坂本龍馬がいなくなった。

仁や勝らの懸命の捜索にも関わらず、行方知れずとなった龍馬。
これも自分が歴史を歪めた結果なのか。
消えた龍馬は現代にタイムスリップしてしまったのか。

橘邸を離れ、友を失い、孤独に沈む仁に、佐分利は野風の乳ガン手術について再度検討してみる事をもちかける。
何だか長らく感想を書かずにおりましたが…。

だって最終回の感想を書くと、最終回が来ちゃったみたいじゃないですか。

まあそう未練がましい事を言わずにそろそろ書きましょうか。

と、いうわけで最終回。
先生決死のヒロインアタックで、二人揃って崖から転落した龍馬さんと仁先生。

「ちょうどあの崖の上から、この川に落ちました。龍馬さんはここよりも下流に流されたのかと」

捜索にあたる兄上らに一生懸命説明する仁先生だが、指さす崖の高さはガチャピンでも落ちたら死ぬレベル。
「龍馬さんが見つからないんです!」と言われても「あなたが生きている事だけでも奇跡です、以上」で捜索を打ち切りたくなるな…。

そんな捜索隊のやる気が天に届いたのか、ついに龍馬は見つからず。
「海軍は龍馬無しで進めるしかない」と諦め顔の勝先生に、仁先生は思わず口を滑らせる。

「日本は、坂本龍馬なしで進むって事ですか」
「そうさ。だが先生。あいつがなくなりゃあ、あいつの代わりになる奴がおのずと出てきて、あいつがやる筈だった事をやるもんさ。世の中ってのはそういうもんだと、俺ァ思うんだ。…ま、もう少し探すさ」


原作の勝先生は仁先生が未来から来たと聞かされているが、ドラマの勝先生も何となく腹に一物ある様なない様な…。
龍馬の遺した草鞋を手に、雨の中、勝先生の背中を見送る仁先生。

「心配しないわけではなかったが…」

謎は全て解けた!
じっちゃん(俺のじっちゃんまだ生まれてないけど)の名にかけて!
視聴者の皆様、お待たせ致しました。
第一話から引っ張ってきたタイムスリップの謎、包帯男の正体が、東都大学付属病院脳外科医・南方仁先生の高学歴高技術高身長をかけた推理によっていよいよ明らかに!

『俺は半ば、確信しつつあった。
龍馬さんは、タイムスリップしてしまったのではないだろうか。
そして、あの患者として病院に運ばれてきて、物珍しい土産として 救急医療用のパッキンや、ホルマリンを持ち出そうとした…』



「…やりそうだぁ」



誰かこいつを黙らせろ。




龍馬さんどんだけ土産もののセンスないんですか!
貴公子・福山龍馬さんは、ちょっとしたお土産にはガールフレンドに簪買うくらいの小粋さですよ!

なのにどうしてうちの(内野?)龍馬さんは、

「おお、このやや子は珍しいのお、水に浮いちゅう。南方しぇんしぇいに持って帰るぜよ!」

なんですか!

「だけど、龍馬さんがあの患者として戻ったという事は、俺はもう、戻れないという事だろうか…」

もう、秘密をわかちあってくれた咲さんのところには戻れない。
形見の様な龍馬の草鞋を、慰みに軒先に吊してみたところで、返事ひとつしてくれるわけでもない。

咲さんの縁談と野風アニキの身請け話は恙なく進み…先生はペニシリン製造所で、ミキの写真(飛脚先生渾身の野外ロケVer.2)にブツブツと話しかけるばかり。

「これでいいんだ…」

なんという現実逃避。
なんという二次元嫁。
片時も手放さない彼女の笑顔。



江戸でもラブプラスかよ!




先生、そのDS、音声認識ついてませんよ!
そりゃあサブリンも心配になります。おかあちゃん、あんたが心配やねん。コンビニでもゲーセンでもいいから、少しは外に出たらどうや? な? お小遣いあげるから、な?

「乳の岩のことなら、お役にたてるかも知れまへん」

自分がまとめた乳ガンに関する研究資料を仁先生に手渡すサブリン。

「乳の岩かも知れへん患者さんがいらっしゃるんですよね。私にも、その方を調べさせて貰えまへんやろか」
「…いや、先方からは、これ以上調べて欲しいとは言われてませんし」
「らしゅうおまへんな。切るな言うても、切るのが南方先生でっしゃろ」


ひどい言い草ですが、大体合ってます。
メスを握っている時だけは生き生きはつらつの仁先生。
最近の、紙製ラブプラス中毒な先生を見るに見かねて、サブリンなりに、彼に生気を取り戻して貰いたかったに違いありません。

「もっぺん、調べてみまへんか! ほんまに岩やったらあれですけど、岩やないって、わかることもあるわけですし」

野風が癌でないとわかれば、少しは心が楽になるだろうか…。
一縷の望みをかけて、佐分利とともに、野風を改めて触診してみるが、結果はやはり限りなく疑わしい。

悪性の腫瘍だという佐分利の見立てに対して、それでも野風に外科手術を受けさせたくない、身請けを破談にしたくない仁先生は、良性ならば切る必要もないと主張する。

「南方先生がそうおっしゃるのなら…切らぬ方が良いのでありんしょう」

生きられるのなら、仁先生の診断に間違いはなかった。
死んでも、仁先生の診断で死ぬのなら悔いはない…。
全てを受け入れる覚悟の野風は儚く微笑んでみせるばかり。

納得出来ないのは佐分利だ。

「私の見立ては信用して貰えへんって事ですよね…」

サブリンがひた隠しに隠してきた過去。
実は佐分利は華岡流で麻酔術を学び、あの若さにして免許皆伝の実力者であったという。
しかし精力的に研究していた乳ガンの手術に失敗し、彼を妬む者たちからここぞとばかりに「人斬り医者」と罵られ、逃げるように江戸にやって来た。

仁先生に乳ガンの手術をさせてやりたい。
その為に身の上を明かし、自らにとっても大きなトラウマだった乳ガンの治療に挑もうと決意したのに、先生は全く乗り気でないばかりか、自分の診断をひとつも信用してくれない。

落胆し、憤り、酒浸りになるサブリン。
ごめんなさい、サブリン。
先生もう色々ありすぎて、完全にパンチドランカー状態なんです。

ここらへんまで来ると、大江戸廃人ライフが心地よくなってきてしまって、ドMスパイラルに気持ち良ーくはまり込んでいる仁先生。
洪庵先生の墓前でも、口をついて出るのは自嘲と卑下ばかり。

若い佐分利が、自分の過去の手術の失敗を乗り越えて病と向き合おうとしているのに、自分ときたら…。

「咲さんに軽蔑され、龍馬さんには、ミキが生まれなくなって一体誰が悲しむのかと言われ。佐分利先生の気持ちを踏みにじり、野風さんの気持ちに甘え…最低です…私は…」

セルフ言葉責めとは高度なテクニック。
ドMもここまで来ると重傷です。

「だけど、やっぱり、出来ませんよ。出来ないです、私には…」

どうも濱口様がはりきりすぎたらしく、やたらとでかい洪庵先生の墓石は何も答えてはくれません。
頼るものもなく、打ち明けられる人もなく、先生は独りぼっち。

なんだか後ろで枯れ葉を踏む音が聞こえた様な気がするけれど…。

どうする事も出来ないというのに、引き寄せられる様に吉原へ行ってしまい、今日が野風の終いの日だと噂話を耳にした仁先生。
いよいよ最後通牒を突きつけられ、華やかな鈴屋の店先で立ちつくす。

身請けされてしまえば、手術する事など叶わなくなる。
あの野風がこのまま先行き短く、乳ガンで死んでしまったらと思うと胸がしめつけられるよう。
胸がしめつけ…胸が…



誰だー! 後ろから乳を揉むのはー?!



振り向けばそこには見慣れた幕末偉人。
この黒羽織に違枡桔梗紋は…

「龍馬さん…ですよね…?」
「足もついちょるでよ!」 


驚きに目を瞠る仁先生に呵々大笑してみせるのは、行方不明になっていた筈の坂本龍馬!

「本当に龍馬さん?! 嘘ついてないですよね!!」

実体か怪我はないかと龍馬の全身を確かめる先生。

「こそばいな! 儂ゃ犬やないぜよ」

と龍馬が笑う通り、その動きはまさにムツゴロウさんの「よーしよしよし」。

「今までどこ行ってたんですか!」

先生、自嘲と作り笑い以外で、11話はじめて笑いました。お帰りなさい、龍馬さん!

「漁師のところで、世話になっちょったがぜよ!」
「漁師って…あの、江戸の漁師ですか?」


川に流されて、漁師村で助けられ、そこは魚が美味しくて女の子が可愛かったので長逗留してスルメ持って帰ってキマシター…というこれまでのいきさつは、先生を訪ねて行ったペニシリン製造所で山田らにも言った通りであるが、さてどこまで本当やら。

「江戸の漁師」という仁先生のピントのずれた質問に、曖昧な苦笑を浮かべた龍馬は、それから表情を一変させると、先生の手を掴んでひと気のない方へと引っ張っていく。

「どこ行くんですか龍馬さん、なんなんですか一体」

訝しむ先生。すると人通りのなくなったところで、龍馬はいきなり土下座して叫んだ。

「野風を、助けておうせ!」

野風が乳ガンかも知れないと聞いた、ここはひとつ儂の為に手術をして欲しい。
それで身請けが流れたら、寄る辺のない野風をここぞとばかりに自分が口説き落とすつもりだ、さすがの野風もこれにはイチコロ…と、口八丁手八丁でまくしたてる龍馬。

「龍馬さん、お気持ちはわかりますが…」
「やっかましいがじゃ! 切れっちゅうたら切れ!!」


洪庵先生の墓前で先生の告白をこっそり聞いてしまってから、龍馬は龍馬なりに考えて来た。

未来の許嫁か、野風か。
一方を助けなければ一方は死ぬかも知れない。
許嫁の為に「野風を助ける事は出来ない」と言いながらも、仁先生はどんどん追い詰められていく。

もし「目の前で自分の子が死にかかっている時に、その子を助ければ別の子供が死ぬことになる、と言われたらどうするか」と勝先生に尋ねると、師匠は「そんな下手はうたねえ」と笑いながらも、

「いっそ、誰かに決めて貰うかな」

と答えてくれた。

「決めてもらう?」
「銭を投げて貰って決めてもらうとかな。どっちを取っても後悔が残るなら、運を天に任せるのもひとつの手さ」


野風を助ければ、許嫁は死ぬかも知れない。
でも野風を助けなければ、野風と南方仁の心の両方が死ぬ。

「えいかい」

噛んで含める様に言い聞かせる龍馬。

「切ってち言うがは、儂じゃ。先生はただ黙って、儂の頼みを聞けばえいがじゃ。手術の後の事は、何が起ころうともなんもかんも、ぜーんぶ儂のせいじゃ!」

先生に、「もし置き忘れていったなら絶対に死ぬほど後悔する荷物」を、心を鬼にして忘れさせまいと背負わせるのが咲さんなら、その荷物をひとつでも軽くしてやろうとするのが龍馬さん。

「儂のせいじゃ。…ほやき、野風を助けとうせ」

やっぱり二人のアシストがなくては、先生はどうにも立ちゆかない様ですねえ…。

龍馬が宥めすかして、咲さんが必死に背中を押して…
佐分利が一生懸命焚きつけて、辰五郎親分がそれとは知らずにハッパをかけて…
しまいには思い出の中のミキに喝を入れられ…

「通仙散の処方をお願いします!!」

息せき切って佐分利の元に駆けつける先生。
手術の為に必要な、エーテルより優れた通仙散を処方出来るのは佐分利しかいない。

「お願いします!」
「…はいっ!!」


切るなと言われても腹を切る!
人の頭に躊躇無くやっとこをぶちこむ!
お待たせしました、かっぽう着を着た切り裂きジャック、



スーパードクターJ、復☆活!!



野風の手術の日はあろう事か咲さんの結納の日。

「参りましょうか」
「…はい」


栄ママに促されて、しずしず結納の席に向かう咲さんの元に、聞こえる筈のない声が届く。

野風の肌にいよいよメスを入れなくてはならない…これで花魁としての彼女の人生は全て終わる…緊張の一瞬に、

「咲さん、メス」

何気なく口にしてから、何の反応もない事に顔をあげ…そしてそこに咲さんがいない事に改めて気付き、自分に驚く仁先生。

「あ…すみません。メス、お願いします」

もはや自分にとってもかけがえのない人となった野風の手術を、大好きな仁先生が一世一代の覚悟で挑んでいる。
自分にとって一番大切なものは、今、自分が一番行きたい場所は、ここではない。
結納の席を目の前にして、耐えかねて涙を零す咲さん。

「母上…申し訳ございませぬ…」

ガラッと襖を開け放った先さん、栄ママの止める間もあればこそ「あいすみませぬがこの結納の品をお受けする事は出来ませぬ!」とその場で結納を破談にしてしまう。

もちろん当時の武家娘にそんなワガママが、個人の自由が、許されるわけもない。相手のメンツは丸つぶれになる…だが、咲さんの気持ちが痛い程わかる兄上は、何とか彼女を助けてやりたい。

「あのお方ならどうなさりんしょうか…あの…奇策の得意な…」

相談をもちかけた時の、初音の言葉が脳裏をよぎる。
こんな時、坂本龍馬ならどうする。当家の面目を辛うじて保ち、先方に傷を付けないやり方とは…



「このうつけ者がああああ!!」




兄上、咲さんの首根っこを掴んで部屋から引きずり出す!
これまで、存在感が希薄だ、空気だと言われ続けたエア兄上。最終回にして真の空気とはなんたるかを学び、ついにキングオブエアとして開眼!




出ました! 園崎流奥義・空気投げ!!




とっさに咲さんの気が触れた事にして庭にほっぽり出した兄上。自害せよと迫りながら、

「…行け! あとは私がなんとかする!」
「兄上…!!」


お主の面など二度と見とうないわと、咲さんを放逐する。
どうですか坂本殿! こんな感じっすか!!

「恭どの、いくら儂でもそこまでようせんがじゃ! 何で打ち掛け姿の若い娘を畑に放り投げるがじゃー!!」

龍馬の感想はともかくとして、やり遂げた男の顔になって息をつく兄上。呆然としながらも、心配そうに咲さんの行方を見送る栄ママ。

そして綺麗な打ち掛けを翻して、足袋はだしで先生の許にひた走る咲さん!
野風の手術は順調だけど、先生は汗が目に入って辛そうです。
咲さん、早く早く!

と、そこに乗り込んできたのは、仁先生によって面目を潰された三隅俊斎が、嫌がらせに送り込んできた侍たち。
主家の殿様が野風と南方仁に恥をかかされたと言って手術室に乗り込もうとするのを、山田先生が必死に押しとどめるも、パンチ一発であえなくダウン。
弱い! 弱いっすよ山田先生!

「…続けましょう」

外の騒動は手術室の中にも当然届いているけれど、時間が長引けばそれだけ患者に負担がかかる。仁先生が出て行く余裕など少しもない。

「出血が多いです、止血しきれまへん!」
「鉗子! 針糸!」
「せ、先生、しかしこれでは…」


さすがにスーパードクターJの集中力は途切れないけれど、サブリンと福田はあわあわ。
押し入られたら手術どころではなく、衛生面でも大打撃となる。「おやめくださあああい」と山田の訴える声も弱々しくなる一方。

と、そこへ…


「おやめ下さいまし!!」


なんびとたりとも、消毒することなく手術室に入ることは許されません!!


陽炎の向こうに浮かび上がるシルエット…(イメージ)
千葉繁のナレーション…(イメージ)
血の十字架を背負った修羅の如きその姿こそ…(イメージ)




慶応の戦国武将・橘咲、ただいま見参!!



「女の出る幕ではないわ、どけ!!」
「どうしても入ると仰るのなら、ここで命を絶ちます!」


さすが咲さん、山田先生に出来ないことを平然とやってのけるッ。
そこに痺れる、憧れるゥ!!

「どちらの御家中か存じませぬが、この様な所行は討ち入りも同然! あなた方もご覚悟召されませ!!」

ついさっき勘当された事を棚にあげれば、旗本の令嬢である咲さんが慮外者の乱暴な振る舞いにより自害したとあれば、誰であろうとお咎めは免れない。

首に守り刀を突きつけて、命がけで突入を阻止しようとする咲さん。
その決意は手術室の中にまで届き…

「咲さん…」
「ど、どうします、先生。さ、先に…」
「…続けます!」


もうここまで来ると、花嫁は江戸の町を駆けて愛する人のもとへ…大江戸☆タイムスリップ☆ラブストーリー、というより、




漢と漢の魂の共鳴




という気がする。



「流派東都大学付属病院脳外科は 王者の風よ!」
「国民保険!」
「社会保険!」
「見よ!」
「東都は!」
「赤く燃えているゥゥゥゥゥ!!」




震える手、刃の切っ先が喉の皮膚を浅く斬る。
ハッとした咲さんの動揺を見抜いて、侍衆は一気に押し入ろうとするのだが…

「何の御用でしょうか」

手術終了。

「我が藩の大殿を侮辱した女郎を渡して貰おうか」
「大殿様が彼女を捉えろとおっしゃったのですか。鈴屋さんからは、乳の岩の件を申し上げたところ、残念だが仕方ない、養生するようにとの暖かいお言葉を頂いたと聞きました。これは、本当に大殿様のご指示なのですか」


理路整然と唱えられ、ごめんも言わず去っていく、素直になれないツンデレ侍たち。

てかもうやだよこの診療所。凄い気迫の打ち掛けの女が刃物振り回したかと思ったら、血まみれの白衣の汗だくの大男が出てきて説教するんだよ…もう俺、帰る。帰るよ…。

「咲さん、大丈夫ですか!」
「大丈夫です」
「咲さん、首っ…」
「このくらい、何とも」
「今日って結納じゃ…?」


咲さんの汗だくで乱れた礼装。そして裸足で駆けてきたことが知れる様子に、先生は困った様に笑って、

「もう…。もう、あんまり…無茶ばっかり、しないで下さいよ…」


お互い様ですよ、仁先生。

さて、手術も無事成功、一段落したところで…仁先生には確かめなければならない事がありました。

手術の前に、気持ちを乱さない為に一度、丘に埋めたラブプラス…じゃなかった、ミキの写真を掘り返すことです。

ミキがいなくなっている?
ミキの姿がハッキリと映っている?
ミキの姿が変化している?

…あらゆる可能性を考えていた先生ですが…

「…先生?」

野風が麻酔から醒めたことを伝えようと、咲さんが探しに来たところ、先生は丘の上でぼんやりと座り込んで空など見上げて…。

「写真…消えてしまって」
「ミキさんが、ですか?!」
「いいえ。写真そのものが、消えてしまったんです」


どういう事なんでしょうね、と力なく呟く先生は完全に呆然自失。

これは、あれでしょうか。
MHFでキャラクターをHR300まで育てたところでチート武器増殖がバレて運営にBANGされたコマツ君と同じような気持ちって事でしょうか。

あの写真を撮った瞬間がなくなってしまったのか。
先生とミキさんの繋がりがなくなってしまったのか。
自分もミキも生まれない未来を作ってしまったという事なのか…。

「もう何も…わからなく、なってしまって」

突然なくなったのだから、また突然現れるかも、と、何とか先生を励まそうとする咲さんに、先生は力なく笑ってみせる。

「でもね、咲さん。ひとつだけ確かな事は…私が、解放されたって事なんです」
「解放…」
「これでもう、未来に一喜一憂する必要もないじゃないですか。これからは目の前の事だけを見て、ただ懸命に生きればいい。もっとずっと、ずっと…生きやすくなる。
ミキの事が何もわからなくなるなんて、狼狽えて、絶望してもいい筈なのに、なんか、涙も出ないんですよね。
ただ本当に…ホッとしている自分がいるんです。私は…本当に…ひどい」


先生、あんまりお一人様SMプレイを楽しんでると…。

また咲さんがさっきの短刀取り出して振り回しそうですよ…?

「良かったんですよね、これで」と繰り返す先生に、咲さんは朝まで頷き続けました。

「良かったんですよね、これで…」
「はい」
「良かったんですよね…」
「はい」


なんか…龍馬さん…。
侍が押し入ってきた時、どうしてこういう肝心な時にいないのかと思ってたけど…。



逃げましたね?



「儂ゃあ、焚きつけるとか担ぎ出すとか、そういうのは出来てもこういうしんねりむっつりしたがは苦手じゃあ!」
「しかし咲に任せるというのも…あと一回多く言ったら、崖から突き落とされかねないところでしたよ!」
「くっ、あちきの体さえ自由であったなら…悔しゅうござんす…」



咲さんはこうやってずっと、未来から来た38歳児の面倒を見続けなければならないのでしょうか…。
とにもかくにも、そうして、日々はつつがなく過ぎていって、野風退院の日。

「では、皆様。おさらばえ」

吹っ切れた様に笑う野風の笑顔に、かつての恋人の面影が重なる。

「きっとまたいつか会えるから、いいよ」

助けられなかった彼女。
助けられた彼女。
ひとつの因果が解消されて…

「これからは、己の脚で、行きたいところへ行くでありんす。そこで誰かと出会い、誰かと慕い慕われ…誰よりも幸せになるでありんす。南方先生の手で、生まれ変わらせて頂いたのでありんすから」

見送る先生と野風の間に雪が降りしきる。

「南方先生、ほんに、ほんに、ありがとうござりんした!」

ミキが昏睡状態に陥ってから、先生はずっとそこで立ち止まって。
どうすれば良かったのか、これから彼女の為にどうすれば良いのか、右往左往するばかりで一歩も前に進めなかった。

1−1=0で、先生はその1を自分で引いてしまった事、その式にだけ拘って、結果が0になり、自分が恋人を失ったのだという解に、ずっとたどり着けなかった。

大好きな未来がいなくなっちゃった。

先生はその事をもっと悲しんで良かったのに。
大好きな彼女がいなくなった事をさんざん嘆いて悲しんで、それから、前に進んでも良かったのだ。

「良かったです…私は、あなたを助けられて。
良かったです! 良かったです、野風さん!!」


胸を張って去っていく野風の後ろ姿は、どこかで新しい一歩を踏み出しているかも知れない、大好きなあのひとの様で。

雨が雪になり、水になり、湯気になり、また雨になる。
水は消えることはなく、そんな風に、ミキもまた、変わってしまった時の彼方で「悪性の脳腫瘍で植物人間状態になってしまった、南方仁の恋人の友永未来」として以外の姿で、存在しているのかも知れない…。

長い失恋でしたね、仁先生。


「ほいたら…儂も行こうかの」
「龍馬さん…」


仁先生にとっては「過去」である「未来」を振り切る。
その前に、仁先生はどうしてもやっておかなければならない事がもう一つあった。

帰ろうとする龍馬を呼び止めて、丘へ。
写真から、ミキに繋がっていることがわかった野風とは別に、仁先生はもう一人、行く末を知っている人がいた。
志半ば、33歳にして凶刃に倒れる幕末の英雄…



坂本龍馬だ。



「龍馬さん、もしかして、もう知ってるかも知れませんが、私は…」
「聞いたところでどうにもならん」


自分が未来から来た事を、そしておそらく、彼の運命を知っている事をも打ち明けようとした先生の言葉を制して、龍馬は言った。

「十年先、百年先を知ったところで、日は一日一日、明けていくだけじゃ。一歩一歩、進むしかないがじゃ。儂も…先生も」

地を這う虫の様に。

それきり何も言わない横顔を、先生はしばらくじっと見つめていたけど、

「…じゃあ、龍馬さん」
「ん?」
「また、明日」
「おう。また明日じゃ!」


微笑んで言う先生の肩をバシンと叩くと、龍馬は笑顔で去っていった。

これが先生と龍馬さんの最後のシーン。
撮影の時もこれが内野龍馬のクランクアップであったらしい。

土佐弁先生(方言指導の先生)がブログで「号泣した」と言っていたので、何か悲壮な事が起きるのかと思っていたら、何とも爽やかな男同士の友情シーンであった。

偉人? 変人? 偉人? やっぱり変人?!
と変遷して、気がついたら親友になっていた仁先生から見た龍馬。

一方、神か仏かと思っていたら、ずっと一人で、自分の弱さと医者としての使命感の間で足掻き続けてきたただの人間「南方仁」だとわかって、ようやく対等のところに立った、龍馬から見た先生。

明日からは、「未来から来た人間と、暗殺される幕末の英雄」でもなく「大明神と土佐の脱藩浪人」でもなく、ただの南方仁と坂本龍馬です。

夏は暑くて冬は寒くて、朝は眠くて、夜はお酒を飲んで、何が国の為になるのか、どうすれば人の為になるのかを模索しながら、ただ毎日、自分に出来ることを一つ一つ果たしていくしかありません。


 未来。
 あそこから出て行かない俺に、君は本当はずっと、言いたかったのかも知れないな。
 もう一度、歩いてみろ。
 きっと思う以上に美しいはずなんだから。
 …人生は。



スーパーMISIAタイム。
江戸の町を歩く仁先生。
町娘の姿で、手習いの塾を開講したビラを配る野風。
少し大きくなった喜市。彼を算盤塾に追い立てる茜。
ペニシリン製造に励む山田。
福田と衝突する佐分利。
咲の破談にめげず、兄上に縁談を持ちかける栄母上。
新仁友堂の建設に張り切る辰五郎親分。
異人と英語で渡り合う勝先生と、その後ろで初めてブーツを履いて大はしゃぎの龍馬。

人々の波を縫って歩く仁先生は、もう龍馬を追いかけて町中に飛び込んだあの時の様な、頼りない異邦人ではなくて、立派な江戸のお医者様です。

帰ると咲さんが笑顔で迎えてくれて、洪庵先生の遺してくれた「国の為、道の為」という言葉を二人で診療室に掲げます。

「まだ…右が下がってます。あ、上げすぎです」

咲さんの指示に従って、額を水平にしようとするうちに、踏み台の上から転げ落ちる仁先生。
一瞬見えた、現代の、予備校の教壇とおぼしき場所に立つ、ミキにそっくりなあの女性は…運命がシフトした後のミキの姿なのか…?

「ってぇ〜!」

ぶつけた頭をさすりながら涙目で起き上がる仁先生。
と、不意に覚えのあるあの頭痛が…?

「えっ…?」

カッと目を見開く忘れ去られていたホルマリン君。
あら、来週が楽しみねと思ったところで全話完結。





ご視聴ありがとうございました!





うん…。
まあ…。

実は私、不満とか全然なくて、むしろ「続編が出来そうな終わり方で良かった」っていう邪心ぐらいしかないんだけど…。

一つ気になるのが、タイムスリップの条件というのが、

・先生の頭痛
・高いところから落ちる
・ホルマリン君発動

なわけで…
この条件が揃うと、その時一緒にいた二人の内の一人が消えてしまう確率が高いわけで…

一度目は包帯男と揉み合いになって仁先生がタイムスリップ。
二度目は龍馬と一緒に崖から落ちて、龍馬がタイムスリップ?
三度目は…

先生が踏み台から落ちそうになった時、支えようとした人はいた筈で…



先生…




…咲さんはそこにいますか?






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で、DVD−BOX感想でまたお会いしましょー!