『めぐり逢う朝』のサン・コロンブは生没年もはっきりしていないそうだけれど、ものがたりを語る役目のマラン・マレは1656年生まれ、1728年没。
つまり彼は1642年生まれのアイザック・ニュートンよりひとまわり下、そしてニュートンと同じころに没していることになる(ニュートン没年はその前年の1727)。デパルデュの鬘で思い出した訳ではないけれど...
最近出たジャン−ピエール・リュミネの『ニュートンの鬘』がさっそく伊訳されたので、手にとってみる。巻末、ヴォルテールがハレーに向かって、「ひっひ、形而上学は球戯だとおっしゃる。なるほど貴方がた英国人はそれをユーモアだと受け取られるのでしょうな。たいしたもんだ。ユーモアとはわれわれのむき出しのアイロニーに比べるとなんとお上品なんでしょうなあ」と吐くところがある。
この書はいやな性格のニュートンをみごとに描き出しているが、なるほど主人公は『プリンキピア』を公刊にまで導いたハレー、ヴォルテールにあんたにはユーモアのセンスがないと皮肉られるハレーだった。
著者がフランス人だからか、ライプニッツについては軽くいなされました。
いずれにせよ、水銀と硫黄の実験の蒸気を浴びつづけて抜けた髪を隠すように鬘をかぶるニュートン。そのむき出しのアイロニーに鬘をかぶせるような著者の筆致に感服。
Jean-Pierre Luminet, La Parrucca di Newton, tr.it., Valentina Palombi, Roma 2011
tit.orig., La Perruque de Newton, 2010.