横浜詩人会 神奈川新聞掲載の詩 「手紙の詩」「港の詩」

横浜詩人会会員による、神奈川新聞掲載の「港の詩」「手紙の詩」です。

や行の詩人

手紙の詩43 / 「友愛のともしび」柳田光紀

手紙の詩43

「友愛のともしび

柳田光紀

 
 

古い手紙の束を開いて見ると
びっしり結った過去が鮮やかに蘇ってくる
流れ去った歳月は容赦なく懐かしい思い出を
剥ぎ取って消えてゆく だが手紙の筆跡から
立ち昇る人柄に互いに結ばれている心と心の
堅い繋がりを噛み締めれば孤独の憂いは薄れ
至純の安堵感に満たされる
互いに老いゆく一途を辿る身の 健康を祈り
 合う心の奥深く 永遠に消えることのない
友愛の灯火がやさしく燈っている



(神奈川新聞掲載2012.6.3

手紙の詩21 / 「さようなら、ね」弓田弓子

手紙の詩21

さようなら、ね

弓田弓子

 

ポストの前で迷う、おしまいのおしまいを、はじまり、は、なんかいも、
ポストに通ったのに。わざわざ。ポスト,
まで、なんかいも、通ったのに、電話も、
携帯も、ひんぱん、だったのに、
手が、冷たくなって、くちびる、が、
うごかなくなって、もう、
ポストに、最後のあいさつを、
ぽつり、と、おとすしかない、耳朶、に、
声のこすこともかんがえたけれども、





(神奈川新聞掲載2012.1.29

港の詩93 / 「横浜を歩く」横倉れい

港の詩93
横浜を歩く
横倉 れい

 

 青空と日差しに包まれた日に散歩に出た。
目指すのはニューグランドホテルと、氷川丸
である。ホテルの案内の写真には春の山下公
園の花壇に咲き誇る薔薇の上に浮かぶ氷川丸
の船尾。秋の紅葉の欅に海側をかくされたホ
テル。写真を眺めていると私の現実の時間は
思いでの中へすべりこみ亡き夫とよく来たホ
テルの朝食の味が私を誘う。昼食を食べ終え、
ほめてね、これから海面にキラキラ輝く陽光
の知る氷川丸の歴史を散歩するのと呟く。


(神奈川新聞掲載2011.5.15

港の詩61 / 「港の見える丘の上で」 喜 春子

港の詩61
港の見える丘の上で
喜 春子

 

海辺の高い樹の天辺で
今 ここにいることを誇りに思う
既に この岸辺にいない人たちを
なつかしく やさしく 思いおこして
遠い遠い あこがれの人々の
言葉を 心にきざみながら
鳥のような雲が いよいよ美しくなり
悲しみと ありがたさが 明るくほほえみ
海辺の高い樹の天辺で
今 ここにいることを誇りに思う

 

 

(神奈川新聞掲載2010.8.29

港の詩59 / 「幻の港」 山崎森

港の詩59
幻の港
山崎森

 

旧制中学三年のとき
ジョン・メイスフィールドの「海恋し」の
詩にであった
世界の港町を漂泊う 船乗り稼業に
わけもなく 思い焦がれた
いまも 幻影にアタックされる
嵐の海を 帆船は
浮き沈みしながら 幻の港へ舵をきる
波がしらの 復元力
だが 甦る術はどこに 青春の狂気よ

 

(神奈川新聞掲載2010.8.15

港の詩38 / 「青い母」 山本聖子

港の詩38
青い母
山本 聖子

港は 抱いている
旅立てなかった真昼の夢を
海面から七メートルの水の宮
うす青い温塊を
波で酔わせないよう
汽笛で起さないよう
 北西からの寡黙をすこし
 南南東からの情をすこし混ぜ
月が満ちるのを待っている
わたしは そんな港から海へ出た


(神奈川新聞掲載2010.3.14

 

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