ゼファニヤ書3章は、これまで言われていたイスラエルを含む世界に対する神の裁きがいよいよ実現することと共に、その裁きが滅亡ではなく、新しいイスラエルの再出発であることをもってイスラエルに対する希望を語るものとなっています。

 歴史的には、預言者ゼファニヤが活動したであろうのは、ゼファニヤ書1章1節で言われているように南ユダ王国のヨシヤ王の時代で紀元前640年から申命記改革が行われるおよそ紀元前620年までの20年間のどこか。

 すなわち、南ユダ王国においては、まだ亡国の兆しはなく、南ユダ王国が新バビロニア帝国の侵出によって最終的にエルサレムが破壊される紀元前598年ごろまで、20年以上の時間的な隔たりがあります。つまり、まだ南ユダ王国は、ある意味、経済的にはそれほど困窮するほどの状況ではなく、経済活動も活発に行われており、軍備の拡充と国力を蓄えるといったことが外面的には行われていたであろうことがうかがえるのです。

 ところが、そうした経済的な発展は、当然、社会における貧富の差を拡大するものとなり、富む者はいよいよ富み、貧しい者はさらに貧しくなるといった状況が、社会において平然と行われるようになっていたのです。

 そうした、貧富の差の拡大が、いわゆる商売人だけでなく、当時の神殿体制をも巻き込む形で進展していました。

 本来、旧約聖書の律法においてそうした孤児・寡婦といった人たちは、社会全体でそうした人たちの生活を支えるという、今日的にいえば社会福祉の機能がユダヤ教の律法にあり、また当然そうしたことを当時の人々は守っているはずでした。

 ところが、実際はそうではなく、1節において「(神に対する)反逆と汚れに満ちた暴虐の都」と言われるほどに、当時のエルサレムは貧富の差が激しいだけではなく、社会において地位と権力と富を求める人々による、まさに暴虐行為が日常的に行われていたのです。

 もちろん、それは神の視点から見た場合にそうであって、恐らく、当時の人たちの目にはそうした資本主義社会における弱肉強食の状態というのは、むしろ「活況」というふうに映っていたのです。


 人々は神の祝福よりも、富がもたらす繁栄を求め、本来的には公平・中立であるはずの役人や裁判官が、公然と賄賂を求め、判決を金で決めるような事が平然と行われていたのです。

 もちろん、宗教的な指導者である預言者や祭司たちも、そうした状況に憂えるどころか、自分たちもそうした流れに乗らんとする勢いで、好き勝手な言葉を語り、神に逆らう行為を平然と行っていたわけです。

 そして、まさにそうした罪を平然と犯す、恥を知らない人々に対して神の裁きが下されることになるのです。


 さて、では、神は一体どこにおられるのか?

 ダビデ、ソロモン王以後の南ユダ王国において、「神はどこにいるのか?」と問われれば、その答えは「エルサレム神殿」でした。

 恐らく、当時、そういう意味で「神を礼拝できる人」というのは、まさにそうした特権階級的な役人や裁判官、預言者や祭司たちであったかと思います。つまり、当時のエルサレム神殿は、まさにそうした「信仰的に正しい人」が神を礼拝していたのではなく、むしろ、「意図的に罪を犯している人物(金持ちや特権階級の人々)たち」こそが、神を礼拝していたのです。そして、それ以外の貧しい人や病気の人たちは、神を礼拝することは難しかったと思います。

 本来、神の御前に出る人たちこそが、神の御前に正しい人たちであるはずなのに、当時のエルサレムでは、まさに逆のことが起こっていたのです。だからこそ、5節にあるように「不正を行う者は恥を知らない。」とあるのです。

 そして、2章において近隣諸国に対して神の裁きが実現したように、まさにエルサレムに対して神の裁きがくだされます。当然、それは新バビロニア帝国によるエルサレム侵攻というかたちで実現しますので、当然、神のみ前に罪深い人々だけでなく、神のみ前に正しい人たちさえもそうした神の裁きによって命を落とすのです。

 しかし、神さまはそうしたところにあって、イスラエルの民を全滅させることはしません。神さまは、「残りの者」に対して、裁きを耐えた「残りの者」たちに対して、大きな祝福をもって顧みることを約束されるのです。

 以下、本文をみていきます。



1)災いだ、反逆と汚れに満ちた暴虐の都は。
2)この都は神の声を聞かず/戒めを受け入れなかった。主に信頼せず、神に近づこうとしなかった。
3)この都の中で、役人たちはほえたける獅子/裁判官たちは夕暮れの狼である。朝になる前に、食らい尽くして何も残さない。
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 災いだ、神に対する反逆と汚れに満ちた暴虐の都は。
 この都は神の声を聞かず、その戒めを受け入れなかった。
 主に信頼せず、神に近づこうとしなかった。
 この都の中で、役人たちはほえたける獅子と同じ。裁判官たちは夕暮れの狼である。
 朝になる前に、彼らは獲物を食らい尽くして何も残さない。



4)預言者たちは、気まぐれで欺く者/祭司たちは、聖なるものを汚し、律法を破る。
5)主は、都の中にいまして正しく/決して不正を行われない。朝ごとに裁きを与え、それを光とし/誤りをなさることはない。不正を行う者は恥を知らない。
6)わたしは諸国の民を滅ぼした。彼らの城壁の塔は破壊された。わたしは彼らの街路を荒れるにまかせた。もはや、通り過ぎる者もない。彼らの町々は捨てられ/人影もなく、住む者もない。
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 預言者たちは、気まぐれで人を欺く者。祭司たちは、聖なるものを汚し、律法を破る。

 しかし、そのような暴虐の都の中に主はいまして、正しく、決して不正を行われない。
 主は朝ごとに裁きを与え、それを光として、誤りを犯すことはない。

 ところが、そのような主に対して、不正を行う者たちは自分が行っていることが神に対する反逆であることを知らない。

 いまや、わたしは諸国の民を滅ぼした。彼らの城壁の塔は破壊された。
 わたしは彼らの街路を荒れるにまかせた。もはや、そこを通り過ぎる者もない。
 彼らの町々は捨てられ、人影もなく、住む者もいない。



7)わたしは思った。「必ず、お前はわたしを畏れ/戒めを受け入れる。わたしがどんなに罰しても/その住む所が断たれることはない。」しかし、彼らはますます堕落を重ね/あらゆる悪事を行った。
8)それゆえ、お前たちはわたしが獲物に向かって/立ち上がる日を待つがよい、と主は言われる。なぜなら、わたしは諸国の民を集め/もろもろの王国を呼び寄せ/彼らの上に、憤りと/激しい怒りを注ぐことを定めたからだ。必ず、地上はくまなく/わたしの熱情の火に焼き尽くされる
9)その後、わたしは諸国の民に/清い唇を与える。彼らは皆、主の名を唱え/一つとなって主に仕える。
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 わたしは思った。
 「必ず、お前はわたしを畏れ、戒めを受け入れる。
 わたしがどんなに罰しても、その住む所が立たれることはない。」と。
 
 しかし、彼らはますます堕落を重ね、あらゆる悪事を行ったのだ。

 「それゆえ、お前たちはわたしが獲物に向かって立ち上がる日を待つがよい」と主は言われる。

 なぜなら、わたしは諸国の民を集め、もろもろの王国を呼び寄せ、不正を行う彼らの上に、わたしの憤りと激しい怒りを注ぐことを定めたからだ。

 必ず、地上はくまなく、わたしの熱情の火によって焼き尽くされる。

 しかし、それで終わるのではなく、その後、わたしは諸国の民に、清い唇を与える。
 彼らは皆、主の名を唱え、一つとなって主に仕えるようになるであろう。



10)クシュの川の向こうから/わたしを礼拝する者/かつてわたしが散らした民が/わたしのもとに献げ物を携えて来る。
11)その日には、お前はもはや/わたしに背いて行った、いかなる悪事のゆえにも/辱められることはない。そのとき、わたしはお前のうちから/勝ち誇る兵士を追い払う。お前は、再びわが聖なる山で/驕り高ぶることはない。
12)わたしはお前の中に/苦しめられ、卑しめられた民を残す。彼らは主の名を避け所とする。
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 遥か彼方のクシュの川の向こうから、わたしを礼拝する者が、かつてわたしが散らした民が、わたしのもとに献げ物を携えて来るであろう。

 その日には、お前はもはや、わたしに背いて行った、いかなる悪事のゆえにも、辱められることはない。
 そのとき、わたしはお前のうちから、勝ち誇る兵士を追い払う。
 お前は、再びわが聖なる山で驕り高ぶることはない。
 わたしはお前の中に、苦しめられ、卑しめられた民を残す。
 彼らは主の名を避け所とするであろう。


 
13)イスラエルの残りの者は/不正を行わず、偽りを語らない。その口に、欺く舌は見いだされない。彼らは養われて憩い/彼らを脅かす者はない。
14)娘シオンよ、喜び叫べ。イスラエルよ、歓呼の声をあげよ。娘エルサレムよ、心の底から喜び躍れ。
15)主はお前に対する裁きを退け/お前の敵を追い払われた。イスラエルの王なる主はお前の中におられる。お前はもはや、災いを恐れることはない。
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 そのようにイスラエルの残りの者は不正を行わず、偽りを語らない。
 その口に、欺く舌は見出されない。
 彼らはわたしによって養われて憩い、彼らを脅かす者はない。

 娘シオンよ、喜び叫べ。
 イスラエルよ、歓呼の声をあげよ。
 娘エルサレムよ、心の底から喜び踊れ。

 主はお前に対する裁きを退け、お前の敵を追い払われた。
 イスラエルの王なる主はお前の中におられる。
 お前はもはや、災いを恐れることはない。
 

 
16)その日、人々はエルサレムに向かって言う。「シオンよ、恐れるな/力なく手を垂れるな。
17)お前の主なる神はお前のただ中におられ/勇士であって勝利を与えられる。主はお前のゆえに喜び楽しみ/愛によってお前を新たにし/お前のゆえに喜びの歌をもって楽しまれる。」
18)わたしは/祭りを祝えず苦しめられていた者を集める。彼らはお前から遠く離れ/お前の重い恥となっていた。
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 その日、人々はエルサレムに向かって言う。
 「シオンよ、恐れるな。力なく手を垂れるな。
 お前の主なる神はお前のただ中におられ、勇士であって勝利を与えられる。
 主はお前のゆえに喜び楽しみ、愛によってお前を新たにし、お前のゆえに喜びの歌をもって楽しまれる。」と。

 「わたしは祭りを祝えず苦しめられていた者を集める。
 彼らはお前から遠く離れ、お前の重い恥となっていた。」と。


 
19)見よ、そのときわたしは/お前を苦しめていたすべての者を滅ぼす。わたしは足の萎えていた者を救い/追いやられていた者を集め/彼らが恥を受けていたすべての国で/彼らに誉れを与え、その名をあげさせる。
20)そのとき、わたしはお前たちを連れ戻す。そのとき、わたしはお前たちを集める。わたしが、お前たちの目の前で/お前たちの繁栄を回復するとき/わたしは、地上のすべての民の中で/お前たちに誉れを与え、名をあげさせると/主は言われる。
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 「見よ、そのとき、わたしはお前を苦しめていたすべての者を滅ぼす。
 わたしは足の萎えていた者を救い、追いやられていた者を集め、彼らが恥を受けていたすべての国で、彼らに誉れを与え、その名をあげさせる。

 そのとき、わたしはお前たちを連れ戻す。そのとき、わたしはお前たちを集める。
 わたしが、お前たちの目の前で、お前たちの繁栄を回復するとき、わたしは地上のすべての民の中で、お前たちに誉れを与え、名をあげさせる」と主は言われる。