手紙の詩75
「手紙」
堀口精一郎
台風のまえぶれ 雨降りしきる玄関の土間
泥色にくすんだ馴染みの蝦嚢にぱったり
二年ぶりだな かすかに枯れた匂いを放つ
親父の死んだ日もこんなさびれた季節だった
手づかみでお骨をつかんでいると 何故か
寡黙だった親父の手紙の一節が浮かぶ
「日本刀が手に入ったよ 隊へ持ってゆくよ
特攻に志願したのか 犬死だけはするなよ」
しぶい愛借の言葉 いい親父だったな
冥土へ日本酒一本ぶらさげて会いにゆきたい
泥色にくすんだ馴染みの蝦嚢にぱったり
二年ぶりだな かすかに枯れた匂いを放つ
親父の死んだ日もこんなさびれた季節だった
手づかみでお骨をつかんでいると 何故か
寡黙だった親父の手紙の一節が浮かぶ
「日本刀が手に入ったよ 隊へ持ってゆくよ
特攻に志願したのか 犬死だけはするなよ」
しぶい愛借の言葉 いい親父だったな
冥土へ日本酒一本ぶらさげて会いにゆきたい
(神奈川新聞掲載2015.5.31)