横浜詩人会 神奈川新聞掲載の詩 「手紙の詩」「港の詩」

横浜詩人会会員による、神奈川新聞掲載の「港の詩」「手紙の詩」です。

2010年11月

港の詩74 / 「未来」川又 侑子

港の詩74
未来
川又 侑子

 

過去未来を秘めている港は夢がある

世界にどんと生きている


横浜港の大桟橋には国際豪華客船

出船入船この国の地へ一歩踏み立つ人

港に働く人楽しいみんな旅する人

笑顔の出会いで誰かが驚いて瞬きする


少年が二人

遠く 外海を見つめていた

(神奈川新聞掲載2010.11.28

港の詩73 / 「羨望」宗 美津子

港の詩73
羨望
宗 美津子

 

丘の上のカフェから海へ眼をやる

近付き難く遠く光る水面は静か

生きては果てる海の旬間

動の世界は想像もつかない

自分は異邦人か・・海から見れば

うねっている波さえ意味深く

いま還ってゆく誰かの想いの様にも思えて

ふと海から呼ばれているような懐かしさ

私の中にも海が住んでいるんだなとも思う

エスプレッソの苦さと共に想いを飲み込む

(神奈川新聞掲載2010.11.21

港の詩72 / 「夜長の願い」若林 克典

港の詩72
夜長の願い
若林 克典

 

そんな夜

眠りに落ちていかない夜に

遺棄できない痩せた我が身は

寝返りを繰り返す

眠れぬ悩みが そのままに時を啄む

委ねる手立てもなく目を瞑るが

過ぎた日々 これから起きるだろうことが

遠慮なく辛い煩悶し それが跨いで行く

願いは擦り傷の痒い瘡蓋が剥がれた後の

快さを感じながら眠りに落ちたいのです
 

(神奈川新聞掲載2010.11.14

港の詩71 / 「母の港」加瀬 昭

港の詩71
母の港
加瀬 昭

 

港を出てから長い年月を経ている
時化にはなんども遭遇している
難破することなく
永らえているのは憔悴でしかない

太陽は沈もうとしている
灯台のあかりが明滅をはじめる
長い船旅で かなり傷んでいる
終焉はいつであろう
ことなく母の港に辿りつけようか

 

(神奈川新聞掲載2010.11.7

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