横浜詩人会 神奈川新聞掲載の詩 「手紙の詩」「港の詩」

横浜詩人会会員による、神奈川新聞掲載の「港の詩」「手紙の詩」です。

2012年02月

手紙の詩28 / 「返信」藤森重紀

手紙の詩28

返信

藤森重紀

 

こがねいろの ひかりの道を
妻とともに旅をつづける
とおい日のけものたち
偏西風に乗せた花まつりの案内状を
ことしもまた 読んではいまい
春にうまれた家族ゆえ
花の名で慈しんだ月日のために
好物のマタタビや 玩具など
よりふんだんに供える約束まで
周到に一行 書き添えたはずなのに



(神奈川新聞掲載2012.2.26

手紙の詩26 / 「友への返信 中上哲夫さんへ」

手紙の詩26

友への返信 中上哲夫さんへ

川端進

 

もしも生まれ変わるとしたら
家の中を流れる小川のそばがいいな
鰻はいないけど八ツ目鰻がぎょうさんいてね
その八ツ目鰻の蒲焼で我慢して
珍味珍味と舌づつみをうち
友よ 一杯やりたいな
なにしろ母は違えど父親は
はまちゃんなんだぜ
どう食べに来る?




(神奈川新聞掲載2012.2.19

手紙の詩25 / 「留守にしてます」進藤友佳

手紙の詩25

「留守にしてます」

進藤友佳

 

また留守電に切り替わった
電話に出てくれないつもり
メールは配信不能が返って来た
あなたの中でアドレスは消されているわけ
だから古びたインクで手紙を書いた
ポストの上に遠く雪融けの山々が見える
ひと月あとにそっと来た返信はがき
「留守にしてます」と一行
悲しい余白に困ったような顔文字が浮ぶ
もう散りかけた花びらを見ているみたいに




(神奈川新聞掲載2012.2.12

手紙の24 / 「返信」伊藤悠子

手紙の詩24

返信

伊藤悠子

 

問いを抱えながら
カーテンを開けると
枝のあいだに
星がひとつまたたいて目が合った
これが問いへの返信と星は言う
今みつめているひとは君だけでないとしても
とおく問うたのは
君なのだから
まっすぐ受け取ればよい
胸底ふかく受けよ





(神奈川新聞掲載2012.2.12

手紙の詩23 / 「さようなら、ね」鈴木正枝

手紙の詩23

さようなら、ね

弓田弓子

 

目が記憶していることを切り取って並べる
あのひとの額にかかる多すぎた髪
はにかんだ口元 少し前屈みの高い背
耳の記憶もていねいに重ねる
意外なほど低く深くためらいがちだった声
それらをきちんと折り畳んで投函する
受取人不明で戻ってくるはずだ その時
びりびりと指先で封を切り裂きながら
泣けるだろうか 泣きたい
手の中の確かめられた現実 その重さに





(神奈川新聞掲載2012.2.5

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