横浜詩人会 神奈川新聞掲載の詩 「手紙の詩」「港の詩」

横浜詩人会会員による、神奈川新聞掲載の「港の詩」「手紙の詩」です。

2012年01月

手紙の詩21 / 「さようなら、ね」弓田弓子

手紙の詩21

さようなら、ね

弓田弓子

 

ポストの前で迷う、おしまいのおしまいを、はじまり、は、なんかいも、
ポストに通ったのに。わざわざ。ポスト,
まで、なんかいも、通ったのに、電話も、
携帯も、ひんぱん、だったのに、
手が、冷たくなって、くちびる、が、
うごかなくなって、もう、
ポストに、最後のあいさつを、
ぽつり、と、おとすしかない、耳朶、に、
声のこすこともかんがえたけれども、





(神奈川新聞掲載2012.1.29

手紙の詩22/ 「おてがみ」阿部はるみ

手紙の詩22

おてがみ

阿部はるみ

 

いとしいひとからの手紙を
なんどもすっかり読み返して
あなたはすっかり諳んじていました
でもしだいに痴呆が進んで
いまは読むことも思い出すこともできない
ある日あなたは 手紙を
小さく小さくちぎって食べてしまいました
しろやぎさんからの おてがみを よまずに
たべてしまった くろやぎさんのように
---すばらしい思いつき
   ※まど・みちお「やぎさんゆうびん」から 




(神奈川新聞掲載2012.1.22

手紙の詩19 / 「てのかみ」光冨郁埜

手紙の詩19

メソメソと泣く日

光冨郁埜

 

うすい翳りのかみに
てのひらをそえる
ゆびのかたちを
おいていくと
かみにうもれるつめが
あっという間に
はだにそう
              筆を落とすと
            翳りが光となって
 わたしたちの生きている輪郭をてらします




(神奈川新聞掲載2012.1.15

手紙の詩18 / 「メソメソと泣く日」富永たか子

手紙の詩18

メソメソと泣く日

富永たか子

 

海辺の町を春一番が通り過ぎる
遠く 常念岳はまだ冬の眠りのなかだろう

あの山男をはてしない眠りに誘った山
残していく 残されていく山の便りは
 太った月が浮いている谷川の唄
 松虫草の乱舞が夜通し続いて朝がくる唄
恋水の乾く合間に ふとふと微笑む

薄く冷たい楕円の月が心細い




(神奈川新聞掲載2012.1.8

手紙の詩17 / 「交差点」岡部淳太郎

手紙の詩17

交差点

岡部淳太郎

 

道端に落ちている枯葉は、その中に言葉を眠らせている。私は交差点で通り過ぎる人や車を眺めていて、自らは動かずに立ち止まっていた。風が足下の枯葉を動かすと、私の中にあったはずの遂げられなかった思いや未完の計画が騒ぎ出し、私は誰かからの手紙を読むように枯葉を拾って見つめた。すると季節は人に気づかれない速度でゆっくりと変化を始め、それを認めて私はやっと交差点の中へ、人との交通の中へと足を踏み出しはじめた。




(神奈川新聞掲載2012.1.1

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