今年の大晦日、地上波で放送された格闘技はボクシングだけだった。
井岡一翔とフランコがリングで躍動し、互いを殴り合う。
熱く沸く館内だったが、和田京平レフェリーが突然試合を止めた。
「ストップ! ストップ、ドントムーブ!」
どうやら「ロープに近すぎる」ため、ドントムーブがかけられたらしい。
和田レフェリーは静止した井岡とフランコに対し、ダブルラリアットで喉元をえぐって、そのまま二人を場外へ叩き落とした。
試合のピンチである。
そこへ解説の内藤大助がさっそうとリングイン。
「俺が内藤大助だ~!」とかほざきながら、ズボンを下げてケツを出し、糞をひりだそうときばり始めた。
この危機に観客は大ブーイング。
そこへ飛び込んできたのはロス・なんとかかんとかのリーダー、ハゲし過ぎる兄さん内藤哲也。
大助のケツに低空ドロップキックを浴びせ込む。
あわれ大助はロープの向こうへ転がり落ちた。
内藤哲也は和田レフェリーからマイクを受け取ると、恒例の奴を始めた。
「スリー、ツー、ワン、ゼロワン!」
この叫びに観客は「哲也ちゃんさすが勝負師!」のチャントを合唱した。
するとリングに穴が開き、真上にいた内藤哲也を飲み込んでまた閉じた。
彼は恐らく魔空空間に引きずり込まれたのだろう。
これには観客も大爆笑。
「ギャバンに助けてもらえ!」と親切なヤジを飛ばした。
ここでリングインしてきたのはアントニオ猪木!
占いババの力で1日だけこの世に復活させてもらったのだ。
マイクを手にすると「この道を往けばどうなるものか……」と例の詩を吟じ始めた。
これには観客も大暴動。
リングに数名の観客が上がり込み、猪木に詰めよった。
その中にはあの予備校生や、あの刺傷犯も含まれていた。
猪木が詩を邪魔されて怒鳴る。
「俺に聞くな!」
そして和田レフェリーが予備校生と刺傷犯のシングルマッチを裁き始めると、試合は混沌。
猪木は他の観客と雀卓で麻雀をし始めた。
右のストロング小林からこっそり中牌を渡してもらうなど、勝つ気満々である。
だがその間に燕返しをやられていることに気付いておらず、冷静な観客から「猪木、前! 前!」と注意を受ける始末だった。
ここで名曲『RISING SUN』が会場一杯に鳴り響く。
となると、入場ゲートに現れるのは、もちろん――シンスケ・ナカムラ!
中邑はしかし、ケツでもあるのか、通常の3倍速のスピードで例の入場を行なった。
早送りされた中邑ムーヴはコロッケの物真似にも似て面白い。
だが観客は大ブーイングの嵐。
よく見れば中邑は白いコスチュームだと思いきや、全裸に白ペンキを塗りたくっただけだった。
あの日のムタとの濃厚なディープキスを思い出しているのか、竿はフル勃起である。
ともあれリングインした中邑だったが、観客の興味は彼からすでに移っていた。
予備校生と刺傷犯のバトルにケリがつき、予備校生が伝説のキックで刺傷犯をKOしたのだ。
観客は拍手喝采である。
何なら今までの井岡とフランコのボクシングより沸いていた。
一方では猪木が大三元を食らって痛恨の出費。
猪木はなぜか中邑を鉄拳制裁し、中邑はそんな猪木に毒霧噴射。
そして出た、キンシャサ・ニー・ストライク!
猪木は場外に転げ落ち、ストロング小林は卓上をメチャクチャに崩してごまかしながら先輩の後を追った。
中邑は予備校生と刺傷犯も外へ蹴り落とすと、麻雀での勝ちを不意にされた連中も殴り飛ばす。
リング上には狂乱の中邑と冷静にかるたを読み始める和田レフェリーの二人が残された。
退屈になったリング上に、観客が一斉にビッグコミックスペリオールを読み始める。
そこへ突然ガラスの砕け散る効果音が鳴り響いた。
何とあの伝説のレスラー、WWEのストーン・コールドこと、スティーブ・オースチンがテーマ曲に乗って入場してきたのである。
缶ビールを浴びるように飲みながらの威風堂々の歩きぶりに、観客のビッグコミックスペリオールを読む手が止まらない(ダメじゃん)。
次々に缶ビールを喉に流し込んだオースチンは早くも酔っ払い、リングに辿り着く前に花道で潰れてしまった。
これには和田レフェリーも号泣しつつ、ペケサインを出す。
オースチンはロープをくぐることすらなく、スタッフに抱えられて退場していった。
笑いが欲しいリング上では、中邑がムーンウォークでリング内を徘徊してみせる。
だが観客はくらげバンチの漫画を読むのに夢中で、そんなものなど目にも入らなかった。
と、そのとき爆音が響いた。
見れば五味隆典、飯伏幸太、井上尚弥の『ダップナーズ』の三人が、ケツから糞を撒き散らしながら空中を飛行し始める。
脱糞の際の糞圧を推進力として、補助器具なしでの単独飛行をなし得たのが彼ら、『ダップナーズ』だ。
大量の糞を爆発的に噴射しながら、彼らは今日の標的である中邑めがけて襲いかかった。
だが観客から投げつけられる空き缶やトイレットペーパー、ミカンの皮にポテチの空き袋を食らって、なかなか思うように飛行できない。
そのうち腸内の糞が尽きたか、『ダップナーズ』の三人はあわれ場外に墜落して失神した。
このとき花道を疾走してきたのが、キック無敗で引退し、ボクシングへと転向予定の神童・那須川天心である。
武尊に勝ったことが嬉しいのは分かるが、あまりのはしゃぎぶりに反感を抱くファンも少なくない。
そのためかリングインした天心は、早速客席からレーザー光線を浴びせられていた。
それを巧みなスウェイでかわし、視力減退を阻止する天心。
と、そこへ現れたのは。
「武尊だ!」
観客が漫画を投げ捨てて注目した先には、天心に負けて号泣したあの武尊の姿があった。
今回も泣きながら花道を全力で突っ走る。
「天心! もう一度勝負しろーっ!」
泣き叫ぶ声には同情できるが、そんなこと言ってたらいつまで経っても勝負がつかないだろう。
だが天心は迎え撃つ気満々だったらしく、リングインした武尊を早速攻撃し始めた。
武尊も応戦する。
そのとき……
「相討ちだ!」
観客が大爆笑して指差した先には、ローブローをお互いに叩き込んで苦悶する天心と武尊の姿があった。
和田レフェリーが久しぶりに仕事をする。
「ただいま天心選手と武尊選手のローブローが同時に決まったため、私の勝ちといたします」
まさかの自分が勝利の判定に、観客は全員納得。
懐かしの『笑っていいとも』よろしく「そーですねー!」と合唱する観衆たちに見守られ、無事に和田レフェリーがキック無敗の座を引き継いだ。
うつ伏せにダウンしたままの天心と武尊は、ダメージも忘れて意気投合。
ストロングゼロを飲みながら恋愛話に花を咲かせた。
そんな二人の背中に吹き矢を命中させようと必死になる観客たち。
「ちょっと待ったーっ!」
そのときだった。
レインメーカーことオカダ・カズチカが、オカダドル札の降り注ぐなか、マイクを手に花道に現れたのだ。
「俺なしで大晦日は過ごせないでしょう! 中邑さん、那須川、武尊! 俺と4WAYで勝負しようぜ!」
この提案を観客も歓迎。
オカダには万雷の拍手が降り注いだ。
しかし天心と武尊は、ストロングゼロのアルコールと吹き矢の痺れ薬、更に金的のダメージが複合的に合わさっている。
そのため試合を待たずに和田レフェリーの手で場外へ蹴落とされた。
また、中邑は体の白ペンキが落ちて、全裸であることがばれてしまった。
ワイセツ物陳列罪に当たるため、和田レフェリーの温情で、彼も場外へ投げ落とされた。
つまりオカダがリングインした時点で、戦うべき相手が一人もいなくなっていたのだ。
彼はやけくそになってマイクアピールする。
「どうすんですか、この状況ーっ!」
泣けてくる話に、観客は慟哭を上げるもの多数。
しかし、オカダはプロである。
大観衆を何としても満足させたいあまり、珍奇な行動に走り始めた。
何と全裸になり、竿にネクタイをしめて、猪木のファイティングポーズを取ったのである。
これには観客も大爆笑。
笑い転げるカメラマンたちにフラッシュを焚かれるオカダは、得意満面でにやりと笑って見せた。
そして、「例の奴、やります!」と叫ぶと、竿をしごき始めた。
隆々と立つ竿に、和田京平レフェリーが「何と見事なイチモツじゃあ!」と感嘆する。
そしてオカダは、「見さらせ! これが前田慶次の小便鉄砲じゃあ~!」と叫びつつ、カメラマンたちに向かって小水をぶっかけていった。
これには観客も怒り心頭。
「そんなものは望んでいない」「八百長だ」「金返せ」と罵倒の雨を浴びせる。
(やってしまった……)と自分の落ち度を認めながら、いったんやり始めた以上最後まで突っ走らなければならないオカダ。
カメラマンたちをずぶ濡れにすると、最後の一滴を放って、恥ずかしそうに場外へダイブした。
リング上に和田京平レフェリーしかいない異常事態。
だがそこに、なぜか机と椅子が並べられる。
そして、反社感マックスないかつい面々が登場し、次々と着席していった。
観客の「?」に答えを与えたのは、最後に登場したあの男だった。
「朝倉未来だ!」
そう、いまや凄まじい年収を稼ぐプロ格闘家、朝倉未来が、リングインして席に着いたのだ。
「じゃ、最初の人入ってきてください」
誰が来るかと思いきや、なぜかひろゆきが現れる。
「バンさん! 俺バン仲村さんとやりたいっす!」
これにバン仲村も応じた。
「君いいねぇ! じゃあやろうか? ただ、試合じゃなくてスパーリングでやり合おうよ。俺、君の実力見てみたいからさぁ」
朝倉未来は「じゃ、そこの二人、闘ってもらっていいですか?」とうながし、こうしてひろゆき対バン仲村のスパーリングが始まった。
まったく強くないひろゆきは、バン仲村にボコボコにされて、小便を漏らして大の字になった。
バン仲村が「君、弱いねぇ。そんなんで俺に勝つつもりだったの?」と見下ろすと、ひろゆきは「それってあなたの感想ですよね?」といって脱糞失神した。
次にリングに入ってきたのはメイウェザーというおじさんだった。
朝倉未来が眼光鋭く、「あなたの経歴は?」と尋ねる。
メイウェザーは「ボクシングを少し」と答えた。
これに「こいつになら勝てそうだ」と思ったのか、朝倉未来が元気よく片手を挙げて「なら俺と勝負しましょう!」と宣言。
周りのヤンキーやひろゆきをリング外に蹴落とすと、メイウェザーとの対戦に拳を握った。
和田レフェリーがリング中央で朝倉未来とメイウェザーにルールチェックを行なう。
「金的OK。目潰しOK。五秒以内の反則OK。凶器攻撃OK。で、ボクシングルール。OK?」
この時点で見込みが甘かったと震え上がる朝倉未来。
一方のメイウェザーはうんうんとうなずく。
そして両者が赤青それぞれのコーナーに別れた。
「ファイト!」
ゴングが鳴った。
本格的なボクシングの試合に興味津々の観客たちは、中央に立つメイウェザーと、その周りを怯えたように回り続ける朝倉に熱い視線を送る。
やがて朝倉未来がへっぽこジャブからふところに入り込もうとした。
だがメイウェザーは隠し持っていたスタンガンで未来を一撃。
「ぎゃああっ!」
未来は感電し、リングに大の字になって失禁KOされた。
ボクシングの試合でスタンガン決着とはなかなか見られたものではない。
観客はおおむね好意的な拍手を送った。
和田レフェリーはここでメイウェザーに延髄切り。
吹っ飛んだメイウェザーが場外に転落すると、入れ替わるように入ってきた井岡一翔とフランコの二人にポジショニングの変更指示を与えた。
その結果、井岡がフランコに片翼の天使を決めて、フォールの体勢に入ったところからやり直しが決まった。
ドントムーブは解除され、試合は事なきを得た。
井岡一翔とフランコがリングで躍動し、互いを殴り合う。
熱く沸く館内だったが、和田京平レフェリーが突然試合を止めた。
「ストップ! ストップ、ドントムーブ!」
どうやら「ロープに近すぎる」ため、ドントムーブがかけられたらしい。
和田レフェリーは静止した井岡とフランコに対し、ダブルラリアットで喉元をえぐって、そのまま二人を場外へ叩き落とした。
試合のピンチである。
そこへ解説の内藤大助がさっそうとリングイン。
「俺が内藤大助だ~!」とかほざきながら、ズボンを下げてケツを出し、糞をひりだそうときばり始めた。
この危機に観客は大ブーイング。
そこへ飛び込んできたのはロス・なんとかかんとかのリーダー、ハゲし過ぎる兄さん内藤哲也。
大助のケツに低空ドロップキックを浴びせ込む。
あわれ大助はロープの向こうへ転がり落ちた。
内藤哲也は和田レフェリーからマイクを受け取ると、恒例の奴を始めた。
「スリー、ツー、ワン、ゼロワン!」
この叫びに観客は「哲也ちゃんさすが勝負師!」のチャントを合唱した。
するとリングに穴が開き、真上にいた内藤哲也を飲み込んでまた閉じた。
彼は恐らく魔空空間に引きずり込まれたのだろう。
これには観客も大爆笑。
「ギャバンに助けてもらえ!」と親切なヤジを飛ばした。
ここでリングインしてきたのはアントニオ猪木!
占いババの力で1日だけこの世に復活させてもらったのだ。
マイクを手にすると「この道を往けばどうなるものか……」と例の詩を吟じ始めた。
これには観客も大暴動。
リングに数名の観客が上がり込み、猪木に詰めよった。
その中にはあの予備校生や、あの刺傷犯も含まれていた。
猪木が詩を邪魔されて怒鳴る。
「俺に聞くな!」
そして和田レフェリーが予備校生と刺傷犯のシングルマッチを裁き始めると、試合は混沌。
猪木は他の観客と雀卓で麻雀をし始めた。
右のストロング小林からこっそり中牌を渡してもらうなど、勝つ気満々である。
だがその間に燕返しをやられていることに気付いておらず、冷静な観客から「猪木、前! 前!」と注意を受ける始末だった。
ここで名曲『RISING SUN』が会場一杯に鳴り響く。
となると、入場ゲートに現れるのは、もちろん――シンスケ・ナカムラ!
中邑はしかし、ケツでもあるのか、通常の3倍速のスピードで例の入場を行なった。
早送りされた中邑ムーヴはコロッケの物真似にも似て面白い。
だが観客は大ブーイングの嵐。
よく見れば中邑は白いコスチュームだと思いきや、全裸に白ペンキを塗りたくっただけだった。
あの日のムタとの濃厚なディープキスを思い出しているのか、竿はフル勃起である。
ともあれリングインした中邑だったが、観客の興味は彼からすでに移っていた。
予備校生と刺傷犯のバトルにケリがつき、予備校生が伝説のキックで刺傷犯をKOしたのだ。
観客は拍手喝采である。
何なら今までの井岡とフランコのボクシングより沸いていた。
一方では猪木が大三元を食らって痛恨の出費。
猪木はなぜか中邑を鉄拳制裁し、中邑はそんな猪木に毒霧噴射。
そして出た、キンシャサ・ニー・ストライク!
猪木は場外に転げ落ち、ストロング小林は卓上をメチャクチャに崩してごまかしながら先輩の後を追った。
中邑は予備校生と刺傷犯も外へ蹴り落とすと、麻雀での勝ちを不意にされた連中も殴り飛ばす。
リング上には狂乱の中邑と冷静にかるたを読み始める和田レフェリーの二人が残された。
退屈になったリング上に、観客が一斉にビッグコミックスペリオールを読み始める。
そこへ突然ガラスの砕け散る効果音が鳴り響いた。
何とあの伝説のレスラー、WWEのストーン・コールドこと、スティーブ・オースチンがテーマ曲に乗って入場してきたのである。
缶ビールを浴びるように飲みながらの威風堂々の歩きぶりに、観客のビッグコミックスペリオールを読む手が止まらない(ダメじゃん)。
次々に缶ビールを喉に流し込んだオースチンは早くも酔っ払い、リングに辿り着く前に花道で潰れてしまった。
これには和田レフェリーも号泣しつつ、ペケサインを出す。
オースチンはロープをくぐることすらなく、スタッフに抱えられて退場していった。
笑いが欲しいリング上では、中邑がムーンウォークでリング内を徘徊してみせる。
だが観客はくらげバンチの漫画を読むのに夢中で、そんなものなど目にも入らなかった。
と、そのとき爆音が響いた。
見れば五味隆典、飯伏幸太、井上尚弥の『ダップナーズ』の三人が、ケツから糞を撒き散らしながら空中を飛行し始める。
脱糞の際の糞圧を推進力として、補助器具なしでの単独飛行をなし得たのが彼ら、『ダップナーズ』だ。
大量の糞を爆発的に噴射しながら、彼らは今日の標的である中邑めがけて襲いかかった。
だが観客から投げつけられる空き缶やトイレットペーパー、ミカンの皮にポテチの空き袋を食らって、なかなか思うように飛行できない。
そのうち腸内の糞が尽きたか、『ダップナーズ』の三人はあわれ場外に墜落して失神した。
このとき花道を疾走してきたのが、キック無敗で引退し、ボクシングへと転向予定の神童・那須川天心である。
武尊に勝ったことが嬉しいのは分かるが、あまりのはしゃぎぶりに反感を抱くファンも少なくない。
そのためかリングインした天心は、早速客席からレーザー光線を浴びせられていた。
それを巧みなスウェイでかわし、視力減退を阻止する天心。
と、そこへ現れたのは。
「武尊だ!」
観客が漫画を投げ捨てて注目した先には、天心に負けて号泣したあの武尊の姿があった。
今回も泣きながら花道を全力で突っ走る。
「天心! もう一度勝負しろーっ!」
泣き叫ぶ声には同情できるが、そんなこと言ってたらいつまで経っても勝負がつかないだろう。
だが天心は迎え撃つ気満々だったらしく、リングインした武尊を早速攻撃し始めた。
武尊も応戦する。
そのとき……
「相討ちだ!」
観客が大爆笑して指差した先には、ローブローをお互いに叩き込んで苦悶する天心と武尊の姿があった。
和田レフェリーが久しぶりに仕事をする。
「ただいま天心選手と武尊選手のローブローが同時に決まったため、私の勝ちといたします」
まさかの自分が勝利の判定に、観客は全員納得。
懐かしの『笑っていいとも』よろしく「そーですねー!」と合唱する観衆たちに見守られ、無事に和田レフェリーがキック無敗の座を引き継いだ。
うつ伏せにダウンしたままの天心と武尊は、ダメージも忘れて意気投合。
ストロングゼロを飲みながら恋愛話に花を咲かせた。
そんな二人の背中に吹き矢を命中させようと必死になる観客たち。
「ちょっと待ったーっ!」
そのときだった。
レインメーカーことオカダ・カズチカが、オカダドル札の降り注ぐなか、マイクを手に花道に現れたのだ。
「俺なしで大晦日は過ごせないでしょう! 中邑さん、那須川、武尊! 俺と4WAYで勝負しようぜ!」
この提案を観客も歓迎。
オカダには万雷の拍手が降り注いだ。
しかし天心と武尊は、ストロングゼロのアルコールと吹き矢の痺れ薬、更に金的のダメージが複合的に合わさっている。
そのため試合を待たずに和田レフェリーの手で場外へ蹴落とされた。
また、中邑は体の白ペンキが落ちて、全裸であることがばれてしまった。
ワイセツ物陳列罪に当たるため、和田レフェリーの温情で、彼も場外へ投げ落とされた。
つまりオカダがリングインした時点で、戦うべき相手が一人もいなくなっていたのだ。
彼はやけくそになってマイクアピールする。
「どうすんですか、この状況ーっ!」
泣けてくる話に、観客は慟哭を上げるもの多数。
しかし、オカダはプロである。
大観衆を何としても満足させたいあまり、珍奇な行動に走り始めた。
何と全裸になり、竿にネクタイをしめて、猪木のファイティングポーズを取ったのである。
これには観客も大爆笑。
笑い転げるカメラマンたちにフラッシュを焚かれるオカダは、得意満面でにやりと笑って見せた。
そして、「例の奴、やります!」と叫ぶと、竿をしごき始めた。
隆々と立つ竿に、和田京平レフェリーが「何と見事なイチモツじゃあ!」と感嘆する。
そしてオカダは、「見さらせ! これが前田慶次の小便鉄砲じゃあ~!」と叫びつつ、カメラマンたちに向かって小水をぶっかけていった。
これには観客も怒り心頭。
「そんなものは望んでいない」「八百長だ」「金返せ」と罵倒の雨を浴びせる。
(やってしまった……)と自分の落ち度を認めながら、いったんやり始めた以上最後まで突っ走らなければならないオカダ。
カメラマンたちをずぶ濡れにすると、最後の一滴を放って、恥ずかしそうに場外へダイブした。
リング上に和田京平レフェリーしかいない異常事態。
だがそこに、なぜか机と椅子が並べられる。
そして、反社感マックスないかつい面々が登場し、次々と着席していった。
観客の「?」に答えを与えたのは、最後に登場したあの男だった。
「朝倉未来だ!」
そう、いまや凄まじい年収を稼ぐプロ格闘家、朝倉未来が、リングインして席に着いたのだ。
「じゃ、最初の人入ってきてください」
誰が来るかと思いきや、なぜかひろゆきが現れる。
「バンさん! 俺バン仲村さんとやりたいっす!」
これにバン仲村も応じた。
「君いいねぇ! じゃあやろうか? ただ、試合じゃなくてスパーリングでやり合おうよ。俺、君の実力見てみたいからさぁ」
朝倉未来は「じゃ、そこの二人、闘ってもらっていいですか?」とうながし、こうしてひろゆき対バン仲村のスパーリングが始まった。
まったく強くないひろゆきは、バン仲村にボコボコにされて、小便を漏らして大の字になった。
バン仲村が「君、弱いねぇ。そんなんで俺に勝つつもりだったの?」と見下ろすと、ひろゆきは「それってあなたの感想ですよね?」といって脱糞失神した。
次にリングに入ってきたのはメイウェザーというおじさんだった。
朝倉未来が眼光鋭く、「あなたの経歴は?」と尋ねる。
メイウェザーは「ボクシングを少し」と答えた。
これに「こいつになら勝てそうだ」と思ったのか、朝倉未来が元気よく片手を挙げて「なら俺と勝負しましょう!」と宣言。
周りのヤンキーやひろゆきをリング外に蹴落とすと、メイウェザーとの対戦に拳を握った。
和田レフェリーがリング中央で朝倉未来とメイウェザーにルールチェックを行なう。
「金的OK。目潰しOK。五秒以内の反則OK。凶器攻撃OK。で、ボクシングルール。OK?」
この時点で見込みが甘かったと震え上がる朝倉未来。
一方のメイウェザーはうんうんとうなずく。
そして両者が赤青それぞれのコーナーに別れた。
「ファイト!」
ゴングが鳴った。
本格的なボクシングの試合に興味津々の観客たちは、中央に立つメイウェザーと、その周りを怯えたように回り続ける朝倉に熱い視線を送る。
やがて朝倉未来がへっぽこジャブからふところに入り込もうとした。
だがメイウェザーは隠し持っていたスタンガンで未来を一撃。
「ぎゃああっ!」
未来は感電し、リングに大の字になって失禁KOされた。
ボクシングの試合でスタンガン決着とはなかなか見られたものではない。
観客はおおむね好意的な拍手を送った。
和田レフェリーはここでメイウェザーに延髄切り。
吹っ飛んだメイウェザーが場外に転落すると、入れ替わるように入ってきた井岡一翔とフランコの二人にポジショニングの変更指示を与えた。
その結果、井岡がフランコに片翼の天使を決めて、フォールの体勢に入ったところからやり直しが決まった。
ドントムーブは解除され、試合は事なきを得た。