横浜詩人会 神奈川新聞掲載の詩 「手紙の詩」「港の詩」

横浜詩人会会員による、神奈川新聞掲載の「港の詩」「手紙の詩」です。

2012年04月

手紙の詩38 / 「重複癌 決別のしらせ」相良蒼生夫

手紙の詩38

「重複癌 決別のしらせ

相良蒼生夫

 

癌は消化器を循環するさまで舌 大腸 胃
食道とつづき 肝臓に転移結腸に再発した
朋友が痛苦の病歴を隠し努めて明るい振舞は
私への気遣い見舞いに返す微笑が胸に切なく
まだ これからだと 握手した掌の弱く脆く
喫茶室に誘われ俺の分まで生きろとは 辛い
無言でいて 頷き合い遠い時間を思う会釈で
身の処しようもない怠さ末期癌の激痛に耐え
パソコン一千字程の手紙がきた また飲もう
とも 旬日の後の訃報が無念遣る方無し




(神奈川新聞掲載2012.4.29

手紙の詩37 / 「手紙」小沢千恵

手紙の詩37

「手紙

小沢千恵

 

故郷を失っても
臍の緒で結ばれている母の古い手紙
「あなたは ここで生まれたのよ」
竜という字が三つも出ている住所
私の記憶に無い風景が
目に浮かぶように懐かしく思い出されて
この歳まで元気に生きてきた
そして未来へ継ぐあなたに手紙を託したい
戦いの無い平和な日々であって欲しいと
地球という故郷が汚染されませんように


(神奈川新聞掲載2012.4.22

手紙の詩36 / 「八月の白」菅野眞砂

手紙の詩36

「八月の白

菅野眞砂

 

乾いた風が流れてゆきます
松の樹がいっぱいの実を揺らしています
遠い往にし代の石柱や土台石が
 波に濯われています
純白の夾竹桃の花が咲き盛っています
夾竹桃の花は私を八月のあの日
 敗戦のあの日に連れてゆきます
陽の下で白い静寂にひたっています
日本の八月は平和ですか
          ギリシャの海辺から

(神奈川新聞掲載2012.4.15

手紙の詩35 / 「カプセルに詰めた夢」荒船健次

手紙の詩35

「カプセルに詰めた夢

荒船健二

 

卒業の頃将来の自分宛に手紙を書き
カプセルに詰め 校庭の隅に埋めた
数十年ぶりに元のクラス仲間と会い
あの頃を思いカプセルを掘り出し
わたし宛の少年の手紙を読む
「世界の人々が明るく暮らせる自由
戦争を起こさない仕事に就きたい」
少年の大志はかなわなかったが
縛られる羽ばたけない社会は否
カプセルに詰めた平和への夢は続く




(神奈川新聞掲載2012.4.8

手紙の詩34 / 「アケビの掌」方喰あい子

手紙の詩34

アケビの掌

方喰あい子

 

アケビの葉がさわさわ さわさわ
生まれたての蔓がひょろり ひょろり
あおい風の吹く季節の訪れに
手紙を書きたくなるのです 空へ
夜間に開かれた「詩の教室」のK先生
初めていただいた詩集の白い表紙は
紙魚がいっぱい 先生のお名前は
耳に届くこともなくなりましたが
アケビの花々の アケビの花粉の詩行を
なぞっています






めて女の子から来た手紙は 中学2年の春
同じクラスの美少女だった
一度 握手をかわして
それから長い時間が過ぎ
再会したのは30年後の同窓会
ドイツに留学していたという才女に変身
こちらはしがない技術屋で
たまには逢おうと誘ってはみたが
いまさら男はいらないというメールが来て
甘い夢はレーベンブロイの泡と消えた



(神奈川新聞掲載2012.3.4

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