単行本の場合には、
帯に表示されるコピーだったり、
文庫本の場合には、
帯はもちろんのこと、
後付けに書かれる粗筋だったりが、
読者をミスリードすることは往々にしてある。

角田光代さんの小説「八日目の蝉」は、
映画化されたり、テレビにもなっているようで、
それなりに内容も粗筋も
世間に漏れていたと思うのだが、
でもどういうわけか、
僕は殆ど文庫の帯に書かれている程度の
知識しか持ち合わせないまま、
この重苦しい小説を読み始めた。
そんな僅かな予備知識しか持たないのに、
僕は帯のセリフにミスリードされていた。
中盤からの物語は、
僕が想像していた展開とは全く違っていたのだ。
しかしそれは不快な想定外ではなく、
初めて読む角田さんの作家としての力量に、
大きく頷くことが出来る、納得の想定外だったと思う。

心が捻れて軋む音が聞こえるようなこの小説にあって、
角田さんの文章は淡々と訥々と物語を刻んでいく。
だから僕はこの小説に悲壮感を感じない。
あまりにも痛い小説なのに、淡白な印象さえ受ける。
とにかくその小説世界に浸りきりになり、読まされる。
そして読まされること自体が心地いい。

奪われた記憶を巡る「八日目の蝉」、
圧倒的な物語の中で僕の心は震え続けた。
初めて読んだ角田光代さんに大満足です!

八日目の蝉 (中公文庫)
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