志賀賢太郎さまにボクシングルールで二度挑戦し、二度とも惨敗した井上尚弥。

彼が「三度目の正直」とばかりに、志賀さまに対戦要求を叩きつけた。

場所は『ブレイキングダウン』の公開オーディション。

朝倉未来に紹介されると、井上は審査員の志賀さまにメンチを切った。

井上尚弥「お久しぶりっすねぇ、志賀賢太郎! 相変わらず弱い相手とばかり戦って、最強ニキとかおだてられてるらしいじゃないっすか!」

志賀さまは無言で、闘犬のような井上尚弥を静かに見つめるのみだ。

これに井上が切れた。

井上尚弥「何調子こいてんだコラ! やったんぞ! いつでもやったんぞ!」

チャンス大城のような吠えっぷりである。

朝倉未来「そんなにやりたいなら、今すぐやりますか?」

井上尚弥は朝倉未来にも睨みを利かす。

井上尚弥「俺はでかい会場でしかやらないですよ、ハッキリいって。とにかく俺は世界三団体王者で……」

会場から失笑が漏れた。

弱い相手と戦いローカル色豊かなベルトを何本ぶら下げようが、そんなものは意味をなさない。

そのことだけは、会場にやってきた不良青年たちにも分かるのだ。

朝倉未来「まあ志賀さまへのリベンジはそのうちどこかでやってもらいましょう。では次の方、お入りください」

青筋を立てて怒る井上尚弥というチンピラに、もはやカメラマンさえ興味を失っていた。

カメラを会場入り口に向ける。

ばつが悪くなった井上尚弥は、すごすごと引っ込んでいった。