横浜詩人会 神奈川新聞掲載の詩 「手紙の詩」「港の詩」

横浜詩人会会員による、神奈川新聞掲載の「港の詩」「手紙の詩」です。

2010年05月

港の詩49 / 「窓」 小沢千恵

港の詩49

小沢千恵

 

港町はどの家も
海に向かって窓をひらいている
男衆は船に乗り
大漁旗を翻して母ちゃんの元に戻るまで
観光船の銅鑼が鳴り
白いカモメと旅立つ若者が
潮騒色に消えていく水平線
昨日の海とは違う波が
くりかえし打ち寄せる浜辺で
家の窓はいつも海に向かって開いている

 

(神奈川新聞掲載2010.5.30

 

 

港の詩48 / 「若枝」 瑞生千枝

港の詩48
若枝
瑞生千枝

教室から見渡す港の海は 今日もそこに在る
切支丹禁制の続く明治二年八月二十七日
横浜村の港に独りの女性宣教師が降り立った
光湛えた瞳のキダー師は女子教育に献身し
やがて横浜に日本最初の女学校の礎を築いた
蒔かれた種 生徒は心弾ませ世界を知った
英語や聖書や讃美歌に命の鼓動が響きあい
啓かれた若い魂に染み透る「真の自由」
その幹に繋がる若枝は芽吹き続けて百四十年
山手の丘の学校は海と共に 今もここに在る

 

(神奈川新聞掲載2010.5.23

 

 

港の詩47 / 「老釣り人」 いわたとしこ

港の詩47
老釣り人
いわたとしこ

夕凪の海に老人はひとり釣り糸を垂れる
「釣れますか?」
「釣れん 釣れんでもいい」
一瞬かれの目に光ったのは涙だろうか
影のように連れ添った妻が海へ還ってから
老人はひねもす港で過去を釣る
「愛しているよ」
言いそびれた言葉を波が攫い
釣り糸の先に結んだ妻への伝言
宛て名のない海に沈めながら


(神奈川新聞掲載2010.5.16

 

 

港の詩45 / 「カモメが法螺を」 荒船健次

港の詩45

カモメが法螺を
荒船健次

 

波静かな昼下がり
港はまるで海の牧場だ
青い波に群れる船が獏のように
地球の夢を丸かじり
カモメが肩にちょこんと止まる
「美空ひばりさんはどこですか」
「港町十三番地の魚屋へ行ってごらん
 捻り鉢巻の娘がお祭りマンボ踊ってるよ」
話を聞きつけた帆船日本丸が
「カモメがまた法螺を吹いている」


(神奈川新聞掲載2010.5.2

 

 

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