よなぷーの無駄喋り

2021年10月

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とうとうこの日がきた。

国立競技場は10万人を超える観客で埋まり、その興奮は今にも破裂しそうだ。

お目当てはもちろんメインイベント、『志賀様vs那須川天心vs武尊』のキックルール3WAY戦である。

この前代未聞の戦いに、大観衆の期待感は破裂寸前の風船がごとしだった。

セミファイナルでウィル・オスプレイがストームブレイカーで白鵬から3カウントを奪うと、場内は暗転。

まずは弱い方の武尊&天心が入場し始めた。

バックではとんねるずの過去の楽曲がリミックスで流され、その情けなさに拍車がかかる。

「何が3WAYキック戦だタコ!」「恥知らず!」「志賀様がお前らごときに負けるわけないだろ!」

大量の志賀様ファンが口々にののしり、2人にトイレットペーパー、尿の入った紙コップ、呪いの藁人形を投げつけた。

しかし天心と武尊はそれらを巧みにかわしつつ、花道を闊歩する。

もはや打倒志賀様を隠そうともしない。

武尊と天心がリングインすると、会場を埋め尽くす観客が狂喜した。

強い方である志賀様の、入場曲『TRADITION』が流れ出したからだ。

銀のジャケットを着た志賀様は、付き人の丸藤正道におひねりを拾わせつつ、悠然と四角いジャングルへ向かっていく。

「最強過ぎる!」「馬鹿2人をのしてください!」「男前ー!」

大観衆からの暖かい言葉とおひねりを受け、今志賀様がリングイン!

リング上にスポットライトが集中した。

武尊と天心は早くも尿失禁しながら、リング中央で志賀様と向かい合う。

ルール確認の際、2人は志賀様の目を睨み付けることさえできなかった。

役者が違う、ということか。

やがてグローブを合わせた3人は、それぞれのコーナーに引っ込んでいく。

レフェリーのレッドシューズ海野がゴングを要請し、午後8時半、試合が始まった。

天心と武尊がアイコンタクトしつつ、一気に志賀様へと向かう。

やはりこの2人は、『志賀様潰し』で共闘を図る気だったのだ。

会場が彼らへのブーイングで埋め尽くされるが、天心も武尊もお構いなしだ。

天心の鋭いカーフキックが、志賀様のふくらはぎを正確に撃ち抜く。

「ぎゃあっ!」

上がった悲鳴は志賀様のものではなく、攻撃した天心のものだった。

志賀様が脛で防御した際、天心は右足を複雑骨折してしまったのだ。

「折れた! 折れた!」と叫びつつ、脱糞しながらダウンする天心。

武尊はしかし、ここぞとばかりに志賀様の顔面へストレートを叩きつける。

志賀様は逃れられない!

武尊の剛腕が志賀様の顎を正確に撃ち抜いた。

もし志賀様が普通の一般人だったならば、意識を失ってダウンしていたことだろう。

だが志賀様は生まれながらの肉食獣である。

武尊の必殺の一撃にまるで動じることなく、平然と前進した。

そして――

実況が「アッパーだ!」と思わず叫んでしまったように、志賀様は鋭い拳で、武尊の顎をぶち抜いていた。

「ぐああっ!」

情けない声を上げつつ、武尊が失神脱糞KOされる。

ここでレッドシューズ海野がゴングを要請。

1R27秒、志賀様の完勝だった。

国立競技場内は爆発的な歓声に包まれ、観戦していた皆が、一斉にマスクを天に放る。

さらばコロナ、さらば天心&武尊、という充足した表情が、全員の顔にみなぎっていた。

担架で運ばれる2人を眺めやった後、志賀様はマイクを手にする。

志賀様「今日は皆さん、観戦ありがとうございました!」

万雷の拍手が志賀様に降り注ぐ。

志賀様「キックルールでの3WAY戦は、僕も初めてだったんですけど、お楽しみいただけましたでしょうか! ちょっと早く終わりすぎたかな……」

照れる志賀様に、場内の女子高生から黄色い歓声が飛ぶ。

志賀様「次の試合がいつになるかは分かりませんが、また会場でお会いできる日を楽しみに待っています! 今夜はホント、ありがとうございました! この後また夢でお会いしましょう! アディオス!」

国立競技場は、この日何度目か分からない歓声で揺られた。

ありがとう志賀様!

やっぱり志賀様が最強だ!

どこかでウグイスが鳴いている。

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