手紙の詩74

「返信
大鹿理恵

 
 

穴あきジーンズで通りを闊歩していた頃
星の数ほど 手紙を書いた
宛名のある物も ない物もあり
返信ありも 以後音信不通もあった
文字にならない返事があると知ったのは
いつのことだったろう
今朝 投函した便りが
オフィス街の夕陽の照り返しに変わる
夕べの 深い祈りが
窓辺に差し込む朝陽へと変わる




(神奈川新聞掲載2015.5.24