October 01, 2013

災害から学ぶ

2011年の津波、豪雨・台風による水害、土砂災害、私たちが想定することができないレベルの現実を目の当たりにしてきました。
『想定外』    この言葉の意味はとてもわかりやすい反面、諦めという思いが、私たちの思考を止めてしまいます。しかし、私たちはそこから何かを学ばなくてはなりません。 
地球にとてつもなく大きな隕石が落ちることは想定外であり、さすがに予防策を講じることはできません(笑)。しかしながらその規模は想定外であったとしても、起こり得ることが想定されるのであれば、やはり対策を考え、行動することは必要です。 現場でも想定外のことが起こります。先まで元気だった患者さんが突然亡くなる、元気に歩いていた患者さんが転倒してケガをする、 このような経験は誰にでもあるはずです。大事なことは振り返って考えた時、本当に何も問題がなかったのか!?  私たちは、先入観に支配されやすい傾向があります。一部を見て物事を判断する傾向があります。科学的に(客観的に)証明されることを疑うことはできませんが、それ以外の事象については、正しい判断であるのか検証をしなければなりません。
夜勤の時、患者さんの状態が少し気になった時、『大丈夫だろうか』あるいは『多分大丈夫でしょう』と思うことが科学的に正しいのか判断が必要です。もしそれを判断することができない時はどうすればいいのか、一度考えて見てください。

yonaha_hospital at 17:14|Permalink

September 01, 2013

Dr.コール

皆さんは、Dr.コールをするのがあまり好きではないと思います。それは、電話口のDr.の態度がよくないからだと思いますが(笑)…。Dr.コールの際にいろいろ考えてしまいます。例えば、主治医と当直医のどちらに確認すべきか、これはすぐに報告した方がいいのか、こんな時間に電話してもいいのか、どういうふうに伝えればいいのか…考えたらたくさんありますね。心肺停止であれば何も迷うことなく当直医に報告すると思います。バイタルの変化であれば、どちらに報告するのがいいのでしょうか。
結果的にどちらに伝えるにしても、大事なことは、何が言いたいのか、相手に伝わることです。主治医だからといって情報を割愛しては行けません。週末であれば前日の状態を知らない可能性があるからです。患者の情報をまとめる上で大切なポイントは、やはりアセスメントです。例えば、バイタルの異常の原因がどこにありそうなのか、考えなければなりません。けっして先入観にとらわれては行けません。特にスタッフが少ない夜勤の時には、自分で判断し、伝達することを考える必要があります。限られた時間の中で要点をまとめて伝えるのは、少々経験が必要です。

しかし、ナースが患者情報を上手に伝えることができれば、Dr.はその次の対応を効率よく考えることができます。上手に伝えるためには、患者の状態やこれまでの経過をしっかり理解しておくことが必要です。日勤からの申し送りだけに頼らず、重症患者や病状の不安定な患者さんについては、自ら情報収集するようにしましょう。

 さて、どちらに報告するのか。あなたが患者さんを是非診察してもらいたいと考えているのであれば、当直医へ報告してください。その際には何が異常なのか、アセスメントをしっかりしておくことを忘れずに!



yonaha_hospital at 21:08|Permalink

August 01, 2013

本質が大事

DICについて必ずナースに質問されることがあります。

「出血傾向の患者さんになぜヘパリンを投与するのですか?」

「その通りですね!」  

 この何気ないこの会話は、とても大切なことを教えてくれます。

そもそもDICとはどういう病態なのでしょうか。DICの正式名称は、播種性血管内凝固症候群です。何らかの原因(癌、敗血症、胎盤剥離)で凝固能が亢進すると血栓形成が始まります。凝固能が亢進するとその成分となる血小板やフィブリンが消費されます。出血を止める成分が消えて行くわけですから、出血しやすくなりますね。また血栓形成が亢進すると血栓を溶解する働きも亢進しますから、さらに出血しやすい状態になってしまいます。まとめると、DICは患者さんの体の中に基礎疾患があり、それ基礎疾患の悪化が引き金となって血栓形成が始まります。従って、DICのスタートは血栓形成にあると言うわけです。勿論、患者側の基礎疾患が根本的なスタートですが、DICの病態とは関係がありません。DICを治療するためには、血栓形成を抑制する治療が必要です。それでヘパリンを投与することになります。出血傾向はあくまでも病気が進行した結果ですので、その点に注目しても病気を治療することになりません。

 私たちは、ついつい目の前の問題が気になるため、本質的な問題に気づかないことがあります。消費税増税はなぜ行われるのか? その是非を考える前になぜ増税するのか その疑問に答えることが先です。



yonaha_hospital at 20:33|Permalink

July 31, 2013

素敵な取り組み

当院の回復リハビリ病棟のスタッフが、退院3か月後に患者さんを訪問する取り組みを始めました。目的は2つあります。1つは、退院時の計画通りに患者さんが快適な生活を送っているか確認すること、2つ目は利用している介護サービスや施設の状況を把握することです。今日はその発表会が行われました。

症例は、脳出血後の高次機能障害があり在宅療養は難しいと考えられていた患者さんです。最終的には家族の熱意もあり退院されましたが、3か月後訪問して驚いたことは、高次機能が大幅に改善されていたことです。これには発表を聞いていたスタッフも驚愕しました。なぜなのか?

入院中は認知面や高次機能障害による転倒や事故を予防するため、抑制する場面が多かったようです。実は、この状況こそが、患者さんの安全面ばかりに気を取られ、本来の能力に気づかなかった主たる要因ではなかったかと推察しました。では抑制しなければ良かったのでしょうか。

そうではないと思います。このような状況の患者さんが安全に入院生活を送る環境が病棟にないことが問題です。しかしながら、こういったハードの問題は直ちに改善できるわけではありませんので、現場での状況への理解と工夫が必要となります。

今回のケースでは、患者さんは必ず良くなるという家族の強い思いがあり、在宅復帰が叶えられました。家族の理解がなかったとしたら、患者さんは大変不幸な時間を過ごすことになったかもしれません。高次機能障害や認知の問題は、家族に大きな不安を与えるため、在宅療養を敬遠する家族も多いと思います。家族の思いを受け止めつつ、能力改善のサポートのため介護サービスを計画したスタッフの姿勢もよかったと思います。家族とスタッフの相互理解は大切です。

今回学んだことは、患者さんの可能性を判断することは難しく、だからこそ決めつけてはいけない。患者さんの可能性を探る方法として家族から情報収集すること(勿論、本人の訴えも傾聴しなければいけません)。回復リハビリ病棟では、あらゆる患者さんの状況に合わせた生活環境が必要となる。

退院後の患者さんの状態を確認することは、自分たちの大切なエビデンスとなり、そのエビデンスを元に新たな患者さんの改善に生かしていくことが大切ではないでしょうか。


   
                                         ひまわり


yonaha_hospital at 16:06|Permalink

July 11, 2013

感心しました

 当直看護師より患者さんのモニター波形が変わっていると連絡がありました。患者さんを見に行くと発語も少なく、吐き気の訴えがありました。モニター波形を見ると、アラームは鳴っていませんでしたが、明らかにSTの低下が認められました。この患者さんは以前に心筋梗塞の既往があったため、前壁梗塞を疑い、急いで心電図を記録したところ、やはり急性心筋梗塞でした。その5分後心肺停止となり、蘇生いたしましたが、残念ながら他界されました。

 アラームが鳴らないモニター波形の異常に気づくことは、正直難しいと思います。したがって、これまでの勉強会でも夜勤看護師は、モニターのついている患者さんの波形を記録することを指導してきました。日勤のように多数の看護師がいればモニター波形の異常に気付くことができますが、夜間はやはり難しい。

 今回のケースでは、気づかなければ心肺停止の状態で発見され、しかも7時という慌ただしい時間に当直医を呼び、蘇生をしていたと思います。これは雲泥の差です。夜勤時間帯に急変することは珍しいことではありませんが、その中には状態の異常を見過ごしていた可能性も少なくありません。最良の判断とアセスメントに基づいていれば、最悪の結果であっても悲観することはありません。気づいていたにもかかわらず適切な判断やアセスメントをしなかったというのは、最も避けなくてはならない事態です。

 まだ2年目でしたが、この経験はさらに彼女の成長を後押しすることでしょう。人が成長するきっかけは勉強や指導だけではありません。自らの気づきが、成長の道筋を切り開くことがあることを知ってもらいたいと思います。
 

yonaha_hospital at 01:00|Permalink

June 28, 2013

求められるパーソナル・ケア

ある友人から聞いた話です。



ターミナルの患者様で、食事をしてもすぐに戻してしまう状態の方がいました。医師からは絶食の指示が出ていましたが、ある看護師が、患者さんが「白いご飯が食べたい」と言っていたのを聞き逃さず、せめて人生の最期ぐらいは好きなものを食べていただきたいと考え、職員たちがアイデアを出し合って「ご飯パーティー」を企画することになりました。



ひとりの看護師が、「せっかくだからご飯を炊く匂いも楽しんでもらおうよ」と、病室に炊飯ジャーを持ち込む提案をしました。すると、新潟出身の看護師が、「実家からコシヒカリを取り寄せます」と言い出しました。それだけではありません。看護師たちは、患者が自宅で食べていたけんちん汁のレシピを家族から教わり、病室で再現することにしました。その企画に感激した家族は、当日ウナギを用意し、自家製の梅干しまで持ってきたそうです。すると、その患者さんは、直前まで吐き続けていたのに、何と、その時だけ元気が出て、嬉しそうにご飯を食べたというのです。



この病院では、院長の考えで、患者さんに対するケアのあり方に禁止事項を設けず、職員の自主性に任せているそうです。



さて、このような心温まるエピソードはどうしたら生まれるのでしょうか。好きにやってもいいという環境がそうさせるのでしょうか。



そうではなく、患者さんの気持ちへの気づき、それを叶えてあげたいという強い思い、そして、それを実現させる行動力があってはじめて起こり得るのです。心温まるエピソードの裏では、気づき、思いやり、目標設定、その目標へ向って一体となって行動する協力体制、それらすべてが機能的に動いていたのです。



以前、行動科学について触れましたが、「やってもいい」という環境は、あくまでも先行条件にすぎません。大切なことは、その条件の下で、行動し、良い結果を生むことです。「こうあってほしい」という切なる願いが人を動かします。患者さんの思いを受け止め、どうすればいいのかを考えるプロセスが原動力となり、行動を起こさせ、結果的に、心温まるエピソードとしての「実り」をもたらすのです。



これからはパーソナル・ケア(正式な表現ではありませんが…)という考え方が、ますます医療や介護の求められます。それぞれの患者さんの個別性を重視するということです。10人の患者さんがいれば、10通りのアプローチが存在するわけです。



パーソナル・ケアには、「創造」する力が必要です。職員が患者さんの個別性に気づき、気づきを提案や目標に換え、チームという組織力と協力体制で目標に向って動けば、今までにない素晴らしいことが実現できるはずです。そしてこのような活動は、人としても組織としても、必ずや成長のための大切な一歩となるでしょう。


 


 


 


 


 


 


 


 



yonaha_hospital at 16:51|Permalink

May 28, 2013

マニュアルについて

この時期は、新人看護師が一生懸命仕事を覚える時期です。そのため、現場では先輩看護師が通常業務と並行して新人の指導にあたります。大変な時期ではありますが、うまく乗り越えることで、お互いに成長することができるはずです。ただ、先輩看護師の指導だけでは仕事を覚えることはできません。自ら積極的に学ぶ姿勢が大切です。マニュアルは学ぶ際の助けになります。マニュアルには、仕事の基本的な手順や個々の行為の内容が記載されています。マニュアルは、すべての職員が同じ手順で仕事を行うための取り決めが説明されており、これにより皆が共通の認識を持つことができるのです。

 マニュアルの良い点は、誰もが同じように行動できるように導いてくれることです。一方で、マイナス面として、マニュアル通りに実践しようとするあまり、思考しなくなりがちなことが挙げられます。これは、「ティーチング」と「コーチング」の違いに似ています。与えられた仕事を完璧にこなすことは素晴らしいことです。とくに医療現場では、安全の観点から、ミスなく完璧にこなすことが、何よりも求められます。しかし、実際には、パターン通りには事はなかなか進みません。パターン通りにいかない時、判断に迷います。先輩に聞けば問題は解決するでしょう。皆さんが新人から先輩になった時、新人から判断を求められる立場になります。その時どのように対応しますか?さらに上の先輩に尋ねるのもひとつの方法でしょう。しかし、それでは、自分の成長を妨げることになってしまいます。前例もお手本もない事象に対して、どう対処すべきなのか。それは、自分で考え、判断するしかないのです。考える訓練をすることが大切なのは、予想しなかったことが起こった時に、冷静に判断できる力をつけるためでもあるのです。

 以前はマニュアルを見ずにできたことが、久しぶりにやろうとしたら迷ってしまった。 こんな経験はありませんか? なぜできていたことができなくなってしまうのか。人間の記憶とは当てにならないものです。覚えたことも、しばらくやらないと忘れてしまいます。車の運転や歯磨きといった日常生活で繰り返し行う動作は、無意識にできますが、職場ではすべての業務を毎日繰り返して行うわけではありません。たまにしかやらないことを少しでも自分の記憶に留めさせるためには、意味づけが必要です。意味づけとは、「どうしてこうなっているのか」「どうしてこうするのか」と理由を考えることに他なりません。理由が分かれば、その結果としてどうすべきかが見えてきます。そして覚えられるはずです。これまでのブログでも解説していますが、一つひとつの医療行為には意味と理由があります。その理由をしっかり理解しながら、マニュアルを覚えていくように努力しましょう。血液培養の時にはなぜ2本ボトルがあるのか、インスピロンを使用するときのチューブの調節、輸血ルートの確保方法、それぞれの方法に理由があります。その理由をしっかり理解した上で、仕事を一つずつ確実に覚えていきましょう。そうすれば、新人看護師になにか尋ねられても、自ら考え、判断し、答え、なぜそうしなければならないのかまで説明できる素敵な先輩に成長できることでしょう。



yonaha_hospital at 18:02|Permalink

April 22, 2013

心不全を考える

 心不全は、遭遇する頻度の高い疾患です。その発症メカニズムもわかりやすいので、一度勉強すれば心不全という病気がどのようにして引き起こされるのか理解できると思います。キーワードは、『悪循環』と『血圧』です。

 何らかの原因(心筋梗塞、弁膜症)により心臓の機能が低下した場合、心臓から拍出される血液量は減少します。血圧=心拍出量×末梢血管抵抗となるので、心拍出量が低下すれば通常血圧は低下しますが、代償作用(末梢血管の収縮、心拍数の増加)が働くため、血圧の低下は予防されます。ところが、代償作用によりナトリウムの吸収が活性化されるため(腎臓が血液量の低下と判断し、ナトリウムの再吸収を命令する)、体内にナトリウムが貯留します。ナトリウムと水は一緒に活動するため、体内に水分も貯留します。心臓に予備能力がある時期は、血液量が増えることにより心拍出量を維持することになりますが、いよいよ元気がなくなってくると、血液量の増加は大きな負担となってしまいます。そうなると心拍出量が低下し始め、末梢血管抵抗が増大します。末梢血管抵抗の増大は心臓の収縮力にストレスを与えますから、心臓は益々弱ります。さらに心拍出量の低下は、腎臓で感知され、ナトリウムの再吸収が活発となり、循環血液量がさらに増え、弱った心臓に負担を掛けます。これが、『悪循環』の正体です。

良かれと思ってやったことが(血圧低下を予防するためナトリウムを吸収する)、あとから首を絞める結果(心臓の負担が悪化)となってしまったわけです。その中心的役割が『血圧』なんです。血圧が下がるということは、体にとって重大なことですので、あらゆる方法で補おうとします。しかしそれが過剰になると、体に負担となって表れてしまいます。

 心臓がいよいよ耐えらえなくなると、心臓と肺の間で血液の流れが停滞し、血管内に血液が過剰に貯留します。血管は拡張しますが、限界がありますので、拡張しすぎると血液中に水分だけを血管外へ移す作業が始まります(血管透過性の亢進)。それによって肺の血管のストレスは多少減りますが、周囲に水が漏れてしまうため(肺うっ血)、酸素の受け渡しがスムーズにいかなくなってしまいます。このため、十分な酸素が体内へ入ってこなくなり、体は酸欠状態となってしまいます。これが、心不全発症時の呼吸困難です。

 以上のことから、心不全治療の戦略がわかりましたか?

・まずは、酸素化を阻害している肺うっ血を改善させるために、血管内のナトリウムと

水分を除外する

⇒利尿剤を投与する(Ex.ラシックス)

・心臓の体力を回復させるために、末梢血管抵抗を改善させるため、降圧剤を投与する

 ⇒アンジオテンシンを抑制する降圧剤を投与する(Ex.ディオバン)

心不全の患者さんには利尿薬が必要であると覚えるのではなく、その病態から薬剤の必要性を理解しましょう。



yonaha_hospital at 17:39|Permalink

March 11, 2013

酸素投与のお話

 SpO2が低下したためマスク1L開始いたしました、と報告がありましたが、あまり良い報告ではありません。その理由を説明するためには、以下の説明を理解しなければなりません。

鼻カニューレは、簡便で圧迫感がないため、大変使いやすい。欠点は高容量(4L以上)投与すると乾燥することである。酸素濃度の指標としてFIO2を用いる。Room airでは21%であることは知っておきましょう。4Lではおよそ36%、5L40%となる。6L/分以上流してもFIO240%以上にはなかなか上がらなくなります。従って鼻カニューレでは、鼻への刺激のことも考えて、5L/分を限界とすることが多い。

酸素マスクは、圧迫感、閉塞感があり、「息苦しさ」を感じることがあるが、鼻粘膜の乾燥は少ない。ただし、流量が少ないと呼気中の二酸化炭素を再吸入してしまうので、CO2ナルコーシスの原因となることがあります。鼻カニュラは5L/分以下で、簡易酸素マスクは5L/分以上で使われることが多い。簡易酸素マスク(シンプルマスク)による酸素投与時のおおよその吸入気酸素濃度(FIO2)は、56L/ 40% 67L/ 50% 78L/ 60% 酸素をためておけるマスク部分がリザーバーになりますから、鼻カニュラより多くの酸素をためておけ、FIO2も上がると期待されますが、大事なことは、5L/分未満では使わないということです。



そもそも酸素濃度が低下する原因はなんでしょうか?

  肺胞低換気②シャント③換気血流不均衡分布(ミスマッチ)④拡散障害

はじめに「肺胞低換気」ですが、喘息や肺気腫などで空気の通る道(気道)が狭くなったり閉じたりして、肺胞内に出入りする空気が極端に減ってしまう病態です。これは理解しやすいですね。
 次の「肺内シャント」は、肺胞で酸素を受け取ることができない静脈血が、直接左心房に還流する機序で、通常でも心拍出量の2%程度の解剖学的シャントがあります。病的なのは、血流があっても肺胞内腔が存在しない場合、たとえば無気肺などがそれに相当します。要するにバイパスです。
 三番目の「換気・血流不均等分布」は最も理解しがたい低酸素血症の発現機序です。まず肺胞における酸素の受け渡しを想像してください。もしも十分な換気が行われている肺胞の周りに十分な血流があれば、効率の良い酸素の受け渡しが行われます。仮に十分な換気があっても酸素を受け取ってくれる血流が乏しかったり、逆に血流は十分にあっても換気が不十分だったりすると、単位時間当たり、体内に取り込める酸素の量は大幅に減少してしまいます。こうした、"換気と血流のバランスが悪くなるために低酸素血症をきたす"というメカニズムは、ほとんどの慢性の呼吸器疾患で認められ、実際はこの病態が呼吸不全の主因となる場合が大部分です。この一事を取って見ても、呼吸と循環は不可分の関係にあることを実感させられます。
 最後の「拡散障害」は昔と比べると概念が大きく変わってきました。従来は、肺線維症や肺水腫などで認められる低酸素血症の発現機序として、肺胞腔と毛細血管の間の距離が増大してガス拡散が障害されるため、と説明されていましたが、現在ではそのメカニズムは否定され、ガス拡散面積の減少、すなわち有効換気面積の減少が、病態生理的な主因と考えられています。


 



yonaha_hospital at 15:01|Permalink

February 23, 2013

伝える大切さ

医療安全委員会の講習に参加しました。その中で人に物事を伝えるスキルに関する話がありました。日常業務の中で変更・中止があった時、その事実だけを相手に伝えていませんか。結果を確実に伝えることは大切ですが、もっと重要なことは、その内容を相手に理解・納得してもらうことです。なぜなら、人は言われたことを理解し納得して初めて、変更の理由と目的を意識し、行動を変えることができるからです。点滴あるいは処置の指示が変更になっていたにもかかわらず、うっかり従来の指示のままに動いていた経験はありませんか。これは、ABへの変更という事柄だけが頭を素通りし、理由が頭に刻み込まれていないからです。これでは変更の理由を検証したり確認したりする機会は生まれません。AからBへの変更理由を正しく理解し、申し送りの際に理解を共有することが大切です。そうすれば患者さんにも説明ができますし、患者さんも変更の理由がわかって納得するでしょう。業務過程に思考を介在させることは、医療安全の観点からも重要です。一番怖いのは、思考停止状態で習慣に埋没してしまうことです。科学的看護の大切さと共通する点ですね。科学的観点=思考により人の意識に印象付けることは、私たちの知識や技術を高めるだけではなく、医療安全のレベルも高めます。医師から看護師へ、リーダーからメンバーへ、「なぜ、そうするのか」その理由をわかりやすく伝えるスキルを身につけましょう。

yonaha_hospital at 15:34|Permalink