横浜詩人会 神奈川新聞掲載の詩 「手紙の詩」「港の詩」

横浜詩人会会員による、神奈川新聞掲載の「港の詩」「手紙の詩」です。

2015年02月

手紙の詩61 / 「メール・手紙・文」絹川早苗

手紙の詩61

「メール・手紙・文
絹川早苗

 
 

メールより手紙の方が好きだけれど
これも 郵便制度が出来てからの
新しい言葉 古くは文と言われていて
森鴎外の短編『文づかひ』も
郵便配達では味わいや香りが失われ
君の悪い甲虫の幼虫でも「落とし文」
と呼ばれると 親しみがわく
そんな典雅な文、恋文を一度ぐらい
誰かからもらってみたいもの…
わたしの誕生月 文月にでもー




(神奈川新聞掲載2015.2.22

手紙の詩60 / 「一通の手紙」木島章

手紙の詩60

「一通の手紙
木島章

 
 

不意にやってくる一通の手紙が
若者たちに殺し殺されることを強いていた
たった七〇年しかたっていないのに
そんな時代を美しいと懐かしむ人がいる
手紙の向こうで
若者の美しい四肢はみじめに切り裂かれ
愛し愛された者たちの運命といっしょに
累々と横たわっていることを
だから手紙が真っ赤に染まっていることを
差出人は知らない




(神奈川新聞掲載2015.2.15

手紙の詩59 / 「手紙」今泉協子

手紙の詩59

「手紙
今泉協子

 
 

カリブの人を知ったのは昨年の講演を聞いた
時だ。十九世紀にアフリカ人は巾をきかせて
いたイギリス人に奴隷にされたという。虐げ
られた人々は迸る思いを秀れた詩に託し、末
裔の人々が東京にやってきた。彼等の言葉は
手紙のように私に伝わる。つぶやくようにイ
ギリス人は語りかける。「役立たずを連れて
おいで。銃で殺してあげる。」子供達は男を
吊した木の下で石けりをしている。投げださ
れた人の心が今も世界に漂う。



(神奈川新聞掲載2015.2.8

手紙の詩58 / 「便り」西村富枝

手紙の詩58

「便り
西村富枝

 
 

今日、義和さんがそちらへいきました
上海談義にでも花を咲かせて下さい
晴れた空に向き合って
みごとな紅葉でしたが
今は路面に静かに積もっています
敦煌の郊外の楓の枯葉も
砂に埋もれた頃でしょうか
いずれそちらで出会うものでしょうから
悲しみはしませんが
思い出を風に載せて送りつづけます





(神奈川新聞掲載2015.2.1

プロフィール

yokohamasijinkai

タグクラウド
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ