ライザップといえば、太った人物が鼓舞するような音楽と共に紹介された後、一転華々しい曲になってマッチョになった姿を披露する――そんなCMでお馴染みの、結果にコミットする会社である。
だが、そんな『デブ→痩せ』という方向性に敢然と逆をいった漢がいた。
そう、超絶格闘神にして全宇宙の支配者である三沢光晴猊下――三沢さんである。
三沢さんは常々「理想のボディとは何か」を追求していた。
90年代から00年代初期にかけ、三沢さんはヘラクレスのようなマッチョボディを維持し、猛々しい試合を展開していた。
だが尊師はどこかで、何かが違う、何かが違うとお悩みであったようである。
理想の逆三角形体型。
しかし、三沢さんが求めてやまない究極ボディは、いつまで経っても手中には収まらなかった。
そこで三沢さんはライザップの逆を考えたのだ。
そう、『痩せ→デブ』という方向性である。
三沢さんは決意したら速かった。
煙草を吸うようになり、暴飲暴食。
その腹はみるみるうちに「妊娠?」と聞きたくなるほどの膨張を遂げた。
そうして出来上がったのが、そう、我々の知る『白タンクボディ』である。
兵法や格闘技に通じていない小物たちは、三沢さんの外見を嘲って笑った。
だが三沢さんの白タンクボディは、大木の幹のような安定感と重量感を彼に与え、たとえばエルボー一つとってみても倍以上のウェートが乗るようになった。
実際、三沢さんとドームのメインで闘った川田利明は、試合後「エルボーが重かった」と口にしている。
ライザップの痩せマッチョ製造技術は、確かに素晴らしいだろう。
これからも結果にコミットしていってもらいたいものである。
だが、我々がゆめゆめ忘れてはならないのは、『格闘神は逆をいった』――このことである。