はしれ、トト!

さく:チョ・ウンヨン やく:ひろまつゆきこ / 文化出版局 / 2013年


はしれ、トト! の内容紹介

今年は午年。
ということで、昨年末に馬の絵本を集めた特集をしました。

今日は、最近出版された絵本で馬といえばこれがスゴイ!という作品を
ご紹介させていただきます。

作者のチョ・ウンヨンさんの絵本処女作にして、2011年に第23回の
プラティスラヴァ世界絵本原画展にてグランプリを受賞された作品です。

どうぞお楽しみください。


主人公の「わたし」は、「トト」という名前のお気に入りのぬいぐるみを持っています。

「わたし」は、ずっと以前から馬が大好きだったけれど、まだ本物の馬を見た
ことがありませんでした。

そんな折、「わたし」の「おじいちゃん」が「わたし」を競馬場へ連れて行って
くれることに。

本物の馬が見られると、嬉しそうな「わたし」が描かれています。

競馬場には、たくさんの人・人・人・・・があふれていました。
競馬場に入る前から、本物の馬が見られるドキドキ感でいっぱいの「わたし」。

競馬場の中は大人だらけで、彼らは盛んに「なにか じっと みてい」たり、「なにか
かいてい」たり、「なにか かんがえてい」たりしたのでした。

そしてついに!本物の馬が登場します!
「わたし」は、お気に入りのぬいぐるみ「トト」と本物の馬との違いを感じます。
そして、馬を大人たちが可愛がっていないことをとても不思議に思いました。

おじいちゃんから、「いっとうになる うまを あてたら、おかねが たくさん もらえる」
と聞き、競走馬をじっくり見て一等になる馬を予想する「わたし」。

そうしたら・・・いました!
大好きな「トト」とそっくりな馬が!!

「わたし」は、その馬が一等になることを願い、応援します。

そして−−−。


初めてこの絵本をプラティスラヴァ世界絵本原画展の国内展覧会で見た際、
この絵本は韓国語で書かれていたので、内容まではわかりませんでした。

でも、その表現力の幅の広さに驚き、その後の広松由希子さん(この絵本の訳者
さんです)の講演会で、この作品が競馬を扱っているゆえに日本での出版話が
難しかったが、今、出版の目途が付き始めているというお話を聞き、とても
楽しみに待っていたのでした。

大人はもっと子どもの審美眼を信じ、そして悪い影響を及ぼすものを徹底的に排除
するよりも、そのものに触れた時にはどうすればよいかを伝えるべきではない
でしょうか。

程度にもよりますが、絵本の出版に関しては大人が買うことを避けるという理由で
出版されない秀逸な絵本があることは、とても残念なことです。

ゲームでも、マンガでも、アニメでもそうですが、子どもが夢中になるものの魅力を
一端認め、大人自らが自分の目で確かめて与えていくという経過がないと、うわべ
だけで良いものが削がれたり、また一見良さそうだけれども実は良くないものが
与えられていくということになりかねないと感じます。

思春期以降に大人が介入していくのは難しくなりますから、絵本を読んでいる時期の
子どもの選ぶものを、周りの大人たちが吟味し、共感したり話し合ったりすることって
必要な気がします。

せっかく広松由希子さんのご尽力で出版された作品ですから、競馬=悪影響という
ものさしで遠ざけられることがないよう、強く願うばかりです。


はしれ、トト! の読み聞かせ方のヒント

競馬場にいる大勢の大人たちの表現は、ページごとに異なる手法が用いられて
いて、それを見ているだけでとても楽しめます。

あるページは版画。
スケッチのようなページがあったり、それから、指の腹でハンコのように人間たちの
頭を形作ったページもあります。

競馬場に来ている人たちの表情が切り取られているところにも、ご注目ください。

そして、馬の表現もこれまたお見事。
馬の描き方が1頭1頭違っていて、その表情や体型からその馬の個性までをも表現
しようとしているようです。

表紙見返しには、騎手の服装や馬の顔のバリエーションが並んでいますので、そこも
じっくりと是非見てくださいね。
後の見返しには、競馬場を整備する様子が描かれていて、物語の終了を感じさせて
くれます。

さまざまな工夫と表現力で魅了される絵本ですが、一見このヘタウマに見える絵が
やはり大人たちは苦手です。
“こんな絵”と一刀両断せずに、ぜひ中身を見て面白さを大人の方にも味わって
いただきたい!

奥付ページの下に、編集部による「絵の中に登場するハングル文字の意味」として、
解説が載っています。

改めて、この絵本の出版にかける情熱を感じ、文化出版局さんと広松由希子さんに
感謝と敬意を表します。
ありがとうございました。







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