手紙の詩78

「雁の使い
野島茂

 
 

あなたがこの世を立ち去って
四年目の水無月を迎えた
今年もあなたの好んだ牡丹が咲いて散った
映画『あなたへ』の主人公は
妻の骨を郷里長崎の海に散骨したが
わたしにはそれはできないので
父母の眠る寺の安らかな奥津城(おくつき)に納めた
可憐なあじさい色の雨が今日は降っている
過ぎ去った歳月はすべて美しく
妻の墓は静かに濡れているだろう




(神奈川新聞掲載2015.6.21