世界各国から集まった記者団800人が、後楽園ホールを貸し切って行なわれる合同記者会見に出席した。
そう、数日前に志賀様の受諾という形で開催決定をみた、『志賀様vs堀口恭司』の詳報が、ここで得られるからである。
リング上の長机についた志賀様と堀口は、十分な間隔を開けて座っている。
にもかかわらず、堀口はおこりのようにガタガタ震え上がり、歯の根をガチガチと鳴らしている。
志賀様のオーラを前に怯えきっているのだ。
あれだけ吠えておきながらこのザマである。
記者が質問した。
記者「今回、総合格闘技ルールで5分3ラウンド、判定なしと決まりました。志賀様、今の意気込みをお聞かせください」
真格闘神にして日本国国王である志賀様は、今日もグレーのスーツをパリッと決めたカッコいいお姿で、マイクを握った。
志賀様「そうですね、今回は堀口選手からの猛烈な煽りと対戦アピールを受けて、じゃあ、という形ですけど挑戦を受けさせてもらいました。久しぶりに頭に来てます。殺人はしたくないのですが、あるいはそんな凄惨な結末を迎えるかもしれないと、覚悟しておいてください」
堀口はさっきから何やら呪文のように呟いている。
よく耳を澄ますと、「俺にはカーフキックがある、俺にはカーフキックがある……」と繰り返しているのが分かった。
記者「では次、堀口恭司選手。意気込みをどうぞ」
堀口「え? あ、ああ。……今まで幾多の選手たちが志賀様に敗れてきた。だがそれはソフトがつまらなかったからじゃない。ハードに問題があったからだ。セガ、メガドライブ、16ビット♪CPU搭載。限界のバリアを打ち破って、魅せる迫るうなる……♪」
記者「あの、堀口選手? 頭大丈夫ですか?」
堀口「はっ! 俺としたことが、ついメガドライブのCMを口ずさんでしまった! ……気を取り直して……。志賀様はカーフキックを受けたことがあるまい。俺様にはこの新兵器がある。志賀様、おそるるに足らず! 当日を楽しみにしておいてくれ」
ここで志賀様が立ち上がり、付け人の丸藤正道からボーリング玉を受け取った。
なんの真似だ、とマスコミも堀口もきょとんとしていると、志賀様は右足を振り上げた。
そして、振り下ろした右ふくらはぎで、ボーリング玉を粉々に砕いたのだ!
どよめく後楽園ホール。
思わず失禁する堀口。
志賀様はニヤリと笑った。
志賀様「僕のふくらはぎは十分に鍛えてあるので、ちょっとやそっとじゃびくともしません。……そう、カーフキックの創始者はこの僕。志賀賢太郎なんです。堀口選手、今さら吐いた唾は飲み込まないように。では、決戦の試合会場でまた会いましょう」
志賀様は去っていった。
残された堀口は、噴水のように小便を噴き上げる。
堀口「も、もうあかん……。殺される……」
報道陣はそのさまを激写し、撮影しつつ、堀口の葬式を取材する手筈を脳裏に描くのだった。
そう、数日前に志賀様の受諾という形で開催決定をみた、『志賀様vs堀口恭司』の詳報が、ここで得られるからである。
リング上の長机についた志賀様と堀口は、十分な間隔を開けて座っている。
にもかかわらず、堀口はおこりのようにガタガタ震え上がり、歯の根をガチガチと鳴らしている。
志賀様のオーラを前に怯えきっているのだ。
あれだけ吠えておきながらこのザマである。
記者が質問した。
記者「今回、総合格闘技ルールで5分3ラウンド、判定なしと決まりました。志賀様、今の意気込みをお聞かせください」
真格闘神にして日本国国王である志賀様は、今日もグレーのスーツをパリッと決めたカッコいいお姿で、マイクを握った。
志賀様「そうですね、今回は堀口選手からの猛烈な煽りと対戦アピールを受けて、じゃあ、という形ですけど挑戦を受けさせてもらいました。久しぶりに頭に来てます。殺人はしたくないのですが、あるいはそんな凄惨な結末を迎えるかもしれないと、覚悟しておいてください」
堀口はさっきから何やら呪文のように呟いている。
よく耳を澄ますと、「俺にはカーフキックがある、俺にはカーフキックがある……」と繰り返しているのが分かった。
記者「では次、堀口恭司選手。意気込みをどうぞ」
堀口「え? あ、ああ。……今まで幾多の選手たちが志賀様に敗れてきた。だがそれはソフトがつまらなかったからじゃない。ハードに問題があったからだ。セガ、メガドライブ、16ビット♪CPU搭載。限界のバリアを打ち破って、魅せる迫るうなる……♪」
記者「あの、堀口選手? 頭大丈夫ですか?」
堀口「はっ! 俺としたことが、ついメガドライブのCMを口ずさんでしまった! ……気を取り直して……。志賀様はカーフキックを受けたことがあるまい。俺様にはこの新兵器がある。志賀様、おそるるに足らず! 当日を楽しみにしておいてくれ」
ここで志賀様が立ち上がり、付け人の丸藤正道からボーリング玉を受け取った。
なんの真似だ、とマスコミも堀口もきょとんとしていると、志賀様は右足を振り上げた。
そして、振り下ろした右ふくらはぎで、ボーリング玉を粉々に砕いたのだ!
どよめく後楽園ホール。
思わず失禁する堀口。
志賀様はニヤリと笑った。
志賀様「僕のふくらはぎは十分に鍛えてあるので、ちょっとやそっとじゃびくともしません。……そう、カーフキックの創始者はこの僕。志賀賢太郎なんです。堀口選手、今さら吐いた唾は飲み込まないように。では、決戦の試合会場でまた会いましょう」
志賀様は去っていった。
残された堀口は、噴水のように小便を噴き上げる。
堀口「も、もうあかん……。殺される……」
報道陣はそのさまを激写し、撮影しつつ、堀口の葬式を取材する手筈を脳裏に描くのだった。