何ごともなかったように
源流の秋にあなたは還ってくる

 

(神奈川新聞掲載2009.11.27)

港の詩24 / 「夕暮れの清洲橋」 渡辺みえこ

港の詩24
夕暮れの清洲橋
渡辺みえこ

 

昭和二年 その男は 杉の香りをさせ 静かに結んだ唇の奥に真っ白い歯を隠し 山間(やまあい)からやってきた 深川という水の都市 その奥深く 運河沿いの船着場に  最初に夕暮れの影が降りるころ 川面の反射を受けた若い女の横顔に花のようなものを見た 深い悲しみのようなものに触れ 女の子が生まれた ふたりが夕陽の中に消えると 娘は水門の水の流れ落ちる音のするほうへ 奥へ奥へ 夕暮れの木の香を遡っていった

 

(神奈川新聞掲載2009.11.22

港の詩23 / 「海に向く椅子」 小林妙子

港の詩23
海に向く椅子
小林妙子

 

風があった
どこにもぶつからずに
はるか遠くから
真っ直ぐきた風だ
舞い上がり
羽ばたくカモメ
白波のうねりに乗って
はしけ船が横切ってゆく

ここに座ると それが

一つ一つよく見える

 

(神奈川新聞掲載2009.11.15

港の詩22 / 「母胎(はは)の匂い」 高橋次夫

港の詩22
母胎(はは)の匂い
高橋次夫

 

白くさざめく ひかりのさ中を
小さな舟は 揺れながら進んでいます
そこ(港)を後にしての今このひかりなのか
いえいえ このひかりの波から
そこ(港)にこの舟は戻ってゆくのか
舷(ふなばた)を叩いている 波に聞くばかりなのですが
霧笛が 母胎(はは)の匂いのように
小さな舟のわたしを 打ってくるから
そこ(港)はもう間近なのでしょう
さざめく白いひかりの海に 包まれながら

 

(神奈川新聞掲載2009.11.8

港の詩21 / 「パーカーの水葬」 石原武

港の詩21
パーカーの水葬
石原武

 

パーカー万年筆に寿命がきて
不意のインク漏れに悩むようになった
サンドバーグ軍曹が横須賀軍港を離れる日
木刀と交換した記念の逸品
戦争でも無事でなと 手を振ると
彼は木刀を正眼に構え剣客の振りをした
「パーカーの水葬」を思いついて
土砂降りの軍港に出かけた
おおーいサンドバーグよ 生きているか!
老いぼれのパーカーを荒ぶ海に放った

 

(神奈川新聞掲載2009.11.1

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